経験者採用とは?経験者を採用する手法や注意点を解説
d’s JOURNAL編集部
人手不足の解消や事業の成長・拡大を検討する際、スキルや経験が豊富な人材を採用したいと考える場合もあるでしょう。経験者採用という言葉は、従来の中途採用と共通する意味合いを持つ言葉ですが、目的がやや異なる部分もあります。
自社の組織力を強固なものにしていくには、経験者採用も含めた人材戦略を考えていく必要があるでしょう。この記事では、経験者採用の基本的な捉え方や注意点、採用までのフローなどを解説します。
経験者採用とは
経験者採用を成功に導くためには、まずは基本的な意味を把握しておくことが大切です。また、中途採用という言葉から変更された理由などについても解説します。
経験者採用という言葉の意味
「経験者採用」とは、いわゆる中途採用のことであり、経験や実績が豊富な人材を採用することを意味する言葉です。経験者採用という言葉が認識されたのは、2022年11月に日本経済団体連合会(経団連)の「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」案とその後の経団連会長による記者会見の内容がきっかけだといわれています。
新卒採用以外の採用活動において中途採用という言葉が広く用いられているものの、中途という言葉にはネガティブなイメージが含まれているため、経験者採用という言葉を用いることになったと説明されています。また、通年採用を実施する企業が多くなっているため、中途採用という言葉がそぐわなくなったともいえるでしょう。
ただ、一般的にはまだ中途採用という言葉が定着しているため、今後どのように変化していくのかが注目されています。
採用方法の多様化が狙い
2023年1月に公表された経団連の「2023年版 経営労働政策特別委員会報告」においては、採用方法の多様化が重要なテーマとして掲げられました。経団連の調査によれば、新卒者採用においては一括採用を中心としながらもその割合を減らし、通年採用や職種別・コース別採用、ジョブ型採用を増やす方針としている企業が多く見られるとされています。
また、経験者採用については今後も、多くの企業が通年採用で行うと回答しているのが特徴です。通年採用は自社にとって適切な時期に必要な人材を確保することを目的としており、経験者採用において活用されていると指摘しています。
今後は新卒採用についても通年採用の活用を進めていき、若年者に対しても就職の機会や選択の幅を広げていくことが重要であると報告にはまとめられています。採用方法の多様化を図ることで、イノベーションの創出や生産性の向上につなげていくことが狙いとして定められているといえるでしょう。
一括採用と通年採用の違い
採用活動を実施する際は、新卒者を対象とした一括採用と、経験者を対象とした通年採用の違いを押さえておく必要があります。ここでは、その他の採用方法なども含めて解説します。
基本的な意味の違い
一括採用は新卒者の採用をメインとしており、通年採用では経験者(中途)採用をメインとしていたのが従来の流れです。ただし、前述の通り今後は新卒者においても通年採用を増やすことが有益であるとされています。
一括採用は決められた時期にしか採用活動を行えないため、思うように人材が集まらなくても、次の時期まで待たなければなりませんでした。しかし、通年採用であれば1年を通じて採用活動を行うことになるので、企業の状況に応じて募集がかけられるというメリットがあるといえるでしょう。
通年採用はこれまで、既卒者や経験者などを対象としていましたが、これからは新卒採用についても対象とすることが検討されています。
その他の採用方法
人材の採用方法は、一括採用や通年採用の他にもさまざまなものがあります。例えば、カムバック(アルムナイ)採用です。「カムバック」も「アルムナイ」も採用活動においては基本的に同じ意味として使われており、自社の退職者を再雇用するための仕組みをいいます。
出産や育児、介護などライフステージの変化によって退職した元従業員を数年後に受け入れるための仕組みです。企業と従業員の双方がお互いのことをよく把握しているため、再雇用をしても即戦力となってくれることが期待できるでしょう。
働く側にとっても、業務内容や企業文化などを理解しているため、再就職をすることへの不安を感じずに済みますし、家庭生活と今後のキャリアの両立を図りやすいといえます。一方、リファラル採用とは自社で働く従業員から、友人・知人などを紹介してもらう採用方法です。
自社の従業員にリクルーターとして動いてもらうことで、求める人材像に近い人を集めやすくなるでしょう。これまでの採用方法だけにとらわれず、さまざまな方法を組み合わせて運用することで、人手不足解消につなげていくことが期待できます。
経験者採用という言葉の注意点
経験者採用という言葉を用いる際は、いくつか注意しておくべき点があります。どのような部分に気を付ければよいかを解説します。
新卒採用以外のすべてを表現できる言葉ではない
中途採用という言葉は、新卒採用以外のすべての部分をカバーする言葉であったため、使いやすかったといえるでしょう。しかし、経験者採用という表記とした場合に、「異業種から未経験では転職できないのか?」と転職希望者が応募を諦めてしまう可能性があるので注意が必要です。
求人票などを作成する際に、経験者採用という言葉を使うことで誤解を招かないかをよく確認しておくことが大事だといえます。
まだ一般的に定着していない
経団連が提唱したのが2022年頃であるため、経験者採用という言葉はまだ一般的に定着していない部分があります。中途採用という言葉のほうが多くの人にとって馴染みがあり、経験者採用は聞きなれない言葉として判断される可能性があるでしょう。
また、インターネットにおいても同様であり、経験者採用という言葉よりも中途採用という言葉のほうが検索エンジンの評価が高くなる傾向が見られます。多くの人に見てもらうことを目的とするのが採用ページでもあるため、あまり検索されない言葉を用いると検索結果のページに表示されづらくなるので気を付けておきましょう。
経験者採用以外の表記
経験者採用という言葉に近い表現として、社会人採用やキャリア採用、既卒者採用などが挙げられます。それぞれの言葉の意味やポイントについて解説します。
社会人採用
社会人採用という言葉は、以前から用いられている中途採用に近い言葉だといえます。社会人採用が意味する部分としては、社会人のなかで就職や転職を希望するすべての人を対象としているといったニュアンスが含まれるでしょう。
「社会人」という言葉を用いることで、学卒者を対象とした新卒者採用との区別を図っているのがポイントです。
キャリア採用
キャリアとは、そもそも経験や職歴などを指すものであり、キャリア採用という場合には即戦力となる人材を求めるときに使います。社会人採用とは異なり、キャリア採用においては未経験者を対象としていないのが大きなポイントだといえるでしょう。
キャリア採用について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『キャリア採用とは?メリット・デメリットや導入時の注意点や企業の成功事例を紹介 』)
既卒者採用
既卒者採用という言葉は、一見すると経験者採用とニュアンスが似ていますが、用いる際は注意が必要です。既卒者は学校を卒業したものの、就職していない人も含まれるからです。
既卒者採用という表現とする場合、未経験者も採用の対象としているかどうかを明記するほうが、企業と応募者の双方にとって誤解がないでしょう。
経験者採用のフロー
経験者採用による採用活動を進めるには、基本的な流れをあらかじめ把握しておくことが大事です。どのような形で進めていけばよいかを解説します。
基本的なパターン
経験者採用においては通年での採用がメインとなるので、求職者からの応募があった段階で、その都度選考を進めていく形となります。基本的な流れとしては、次のようなパターンとなるでしょう。
経験者採用の基本的なパターン
・募集、応募受付
・書類選考
・筆記試験、適性テスト
・面接
・内定
求職者からの応募書類は、ホームページやメールなどで電子データを受け取ることが多くなっています。書類選考については、人事部門が行うケースと募集職種が決まっている場合は配属先の部署が行うケースが挙げられます。
次に書類選考を通過した人に対して、筆記試験や適性テスト、面接などを実施することになるでしょう。すべてを行う場合もありますが、企業によっては面接だけで済ませることもあります。
面接の結果、自社が求める人材の基準に適う候補者がいれば、内定を通知します。必要な人数が集まるまで募集をかけ、採用活動を続けていく流れです。
会社説明会と選考を併用するパターン
会社説明会を実施する際に、書類選考を同時に行うパターンもあります。応募受付と書類選考をその場で行うことになるため、採用活動にかかる時間を短縮できるというメリットがあるでしょう。
また、求職者にとっても選考までにかかる時間を短縮できるため、応募しやすくなるのが利点です。募集をかける企業としては、応募の母集団を増やすことができ、候補となりそうな人材と直接やりとりができるという特徴があります。
ただし、スピーディーに採用活動を進められる反面で、応募者は時間的な余裕がないなかで書類選考を受けることになります。そのため、応募先の企業に対する認識や職種への理解が不十分なまま選考されることになるため、採用後のミスマッチが起こる可能性もあるでしょう。
リクルーターに任せるパターン
採用人数よりも、人物重視の姿勢で選考を進めていく場合には、リクルーターに任せるのも一つのパターンだといえます。選考においては面談や面接を重視するため、筆記試験や適性テストを行わない場合もあるでしょう。
リクルーターは候補者の人となりを十分に見極めるために、何よりもコミュニケーションを大事にするところがあります。本格的な選考を実施する前に、カジュアル面談を何回も行ったり、体験入社の機会を設けたりするケースも多いといえます。
リクルーターに採用活動を任せることで、書類などでは把握できない候補者の適性を見極められるといったメリットがあるでしょう。企業側と候補者側の認識の擦り合わせを丁寧に行うため、採用までに時間がかかっても入社後のミスマッチを防ぎやすいというのが利点です。
経験者採用を行うときの注意点
経験者採用を行うときには、以下のポイントに気を付けておきましょう。
経験者採用の3つの注意点
・自社が求める人材像を明確にする
・求人情報の記載は正確に行う
・さまざまな採用手法を組み合わせる
それぞれの注意点について解説します。
自社が求める人材像を明確にする
経験者採用を実施するうえで大事なポイントは、自社が求める人材像を明らかにする点が挙げられます。経験者採用だけに限ったものではありませんが、どのような人材を求めているかが明確でなければ、応募者も不安を感じてしまったり、本来であれば該当するはずの候補者の採用を取りこぼしたりする恐れがあります。
人材の募集をかけるときは、求めるスキルや経験などを明確にして、どのような人物を対象としているのかを明示しましょう。また、配属先が事前にわかっているのであれば、配属部署に確認を行ったうえで募集条件などを設定することが大事です。
経験やスキルではなく、適性などを重視する場合は適性テストや面接などに重きを置いた選考を進めていく必要があります。いずれにしても、求める人材像をきちんと定めることによって、その後の選考方法や選考基準などが決まっていくので重要なポイントだといえるでしょう。
求人情報の記載は正確に行う
求人票や求人ページを作成するときは、応募者の視点に立って内容を整える必要があります。応募者に興味を抱いてもらえる内容になっていなければ、思うように応募が集まらず、選考を進めにくくなるので注意が必要です。
給与や待遇、勤務時間、勤務地、募集する職種、自社でどのようなキャリアが積めるのかなどを具体的に書いていきます。また、経験者採用の場合はスキルや実績などを求めることになるため、取得が必要な資格や勤務経験の年数などをしっかりと明記しておきましょう。
求人情報があいまいなまま採用活動を進めてしまえば、入社後のミスマッチを引き起こし、早期離職につながる可能性があります。求人情報を掲載する前に、人事部門だけなく配属先の部署や経営層などの意見や考えなども交えながら、内容を確定させていきましょう。
さまざまな採用手法を組み合わせる
採用活動の具体的な手法は経験者採用だけでなく、新卒者採用や通年採用、カムバック採用、リファラル採用などさまざまな手法があります。どれか一つの採用手法だけに偏ってしまうと、費用の負担が大きくなってしまったり、思うように応募が集まらなかったりするケースがあるでしょう。
そのため、複数の採用手法を組み合わせながら、実際の採用活動を進めていくことが大切です。さまざまな採用手法を試すことによって、採用に関するノウハウを蓄積できるようになり、よりスムーズに採用活動を進められるでしょう。
また、必要なリソースや採用ノウハウが不足している場合は、外部の豊富な実績を持つ採用支援サービスなどを活用してみるのもよいといえます。多くの採用手法を試していけば、自社に合った方法を見つけやすくなるはずです。
複数の採用手法について興味がある方は、以下の記事も参考にしてみてください。
(参考:『採用手法一覧と各手法を解説|選び方のコツや最新のトレンドも紹介』 )
まとめ
従来は中途採用と呼ばれていた採用方法は、2022年の経団連の提言を受けて、「経験者採用」といわれることもあります。中途という言葉に対するネガティブなイメージを払拭する狙いがあり、新卒者も含めて通年採用を推進していく取り組みが進められています。
どのような業種・職種であっても、新たな人材を受け入れていかなければ、企業を持続的に成長させるのが難しくなってしまうものです。経験者採用や新卒採用、その他のさまざまな採用手法を組み合わせることで、自社にマッチングした人材を幅広く求めてみましょう。
(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)
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