定着率90%以上の優良企業なのに応募が来ない!?認知拡大に悩むBtoB企業の動画広告活用術

株式会社レント

人事部 採用担当 高巣 義之(たかす・よしゆき)

プロフィール
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  • 業界認知と企業認知を高めることが課題。社員の待遇改善を実施し、従業員満足度の向上から取り組む
  • 認知拡大の対外施策として『まいにちdoda TV』を活用。決裁者や現場従業員を巻き込んで動画を撮影し、採用活動の協力者が増えた
  • 認知拡大も広報活動も「まずは社内から」。既存従業員の満足度を高め続けることが採用ブランディングにつながる

事業が順調に伸び、世間ではホワイト企業と呼ばれるような労働条件を整えているのに、転職市場での認知度が低く応募が集まらない…。一般に知られる機会の少ないBtoB企業からよく聞かれる悩みです。

産業用・建設用機械の総合レンタル業を手がける株式会社レント(静岡市)も、そんな「知られざる優良企業」の一つでした。業界トップクラスのシェアを誇り、定着率90%以上と高い従業員満足度を維持しているにもかかわらず採用に苦戦。認知拡大を課題としていた同社は、動画広告コンテンツ『まいにちdoda TV』を活用して企業ブランディングに取り組んでいます。

認知拡大に向けた新たな手法を取り入れたことで、採用活動はどのように変化したのでしょうか。現在までの手応えを伺いました。

社名の前に業界自体が知られていない!地道に進めてきた「内側からの認知拡大」

——これまでの採用活動の概況や課題についてお聞かせください。

 

高巣氏:当社では事業拡大や新拠点展開などを背景に、ここ数年は中途と新卒を合わせて毎年100名規模で採用を行っています。ただ、採用活動が順風満帆というわけではありません。

2022年までは求人広告を軸にして採用目標を達成してきましたが、コロナ禍が一段落した2023年からは応募数が減少。広告内容の見直しなどを進めていますが、以前のように大きな効果を出すことが難しくなってきており、転職市場の変化を如実に感じているところです。

加えて当社は、認知向上が積年の課題となっています。これはBtoB企業に共通する課題かもしれませんが、当社の場合は「産業用・建設用機器のレンタル」という業界自体の認知度が低いのです。転職市場では企業名の前に業界さえほとんど認知されておらず、求人サイトなどの検索でもなかなか見つけてもらえません。

——従来はどのような手法で認知拡大を図ってきたのでしょうか。

高巣氏:テレビCMやスポーツイベントのスポンサーになるなどの大規模なプロモーション手法もありますが、当社の規模感では現実的ではありませんでした。

当社にできるのは、企業価値を地道に高めていくことです。ベースアップを毎年継続したり、5年間平均で6.0カ月分の賞与を支給したり、年間休日数増加や残業の大幅削減に取り組んだりして、既存の従業員の満足度を向上させられるよう努めてきました。

こうした取り組みを進めることで、同業者や取引先、ユーザーなど当社を知る方々の間で「レントはいい会社だよ」と言っていただけるようになってきたのです。こうした評判を聞いて応募してくださる方も増えています。ネット上の情報は真偽が判断しづらいこともありますが、人づてに直接聞く情報の信用度は高いのでしょう。時間はかかりますが、社内から変わっていくことで少しずつ変化が生まれるのだと思います。

想像以上に協力的だった現場メンバー。動画公開前から社内での認知が広がる

——御社のこれまでのスタンスを踏まえると、動画広告コンテンツである『まいにちdoda TV』を活用したのは意外にも感じます。

 

高巣氏:長期的な視点で、地道に取り組みを進めるのは変わらず重要視していますが、転職市場が年々厳しくなっている現状を考えれば、時代に合った新しい採用手法も積極的に取り入れていかなければならないと感じていました。動画広告もその一つだと考えていたのです。

新しい手法を取り入れる際にはリスクもありますが、マイナス面にばかり目を向けていても状況は変わりません。『まいにちdoda TV』は今までやったことがない切り口の手法だからこそ、試してみる価値があると感じましたね。

——活用した「発見!ここスゴ取材班」というコンテンツでは、人気お笑い芸人が御社を訪問して魅力を掘り下げています。導入にあたり、社内決裁や出演する従業員のアサインなどはスムーズに進みましたか?

『まいにちdoda TV』 掲載期間:2023/09/07 ~ 2024/08/07

高巣氏:社内稟議(りんぎ)を通すのには若干苦労しましたね。芸人さんが出演するとなれば費用もそれなりにかかるわけで、会社の上層部の了解を取り付けなければいけませんでした。そこで、企画の打ち合わせの場にはキーパーソンの役員にも参加してもらい、映像イメージなどを一緒に見てもらったんです。決裁者をチームに巻き込むことで最終的にはスムーズに進みました。

従業員のアサインについては、日頃から忙しい現場に入ってどこまで協力してもらえるのか懸念していました。でも実際には取り越し苦労。思っていた以上に現場が協力的だったんです。

たとえば営業職の採用に悩んでいたある支店長は、「現場も協力しないと仲間を増やせないぞ!」と号令をかけ、撮影に参加する従業員を鼓舞してくれていました。撮影環境のセッティングや時間の確保にも積極的に取り組んでくれましたね。テレビでしか見たことのない芸人さんが来てくれるというワクワク感も大きかったのだと思います。

——撮影当日の雰囲気はいかがでしたか?

高巣氏:当日は現場監督やプロデューサーをはじめ、たくさんの撮影クルーの方々が来訪し、芸人さん側のマネジメント関係者も含めれば20名近い体制だったのではないでしょうか。「これはものすごく気合いの入った撮影なんだ」ということが現場の従業員にも伝わり、高揚感から熱量が高まっていきました。私自身も「頑張って良いものをつくろう!」と気合いが入りましたね。

撮影場所となった拠点のメンバーは、他拠点のメンバーにも当日の様子を共有してくれていたようです。社内では動画公開前からみんなが認知してくれていました。

求人広告や面接で動画をフル活用。応募増はもちろん「面接辞退減少」にも効果あり

——完成した動画コンテンツは、どのような形で活用していますか?

高巣氏:求人広告の出稿時に動画リンクを貼るなどして、選考プロセスの入り口から当社を認知してもらうためのコンテンツとして活用しています。

当初は応募前の認知拡大に使うイメージだけだったのですが、現在は応募後のサンクスメール内にも動画リンクを貼って見てもらえるようにしています。動画活用前までは応募後に他社に流れて面接辞退になってしまうことも多かったので、それを防ぐためのフォローツールとしても活用しているんです。

また、各拠点で行う面接でも動画をフル活用しています。面接の冒頭で応募者に動画を見てもらうことで場が和むんですよ。アイスブレイク的な要素として話しやすい雰囲気で当社への理解を深めてもらうとともに、入社意向の醸成にもつなげられればと考えています。この方法は、実際に動画を活用している支店長が会議で共有してくれて、多くの拠点へ広がっていきました。

——現時点での手応えはいかがでしょうか。

高巣氏:詳細な数値の把握や分析はこれからとなりますが、求人広告の出稿時には、採用競合が多い首都圏でのPV数が着々と伸びています。動画を見てくれた方からの応募があったり、応募後の辞退が減ったりと、着実に手応えを感じています。

 

——今後の採用ブランディングに向けては、どのような展望をお持ちですか。

高巣氏:認知拡大への取り組みは、人事だけで進めようとしても限界があると感じています。今後はさらに社内の各部門から協力を得ていかなければいけません。

当社では3年前に広報課を立ち上げ、まずは社内広報に軸足を置いて活動してきました。コーポレートサイトをリニューアルする際には社内に撮影スタッフを置き、内製でコンテンツをつくっています。最近では動画撮影も内製し、当社の従業員だからこそできる見せ方を研究しているんですよ。動画共有サイトなどを通じて社外へ発信する機会も増えてきました。

これからも採用チームと広報チームで積極的に連携し、社内の関係者を巻き込んでブランディングに取り組んでいきたいと考えています。

取材後記

「広報もまずは社内から」。高巣さんのこの言葉に、株式会社レントが大切にするスタンスが詰まっているように感じました。外部へ自社の魅力を発信する前に、まずは現在の従業員のことを考え、満足度を高めるための施策を実行する。この姿勢がぶれないからこそ、新しい手法を導入する際にも多くの従業員が協力してくれるのではないでしょうか。同社の取り組みは今、「リファラル採用の拡大」という形でも成果につながっているそうです。

企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

母集団形成、意向醸成に活用も!動画コンテンツ「まいにちdoda TV」

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