5年後、事業継続できていますか?企業成長のために“今”すべきこと【テンプレシート付き】

d’s JOURNAL編集部

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  • 深刻な人手不足予想の中で、5年後、10年後の事業継続・成長のために、人員体制を正確に把握し、計画的な採用を行う必要がある
  • 安定的な組織運営のためには、組織ごとの体制(年齢・人件費・定年時期)を整理し、採用計画の道筋を立てることが必要不可欠である
  • 自社の体制・課題を把握した後、計画的な採用のために、人材の採用要件を社内で定義し、現在の採用データに基づく年収改善や労働環境改善などに取り組むことが重要である

現在も、多くの企業が採用に苦戦しているにもかかわらず、5年後、10年後にはさらに深刻な人手不足になると予想されています。最悪の場合、採用ができず、事業の継続が困難になることも考えられるでしょう。

現時点では採用の必要がないと思っていても、5年後、10年後も事業を成長・継続させるためには、未来への備えが必要です。まずは現状の人員体制から想定される未来を確認し、課題や対策を明確にすることが大切です。

今回は、人手不足が企業に及ぼす影響を具体的に解説するとともに、人員体制把握のポイントや採用対策をご紹介します。「自社の人員体制を把握できるシート」も無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。

2030年、644万人もの人手不足に。企業への影響は?

日本は世界の国々と比べても高齢化が急速に進んでいるとされており、近年は高齢化や少子化の深刻な影響が表面化するタイミングとして「2025年問題」「2030年問題」が取り上げられるようになりました。

●2025年問題
2025年に「団塊世代(第一次ベビーブーム世代)」800万人全員が75歳以上の「後期高齢者」になることによって懸念される諸問題のこと

●2030年問題
推計上、2030年に日本の「総人口の3分の1以上が65歳以上」になることで懸念される諸問題のこと

また、パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」では、2030年時点の労働需要7073万人に対し、見込まれる労働供給は6429万人で、644万人もの人手が不足すると予測されています。

労働需要

(出典:株式会社パーソル総合研究所『労働市場の未来推計2030』)

これらの問題は社会的にも取り上げられており、今や誰もが知っている情報ですが、人手不足は企業の採用難をますます加速させる要因の一つになるでしょう。実際、人手不足により、企業においては以下のような点が危惧されています。

人手不足が企業に与える影響

●生産性の低下、納品遅延
●残業時間の増加、休暇取得率の減少といった労働環境の悪化
●従業員のエンゲージメントの低下
●能力開発や研修機会の減少
●離職者の増加
●後任者の不在

業務の進行に必要な人数を採用できないと、生産性が低下したり、納期が延びたりする可能性があり、場合によっては顧客離れも想定されます。加えて、既存従業員への負担が大きくなれば、健康状態やエンゲージメントの低下が懸念されるでしょう。慢性的な人手不足が続くと、離職者の増加や後任者不足に陥り、最悪の場合、事業の継続が困難になることも十分考えられます。

人手不足に直面してから採用を検討するのでは手遅れです。上記のような状況を防ぐためにも、早い段階から今できる対策をしておく必要があります。

未来を見据えて、現在の自社の状況を知ろう

未来を見据えて、現在の自社の状況を知ろう

とは言え、「現在の業務を行うための人数は確保できているから大丈夫」「2030年問題が自社にどの程度の影響を与えるのか想像しにくい」「今から何ができるかわからない」という方もいるのではないでしょうか。

まず大事になるのが、社会問題にもなっている人手不足・高齢化などの大きな問題を、意識的に「自分ごと化」「自社ごと化」して捉えること。次に、現在の自社の人員体制を改めて客観的なデータとして可視化し、「将来的にどのポジションの人材が、いつ不在となるのか」「年齢構成のバランスは保てるのか」といったことを確認しながら、採用計画の道筋を立ててみることも、安定的な組織運営に十分効果的な取り組みです。そこで自社の5年後、10年後の状況をイメージできるようなヒントをご紹介します。

まずは、組織ごとに、各従業員の以下の項目を整理し、データ化してみましょう。

●役職
●名前
●年齢(現在、5年後、10年後)
●人件費(個人/年)

次に、雇用を継続していれば必ず迎える定年退職の該当者について、以下の項目を試算してみましょう。

●引き継ぎに必要な期間
●採用活動の開始時期

以下に、上記の項目を整理できるシートをご用意しています。「定年年齢」や「生年月日」を入力すると、「定年までの年数」や「定年退職の該当者」を自動で算出。「現在、5年後、10年後の年代別人数の割合」や「年間の人件費」はグラフ化され、偏りが一目でわかるようになっていますので、ぜひご活用ください。

年齢

現在の平均年齢が高いと、後継育成人数も増やす必要があります。また、定年退職に近い年齢の場合は、退職時期を見越した引き継ぎや採用が必要です。5年後、10年後の年代別人数の割合も可視化しておき、年代が偏りすぎないように採用を行う必要があるでしょう。

人件費(個人/年)

「専門的なスキルを持っている」「役職が上位」の方は、年間の人件費が高い傾向にあります。言い換えると、「引き継ぎ期間が長くなる」「後任の採用が難しくなる」ということです。採用開始時期や求人年収帯を検討・算出するためにも、把握しておくことをおすすめします。

また、部署ごとの人件費に偏りがあるようであれば、収支バランスを鑑みて社内異動の検討材料にしましょう。

引き継ぎに必要な期間

引き継ぎに必要な期間は、即戦力となる人材を採用するのか、未経験者を採用するのかによって異なります。併せて、社内の「待遇改善」や「教育体制の構築」などの準備が必要であることも念頭に置いておく必要があるでしょう。

即戦力採用の場合は、採用したいスキルを持つ求職者が中途市場にどれくらい存在するのかということや、給与相場を調べた上で引き継ぎに必要な期間を設定してください。未経験・微経験採用の場合は、育成期間を含めて長めに設定するとよいでしょう。

採用活動の開始時期

中途採用の場合、入社までに必要な期間は、一般社員で募集開始から早ければ1~3カ月程度です。経営層や事業部長、マネージャーなどの管理職の採用では、募集開始から3カ月~半年以上、場合によっては1年以上必要な場合もあります。これらのことを踏まえて、市場調査などの情報収集は1年以上前に開始しておくと安心です。

採用に向けた3つのステップ

自社の人員体制や課題が整理できたら、採用に向けて要件定義や待遇改善に取り組みましょう。採用までの準備を3つのステップに分けて、活用できる資料とともにご紹介します。

採用に向けた3つのステップ

【ステップ①】不足する部署に対する人材の要件定義を行う

まずは、人材が不足する部署に必要な人材のスキルや特性、人物像などを定義しましょう。要員計画(事業を遂行する際に必要な人数を見積もるための計画)と併せて進めることで、事業計画に沿った長期的かつ合理的な採用、人材配置を行えます。

(参照:『【マンガから学ぶ】人事部が異世界へ⁉「要員計画」で村を豊かにする設計・計算方法とは[計算FMT付き] -第8話-』『【フォーマット有】要員計画の概要と計画の立て方・流れを解説』『人員計画とは?立てる目的とメリット、策定方法や注意点をまとめて解説』)

【ステップ②】要件に対して自社の年収提示が妥当かを確認する

人材要件を定めたら、要件に対して自社の年収提示が妥当かどうかを確認します。各職種における平均年収を、地域ごとにレポートにまとめた以下の資料を活用すると便利です。

【ステップ③】社内で議論を重ね、計画を実行に移す

ステップ①と②の内容を踏まえつつ、よりスムーズな採用につながるよう、以下の項目などについて社内で議論を重ねましょう。

●待遇の改善(給与改定、福利厚生、育成・研修制度などの見直し)
●適切な人材要件(採用要件)の再設定
●働き方改革の推進(多様な雇用形態、テレワーク、フレックスタイム、時短制度の導入など)
●生産性向上、業務効率化に向けた施策の検討(DXの推進、アウトソーシングの活用など)

【無料】関連お役立ち資料

まとめ

人手不足は事業運営に直結する課題です。自社の人員体制や課題を常に把握し、実状に即した対策を立てることで、深刻なダメージを最小限にとどめることができます。実際の採用では求人や育成の期間も要するため、それらを踏まえた採用計画を立てることが重要です。健全に事業を運営していくためにも、今回ご紹介した内容や資料を活用しながら、自社の人員体制を定期的に把握し、見直してみてはいかがでしょうか。

(企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows

【Excel版】企業成長のための人員体制把握フォーマット

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