社内外問わず“本音のコミュニケーション”で向き合う。エグゼクティブ人材採用・招聘におけるkubell(旧Chatwork)の工夫とは

株式会社kubell

上級執行役員CHRO 兼 ピープル&ブランド本部長 鳶本真章(とびもと・まさあき)

プロフィール
株式会社kubell

執行役員 兼 経営企画本部長 澤口玄(さわぐち・げん)

プロフィール
この記事の要点をクリップ! あなたがクリップした一覧
  • エグゼクティブ人材の選考では戦略や中期経営計画を徹底的にオープンに伝える
  • 執行役員クラスの選考プロセスでは、上級執行役員全員との面談の場を用意。ストレートな質問に対しても役員はそれぞれの本音を語っている
  • 人材紹介サービス担当者は採用活動を進めるパートナー。オープンに本音で語り合える関係性を築く

変化し続ける外部環境への対応や新たな事業戦略の推進を見据えて、役員・事業本部長などエグゼクティブ人材の招聘を強化する企業が増えています。

ミッション「働くをもっと楽しく、創造的に」の実現に向けて新たなサービスの開発・提供を進める株式会社kubell(クベル/旧Chatwork株式会社)でも、エグゼクティブ人材の招聘に注力。戦略や中期経営計画などを全てオープンに伝え、上級執行役員全員が候補者との面談や会食に参加するといった機会も用意して、「自社の本音を候補者に理解してもらう」ことに努めているといいます。

豊富な経験と実績を有するエグゼクティブ人材から選ばれる会社には、どんな秘訣があるのでしょうか。

外部出身のエグゼクティブ人材がkubellに感じた魅力とは

——2024年7月1日、御社はChatwork株式会社から「株式会社kubell」へと社名を変更して新たなスタートを切りました。

 

鳶本氏:kubellの社名には、「働く人の心に宿る火に、薪をくべるような存在でありたい」という想いを込めています。

当社が2011年から提供する「Chatwork」は5年連続で国内利用者数ナンバーワン(※)を獲得するなど、国内最大級のビジネスチャットに成長しました。現在では有料契約の9割以上を従業員数300名以下の中小企業が占めています。

2024年に発表した2026年までの中期経営計画では「中小企業No.1  BPaaSカンパニー」を掲げ、新たなサービス提供も進めています。「Chatwork」で築いた顧客基盤を活かし、人とテクノロジーを掛け合わせることで、お客さまのDXを本質的に実現する。このビジネスモデルは「BPaaS」(ビーパース:Business Process as a Service)と呼ばれ、SaaSの次の潮流になると言われています。

(※)Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView Customized Report 2023年5月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKS、Skypeを含む44サービスをChatwork株式会社(現 株式会社kubell)にて選定。

——ビジネスチャットだけでなく、DX推進やバックオフィス業務改善などにも取り組む理由は。

鳶本氏:私たちはこれらの事業がすべて「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションにつながっていると考えています。私たちがバックオフィス機能のプラットフォームとしての役割を果たすことで、日々の業務に追われがちなスタートアップ・ベンチャー・中小企業の仕事の在り方を変え、より創造的な企業活動ができるように支援したいのです。

こうした方針に基づき、新たに獲得していくべきケイパビリティを明確にして、外部採用を積極的に進めています。役員・事業責任者クラスのエグゼクティブ人材も同様です。

——鳶本さんや澤口さんも外部出身のエグゼクティブ人材として入社していますね。

鳶本氏:私はコンサルティング業界での経営支援や事業会社での人事経験を通じて、「生産性が低い」と言われ続けている中小企業の課題に直面してきました。本来なら中小企業は、大企業にはない価値を発揮できるはずの存在です。しかしその価値へ資産・資本を多く投入しようとしても、規模の経済が働くため、大企業に勝つことが難しく、少子化トレンドの中で人材確保もままならなくなっている。そんな状況を何とか変えたいと思い、中小企業を本気で支援できる環境としてkubellを選びました。

 

澤口氏:私がkubellへの入社を決めたのは、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)に本気で共感できたからです。これまでさまざまな領域の事業・ポジションを経験してきた中で「働くことを楽しくする」「心地よい空間で仕事ができるようにする」ことの重要性を強く感じていました。kubellはまさに、そんな世の中を目指してプロダクトをつくっている会社です。

代表をはじめとした役員陣と会話し、MVVへの熱い想いを感じ取れたこと、その実現に向けて本気で取り組んでいることが実感できたので入社を決めました。

「実際、ここはどうなんですか?」——ストレートな質問にも誠実に答えてくれた役員陣

——お二人のようなエグゼクティブ人材を獲得するためには何が必要なのでしょうか。kubellのエグゼクティブ人材招聘では、どんなことに注力していますか?

鳶本氏:kubellではMVVへの共感を最重要視しつつ、どのようにケイパビリティを発揮してもらえるのかを見極めてエグゼクティブ人材を招聘しています。この選考において特に重視しているのは、私たちの戦略を徹底的にオープンにして伝えることです。

戦略や中期経営計画については、「社内で共有する内容と外部へ発信する内容が異なる」企業も少なくないのでは。kubellの場合は社内、社外関係なく、同じ内容で発信しています。候補者からは「よくここまで公開しますね」と驚かれるほどです。

 

——なぜオープンな発信を行っているのでしょうか。

鳶本氏:会社として何を考えているのか、どんな本音を持っているのかを理解してもらわなければ、エグゼクティブ人材の招聘はうまくいかないからです。

執行役員クラスの採用では、選考プロセスで上級執行役員全員と面談してもらい、会食の場も設けています。こうした機会でも、現役員に本音を語ってもらい、候補者にはありのままの当社を知ってもらいます。

経営企画担当の執行役員候補として招聘した澤口さんにも、同様の選考プロセスを経て入社してもらいました。kubellの現状や強み・弱み、圧倒的な成長計画に向けて足りない部分など、すべてを率直に伝えた上で入社を決断してもらったのです。

澤口氏:選考を受ける側としても、上級執行役員全員が会ってくれるのはとてもうれしく思いましたね。

戦略や経営状況そのものは、開示されている情報からある程度うかがい知ることができます。しかし私が本当に知りたかったのは「戦略の行間にどんな想いが込められているのか」でした。役員陣それぞれの想いを個別に確認し、私自身との相性を見極めることもできる、本当に貴重な機会でした。

——上級執行役員との面談では、どのようなコミュニケーションがありましたか?

澤口氏:面談では「実際、ここはどうなんですか?」といった質問をたくさん投げかけたことを覚えています。

各事業やガバナンスなど現状の経営にどんな課題があるのか、役員陣が何に困っているのかなどをストレートに質問させてもらいました。そうした問いにも真正面から誠実に答えてくれて、面談や面接というよりは、ともに会社の将来を考えるブレストのような時間となりましたね。

 

こうして入社前からコミュニケーションを重ねていたので、入社後のギャップはまったくありません。役員同士でもメンバーとの間でも、1on1などの場で頻繁にコミュニケーションし、組織を超えて自然と協力できていますね。まずは私自身が「働くことを楽しく」「心地よい空間で仕事ができる」を実現できています。

人材紹介サービス担当者とも、オープンに本音で語り合える関係性を築く

——最適なエグゼクティブ人材との出会いを増やす秘訣についても教えてください。

鳶本氏:現役員からの紹介で面談することもありますが、核になっているのは外部のエグゼクティブ向け人材紹介サービスからの紹介です。

私自身が常日頃大切にしているのは「人材紹介サービス担当者とクライアントの関係にはならない」ということ。人材紹介サービス担当者は採用活動を一緒に進めるパートナーであり、当社のことを理解し、ファンになってもらうことが大切だと思っています。

そのため、深くお付き合いしている人材紹介サービス担当者とは定期的に会う機会をつくり、定例の戦略会議のように、今考えていることや必要になりそうなポジションについての話を聞いていただいています。

澤口氏:私たちからジョブベースで「経営企画人材を探してほしい」といったお願いをすること自体は簡単です。しかし人材紹介サービス担当者には要件にフィットする人材を探していただくだけでなく、「この会社は本当にオススメです」と候補者に情熱を込めて伝えてもらう必要があります。会社は良いときも悪いときもありますが、どんな状況でもパートナーとして信じてもらい、良い人材を紹介してもらえる存在でありたいですよね。

——人材紹介サービス担当者に「自社のファンになってもらう」ためには何が必要でしょうか。

鳶本氏:候補者との向き合い方と同じです。人材紹介サービス担当者とも、オープンに本音で語り合える関係性を築くべきではないでしょうか。

人材紹介サービス担当者からすると、言いにくいこともあるかもしれませんが、私は「遠慮は一切いりません」と明確に伝えているんです。当社の面接官がまずい対応をしていたら遠慮なく指摘してもらい、採用戦略に穴があれば容赦なく意見を言ってもらう。そんなパートナーシップを構築しています。

澤口氏:これは社内も同じで、kubellは本当に心理的安全性が高い会社だと感じています。役員同士で厳しい議論になることも多いのですが、それによってしこりや遺恨が残ることはありません。役員同士が同じ方向を見て、会社を良くしていきたいと考え、各自のポジションから伝えるべき意見を伝える。その議論を経て決定した事項に対してはみんなが自分ごととして取り組む。これが当たり前のように行われているのがkubellの経営スタイルです。なので、互いに「言ってはいけない」ことはないんです。

この姿勢が対候補者でも対人材紹介サービス担当者でも共通しているからこそ、当社に人材が集まるのでしょう。私自身も経営企画担当役員として、数値を見せるだけでなく、数値に込められた意味や想いをオープンに語っていきたいと考えています。

鳶本氏:kubellは今後も、MVVに共感してくれる人材をエグゼクティブ人材として迎えていく計画です。人材紹介サービス担当者との関係性をさらに深め、「真っ先に紹介したい会社」としてkubellを思い浮かべてもらえるよう、オープンで誠実なコミュニケーションを重ねていきたいと考えています。

取材後記

エグゼクティブ人材獲得の手法はもちろんのこと、実際にエグゼクティブ人材として入社した鳶本さんと澤口さんの想いにも心引かれる取材でした。特に印象的だったのは、コンサルや事業責任者としての経験を豊富に持つ澤口さんが、「社名変更」という大きな変化を控えたタイミングで役員陣と会い、議論を重ねて入社を決めたエピソードです。企業が持つ現状の強みや課題だけでなく、その将来性やビジョンを見極めようとするエグゼクティブ人材を招聘するには、kubellのように「本音で向き合う」姿勢が不可欠なのだと感じました。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/中澤真央

【関連記事】
エグゼクティブサーチを活用した日鉄エンジニアリングの取り組みとは?
エグゼクティブ人材を迎え入れたタムラ製作所。その具体的な取り組みと秘訣とは?
経営・人事がしなやかに連携する、コクヨの「エグゼクティブ人材招聘」ノウハウ
経営層・CxO・事業部長などのエグゼクティブ人材を登用・採用する際に大切にすべきこと
エグゼクティブ人材招聘の「要件定義」「母集団形成」はどう考えればよいのか?
エグゼクティブ人材の「選考・オファー」において成否を分けるポイントとは

【エグゼクティブ人材】Executive Agent

資料をダウンロード