年上部下の意欲を下げる上司のNG行動とは?「よかれと思って」が招くすれ違いと改善策

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株式会社FeelWorks

代表取締役

前川 孝雄(まえかわ・たかお)

プロフィール
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  • 定年延長などを背景に、「年下上司」と「年上部下」の組み合わせは珍しいものではなくなった。一方で多くの若手管理職は、年上部下との適切な関わり方に悩みを抱えている
  • 年上部下への配慮から指示や評価をあいまいにすることは、本人の主体性を尊重しているようでいて、役割や期待が伝わらず、モチベーション低下や組織停滞を招く要因となる
  • 年上部下のマネジメントでは「年齢」ではなく「キャリア」に向き合う姿勢が重要。本人のキャリアビジョンや強みを引き出しながら、組織として管理職を支援する仕組みづくりも欠かせない

「年上の部下に、どこまで踏み込んでいいのかわからない」「指示や評価を伝えづらく、つい遠慮してしまう」。そんな悩みを抱える年下上司は少なくありません。

定年延長やシニア人材の活躍推進を背景に、年下上司と年上部下の組み合わせは、今や多くの企業で珍しいものではなくなりました。一方、日本企業には長年「年上が上司、年下が部下」という価値観が根強く残っています。上司本人は「尊重しているつもり」「配慮しているつもり」でも、その行動がかえって年上部下の意欲を下げたり、チームの停滞を招いたりするケースも多いようです。

年下上司が陥りやすい7つのNG行動とは何か。また、年上部下の強みと意欲を引き出すためには、どのような対話や組織支援が必要なのでしょうか。「日本の上司を元気にする」を理念に500社以上の企業の人材育成を支援してきた株式会社FeelWorks代表取締役・前川孝雄さんに聞きました。

なぜ「年上部下」との接し方に悩む管理職が多いのか

――まず、年下上司と年上部下という関係性が増えている背景について教えてください。

前川氏:私は2011年に『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』という本を出版したのですが、当時はまだ、年下上司と年上部下の問題は一部の企業で見られる程度でした。しかし今では、当社が実施する新任管理職向け研修でも、「年上部下との接し方に悩んでいる」という相談を受けることが珍しくありません。

背景には少子高齢化があります。若手人材が減る一方で、定年延長や再雇用制度が一般化し、さらに70歳までの就業機会確保も進んでいます。その結果、年齢に関係なくマネジメントを担う場面が増え、年下上司と年上部下という組み合わせも珍しくなくなりました。

一方、日本企業では「年上が上司、年下が部下」という環境で育ってきた人が多くいます。上司と部下の年齢が逆転した関係を経験していなければ、戸惑うのも無理はないのかもしれません。

――構造的に、日本企業では「年齢が逆転したマネジメント」を経験している人が少ないのですね。

前川氏:はい。本来、上司とは「人間的に偉い人」ではなく、組織の中でマネジメントという役割を担う存在です。しかし、日本企業には年功序列や長幼の序といった文化が根強く残っています。そのため、「年上の人に指示を出しづらい」「評価しづらい」と感じる年下上司が多いのでしょう。

「配慮しているつもり」が、年上部下の意欲を下げてしまうことも

――年下上司による年上部下への接し方で、関係性を悪化させるおそれのある「NG行動」はあるのでしょうか?

前川氏:よく聞くのは、年下上司が「失礼にならないようにしよう」「経験豊富な方だから尊重しよう」と配慮した結果、逆に年上部下の意欲やモチベーションを下げてしまうケースです。

たとえば次のような行動は、年下上司と年上部下が絡む多くの職場で見受けられます。

①「年上だから」と遠慮して、指示があいまいになる

「経験豊富だから細かく言わなくても伝わるだろう」と考え、期限や期待値をぼんやり伝えてしまうケースです。しかし、役割や責任があいまいになると、年上部下であっても「どこまで自分が判断していいのか」がわからなくなります。年下上司が丁寧な言葉遣いで接することは大切ですが、年上部下に対する期待やゴール、指示は明確に伝えることが大切です。

②「ベテランだから大丈夫」と1on1を行わない

若手社員とは定期的に1on1を実施していても、年上部下には「任せておけばいい」と考え、対話の機会を減らしてしまうケースもあります。しかし、役職定年や再雇用などを経験した社員の中には、自分の役割やはたらく意味について悩む人もいます。年齢に関係なく対話の時間を持つことが重要です。

③気を使って、必要な注意やフィードバックを避ける

年上だからと注意することを避け続けると、年上部下は「自分に何が期待されているのかわからない」「成果を見てもらえていない」と感じ、意欲を失うことがあります。約束したことができていない場合には、相手を尊重しながらも、伝えるべきことは伝える必要があります。

これらの他にも、「ベテランは変われないと決めつける」「感謝や承認を言葉にしない」「呼び方や接し方を相手によって変えてしまう」「自分の価値観だけで相手を理解したつもりになる」といった、年下上司によるNG行動の傾向があります。資料でも解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

年上部下を尊重する姿勢は大切ですが、その配慮が行き過ぎたり、遠慮して放任したりすると、かえって年上部下を戸惑わせたり、モチベーションを下げたりすることがあるのです。

年上部下の目標設定・評価に潜む落とし穴

――年上部下だからと遠慮したり、特別扱いしたりするのではなく、マネジメントするメンバーの一人として向き合うことが大切なのですね。では、本人の意欲を引き出すためには、どのような対話が必要なのでしょうか。

前川氏:大切なのは、「会社がやってほしいこと」を一方的に伝えるのではなく、まず本人のキャリアビジョンを聞くことです。そのうえで、会社として期待する役割との接点を一緒に探していきます。こうした接し方は部下が年上であろうと年下であろうと変わりません。

ただ、ミドルシニア世代になると、自分の将来について考える機会が少なくなりがちです。かつては「60歳で定年」「65歳で再雇用終了」というイメージがありました。しかし今は、60代後半でもはたらき続ける人が増えています。65歳がキャリアのゴールではなくなった時代だからこそ、「その先、どんな人生を送りたいですか?」と問いかけることに大きな意味があります。質問されることで、未来を考えるきっかけになります。

――「この先のイメージ」は、仕事以外のことでも良いのでしょうか?

前川氏:はい。「家族と世界一周旅行をしたい」「地域活動に携わりたい」といった人生全体のビジョンでも構いません。そうした未来を描くことで、「そのために今、どんなはたらき方をしたいのか」というキャリアの意味づけができるようになります。

――対話の中で目標設定や評価を行う際、特に意識したいポイントはありますか?

前川氏:ミドルシニア世代へのキャリア支援では、「給与」や「肩書」をモチベーションの中心に置かないことも重要です。

長く同じ会社ではたらいていると、「昇進」や「役職」がキャリアアップの物差しになりがちです。しかし、本来それは会社の制度の一つに過ぎません。むしろ、「どんな仕事をしているときに喜びを感じるのか」「誰にどう役に立てたときにやりがいを感じるのか」といった、自分自身のはたらきがいの物差しへと視点を広げることが大切なのです。

ただ、長年会社から求められる「MUST(やるべきこと)」に応えてきたミドルシニア世代の中には、「WILL(やりたいこと)」が思いつかないという人も多いもの。そんな人には、私は「CAN(できること)」に目を向けてもらうべきだと考えています。会社の方針に従ってキャリアを積み重ねてきた人ほど、「本当にやりたいこと」をすぐ言葉にできないケースは少なくありません。一方で、長年培ってきた経験やスキルには、本人も気づいていない強みが眠っていることがあります。

だからこそ、「あなたには何ができますか」「どんな経験を積んできましたか」と問いかけながら、その人ならではの強みを言語化し自覚を促していくことが、年下上司の重要な役割だと思います。

年上部下と向き合う鍵は、管理職が育成に集中できる環境づくり

――年上部下マネジメントの問題を個人の相性や感情論ではなく、組織・人事の課題として捉え直したとき、人事や経営にはどのような役割が求められるのでしょうか。

前川氏:まず取り組んでいただきたいのは、管理職の役割を明確に定義することです。

日本企業では、プレーヤーとして優秀だった人が管理職へ昇格するケースが少なくありません。しかし、プレーヤーに求められる力と、管理職に求められる力は本来大きく異なるものです。

管理職の仕事は、自分が成果を出すことではなく、部下の力を引き出し、チームとして成果を生み出すこと。つまり、「人の心を動かすスキル」が求められる仕事なのです。

ところが現在は、多くの企業でプレイングマネジャーが当たり前になっていますよね。プレイングマネジャーは、バブル崩壊後の人員削減を背景に日本で広まったはたらき方です。その状態が常態化し、働き方改革もあいまって、管理職はプレーヤー業務に追われ、本来時間をかけるべき部下との対話や育成に十分な時間を割けなくなってしまいました。

人事や経営には、今一度、管理職がマネジメントに集中できる環境を整えてほしいと思います。AIをはじめとするテクノロジーも活用しながら、管理職の事務作業や定型業務をできるだけ減らすべきでしょう。そして、部下との対話や1on1、フィードバックに時間を使える環境をつくることが重要です。

さらに、管理職に対する継続的な育成も欠かせません。グローバル企業では、管理職になってからも継続的にリーダーシップやマネジメントを学ぶ機会を設けている例があります。一方、多くの日本企業では昇格時に簡単な研修を受ける程度で、現場でのマネジメントは本人の経験や勘に委ねられがちです。

年上部下との関わり方も含め、「人の心を動かす技術」を継続的に学べる環境づくりが、これからの組織にはますます求められるでしょう。

【取材後記】

「年上部下マネジメント」というテーマを聞くと、「年上だから接し方が難しい」「世代間ギャップがあるから仕方ない」といった話を想像していました。しかし、前川さんのお話を伺う中で印象的だったのは、「年齢」そのものよりも、「一人のキャリアにどう向き合うか」が本質だということです。年齢を重ねても、人は認められたいと思っているもの。その気持ちを引き出すのは、立場でも年齢でもなく、相手を理解しようとする姿勢や対話なのだと感じました。「管理職の仕事は部下に仕事をさせることではありません。人の心を動かすことです」。そんな前川さんの言葉が印象に残る取材でした。

企画・編集/海野奈央(doda人事ジャーナル編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/宮本七生

年上部下マネジメントのNG行動10選|改善の一手と声かけ例が分かる実践チェックシート

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