ChatGPTを採用に使う方法とは?メリット・失敗しないための注意点を解説


d’s JOURNAL編集部
身近な生成AIツールの一つである「ChatGPT」は、採用業務にも活用できることをご存じでしょうか。コツさえ押さえれば、採用に関するさまざまな業務を効率化してくれます。
そこで本記事では、ChatGPTを活用できる採用業務の具体例とともに、活用のコツや注意点などもお伝えします。
「より多くの応募に対応し、効率的に採用活動を進めたい」とお考えの人事・採用担当者はご覧ください。
ChatGPTとは?
ChatGPTは、アメリカのOpenAI社が開発した、AIチャットサービスです。任意の質問や指示を入力すれば、ChatGPTに組み込まれているAIがまるで人間かのように返答してくれます。
この仕組みを利用し、文章の生成や翻訳、さらにプログラミングコードの生成など、さまざまな用途での活用が可能です。さらに、2024年5月に発表された「ChatGPT-4o」では、音声や画像データの読み込みも可能となりました。
この特徴を活かせば、ChatGPTは採用業務の効率化にも一役買ってくれます。
ChatGPTの特徴は膨大なデータを用いて素早く回答してくれること
ChatGPTの特徴は、インターネット上に存在する膨大なデータを基に、ユーザーの質問に回答してくれる点です。
回答の精度はバージョンにより異なりますが、通常版(GPT-4/ GPT-4 Turbo)では2023年までの学習データに基づいています。そのため、2023年時点でインターネット上に情報が存在しており、なおかつChatGPTが学習している題材であれば、基本的には答えてくれます。
なお、たとえインターネット上に情報があったとしても、更新されてから比較的日の浅い情報は無償版では学習していない可能性もある点や、バージョンを問わず質問の意図をくむことまでは難しいため、精度が100%ではない点にはご注意ください。
ほかにChatGPTの長所としては、自然言語処理技術を用いているため、従来のAIのような不自然な回答ではなく、人間のような自然な応答が可能である点が挙げられます。質問を入力すると、数秒というスピード感で回答を出してくれる点も大きな特徴です。
ChatGPTを採用業務に導入する5つのメリット
ChatGPTは、業務効率化の面でさまざまな企業から注目を浴びています。ここでは、ChatGPTが採用業務にもたらすメリットを紹介します。
ChatGPTを採用業務に導入する5つのメリット
●メリット①採用業務の効率化を図れる
●メリット②よくある問い合わせ対応をChatGPTに任せられる
●メリット③採用コストを削減できる
●メリット④採用プロセスを改善できる
●メリット⑤グローバル採用に対応できる
①採用業務の効率化を図れる
ChatGPTを活用すれば、履歴書・職務経歴書の確認や、それによる転職希望者の絞り込みを効率化できます。「このような条件に当てはまる転職希望者をピックアップしてほしい」と指示さえ行えば、自動的にスクリーニングを行ってくれるのです。
特に、多くの応募が集まっており、履歴書・職務経歴書の確認が滞っている企業にとっては大きなメリットとなるでしょう。
②よくある問い合わせ対応をChatGPTに任せられる
「転職希望者からの問い合わせ対応に追われて、ほかの業務を進められない…」という悩みも、ChatGPTの導入によって解決に導いてくれます。多くの転職希望者から頻繁に寄せられる一般的な質問や、既存のデータを基に回答できる質問であれば、自動応答や自動案内が可能です。
例えば、求人票に記載されている内容を学習させることで、「リモートワークは可能ですか?」「月の残業時間はどれぐらいですか?」といった、求人票に記載されている内容に答えられます。
結果、問い合わせ対応に割かれていた人的リソースを補完し、人事・採用担当者は主業務に集中できるようになります。
③採用コストを削減できる
ChatGPTを活用して採用業務を効率化すれば、採用コストの削減につながります。例えば、上記で紹介した履歴書・職務経歴書のスクリーニングや転職希望者の対応にChatGPTを用いることで、人事・採用担当者の人件費を削減できるでしょう。
また、適性検査サービスを活用して自社との相性を見極めていた場合でも、自社で活躍している社員や入社が決まった転職希望者のデータをChatGPTに蓄積することで、今後の転職希望者との相性を分析する仕組みに応用することが可能です。
これにより、適性検査サービスにかかるコストを抑えつつ、従来と同等の効果をChatGPTを通じて得ることができます。
なお、このような活用を行うには「ファインチューニング」と呼ばれるプロセスなどを別途踏む必要があります。専門的な知識・技術を要する点にはご留意ください。
(参考:『採用コストの平均相場は?コスト削減の施策や計算方法を解説』)
④採用プロセスを改善できる
ChatGPTを採用業務に取り入れるメリットとして、自社の採用プロセスを改善し、転職希望者にスピーディーに対応できる、という点も挙げられます。
上述したように、採用に関する各工程をChatGPTによって効率化すれば、従来よりも短い日数で転職希望者に対応できることが考えられます。面接案内の連絡や日程調整のレスポンスなどもスムーズに行えるでしょう。実際にChatGPTを取り入れたことで、日程調整に要していた時間の70%が削減されたケースもあります。
採用プロセスを見直すことで、転職希望者への対応スピードや透明性が向上し、結果として辞退のリスクを下げられる可能性があります。
(参考:『採用プロセスとは?作成手順と改善するためのポイント』)
⑤グローバル採用に対応できる
グローバル採用を行いたい企業にも、ChatGPTはお勧めです。ChatGPTは多言語に対応しており、素早いレスポンスが可能なので、海外の転職希望者とコミュニケーションを取りたい人事・採用担当者をサポートしてくれます。
ただし、グローバル採用の場でChatGPTが行えるのは、あくまでも翻訳のみです。実際のグローバル採用には、文化理解や在留資格に関する知識・対応など、ChatGPTだけでは補えない領域も多々あります。グローバル採用の仕組みがある程度整っている環境で、翻訳によるコミュニケーションをより素早く行いたい場合であれば、ChatGPTが役に立つでしょう。
(参考:『グローバル人材とは?定義や求められる能力、社内で育成する方法を解説』)
ChatGPTを使った採用の具体的な方法
ここからは、ChatGPTを採用活動に用いるメリットを理解するためにChatGPTを活用する具体的な方法をお伝えします。
求人広告のたたき台を作成する
ChatGPTに必要な条件を伝えれば、求人広告に掲載する原稿を作成してもらえます。例えば、「新卒採用か中途採用か」「自社の企業規模」「募集職種」「想定月収」「事業内容」などを示した上で、「求人広告のたたき台を作成してください」と指示すれば、すぐに複数の案を出してくれるでしょう。
プロンプトの例
あなたはプロの求人票作成者です。以下の条件に基づいて、転職希望者にとって魅力的に感じられる求人広告を作成してください。
職種:自社開発のMAツールの新規導入を提案する営業担当者
雇用形態:正社員
給与:月給25万円~
勤務地:東京都新宿区
求めるスキル:未経験可。BtoB商材での新規営業経験のある方、人と話すことが好きな方歓迎
勤務時間:9:00~18:00(実働8時間/休憩1時間)
その他の条件:チームの平均年齢は25歳です。研修制度が充実しているので、未経験者も多く、入社してすぐに活躍できます。
回答例

ChatGPTによって作成された、たたき台を活用すれば、一から文章をつくるわけではなく加筆や修正を加えれば良いので、スムーズに求人広告を作成できます。
(参考:『【添削例あり】応募獲得に差が出る「良い求人票の書き方」~営業職編~』)
スカウトメールの文面を作成する
企業側から転職希望者にアプローチする「ダイレクト・ソーシング」を行う場合も、ChatGPTは活躍します。「転職希望者に送るスカウトメールの文面をつくってほしい」という旨を伝えつつ、上記の求人広告の例と同様に細かな条件を入力すれば、例文が出力されます。
プロンプトの例
あなたは、自社で活躍できる人材を見つけ出し、魅力的なスカウトメールを作成するプロの人事・採用担当者です。以下の条件に基づいて、転職希望者にとって魅力的に感じられるスカウトメールの文面を、自然な日本語で作成してください。
##転職希望者の情報
氏名:山田
現職:株式会社△△ レストランホールスタッフ
経歴:株式会社△△に新卒入社し、ホールスタッフとして4年間従事
スキル:接客スキル、コミュニケーションスキル
##求人情報
職種:自社開発のMAツールの新規導入を提案する営業担当者
雇用形態:正社員
給与:月給25万円~
勤務地:東京都新宿区
求めるスキル:未経験可。BtoB商材での新規営業経験のある方、人と話すことが好きな方歓迎。
勤務時間:9:00~18:00(実働8時間/休憩1時間)
その他の条件:チームの平均年齢は25歳です。研修制度が充実しているので、未経験者も多く、入社してすぐに活躍できます。
##指示
・候補者の経歴やスキルと、求人内容がマッチしている旨を強調してください。
・メールの本文は500文字程度に収めてください。
・メールの件名も提案してください。
回答例

スカウトメールは求人広告と異なり、転職希望者一人ひとりの条件・状況に合った文面を作成しなければならないため、一から考えるとなると時間がかかるでしょう。そのような場合もChatGPTを活用すれば、大幅な効率化が実現します。
採用ペルソナを整理する
自社が採用したい人材の具体的な人物像を定義したものを「採用ペルソナ」といいます。採用ペルソナは、採用活動を効率化し、自社と転職希望者のミスマッチを防ぐために非常に重要です。
ChatGPTを活用することで、この採用ペルソナを決める作業も効率的に進められます。
「配属先の部署の人員構成」「採用する人材に求める経験」「現在の部署の課題」「それらを踏まえた上で、部署に必要な人材の性格・行動の傾向」などをChatGPTに伝え、「どのような人材を採用したら適切か、具体的なアドバイスを下さい」と指示しましょう。採用ペルソナを決めるにあたり、参考となるアイデアやヒントが得られます。
(参考:『採用ペルソナとは?設定ノウハウや手順・具体例をまとめて紹介【テンプレート付】』)
書類選考を補助する
ChatGPTに転職希望者の志望動機や自己PR文を読み込ませれば、書類選考をある程度自動化できます。結果、従来は人事・採用担当者が目視で一人ひとり行っていた作業を、ChatGPTが行ってくれることで、時間短縮につながります。
志望動機の具体性や自己PRの説得力、そして誤字脱字の有無をチェックするよう指示すれば、明らかに条件に一致しない転職希望者をフィルタリングしてくれるのです。
人事・採用担当者は、ChatGPTのチェックを通過した転職希望者の履歴書・職務経歴書のみ確認すれば良いため、これまで書類選考にかかっていた時間を削減できます。
なお、履歴書や職務経歴書の内容を全て学習させると、個人情報漏えいのリスクがありますので、設定画面から学習機能をOFFにすることを忘れないでください。
スクリーニングにChatGPTを活用する際は、あくまで志望動機や自己PR文のテキストのみを学習させるにとどめましょう。
転職希望者をスクリーニングする
ChatGPTで自動化できる選考は、書類選考だけではありません。活用によっては、転職希望者のスクリーニングも一部自動化できます。
具体的には、まず自社の社員のデータをChatGPTに学習させます。その上で、転職希望者の書類選考や面接、適性検査などの結果をChatGPTに共有すれば、自社とのマッチ度を算出できるのです。
ChatGPTは基本的に、学習データが多ければ多いほど精度が高くなります。そのため、自社の社員の情報を多く学習させられるのであればお勧めの方法です。
なお、この方法を取り入れる場合は「ファインチューニング」と呼ばれるプロセスや、外部データとの連携など、別途専門的な対応が必要となります。専門業者に作業を依頼する場合は費用が発生する点にもご留意ください。
外国人応募者に多言語で対応する
グローバルに人材を募集したい場合にも、ChatGPTが役立ちます。例えば、日本語で作成した求人広告の文面を多言語に翻訳するといった活用です。また、外国人の転職希望者から転職に関する質問などのメッセージが来た際も、ChatGPTで双方の文章を翻訳すれば、人事・採用担当者に外国語の知識がなくとも対応できます。
ただし先述の通り、「ChatGPTで対応できるのはあくまでも翻訳のみ」だという点にご留意ください。実際にグローバル採用を行うには、国ごとの文化をよく理解した上で、在留資格などの専門的な手続きにも精通している必要があります。
ツールと連携して日程調整をする
専門的な知識・技術が必要な方法となりますが、自動応答のチャットボットとカレンダーアプリをChatGPTと連携させれば、面接の日程調整を自動で行えるようになります。転職希望者の希望日程と面接官のスケジュールを照らし合わせ、会議室の空き状況を照合する…といった手間のかかる作業も、技術の力で自動化できるのです。
また工夫次第では、転職希望者への日程の通知や、直前のリマインドなども自動化が可能です。
ChatGPTを使った採用の注意点
ChatGPTは非常に便利なツールですが、万能ではありません。採用業務で活用するにあたり、押さえておきたい注意点があります。
個人情報の取り扱いに気を付ける
ChatGPTは、インターネット上のあらゆる情報とともに、世界中の利用者に入力された情報を学習しています。そのため、転職希望者の個人情報や自社の機密情報を扱う際は、ChatGPTを通じて情報漏えいが起きてしまうリスクを懸念しなければなりません。
ChatGPTを開発したOpen AIの公式サイトにも、「会話の中で機密情報を共有しないでください」と記載されています。
Please don’t share any sensitive information in your conversations.
(参照:Open AI『What is ChatGPT?』)
このような情報を扱う場合は、一部の情報をあいまいにする、あるいは最低限の情報にとどめるなど、漏えいによるリスクを最低限に抑える工夫を施しましょう。
ChatGPTの回答は正しいとは限らないので確認が必要
ChatGPTは質問や指示を入力するだけですぐに返答してくれますが、その内容が必ずしも正しいとは限りません。事実と異なる情報を回答する場合もあります。
また、書類選考やスクリーニングにChatGPTを使う場合も、同様の点に警戒しなければなりません。ChatGPTに書類選考やスクリーニングを指示した場合、特定の経歴を持つ転職希望者を優先的に評価する可能性があるのです。そのため、ChatGPTを採用に活用する場合は、ChatGPTに任せきりにするのではなく、ある程度は人事・採用担当者によるWチェックする体制で運用することが基本です。
転職希望者に正確な情報を提供できないケースもある
前述したように、ChatGPTの精度は完璧ではありません。それは、自社内での選考だけでなく、転職希望者への対応にも支障を来す可能性を意味します。
特に自動応答チャットボットなどにChatGPTを組み込んで、転職希望者の質問に答えられる仕組みをつくる場合、この点に注意しなければなりません。例えば「月の残業時間はどれぐらいですか?」「転勤はありますか?」といった、転職希望者にとって重要な質問に対してChatGPTが誤った内容を回答すると、後のトラブルに発展する可能性が考えられます。
ChatGPTは、「前提として回答の精度は高いため、一定の信頼性はあるものの、100%正しいものではない」と認識しましょう。特に、専門性の高い情報や最新情報は適切に学習できていない可能性があります。
ChatGPTの精度を高めるコツは「具体的な指示を出す」こと
回答の精度が大きな課題であるChatGPTですが、質問や指示を入力する際の記述を工夫すれば、精度をある程度上げられます。例えば、以下のコツを意識すると良いでしょう。
ChatGPTの精度を上げるコツ
コツ | 具体例 |
---|---|
ChatGPTの立場を明確にする | 「あなたは人事担当者で、求人広告を作成する必要があります。以下の情報を基に文章を作成してください」 |
箇条書きで多くの情報を提示する | ・企業名:株式会社○○ ・募集部署:営業部 ・業務内容:MAツール「△△」の新規営業 ・給与:月給25万円~ ・勤務地:東京都新宿区 ・求めるスキル:未経験可。BtoB商材での新規営業経験のある方、人と話すことが好きな方歓迎。 ・勤務時間:9:00~18:00(実働8時間/休憩1時間) |
欲しい回答の方向感を明示する | 「仕事の魅力を中心とした内容にしてください」 |
いずれの場合も、ポイントは「具体的な指示を出す」ことです。慣れないうちは、具体的な指示を出すためにかえって時間がかかってしまうかもしれません。しかし、ChatGPTを適切に活用できるようになれば、大幅な効率化がかなうでしょう。
■具体的な指示をした場合
【指示内容】
「あなたは人事担当者で、求人広告を作成する必要があります。以下の情報を基に文章を作成してください」
・企業名:株式会社○○
・募集部署:営業部
・業務内容:MAツール「△△」の新規営業
・給与:月給25万円~
・勤務地:東京都新宿区
・求めるスキル:未経験可。BtoB商材での新規営業経験のある方、人と話すことが好きな方歓迎。
・勤務時間:9:00~18:00(実働8時間/休憩1時間)
「仕事の魅力を中心とした内容にしてください」
回答例

■あいまいな指示をした場合
【指示内容】
MAツールの新規営業を募集する求人広告を作成して
回答例

ChatGPTを使えば採用業務を効率化できる!
今回は、世界で注目されている生成AIツール「ChatGPT」を採用業務に活用する方法をお伝えしました。
ChatGPTを使えば、求人広告の作成や書類選考など、これまで人的・時間的リソースを割いていた業務を効率化できます。それにより、自社の採用活動の質をさらに上げることもかなうかもしれません。
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)
そのまま入力可能!Chat GPT 採用プロンプトテンプレ ~求人票、スカウトメール、面接質問・評価 etc.~
資料をダウンロード