【事例付】女性管理職比率を上げると5つのメリットが!現状と企業の対応事項を解説

d’s JOURNAL編集部
2003年、政府が女性管理職比率を30%になるよう目標を掲げた
2020年の女性管理職比率は平均7.8%
女性管理職比率が上がると、デメリットはある?企業のメリットを紹介
メリットがあるのになぜ女性管理職比率が上がらないのか~問題と課題~
女性管理職比率を上げるために企業がすべきこと
女性管理職登用に向けた企業の取り組み事例

企業において、指導的立場にある女性人材の割合を示す「女性管理職比率」。少子化が進む日本においては、女性活躍の場を増やすことが社会的な課題です。企業には、女性が働きやすい環境を整備し、ロールモデルとなる女性管理職を増やすことが求められています。そこで、女性管理職を巡る政策や女性管理職比率の現状、今後企業に求められる施策などについてご紹介します。

2003年、政府が女性管理職比率を30%になるよう目標を掲げた

女性活躍の推進度合いを表す指標の一つとされる「女性管理職比率」(英語表記:proportion of women in managerial posts )。「女性管理職比率30%以上」の目標を掲げてから18年が経過する今、女性管理職を巡る状況はどのように変化しているのでしょうか。

女性管理職を巡るこれまでの政策

1999年に「男女共同参画基本法 」が施行され、政府は2003年にこの法律に基づき、「2020年までに、社会のあらゆる分野において指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」との、いわゆる「2020年30%」目標を設定しました。企業も女性管理職登用を進めてきましたが 、目標達成への道は険しく、2015年12月に閣議決定した「第4次男女共同参画基本計画 」においては、30%という水準の実現に向けて「将来指導的地位に成長していく人材を着実に増やす」ように 注力していくことになりました。
(参考:内閣府『第5次男女共同参画基本計画』16P)

「女性活躍推進法」成立により、企業における女性活躍の環境整備が義務付けへ

そうした中、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、女性活躍推進法)」が2015年に成立し、2016年4月に施行。女性活躍推進法は、働きたい女性が活躍できる労働環境の整備を企業に義務付ける法律です。これにより、常時雇用する従業員が301人以上の大企業を中心に、「自社の女性活躍に関する状況把握・課題分析」「課題を解決するための数値目標と取り組みを盛り込んだ、行動計画の策定および届け出」「自社の女性活躍に関する情報の公表」といった対応が求められるようになりました。

同法は2019年(令和元年)に改正され、女性活躍における取り組みがさらに強化されています。「従業員規模101人以上300人以下」の企業についても、上に示した施策を行うことが義務化されたのです。
(参考:『女性活躍推進法、企業が取るべき対応とは。5つの対応で企業に大きなメリットも』)

女性管理職比率向上はなぜ必要?求められる背景

女性管理職比率の向上が求められる大きな要因の一つは、少子高齢化に伴う労働人口の減少です。企業の生産性を上げていくためには、女性が活躍の場を広げ、労働力人口を増やすことが不可欠とされています。

日本は、女性の進学率・就労率が高いにもかかわらず、非正規社員率が高く、指導的立場に就く女性は少ないのが現状です。妊娠や出産などのライフステージの変化により、潜在能力を十分に発揮できない女性は多くいると考えられます。女性が能力を発揮できる場を増やしていくことは、減少を続ける労働力人口に歯止めを掛けることにもつながります。これらの理由からも、女性管理職の比率を向上させることが求められています。

2020年の女性管理職比率は平均7.8%

帝国データバンクが全国2万3,680社(有効回答企業数1万1,732社)を対象に、2020年7月に実施した『女性登用に対する企業の意識調査(2020年)』によると、2020年における「女性管理職(課長相当職以上)比率」は全国平均で7.8%でした。政府の掲げる「30%」の目標を達成している企業は7.5%にとどまっています。最も多かった回答は「女性管理職が0%(全員男性)」で46.9%。次いで、「10%未満」の企業が30.3%でした。この結果から、管理職に占める女性の割合が1割に満たない企業が、全体の8割弱であることがわかります。

女性管理職(課長相当職以上)比率

(参考:帝国データバンク『女性登用に対する企業の意識調査(2020年)』)

規模・従業員数・業界別

「規模・従業員数・業界」別に女性管理職割合の平均値を2019年と2020年で比較したデータによると、「規模別」では、女性管理職の割合が最も多いのは「小規模企業」の10.5%(前年比±0ポイント)。以下「中小企業」が8.3%(前年比+0.1ポイント)、「大企業」が5.4%(前年比-0.1ポイント)と続きました。小規模企業では、大企業に比べ、女性管理職の割合が高くなっています。

「業界別」では「小売(12.8%)」「不動産(12.2%)」「サービス(11.5%)」、「金融(11.2%)」では10%超という結果に。一方で、「製造業(6.3%)」「運輸・倉庫(5.4%)」「建設業(4.3%)」などの業界では、前述の女性管理職の割合が高い業界の半数以下となっており、業界によってばらつきがあることがわかります。

女性管理職割合の平均

(参考:帝国データバンク『女性登用に対する企業の意識調査(2020年)』)

女性管理職比率の推移

内閣府が2018年に発表した『男女共同参画白書平成30年版』によると、民間企業における女性役職者は、1989年 から2017年にかけ、「部長級」は1.3%から6.3%へ、「課長級」は2%から10.9%へ、「係長級」は4.6%から18.4%へとそれぞれ増加。しかし、女性比率が最も高い係長級でも18.4%と2割を割り込んでいます。2017年以降も女性の管理職比率は増加傾向にあると考えられますが、政府が期待するほどには増えていないのが現状といえるでしょう。

階級別役職者に占める女性の割合の推移

(参考:内閣府『男女共同参画白書平成30年度版 階級別役職者に占める女性の割合の推移』)

海外における女性管理職比率

2020年3月の経済財政諮問会議に提出された資料によると、就業者に占める女性の割合は、4割弱から5割弱となっており、どの国においても同様の傾向が見られます。一方、女性の管理的職業従事者の割合を見ると、最も高いフィリピンでは52.7%、次いでアメリカ(米国)が40.7%、スウェーデンが38.6%などとなっています。一方、日本は14.8%、韓国は14.5%と一段と低く、二極化の状況がうかがえます。

海外における女性管理職比率

(参考:『資料8 女性活躍の加速に向けて(橋本臨時議員提出資料)』)
(参考:内閣府『第5次男女共同参画基本計画』)

女性管理職比率が上がると、デメリットはある?企業のメリットを紹介

女性管理職比率を上げることによる、企業にとってのメリットは、デメリットを大きく上回るとされています。女性管理職比率向上による、企業のメリットをご紹介します。

メリット①人事評価の透明性が高まり、社員のモチベーションが向上する

性別に関係なく行われる適正な評価により、女性の管理職を増やしていくことは、社内の人事評価の公平性や透明性を高めます。「誰もが努力に応じた評価を得られる」と従業員の意識が変わることで、仕事に対するモチベーション向上にもつながるでしょう。

メリット②ダイバーシティの意識が高まり、多様な働き方が促進される

企業内で女性が活躍することで、多様性を受け入れるダイバーシティの考え方が浸透。性別や年齢、国籍などに関係なく、さまざまな視点を持つ人材が活躍できる企業風土の醸成につながります。社員同士がそれぞれに異なる他者を受け入れ、多様な発想や価値観を活かし合いながら働くことで、生産性や企業価値の向上などにつながるでしょう 。
(参考:『ダイバーシティーとは何をすること?意味と推進方法-企業の取り組み事例を交えて解説-』)

メリット③労働環境が改善される

企業の中で女性が活躍するためには、テレワークや産休・育休制度など、さまざまな制度を整備する必要があります。女性だけでなく、ライフステージやライフスタイルに応じて誰もが利用できる制度を設けることにより、全社員の労働環境の改善にもつながります。

メリット④社会的評価の向上や、優秀な人材の採用につながる

女性管理職比率や女性活躍に向けた取り組み内容の公表は、「人材活用に前向きである」という企業イメージの向上につながります。その結果、優秀な人材を獲得しやすくなる効果も期待できるでしょう。実際、「ダイバーシティ経営企業100選 」に選ばれたことで社会的認知度が向上し、小規模な企業に多数の応募が来たという事例もあります。

メリット⑤ESG投資で投資家から選ばれやすい企業になる

昨今の資本市場では、ESG(環境・社会・ガバナンス)を投資判断に組み込み、長期的な投資リターンの向上を目指す「ESG投資」が、世界的に拡大しています。その中では、「企業における女性の活躍状況」も一つの判断材料とされます。実際に、内閣府が発表した『ジェンダー投資に関する調査研究 報告書』を見てみると、「投資や業務において活用する、女性活躍情報」として7割以上が「女性管理職比率」を挙げています。女性が管理的地位で活躍することは社外からの評価基準の一つとなり、グローバル規模での持続的な競争力につながると考えられます。

投資や業務において活用する女性活躍情報

(参考:内閣府『ジェンダー投資に関する調査研究 報告書』、『投資において企業の女性活躍情報が注目されています!』)
(参考:『【5分でわかる】ESG・ESG投資とは?ー選ばれる企業になるために必要な経営戦略ー』)

メリットがあるのになぜ女性管理職比率が上がらないのか~問題と課題~

さまざまなメリットがあるにもかかわらず、女性管理職比率が上がらないのはなぜなのでしょうか。その要因について、解説していきます。

下のグラフは、厚生労働省による『女性活躍推進に関する調査報告書』を基にした、「女性の活躍推進における課題」の調査結果です。企業規模を問わず、「女性社員の管理職を目指す意欲を高めることが難しい」「両立支援制度利用者の代替要員確保やサポート体制づくりが難しい」「取り組み内容や計画を検討するための体制整備や担当者の時間確保が難しい」などといった回答が多くありました。この結果から、「女性自身が管理職になりたがらない」「家庭生活と仕事の両立を支える各制度の利用者をサポートする、体制整備に課題がある」といったことが、女性管理職比率が思うように上がらない要因と考えられます。加えて、そもそもこれらの施策を整備するための人員が不足しているということも、一つの要因と言えるでしょう。

女性の活躍推進における課題

(参考:厚生労働省『女性活躍推進に関する調査報告書』)

女性管理職比率が伸びない要因として、この他にも、「企業の雇用における女性比率と年功序列型の昇進制度」の問題が挙げられます。そもそも、管理職に採用される可能性のある職種の採用において、元々女性の割合が低ければ、内部昇進を前提とする限り、女性管理職の比率は上がらないでしょう。

また、男性を含めた「産休・育休制度」が十分に整備されていないことや、核家族化が進む日本において、保育園など子どもの預け先を十分に確保できていないことなども要因と考えられます。

女性管理職比率を上げるために企業がすべきこと

女性管理職を増やすために、企業にはどのようなことが求められるのでしょうか。

ワークライフバランスのサポート

女性が継続的に就業できるよう、ワークライフバランスを支援していくことが重要です。女性自身と配偶者側の両面からの支援策により、仕事と家庭生活の両立を企業が促していくことが求められます。それぞれについて見ていきましょう。

育児・介護休業やテレワーク制度など、キャリアを途絶えさせない制度の整備・促進

出産・育児や介護などによりライフステージが変化しても、女性が就業を継続させられるよう、実態に即した形で産休・育休制度を充実させましょう。「転勤を伴わない雇用」や「時短勤務」、「テレワーク」といった制度の活用により、働き方の選択肢を増やすことも重要です。

男性の育児参加推進

女性自身に対する就業継続支援だけでなく、配偶者である男性側の育児参加に対するサポートを行っていくことも重要です。2021年6月には、「育児・介護休業法」が改正されました。これにより、男性の育児参加を促すため、配偶者の出産直後の時期に休業の取得を促進することが企業にも求められるようになります。
(参考:厚生労働省『育児・介護休業法について』)

昇進・昇格基準および人事評価の明確化

従業員によっては、「女性は管理職に向かない」と考える人もいるかもしれません。人事制度の見直しを行い、経営層や男性社員、当事者である女性社員本人のそうした潜在的な意識を変革していきましょう。性別にかかわらず平等に評価できるよう、社員の能力・勤務態度・実績などによる「定性評価」と、設定した目標に対する達成度による「定量評価」を利用し、人事評価の透明性を高めている事例もあります。一人一人の社員を公正に評価・処遇する人事制度を整備することが、女性活躍にもつながるでしょう。
(参考:厚生労働省『3.登用(女性管理職の増加)』 )

上司や経営層の意識変容

上司や経営層の意識変革を促すことも必要です。企業によっては、同じ職種で採用しても、「初任配属先」や「仕事の与えられ方」などが男女で異なる所もあります。これは、「結婚・出産後は家事・育児に専念することが女性にとっての幸せ」「出産を経て復職した女性は大変だから責任ある仕事は任せない」といった、潜在的なジェンダーバイアスを反映したものかもしれません。女性のキャリアにおいて、過度な配慮をせずに男性と同様の目標を設定し、女性自身が自らの仕事に「有意味感」や「社会へのインパクト 」を感じられることが、女性の意識を変容することにもつながるでしょう。

研修と育成など、キャリア開発施策の実施

実質的に女性が管理職候補としてのキャリア開発の対象外であった場合は、マネジメント研修など、女性管理職を育成するキャリア開発施策も効果的でしょう。主な施策には、以下のようなものが考えられます。

・管理職に必要な知識・スキルとして、これまでの階層別研修の要点や自社製品・サービスの特性に関する研修
・リーダーシップやマネジメントに関する外部講習への参加促進
・女性社員に対する階層別、職種別、課題別の研修プログラムと個別の育成計画の継続的実行
・女性社員を対象とした、会社の経営理念、経営方針、事業計画などに関する研修

ロールモデルとなる人材育成と普及

女性自身が管理職になりたがらない背景には、「ロールモデルの不在」という問題もあります。ロールモデルが示されることで、女性にとってその先のキャリアを検討していく判断材料となり、管理職に対して前向きな姿勢を示す女性は増えるでしょう。管理職に対する前向きなイメージや姿勢を持てるように、モデルとなる女性の人物像をきちんと設定し、育成していくことが重要です。

女性管理職登用に向けた企業の取り組み事例

女性活躍に積極的な企業 では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

事例①:ママさんMRの採用に取り組む、サイネオス・ヘルス・コマーシャル株式会社

医薬品販売受託業務を展開するサイネオス・ヘルス・コマーシャル株式会社では、働き方や就業場所を制限せずに活躍できる「リモートMR」を育成しています。これは、「MR女性の9割がライフイベント後も働き続けたいと考えているものの、現実としてはかなえられていない」「離職する最大の理由は、配偶者の転勤」といった女性MRを取り巻く課題に応えたものです。加えて、出産や夫の転勤などを機に一旦は離職したMR資格を持つ女性の中途採用も積極的に実施。働き方や勤務地に制限のあるワーキングマザーMRや、離職によりブランクのある元MRなどのために支援環境を整備しています。男性優位の風土が根強いMR業界で、独自の研修制度による「育成環境の整備」や、女性のキャリアアップを支援する「ダイバーシティ・プロジェクト」施策を実施し、女性の持続的成長をバックアップする環境づくりを推進しているそうです。

(参考:『働き方改革で一番成長できるのはワーキングマザー。その理由とは―』)

事例②:「誰もが働きやすい環境とは何か」を問い続けるケイアイスター不動産株式会社

地域密着型の総合不動産企業であるケイアイスター不動産株式会社では、会社が急成長期間に入り、組織規模が大きくなるにつれ「多様な働き方を実現できる会社にしたい」「老若男女問わず、どのライフステージでも生き生きと働ける環境を整えたい」といった声が上がるように。会社全体で改革を進めた結果、「在宅勤務制度」「時差勤務制度」など、さまざまな制度が生まれました。さらに、法人向け業務を拡大させたことで就業スタイルが変化し、女性が活躍の幅を拡大。2017年の「ダイバーシティ推進室」設立以降、さらに「働きやすい環境とは何か」を追求した結果、女性現場監督数は4倍に、女性管理職の割合は17倍にも増えたそうです。

同社では、「女性ならではの視点」からのプロジェクトなど、業界での女性活躍推進とその啓蒙・認知拡大を目的とした活動「K女ミライプロジェクト」を推進。人材採用においても、「働きやすい会社」と業界内外へアピールしたことで、女性の施行監督者が増え、さらに女性が活躍しやすい土壌が醸成されたそうです。

(参考:『「私たち、土地買い女子」――など、数々のネーミングと人材を生み出すKEIAI。”日本一憧れの会社”を目指して』)

女性管理職が多い企業ランキング

東洋経済新報社が『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)2020年版』で発表したデータによると、2019年時点で女性管理職が多い業界は「保険」「サービス」「銀行」「小売」などで、少ない業界は「パルプ・紙」「金属製品」「鉄鋼」「輸送用機器」などとなっています。

最も女性管理職が多い企業のランキングを見ると、1位は料理スタジオを展開する「ABC Cooking Studio」(97.9%)、2位は化粧品メーカーの「シーボン」(87.5%)、3位は美容系サロンを展開する「ミュゼプラチナム」(83.5%)などとなりました。いずれも女性をターゲットとした商品やサービスを展開する企業が上位にランクしており、各社とも女性が働きやすいようさまざまな施策を展開していることなどが、女性管理職の比率を高める一つの要因となっていると言えるでしょう。

まとめ

2020年時点での女性管理職の割合は1割と、政府が掲げた「2020年30%」を大きく下回るのが現状です。他方で、女性管理職を増やすことで「優秀な人材の採用・定着」「労働環境の改善」など、性別にかかわらず誰もがさまざまなメリットを得られることがわかっています。ワークライフバランスを支える制度や人事制度改革などを進めることで女性管理職比率向上に取り組み、企業としての持続的発展につなげてみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)