外国籍従業員比率 約30%――。トヨタグループ「KINTOテクノロジーズ」は、なぜダイバーシティを実現できたのか

KINTOテクノロジーズ株式会社

モバイルアプリ開発グループ A.H.

大手情報サービス会社にて中古車情報サイト、電子出版プラットフォーム提供企業にて大手出版社のコミックアプリに関わる開発マネージャーを経て、2021年5月に同社にジョイン。モバイルアプリ開発グループでモバイルアプリ「my route(マイルート)」のプロジェクトマネージャーを担当。

KINTOテクノロジーズ株式会社

モバイルアプリ開発グループ Y.H.

2020年11月入社。アンドロイド向けアプリの開発を担当。グループ内では率先して技術やトレンドの共有に取り組む。過去には韓国の大手企業でモバイルアプリとIoTのエンジニアを務め、デジタルサイネージの制作販売会社を経営していた経歴を持つ。

KINTOテクノロジーズ株式会社

モバイルアプリ開発グループ H.H.

2021年7月入社。iOS向けアプリの開発担当。前職は大手企業でiOSの開発担当。iOSエンジニアとしてグループ内で最もキャリアが長く、チーム作りやナレッジ共有にも積極的に取り組む。前職はデジタルコンテンツの配信や通信販売を手がける大手IT企業のiOSエンジニア。

MaaSの一翼を担う「KINTOテクノロジーズ」とは
開発の軌道にのった「モバイルアプリ開発グループ」
グローバル経験豊かな外国籍の社員が「KINTOテクノロジーズ」を選んだ理由とは
プロジェクトマネージャーが語る、KINTOテクノロジーズのカルチャーとは

KINTOテクノロジーズ株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:小寺信也)は、トヨタ自動車を中心としたグループ会社におけるテックカンパニーである。2021年4月の設立以来、多様な人材がジョインしていき、国際色豊かな「技術集団」として頭角を現し始めている。

さまざまなプロダクトを展開している同社だが、今回は、東京・日本橋の室町オフィスに訪問し、マルチモーダルモビリティサービス(*1)「my route(マイルート)」(*2)の開発に携わる技術者たちにチームづくりの現状について話を伺った。
 

(*1)マルチモーダルモビリティサービス(MaaS:マース)…移動時にルートや手段の検索、料金の支払い、予約などをすべて行うサービスのこと

 

(*2)my route(マイルート)…KINTOテクノロジーズ株式会社が手掛けるスマートフォン用アプリ。ルート検索やチケット購入までこのアプリ一つで完結し、飲食店や観光スポットも簡単に調べられる。移動に関わるサービス提供をワンストップで行うマルチモーダルモビリティサービス

MaaSの一翼を担う「KINTOテクノロジーズ」とは

トヨタグループの一員であるKINTOテクノロジーズは、グローバルモビリティブランド「KINTO」関連のプロダクトや、MaaSにまつわるサービスの開発・運用を行う。

2021年4月の設立から1年余り。事業拡大につき、積極的な採用活動を行っている同社の特色は、国籍や属性を問わず多様な人材を集め、プロダクト制作を内製化している点だ。また、「KINTOテクノロジーズ株式会社」の設立に伴い、元々は「株式会社KINTO」で採用社員だったが、組織変更により転籍したメンバーもいる。

多様性と一体感を両立させる組織づくりのヒントを探るべく、今回はモバイルアプリ開発グループに取材を行った。

■ MaaSアプリ「my route(マイルート)」が内製化に至った背景

モバイルアプリ開発グループには、モバイル用のアプリ開発に特化したエンジニアが集う。現在はトヨタグループ発のMaaSアプリ「my route(マイル―ト)」のグロース施策が進んでいるという。

ユーザー体験を向上させるための機能拡大の途上にあり、今後ユーザー数の増加が見込まれるアプリだ。

以前はグループ内の別企業によって運営されていた「my route(マイルート)」であったが、KINTOテクノロジーズ設立後は、同社が開発・運営を主担当となった。しかしスタート時は決して「滑り出し好調」とはいかなかったという。

iOSのエンジニアであるH.H.氏は、スタート時期を以下のように振り返る。

「当初は『my route(マイルート)』のバックエンドを引き取り、受託開発という形態をとっていました。受託開発の場合、プロジェクトの長期的な視点を持ちにくい傾向があるのは否めません。

問題が起こったときには場当たり的な対応で乗り切るのが恒常的になってしまい、ほかの人には解読できない、いわゆる”スパゲティコード”があっという間にでき上がってしまう…。そんな悪循環が生じていました。

そのような状況が続くと、開発費用がかさんでしまいます。長期スパンで良いプロジェクトを進めていくためには、内製化という選択は必然だったと思います」(H.H.氏)

KINTOテクノロジーズ設立から3カ月余りが経過した2021年7月。開発体制のテコ入れをすべく、モバイルアプリに精通した複数のエンジニアを招き入れて内製化を実現。現在では、モバイルアプリ制作経験が豊富なエンジニアが集まり、「モバイルアプリ開発グループ」が立ち上がったことで環境が整いだした。

開発の軌道にのった「モバイルアプリ開発グループ」

アプリ制作の内製化後、じっくりと腰を据えて開発、品質の研鑽をする環境が整ってきたというモバイルアプリ開発グループ。エンジニアの年代、学歴、職歴、学歴はさまざまで、まさに「ダイバーシティの体現」という表現がしっくりくる。

同社の人員構成について特筆すべきは、外国籍の従業員の比率だ。2021年4月の時点で27%。内閣府が3年前に作成したデータで外国人労働者数の就業者全体に占める割合は2.2%であることを踏まえると、極めて高い水準である。

多様な人材が集いつつも、チームビルディングが円滑に進むKINTOテクノロジーズ。次項からチーム間で日常的にどのようなコミュニケーションをとっているのか、その実態に迫っていこう。

■「独自カルチャー」をつくらないことで新しい人がなじみやすい文化を

多様なエンジニアが結集したモバイルアプリ開発グループだが、仕事の進め方はシンプルかつ合理的。内輪向けのメソッドを用いず、できるだけシンプルなフローに沿って行う

プロダクトマネージャーのA.H.氏によれば、2週間ごとに一定の到達点を定め、チーム内の緊密な情報交換をしながら開発を進めているという。

オンライン、対面にかかわらず、会議時にはアジェンダを共有して話し合いの目的を明確にし、会議後には社内コミュニケーションツールを用いて、決定事項を議事録で共有。個々のタスク進捗状況の可視化と、情報共有をこまめに行っている。

日常的に活発な議論が行われているが、打ち合わせの目的を明確にしているため意思決定はスムーズ。安定的にプロジェクトが進められているという。また、新しく参加したスタッフがすぐに順応できるよう、フレームワークについても汎用性の高い方法で行う。

複数の国籍の社員が在籍する同社内では、コミュニケーションツール内で英単語が飛び交うこともあるというが、コミュニケーション上は特に問題はないという。それについて、iOSアプリのエンジニアの1人、H.H.氏は以下のように語る。

「社員は多国籍ですが、エンジニア同士、特に国籍を意識することはありません。KINTOテクノロジー独自のフレームワークはなく、『うちの独自のカルチャーだから、あなたはちゃんと慣れてください』ということもありません」(H.H.氏)

新しい技術や、ほかのエンジニアが培ってきた経験に対する感度が高いメンバーが多く、現場で働く社員は「相手の意見を聞く」「意見を述べる」という双方向のコミュニケ―ションを自然に実践できているようだ。

グローバル経験豊かな外国籍の社員が「KINTOテクノロジーズ」を選んだ理由とは

モバイルアプリ開発グループのAndroidとiOSのエンジニアに、入社のきっかけや社風、普段どのように仕事を進めているのかについて伺った。

外国籍のY.H.氏はAndroid担当のエンジニア。海外の企業で勤務した後、昨年KINTOテクノロジーズに入社した。

「以前からモビリティが社会を変えると思っており、その変化に携わりたいと思っていました。『モビリティならトヨタ』というイメージがあったので、昨年、トヨタグループのKINTOテクノロジーズに入社しました。

以前働いていた韓国のメーカーは、いつも『早く早く』とせき立てられるような社風でしたが、KINTOテクノロジーズでは、みんなが意見を出し合ってコミュニケーションをとり、チームで進めていくという雰囲気があり、落ち着いた環境で開発できます。

社内のエンジニアは、『何か便利なものがないかな』と、いつもユーザーの視点に立って考えています。最新の技術を試すのが好きな人、勉強会を楽しむ人が集まっていますね。

Androidのアーキテクチャーに最適化した技術を使い、ユーザーにとって使いにくそうなら、またつくり直す。そのプロセスを繰り返し、最新の技術にどんどんチャレンジできる職場です。

開発者同士はとても仲が良くて、違った強みを持つメンバーがたくさんいます。その強みを合わせて1つのものをつくりたいですね」(Y.H.氏)

Y.H.氏によれば、昔からのやり方に固執する人は少なく、「こっちのやり方が良さそうだから変えてみよう」と、前向きな提案をする人が多いという。その時々で、最適なメソッドを模索、提案、挑戦していくことができる点が魅力的だと語ってくれた。


プロジェクトマネージャーが語る、KINTOテクノロジーズのカルチャーとは

モバイルアプリ開発グループのiOS担当エンジニアH.H.氏は、チームの現在の雰囲気について以下のように語る。

「2021年ごろからエンジニアが集まりだし、チームとして潤滑にまわるようになりました。現在iOSのグループでは、勉強会などを通じて最新の開発技術を日々模索し、学んだ知識をアウトプットするように心がけています。

メンバー育成の土壌も整い始めているので、ほかの会社で伸び悩んでいたり、やりたいことがあったりするエンジニアさんがいたら、ぜひ当社にジョインしてほしいと思います」(H.H.氏)

勉強会などを通じて、新しい技術に貪欲な同社のカルチャーの一端が垣間見える。

■ グループの規模感とベンチャーマインドの融合

KINTOテクノロジーズのカルチャーを表す言葉として複数のエンジニアから聞かれたのが、「落ち着いた雰囲気」と「議論が多い」という表現だ。

「my route(マイルート)」のプロジェクトマネージャーのA.H.氏によれば、KINTOテクノロジーズでは「自由度の高さと落ち着いた感じ」が醸成されているという。

「トヨタという企業の圧倒的な資金力と、KINTOテクノロジーズの自由な雰囲気によって、スケジュールにがんじがらめに縛られることがなく、やるべきことに力を注げる環境が整っていると思います。

中途の社員が多いのですが、自社プロジェクトを通じて価値を提供するという同じ目的に向かっていますし、各自が持つ経験のシナジーが起きているようにも感じています。

『やりたい』と手を挙げられる環境が整っているので、やりたいことが明確な人に、当社はマッチしやすいのではないでしょうか」(A.H.氏)

多様な人材が「より良いものをつくる」という共通の目的を持ち、個々の経験を融合させていくカルチャーは、同社の強みと言えるだろう。

プロジェクトマネージャーのA.H.氏は、今後の展望について以下のように語る。

「『my route(マイルート)』は全国をカバーしたサービスを充実させ、各地域とタッグを組んでユーザー情報を提供し、地域とユーザー双方にとって良い関係を築くようなビジネスモデルの実現を目指しています。

モバイルアプリの開発を通じてユーザーの移動の自由を実現させ、今後トヨタグループの中でもひと際存在感を示してしていきたいと思っています」(A.H.氏)

今後は東京都内にオフィスの拠点を増やすほか、大阪にもオフィスを設ける予定だという。加速するMaaSの実現に向けて、同社が果たす役割はますます大きくなっていくだろう。

【取材後記】

「多様」の対義語は「画一」である。

同じ時期に入社し、同じ研修を受け、同じ価値観を持っている画一的な人材でチームを形成すれば、コミュニケーションは最小限で済むし、社内の不文律も理解されやすいだろう。その反面、異論や変化が生じにくいという側面もある。ダイバーシティとはつまり、「小さな声にも耳が傾けられること」ではないだろうか。

KINTOテクノロジーズでは、個々の経験年数にかかわらず、誰もが意見を言いやすい雰囲気があるという。多様な人材が、社外で培ってきた互いの経験をリスペクトしながら、長期的なビジョンを共有し、開発を進めている。多様性が組織の柔軟性につながっていると言えるだろう。

取材・文/鈴政武尊・北川和子、編集/鈴政武尊・d’s journal編集部

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