【すぐ身に付く】ハイクラス人材を見極め、入社してもらうための「採用面接」テクニックを学ぶ

d’s JOURNAL編集部

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これまで2回にわたり、ハイクラス人材(※)について、同サービスに携わる専門家2人への取材をもとに解説してきました。3回目のテーマは「採用面接」です。「若手よりもハイクラス人材は面接に対する意識が高い」と言われています。では、ハイクラス人材からはどのような質問が多いのか。逆に、どのような質問を投げれば、採用候補者の本質を見極めることができるのでしょうか。今回は、ハイクラス人材の面接におけるポイント、そして自社に合った人材の見極め方を解説します。

(※)ハイクラス人材とは…概ね年収600万円以上のステージで活躍する人材のことを指します

求人票では書ききれないビジョンやプロジェクトの背景や詳細を伝える

これまでの取材を通じて、ハイクラス人材には企業の「VISION・MISSION・VALUE」ならびに、具体的に入社してからどのような業務を、どのポジションで行ってもらうのか。つまり、ジョブディスクリプションの提示が重要だと、繰り返し説明してきました。具体的には以下のような内容です。

・経営理念・ビジョン
・企業風土・制度・待遇
・解決してもらいたい課題や達成したい(してもらいたい)計画についての詳細
・関わる予定の定常業務・プロジェクトの詳細(人数・予算・権限など)

ただし、このような項目は求人票にも記載していることでもあり、ここからさらに一歩踏み込むことが、ハイクラス人材の採用面接ではポイントになってきます。たとえば、なぜその定常業務やプロジェクトの遂行が必要なのか、なぜ取り組もうとしているかの背景や意図を明らかにすることです。また、定常業務やプロジェクトを推進する上で、関わるステークホルダーや部下は、どのようなタイプのメンバーから構成されているのかなどを、詳しく説明することも効果的とされています。

さらに、会社全体における組織の役割、所属予定の部署やプロジェクト・ミッションの位置づけや重要度はどのようなものか。求人票に記載されていたジョブディスクリプションやプロジェクトにおける裁量、達成した際の評価方法などを伝えることで、採用候補者の転職意欲が高まることも覚えておくと良いでしょう。

具体的な事例を聞くことで採用候補者のキャリアや資質の本質を見抜く

ハイクラス採用では、次のポイントが非常に重要視されます。採用候補者の資質が本物なのかどうか。会社に入社した際、実際に任せた業務・プロジェクトを成功に導くだけのスキルを兼ね備えているのか。あるいは、自社にフィットするかどうか――。それは、このようなアプローチで探っていきます。

ハイクラス人材の場合、いわゆる経験を十分に積んだ方や、高い専門能力を持つ方が大半です。職務経歴書の実績欄にも、これまでに携わったプロジェクトや成果がずらりと記載されていることでしょう。ただし、このようなドキュメントの情報をそのまま鵜呑みにするのは少しリスクがあります

というのも、採用候補者が、実際はチームに属していただけであったり、それほど業務・プロジェクトに貢献していなかったなどのケースがあるからです。

「業務・プロジェクトの成果を聞くのではなく、本人がどのようなアプローチを行い、どんなプロセスで成果につなげたのかを確認してみましょう。中心メンバーとして、自主的に携わっていたかが判断できるような質問を多く投げかけてみると、何か見えてくるものがあるはずです」(影山氏)

困難にぶつかったときの対応を聞くことでも、その人物が、本当に求めるスキルや経験を有している人材かどうかを判断することもできます。

ただし、具体的なエピソードを交えながら答えてもらえれば正解ですが、求めるスキルが乏しい方の場合、他人や周囲の環境、会社などといった外部要因に責任転嫁して、自分のスキルや経験については言及しないといったケースもあるので、その点は注意が必要です。

「また、協調性・社交性について面接で確認する場合は、『新しい組織や環境に変わったときのアプローチや進め方』について聞くことをお勧めします。関係者や部下と関係性を築き、チームで仕事をする重要性を理解している。その上で協調や融和の心を持って行動しているかなど、すべてを自分一人で進めようとしていないか確認することが大事です。なぜならハイクラス人材の中には、スーパーマン志向の、人に頼らないで自分一人ですべて完結できると考えている方が少なからずいるからです。

ですから、豊富な経験やキャリアを持ちながらも、改めてゼロマインドでやろうという姿勢や、チームワークを大事にする姿勢などを持っている方かどうかを確認することは、今後配属されるであろう部署やチームのパフォーマンスにも大きく影響しますので、特に見極めてほしいポイントと言えます」(入江氏)

また、特定業界のキャリアが長い方の場合も注意が必要です。同じ業界であったとしても、個社のカルチャーが異なっていたために、ハイクラス人材が持っている能力を発揮できず、その後の活躍が芳しくなかったといった事例も散見されます。

さらに、ビジネスシーンにおいて、急激な変化を求められたときの対応を聞くのもまたポイントです。変化にどれだけ対応できるのか、「変化対応性」を測るわけです。

これらは採用候補者に、具体的なエピソードを交えて、自身の経験をお話しいただくと良いです。語られるエピソードの中から、自社が求める経験やスキルにマッチしているかを判断してみましょう。

エントリーシートには記載されていない“本音”を、雑談から引き出す

「スキルアップ・キャリアアップしたい――」

多くのエントリーシートの志望動機で書かれている文言です。しかし、キャリアアップ・スキルアップを転職理由にしていても、実際にはキャリアップ・スキルアップの目的以外にも何かしらの理由があり、転職活動をされている方がほとんどです。そのため、求職者の本音を探ることが大切です。

「現状に不満があり、いま働いている職場を辞めたい。あるいは単に漠然といまの会社を辞めたい。けれども特に転職理由が見当たらない。そういった方が、キャリアアップやスキルアップを転職理由に使うケースも少なくなりません。ですから、慎重に採用候補者の本音を探っていく必要があります」(影山氏)

たとえば、残業があまりに多いので転職したいと、採用候補者が発言したとします。もしそこで、自社も残業が多い場合には、当然ですがカルチャーはフィットしません。しかし、スキルを見るとどうしても欲しい人材だった。

そのような場合は一歩踏み込んで、その人の本音、本人も気づいていない深層心理にある、転職の本当の理由を探っていきます

そして「当社も残業は多いですが、残業手当はきちんと支払っています」と伝えたとき、ポジティブな反応であれば、本当の転職理由は残業の多さではなく、正当な対価が支払われない会社の制度や文化、あるいは給与が安いことが理由だと考えられます。

特に「残業」「人間関係」などのキーワードは、現状と採用候補者が求める環境を、具体的に把握することが大切です。本音を隠しているわけではありませんが、ビジネスパーソンとして建前があるのは一般的なことですから、あえて口には出さない話題は決して少なくないでしょう。

そこで雑談などを通じて、採用候補者をプロファイリングしていきます。本音を引き出した上で、改めて自社にフィットするかどうか、面接を通じて判断することが求められます。

採用候補者の要望に応えられる担当者をアサインする

ハイクラス人材の面接では、直属の上司や所属予定部署の責任者。あるいはそれほど規模の大きくない企業であれば、経営者が臨む場合が一般的だと思います。しかし面接担当者のアサインにおいて、より良い採用を実現するには、その配慮が必要です。

ポイントは、採用候補者が聞きたいと考えられる質問に対して、明確に応えることのできる人材をアサインすることです。

「たとえば、立ち上げ予定の部門を任せるハイクラス人材の面接であれば、その部門を立ち上げることを決めたトップを――。部門を拡大させるフェーズであれば、現在の部門長を。特に、2次面接以降は、応募者が次の面接で何を聞きたいのかを事前にヒアリングし、その質問に正確に答えることができる、可能であれば実際に業務に携わっている人物をアサインするのがベストです」(影山氏)

優秀なハイクラス人材ほど、求人票に載っている内容の確認や、エージェントに聞いて回答が得られるような質問ではなく、現場でプロジェクトに携わっているメンバーしか知り得ない、詳細情報やいわゆる“生の声”を知りたがる傾向にあります。その要望にできる限り応えることが採用成功のカギと言えそうです。

イメージとしては、冒頭で記載した質問内容に準じたアサインです。ビジョンや理念、今後の展望など上流の質問に対しては、経営層クラスを。加えて、業務・プロジェクトの詳細を話せる、現場メンバーといった構成で臨むのがいいでしょう。

たとえば、IT企業やスタートアップなどの一部や、採用ノウハウを積み上げている企業では、流動的な面接担当者のアサインが行われている傾向にあります。一方で、内定が決まった後に、応募者の質問に答えられるメンバーとの時間を設けている企業も少なくありません。

ハイクラス人材の採用が活発化している昨今、旧態依然の採用フローでは、せっかくの優秀な人材を逃してしまう可能性があります。面接内容はもちろん、フローやアサインについても、改めて考える必要があるのではないでしょうか。

【まとめ】

ハイクラス人材の面接においては、大きく3つのポイントに分けられることができます。1つめは、求人票では書ききれないビジョンやプロジェクトの背景や詳細を面接の場で改めて伝えること。2つめは、具体的な事例を聞くことで採用広報者のキャリアや資質の本質を見抜くこと。その際は、一歩踏み込んだ投げかけをすることで一聞・一見しただけではわかりづらい、採用候補者の本音を引き出すことも重要です。そして3つめは、採用候補者の要望に応えられる担当者を、面接や内定といった各フェーズごとで柔軟にアサインすること。これら3つのテクニックがハイクラス採用では活きてきます。まずは対話を深めることを意識して、面接に臨んでみることをお勧めします。

取材・文/鈴政武尊、杉山忠義、編集/鈴政武尊

>>>前回の記事「採用を成功に導くポイントは「採用基準」と「求人票作成」の工夫」は、こちらから

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