面接でコミュニケーション能力を見極める方法|入社意欲も見極められる評価基準と質問例
doda人事ジャーナル編集部
採用面接で「コミュニケーション能力を重視する」としている企業は少なくありません。
しかし実際には、「話し方が上手だったため高評価にしたものの、入社後に周囲との連携で苦労した」といった採用ミスマッチが生じることもあります。
コミュニケーション能力は、単に会話が得意かどうかを指すものではありません。相手の意図を理解する力、自分の考えをわかりやすく伝える力、関係者と協力して成果につなげる力など、複数の要素で構成されています。
そのため、表面的な受け答えだけで判断するのではなく、応募者の行動特性や思考プロセスまで確認することが重要です。
また、面接中のコミュニケーションを観察することで、応募者の入社意欲や企業理解の深さも把握できます。志望度が高い応募者の場合、その企業ならではの事業内容や業務内容を踏まえた具体的な回答や質問が見られることがあります。
本記事では、面接でコミュニケーション能力を見極める重要性から、具体的な評価基準、評価シート、質問例、高評価・低評価の回答例、職種別の評価ポイントまで解説します。
面接官が何を観察し、どの基準で評価すればよいのかを整理し、採用ミスマッチの防止につながる評価のポイントをご紹介します。
面接での対話を見直したい方は、応募者のタイプ別の対応法をまとめた資料もご活用ください。
なぜ面接でコミュニケーション能力の見極めが重要なのか
コミュニケーション能力は、多くの職種で業務遂行の基盤となる能力です。
ただし、求められるコミュニケーションの在り方は職種や組織によって異なります。
そのため、「話しやすい人」「感じのよい人」といった印象のみで評価するのではなく、自社の業務で必要となるコミュニケーション能力を定義したうえで判断することが大切です。
企業がコミュニケーション能力を重視する背景
現在の業務は、部署や職種をまたいだ連携を前提に進められることが一般的です。営業職は顧客や社内との調整が必要ですし、エンジニア職もプロジェクトメンバーや関係部署との協力が欠かせません。
また、リモートワークやオンライン会議の普及により、対面だけでなくテキストやオンライン上でのコミュニケーションも重要になっています。
こうした背景から企業は、専門知識や実務経験だけでなく、「周囲と協力しながら成果を出せるか」という観点でも応募者を評価しています。
コミュニケーション能力の見極めが入社後の活躍や定着に与える影響
コミュニケーション能力の見極めが不十分な場合、入社後にさまざまな課題が生じることがあります。
例えば、指示や依頼内容を正しく理解できない場合は、手戻りやミスが発生しやすくなります。また、自分の考えを適切に伝えられない場合は、チーム内で認識のずれが生じたり、お客さま対応でトラブルにつながったりすることもあります。
さらに、周囲との関係構築がうまく進まない場合、組織への適応に時間を要し、早期離職につながるケースも考えられます。
採用段階でコミュニケーション能力を確認することは、採用判断を行う際の重要な参考情報の一つになります。
ただし、面接での受け答えが上手だからといって、必ずしも入社後に高い成果を上げられるとは限りません。
例えば、面接では論理的かつ流ちょうに話せるものの、実務では周囲の意見を十分に聞かずに進めてしまうケースもあります。
一方で、面接では緊張してうまく話せなくても、入社後は関係者との信頼関係を築きながら着実に成果を上げる人もいます。
そのため、面接で確認する際は「話し方」だけでなく、「どのように周囲と協力しながら成果を出してきたか」という行動事実まで確認することが大切です。
面接でコミュニケーション能力を見極める5つの評価基準
コミュニケーション能力は抽象的な概念のため、評価基準を明確にしなければ面接官ごとの判断にばらつきが生じやすくなります。
「コミュニケーション能力が高い人」というあいまいな評価ではなく、「どのような行動が見られたら高評価とするのか」を事前に定義しておくことが大切です。
傾聴力
傾聴力とは、相手の話を正しく理解し、意図を把握する力です。面接では次のような行動から確認できます。
●質問の内容や意図に沿って回答している
●補足質問にも適切に回答している
●質問を途中で遮らず最後まで聞いている
●質問内容を踏まえて回答を調整している
質問された内容とは異なる話を長く続ける場合は、傾聴力に課題がある可能性があります。
伝達力
伝達力とは、自分の考えや経験をわかりやすく伝える力です。面接では次の点を確認すると評価しやすくなります。
●結論から話している
●理由や根拠を示している
●具体例を交えている
●話の流れに一貫性がある
話す量の多さではなく、聞き手が理解しやすい構成になっているかが重要な評価ポイントです。
調整力
調整力とは、異なる意見や立場を持つ人との間で合意形成を進める力です。
チームで意見が対立した経験や関係者との調整経験を聞くことで確認できます。
自分の意見を主張したことよりも、どのように関係者と対話し、課題を解決したのかも確認すると評価しやすくなります。
双方向性
コミュニケーションは、一方的に話すことではありません。双方向性とは、相手の反応を見ながら会話を進める力です。
例えば次のような行動が見られるかを確認します。
●面接官の追加質問に柔軟に対応している
●質問の意図を理解して回答している
●説明が長くなり過ぎないよう調整している
相手視点
相手視点とは、聞き手の知識や立場を考慮しながら伝える力です。
例えば、前職の専門用語をそのまま並べる応募者と、聞き手にもわかるよう言い換えながら説明する応募者では、後者のほうが相手視点を持っていると評価できます。
社内外のさまざまな関係者と関わる職種では、特に重視したい評価項目です。
5つの評価基準を面接官間でそろえる際は、評価軸の作り方をまとめた資料をご活用ください。
共通の質問と評価基準を使う面接手法は、下記の記事で詳しく解説しています。
(関連記事:構造化面接とは?メリット・デメリットや質問例、半構造化面接との違いを解説)
コミュニケーション能力評価シート例
コミュニケーション能力は印象評価になりやすい項目です。
面接官ごとの評価のばらつきを防ぐためにも、事前に評価シートを整備し、評価基準を統一しておきましょう。
以下は、コミュニケーション能力を評価する際に活用できる評価シートの一例です。
| 評価項目 | 1点 | 3点 | 5点 |
|---|---|---|---|
| 傾聴力 | 質問の意図を理解できず回答がずれることが多い | 質問内容におおむね回答できる | 質問意図を正確に理解し、補足質問にも的確に対応できる |
| 伝達力 | 結論がわからず話が長い | 結論と理由を説明できる | 結論→理由→具体例の順で簡潔に説明できる |
| 調整力 | 自分の意見中心で行動している | 他者の意見を考慮した経験がある | 異なる立場の関係者を整理し、合意形成した経験を説明できる |
| 双方向性 | 一方的に話す傾向がある | 質問には適切に回答できる | 面接官の反応や追加質問に応じて柔軟に説明を調整できる |
| 相手視点 | 専門用語が多く相手への配慮が見えない | 相手に合わせて説明しようとしている | 相手の知識や立場に応じて説明方法を変えられる |
評価シートには点数だけでなく、評価の根拠となる具体的な言動も記録しましょう。
<記録例>
●質問内容を確認してから回答した
●面接官の反応に応じて説明を補足した
●対立した関係者の意見を整理して、合意形成した経験を説明した
また、評価シートを作成するだけでなく、面接官ごとに評価基準のすり合わせを行うことも大切です。
例えば同じ回答であっても、ある面接官は「論理的」と評価し、別の面接官は「説明が長い」と評価する場合があります。
面接後に評価理由を確認し合う機会を設けることで、評価基準のばらつきを抑えやすくなります。
コミュニケーション能力と入社意欲を見極める質問例
質問設計によって得られる情報の質は大きく変わります。抽象的な自己評価だけではなく、これまでの行動や経験を引き出す質問を用いることで、コミュニケーション能力をより具体的に把握できます。
また、コミュニケーション能力の見極めと併せて、入社意欲も確認することが重要です。応募者の企業理解や入社後のキャリアイメージを確認することで、志望度の高さを判断する材料になります。
志望理由から入社意欲を見極める質問
当社を志望した理由を教えてください
■確認ポイント
●企業独自の特徴に触れているか
●転職理由との一貫性があるか
●自身の経験との接点があるか
■入社意欲が高い回答例
「採用支援だけでなく、入社後の定着や組織開発まで支援している点に魅力を感じました。現職で培った採用経験を生かしながら、より上流の課題解決に携わりたいと考えています」
■入社意欲が低い回答例
「事業内容に興味を持ったためです。また、自分自身が成長できそうだと思いました」
入社後の活躍イメージを確認する質問
入社後に実現したいことを教えてください
■確認ポイント
●入社後の行動イメージがあるか
●企業理解を前提に語れているか
●キャリアプランとの整合性があるか
■入社意欲が高い回答例
「まずは採用業務の理解を深め、その後は採用データ分析や採用広報にも挑戦したいと考えています」
■入社意欲が低い回答例
「まだ詳しくは考えていません」
応募者の入社意欲を高める対話も考えたい方は、タイプ別の面接コミュニケーション術をご覧ください。
面接で使える質問例をさらに探したい方は、下記の記事で確認できます。
(関連記事:採用面接で使える質問75選!人材を見極める質問例を一覧で紹介【面接質問シート付】)
コミュニケーション能力を評価する際の高評価・低評価回答例
コミュニケーション能力は、「何を話したか」だけではなく、「どのように伝えたか」にも表れます。
ここでは、面接で評価しやすい具体的な比較例をご紹介します。
質問の意図を理解している回答
■質問例
当社を志望した理由を教えてください。
■高評価回答例
「現職では法人営業として顧客の課題解決を支援しています。貴社は採用支援だけでなく、人材育成や組織課題の解決にも取り組んでおり、より上流の課題解決に携われると考え志望しました」
■評価ポイント
●質問に対して直接回答している
●企業理解が感じられる
●自身の経験と志望理由が結び付いている
■低評価回答例
「営業として成果を上げてきました。前職では表彰も受けています」
■評価ポイント
●自己PRに終始している
●志望理由への回答になっていない
●質問意図とのずれが見られる
結論からわかりやすく伝えられる回答
■質問例
これまでで最も成果につながった取り組みを教えてください。
■高評価回答例
「担当エリアの売上を前年比120%まで向上させた経験です。課題は既存顧客の利用頻度低下でした。そこでデータ分析を行い、休眠顧客への提案施策を実施した結果、利用率向上につながりました」
■評価ポイント
●結論から話している
●課題と行動が整理されている
●具体性がある
■低評価回答例
「営業活動ではさまざまな工夫をしました。お客さまとも関係構築しながら取り組んでいました」
■評価ポイント
●成果が見えにくい
●結論が不明確である
●説明が抽象的である
深掘り質問への対応で見えるコミュニケーション能力
なぜその方法を選んだのですか。
■高評価回答例
「分析の結果、新規顧客不足ではなく既存顧客の利用頻度低下が課題だとわかりました。そのため、新規開拓ではなく既存顧客への施策を優先しました」
■評価ポイント
●判断根拠を説明できている
●思考プロセスが伝わる
●回答内容に一貫性がある
■低評価回答例
「特に深く考えたわけではありません。前例があったのでその方法にしました」
■評価ポイント
●判断の背景がわからない
●主体的な思考が読み取りにくい
●深掘り質問への対応が不十分である
職種別に見るコミュニケーション能力の評価ポイント
求められるコミュニケーション能力は、すべての職種で同じではありません。
例えば営業職では顧客との信頼関係構築が求められる一方で、エンジニア職では専門的な内容を関係者へわかりやすく共有する力が重視されます。
また、管理職では組織内の調整や意思決定に関する説明責任も求められます。
そのため、全職種を同じ基準で評価すると、本来活躍が期待できる人材を見落としたり、必要な能力を十分に確認できなかったりすることがあります。職種特性に応じて重点評価項目を設定しましょう。
営業職
■重視したい項目
●傾聴力
●伝達力
●相手視点
顧客の課題を引き出し、状況に応じた提案を行えるかを重点的に確認します。
エンジニア職
■重視したい項目
●伝達力
●調整力
●双方向性
専門的な内容を非技術職にもわかりやすく説明できるかが重要な評価ポイントになります。
管理職
■重視したい項目
●傾聴力
●調整力
●相手視点
●伝達力
組織内での合意形成や部下育成の経験について、具体的な行動や成果を深掘りして確認しましょう。
面接官が見落としやすいポイント
コミュニケーション能力は、面接官の印象や価値観の影響を受けやすい評価項目です。
そのため、応募者の発言内容や行動事実ではなく、「話しやすかった」「自分と似ていた」といった主観で評価してしまうケースも少なくありません。
特に面接では、以下のようなポイントを見落としやすいため注意が必要です。
●話し方のうまさとコミュニケーション能力を同一視してしまう
●外向的な応募者を過大評価してしまう
●自分と似た価値観や経験を持つ応募者を高く評価してしまう(類似性バイアス)
●公正な採用選考を意識する
●面接で見える能力だけで判断しない
コミュニケーション能力を適切に評価するためには、こうした認知バイアスや評価の偏りにも注意が必要です。
話し方のうまさとコミュニケーション能力を混同しない
流ちょうに話せることは伝達力の一要素に過ぎません。質問の意図を正しく理解しているか、相手との対話が成立しているかまで確認することが大切です。
外向的な応募者を過大評価しない
積極的に話す応募者は好印象を持たれやすい傾向があります。
一方で、実務では傾聴力や調整力が成果につながる場面も少なくありません。発話量ではなく、対話の質に着目して評価することが重要です。
類似性バイアスに注意する
類似性バイアスとは、自分と似た価値観や経歴を持つ応募者を高く評価してしまう傾向を指します。
評価シートを活用し、発言内容や行動事実を根拠として判断することで、評価の公平性を高めやすくなります。
公正な採用選考を意識する
厚生労働省は、公正な採用選考の考え方として、応募者の適性や能力に基づく採用選考を推進しています。
本籍地や家族構成、思想・信条など、職務遂行と直接関係のない事項を評価対象としないことが重要です。
また、面接では事前に質問項目や評価基準を定め、面接官間で共有することが望ましいとされています。
(参考:公正な採用選考について|厚生労働省)
(参考:公正な採用選考をめざして|厚生労働省)
面接で見える能力だけで判断しない
面接で確認できるコミュニケーション能力と、実際の職場で発揮されるコミュニケーション能力が必ずしも一致するとは限りません。
緊張によって本来の力を発揮できない応募者もいれば、面接では上手に受け答えできても、実務環境では十分なコミュニケーションを取れないケースもあります。
そのため、1回の面接結果だけで判断するのではなく、複数回の面接や適性検査、リファレンスチェックなどもあわせて活用しながら総合的に評価することが望ましいでしょう。
まとめ
面接でコミュニケーション能力を見極める際は、「話し方がうまいかどうか」だけで判断しないことが重要です。
傾聴力、伝達力、調整力、双方向性、相手視点という5つの観点から評価することで、応募者のコミュニケーション能力をより多面的に把握しやすくなります。
また、コミュニケーション能力の確認は、入社意欲や企業理解の深さを見極める機会にもなります。回答内容だけでなく、考え方や対話の進め方にも注目しましょう。
まずは自社で求めるコミュニケーション能力を定義し、評価基準や質問項目を整理しておくことで、評価の質を高めやすくなります。
職種ごとの評価ポイントや深掘り質問を組み合わせることで、面接官による評価のばらつきを抑えやすくなります。
採用ミスマッチを減らすためには、印象ではなく行動事実に基づいて評価することが欠かせません。コミュニケーション能力を構成要素ごとに評価し、入社後の活躍につながる採用判断に役立てましょう。
面接での見極めと意欲形成を両立させるため、タイプ別の対話法をまとめた資料をご活用ください。
応募者の入社意欲を高める面接の進め方は、下記の記事で詳しく解説しています。
(関連記事:面接は「見極め」だけじゃダメ!選ばれるための「魅力付け面接」メソッド ~初級編~)
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