【ハイキャリア人材を受け入れたい】採用を成功に導くポイントは「採用基準」と「求人票作成」の工夫

d’s JOURNAL編集部

取材・データ提供協力::
パーソルキャリア株式会社 エグゼクティブ&ハイキャリア事業部
影山大輔、入江泰介

【採用基準編01】スキルの有無よりもミッションを実現する能力があるかどうか
【採用基準編02】採用が進まない場合は“市場感”を確認する
【求人票編01】ハード面の条件を記載すればするほど機会損失の可能性が高まる
【求人票編02】求職者に対して具体的な魅力や成果を記載する

前回の記事では、改めてハイキャリア人材とはどのような人材なのか。具体的に、どのような業務を担うのか。いわゆる従来のメンバーシップ型人材とは具体的に、どのような業務を担うのか。いわゆる従来のメンバーシップ型人材とは何が異なるのか。そもそもなぜ今、ハイキャリア人材が求められているのか――。

社会的背景や企業の状況、転職市場のトレンドなどに触れながら、ハイキャリア人材の採用における重要なポイントを紹介しました。

ちなみにハイキャリア人材の定義を、本稿では 年収650万円以上から1,000万円以下のステージで、現在活躍する人材のことを指すものとします。

今回は、採用活動の「採用要件の策定・求人票作成」に注目。 どのような採用基準を設け、どんな応募要件を求人票や求人広告に記載すればよいのか。ハイキャリア人材サービスに携わる専門家への取材をもとに解説します。


【採用基準編01】スキルの有無よりもミッションを実現する能力があるかどうか

ハイキャリア人材に限ったことではありませんが、企業が採用を考えた際、まずすべきことは、どのような人材が欲しいのかを考えること。人材要件や採用基準を明確にすることです。

具体的には、これまでの経験や各種資格といったハード面や、その人の志向性や性格といったソフト面の要素、その人物の人柄や仕事の進め方が、自社にフィットするかどうか、などです。そして大切なことは、このような採用基準を会社全体で統一・共有すること。そうすることで、明確に欲しい人材の採用が実現していきます。

では、ハイキャリア人材を採用したい場合には、具体的にどのような点に注意しながら、採用基準を設ければよいのか。パーソルキャリア株式会社エグゼクティブ&ハイキャリア事業部の影山大輔氏、入江泰介氏は次のように説明します。

「若手人材、メンバーシップ型の採用の場合には、どのような業務をお願いするのかや、どんな課題を解決してもらいたいのかなど、いわゆるタスク解決型の採用が多いため、 その課題を解決できる経験やスキルを具体的に定義することが、採用基準になります」(影山氏)

「一方、ハイキャリア人材の場合には、求める役割や業務内容のレベルが高くなりますので、中期経営計画にもとづく目標やミッションを実行できるかが重要になります。 そのため人材要件としては、スキルセットの有無ではなく、自らのスタイルを持ち、能動的に実行し、ミッションや目的をクリアできることが採用基準となります」(入江氏)

「陸上競技で例えると分かりやすいです。100mを11秒で走ることのできる人材が欲しい。このような採用基準はメンバーシップ型。一方、12秒で走っている選手を11秒台で走れるように育てる、マネジメントできる人材がハイキャリア人材となります。

つまり、ハイキャリア人材の場合を採用基準に落とし込むと、目標は『11秒台で走れるように育てること』ですので、その目標達成のための手段は拘り過ぎなくてもよいのです。

フォームの指導が上手、メンタルコントロールに優れている、栄養学も含めトレーニング全般の指導がうまいなど、手段は特に指定せず、あくまで結果として目標やミッションを達成できる能力を有した人材となります」(影山氏)

本来であれば、メンバーシップ型の採用基準を設ける際にも、ミッションを重視した方が良いそうです。ただし、メンバーシップ型の場合にはタスクベースで採用基準を設けても成果が出ることから、現状では経験・スキル重視となっている、とのことでした。

逆に、ハイキャリア人材の場合は、メンバーシップ型のように細かく経験・スキルを採用基準に設けることはよくありません。後述で詳しく紹介しますが、採用の機会損失につながるリスクがあるからです。

つまりハイキャリア人材の採用基準はいい意味でふわっと、大枠で。あくまでミッションや目的を達成できる能力を備えた人材とする。このような採用基準にするといいでしょう。そして改めて面接時に、ミッションを達成できる人物であるか、そのポテンシャルを備えているかどうかを、見極めます。

一方で、ハイキャリア人材における採用基準の失敗例についても紹介します。

例えば、前任者のスキルセットをそのまま採用基準に設定してしまい、機会損失になっている場合があります。特にその人物がいわゆるスーパーマンだった場合、当然採用ハードルは一気に高くなります。前述した通り、ミッションや目的を達成するための手段である経験・スキルには拘りすぎないようにしましょう。

ハイキャリア人材の採用基準を設ける際には、重視しておきたいポイントです。


【採用基準編02】採用が進まない場合は“市場感”を確認する

採用基準を設けて、実際にハイキャリア人材の採用をスタートした。けれども、いつまで経っても応募数が少ない場合には、改めて、採用基準を見直す必要があります。

そしてその際に注目すべき指標が「市場感」です。世間一般とのズレ、とも説明できます。

まずチェックすべき指標は、給与です。「明確なミッションは掲げた、けれども中小企業のため、そこまで給与は出せない。しかし採用市場を見ると乖離しており、その会社が求めているハイキャリア人材の給与平均は、その会社の社長の給与よりも上だった」といったケースなどがあるようです。

給与ギャップでは、次のようなケースも多く見られるそうです。先と同じく、「会社の規模はそれほど大きくない。正直、業績もそれほどよくない。けれども、とにかくすべての業務を任せる、自由にやっていい。だから何としてでもミッションを遂行してほしい。ただ申し訳ないが、給与はそこまで出せない」――、といったケース。

結論から言えば、どんなにミッションが魅力的でやりがいがありそうであったり、仕事の自由度が高くても、それを打ち出しただけでは、ハイキャリア人材からの応募はまずないそうです。

なぜなら、ハイキャリア人材からすると「やりがい搾取」的に映ること。ハイキャリア人材の多くは成果に対する正当な対価を重視するため、特に、昨今のマーケットで人気の高いDX関連のハイキャリア人材の採用では、このような失敗例が多く見られるそうです。

一方で、給与以外の市場感のズレもあります。先のスーパーマン人材などです。

社内にスーパーマンがいる、あるいは以前にいたような企業の場合は、ミッションや目的を達成するためには、そのスーパーマンと同等のレベルの人材ではないと難しい、と固執しているケースが多く見られます。そのため、本来であれば他の人材でも達成できるかもしれない。あるいは、別の方法で実現する可能性があるのに、そちらに目を向けようとしません」(入江氏)

「1人のスーパーマンではなく、技術のスペシャリストとマネジメント2人を採用する、といった基準に変えることで、ミッションが達成できる場合もあるからです。あるいは採用するのではなく、外部のコンサルタントなどに業務を委託する、といった施策で対応できる場合もあります。いずれにせよ大切なのは、ミッションや目的をいかに達成できるか、という点です」(影山氏)

一方、時間軸を意識することも重要であるといいます。例えば、社内でDXを推進することになった。DXの専門家、それもリーダーとして引っ張ってくれるハイキャリア人材を雇いたい。しかし、あまりにもミッションが漠然としていると、そもそも求職者が何を達成すべきかが分からず、結果として応募につながりません。

何をいつまでに、どのような状態にしたいのかなどが明確になっていないため、求職者側としても、具体的な仕事や求められていることがイメージできないからです。

このようなケースでは、まずは「基幹システムを整地する」といったような1年以内で達成できるような具体的な目標に落とし込み、その上で応募をかける、といった工夫が必要です。

いずれにせよ、求人は出しているのになかなか応募が集まらない場合は、外に目を向け、市場感を知ることが解決のヒントとなります。


【求人票編01】ハード面の条件を記載すればするほど機会損失の可能性が高まる

ここからは、求人票の作成ならびに面接など、採用を進める上でのポイントについて解説していきます。基本的には、先述してきた採用基準を言語化し、求人票や求人広告に落とし込みます。

まずは、最も重要なミッションは必ず記述します。そして先に少し触れたように、いわゆるスキルセット、特にハード面の条件についてはハイキャリア人材の場合は、なるべく記載しないようにしましょう。ハード面の条件を記載すればするほど、応募者の母数が減るリスク、本来であればミッションを達成できた人物が応募しない、との機会損失につながるケースがあるからです。

「求職者の心情として、記載されている要件を自分がひとつでも満たしていないと応募を控えるといった、減点法的な傾向があります。そのため多くのハード面の条件を記載することは、機会損失を生むデメリットになります」(影山氏)

もちろん、現場で手を動かすエンジニア採用などの場合には、プログラミング言語などの技術スタックならびに、同技術に長けているかどうかなど、ハード面の条件を記載することは大切ですが、ハイキャリア人材に関しては、マイナスにもなりうるということを認識しておきましょう。


【求人票編02】求職者に対して具体的な魅力や成果を記載する

もうひとつ大事なのが、求職者がその企業で働く魅力や得られる成果について記述することです。

先の陸上競技で例えるならば、メンタルコントロールについてアカデミックな機関と連携しており、同機関の大学教授とやり取りする機会がある。あるいは、栄養学の視点からアプローチする方に対しては、大手健康食品メーカーと協業しているので、同ノウハウが手に入る、といった内容です。

大学や企業名を直接記載するのが難しい場合は、あくまでニュアンスを記載し、面接段階で具体的な内容を伝えます。

上記は陸上競技を例えとしてご紹介しましたが、一般的な具体例で言いますと、資格取得の援助、海外研修や海外勤務のチャンスがある、副業OKなどでしょうか。

「つまり求職者の側に立った、気持ちの面まで考えた上で求人票を作成することが重要です。採用したい条件のキャリアを積んだ人は、どのようなことに対して魅力や興味を感じるのか。企業側は、その魅力を提供できるか。このようなことを意識しながら求人票を作成することが大切です」(影山氏)

また、求職者の心理に立った上で求人票を作成しないと、次のような失敗につながる危険性があります。

「仕事をバリバリしたいハイキャリア人材に対して、残業ゼロ、ワークライフバランスを意識しています、といった内容を表記したとしても、まったく響かないのは明白ですよね。ミッションを実現できるのは、どのような属性や志向性のハイキャリア人材なのか。その上で、そのような人が魅力だと感じる内容を言語化、そして記載・アピールすることが何より重要なのです」(入江氏)

成果に関しては、先ほどの説明とは少しニュアンスがズレますが、自由度は持たせながら、具体的にどのような業務をお願いするのか。前回の記事でも触れたように、例えばジョブディスクリプションを明確にする必要などが挙げられます。まさに先述のDXのように、あまりにミッションが漠然としていると、求職者が魅力には感じない求人になってしまう可能性があるからです。

そのほか、求職者にとってプラスと考えられる要素は、求人票に記載ができる余白があれば記載します。例えば、「10期連続で売上120%増」といった業績が好調な事実。ほかにも「100年以上続く老舗でありながらも、現在の代表が海外で最新の経営学を学んできた人物であり、伝統と革新の両方が備わっている企業」、などといったアプローチです。

ミッションは魅力(成果)以外の要素を記載する際にも、求職者のことを常に考え、一般的にウケるであろう情報だけ提供するのではなく、求めている人材が魅力的だと感じる項目から優先的に記述していくことが大切です。最後に影山氏は、次のようなアドバイスをくれました。

「求人票の書き方は、言ってみればテクニックの部分です。そのため、今回紹介したようなことを意識しながら回数を重ねていくと、必ずより良いものにブラッシュアップされていきます。それに伴い、応募してくる求職者のマッチング精度も上がってくるはずです」(影山氏)


まとめ

ハイキャリア人材の採用に向け紹介した今回の内容を、しっかりと行えている企業は、まだ少ないそうです。

やるべきことは分かっているけれども、求人票に落とし込むなど、うまく言語化できていないことが多いとのこと。また、知名度の高い企業や、給与などの条件が良い企業においては、それだけでも応募が集まりやすいため、ミッションや目的、採用背景などの記載の工夫まではほとんど意識していないケースもあるようです。

しかしながらDXなど、新規事業が盛んな昨今のビジネスシーンにおいては、市場環境の変化が著しく、そのスピードが加速しているため、ハイキャリア人材の流動が活発化することは間違いありません。

つまり、ハイキャリア人材の争奪戦はすでに始まっていることが明白です。そうなる前に本記事を参考に準備しておくことで、結果としてビジネスの成功につながっていくことでしょう。

取材・文/鈴政武尊、杉山忠義、編集/鈴政武尊

>>>前回の記事「【ハイキャリア人材を獲得したい】組織をけん引するリーダーの口説き方。目指すMISSIONを明確に――」はこちらから

【関連資料】
ジョブディスクリプション 記載見本・テンプレート【簡易版】
ジョブディスクリプション 記載見本・テンプレート【詳細版】バックオフィス系職種
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