【人事2,000名調査】なぜ採用できないのか。大手と中小で異なる「詰まりどころ」と打ち手を解説

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パーソルキャリア株式会社

クライアントP&M本部

髙尾 佳宏(たかお・よしひろ)

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パーソルキャリア株式会社

doda事業本部エージェントサービス事業部 IT領域担当 ゼネラルマネジャー

谷合 拓人(たにあい・たくと)

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  • 中途採用の実施率は90.4%と高水準を維持する一方、7~8割の企業が採用難を実感
  • 従業員数300名以上では、活躍人材の見極めや転職希望者への魅力づけが課題になりやすい。一方、300名未満では、企業認知や母集団形成で苦戦する傾向が見られる
  • 採用課題は個々の工程だけでなく、認知・募集から選考、入社後の活躍までを「線」で捉えることが重要

応募が来ない。面接で見極められない。合格を出しても選ばれない──。いずれも「採用難」と一括りにされがちですが、企業によって困りごとは異なり、必要な打ち手は同じではありません。

パーソルキャリアは2026年2月、人事担当者2,000名を対象に「法人市場調査」を実施。この調査結果から見えてきたのは、企業規模によって異なる「採用活動の詰まりどころ」です。

自社はどこでつまずいているか、ポイントを知りたい人事担当者も多いのではないのでしょうか。調査を担当するパーソルキャリアの髙尾佳宏氏と、中途採用の中でも特に求人倍率が高い IT・通信・コンサルティング領域の採用支援を担う谷合拓人氏が、「採用難」の中身と打ち手を解き明かします。

採用実施率は90.4%。一方で見え始めた企業規模による差

──2026年2月に実施した法人市場調査の結果から、現在の中途採用市場をどのように捉えていますか?

髙尾氏:全体としては高い採用意欲が維持されています。2025年度下期に中途採用の実績がある企業は全体の90.4%に上りました。従業員数20名未満の企業でも68.5%に中途採用実績があり、2024年度下期調査に引き続き、採用の裾野の広がりが見られます。

採用難度についても引き続き高い状態です。各項目で7~8割の企業が難度の上昇を感じています。

「2025年度下期 採用難度の変化(従業員規模ごとの直近の動き)」

出典:他社の採用計画はどう変わる?2025年度下期法人市場調査レポート

ただ、企業規模別に見ると変化に違いがあります。従業員数300名以上の中堅・大手企業(※)では、「採用が難しくなった」とする回答が一部の項目で前年度より減少しました。依然として採用難ではあるものの、職種によっては採用しやすくなったり、自社の要件に合う人材を採用できたりする企業が出始めていると考えられます。

実際、「50名以上を採用した企業」の割合は増えていますが、右肩上がりというわけではなく、2024年度に進んだ厳選採用が緩み、2025年度は2023年度に近い水準へ戻ったと見るのが適切です。

一方、従業員数300名未満の中小企業(※)では、さまざまな項目で採用難度が高まっています。「採用計画に対する充足度」の調査では、「計画想定をかなり下回った」と回答した割合が、前年度の7.7%から13.0%へ上昇しました。特に、中小企業では採用意欲は高いものの、採用し切れずに苦戦する企業が増えているようです。

※この記事では従業員数300名以上の企業を中堅・大手企業、従業員数20~299名の企業を中小企業としています。

同じ採用難でも異なる「採用活動の詰まりどころ」

──従業員数300名以上と300名未満では、具体的にどのような課題の違いが見られますか?

髙尾氏:「中途採用業務に関する困りごと」を企業規模別に見ると、傾向が分かれています。

従業員数300名以上では、「配属予定部署が求める要件が頻繁に変わり、ターゲットを絞りにくい」「募集活動において配属予定部署の協力を得にくい」など、現場との連携に関する回答が比較的多く見られました。

採用人数が増えるほど、人事部門だけで全ての採用活動を担うことは難しくなります。多くの人材を採用するためには、配属先となる部署との協力体制が欠かせませんが、要件の擦り合わせや役割分担がうまく進まない企業もあるようです。

現場との連携が十分でなければ、配属先が求める人物像もあいまいなまま選考が進みやすく、結果として転職希望者を「見極める」精度にも影響しかねません。

一方、従業員数300名未満では、「希望する人材からの応募が集まらない」「母集団を形成できない」といった回答が目立ちます。「求める人材を採用するための費用をかけにくい」という課題もあります。

大きく分ければ、300名以上では現場連携および集まった転職希望者をどう見極めて採用まで導くか、300名未満では採用したい人材との接点をどうつくるかが、それぞれ課題になりやすいと言えるでしょう。

「2025年度下半期 中途採用業務に関する困りごと」

出典:他社の採用計画はどう変わる?2025年度下期法人市場調査レポート

──企業規模を問わず共通する課題はありますか?

髙尾氏:「採用した人材が活躍しない」「採用した人材がすぐに辞める」「定着率が低い」といった入社後の課題は、継続して高い割合を示しています。この調査を続ける中で、毎回のように全体の上位に表れている項目です。

採用した人材が定着しなかったときのダメージは、ほかの採用課題とは桁が違うのかもしれません。採用にかけた費用や時間だけでなく、受け入れた現場にも大きな影響が及ぶため、多くの企業にとって強く印象に残る課題なのだと思います。

ハード面がマッチしていても、入社後活躍するとは限らない

──従業員数300名以上の企業では、配属予定部署との連携が課題として表れています。
IT領域でも同様の傾向がありますか?

谷合氏:IT業界は、ほかの業界と比べて採用活動への現場の協力度が高いと感じます。中途採用を積極的に行ってきた企業が多く、採用に対する現場の理解も進んでいます。応募部門の社員がエージェント向け説明会に登壇したり、急な依頼でも面接に対応したりするケースは少なくありません。

ただし、そもそも人手不足が深刻だからこそ採用しているわけです。現場が多忙で、面接の時間を確保できない、関係者の予定を合わせられないといった問題は頻繁に起きています。

調査結果に表れた「現場との連携課題」は、IT領域では協力姿勢の有無というより、実際に動ける時間や余力が不足している問題として現れやすいのかもしれません。

──中堅・大手企業には応募が集まりやすい一方、「本当に欲しい人材」を採用できないケースもあるのでしょうか?

谷合氏:あります。採用要件を、経験や保有スキルといったハード面だけで定めていると、自社での活躍まで見通すことが難しくなるのです。

たとえば、どのような志向性を持つ人が活躍しているのかは、部署によっても違います。ある部署に合う人物が、別の部署にも合うとは限りません。そうした違いを言語化しないままハード面だけで採用すると、入社後の活躍や定着につながらないことがあります。

最近では、活躍人材の定義を見直す中堅・大手企業が増えてきました。入社者本人へのアンケートだけでなく、配属先の上司や周囲の社員にも、入社後の状況を聞く企業が見られます。さらに、業績や売上などの実績と、選考時の適性検査や評価のデータを突き合わせ、活躍する人材の傾向を探る取り組みも進んでいます。

──ただ、定量的な実績だけでは把握しにくい要素もありそうです。

谷合氏:そうですね。志向性やコミュニケーション力、自ら学び続ける力なども重要です。「日々の仕事にどのような行動が表れているか」「他部署の社員とどのような関係を築いているか」といった観点で、配属先の上司から情報を集めることが有効でしょう。

そこで得た情報を採用要件へ反映するとともに、選考でも一貫して見極める必要があります。職務経歴書や履歴書だけでは、定性的な要素まではわかりません。

ソフト面を含め、自社で活躍する人材像を明確にし、それを面接でどう確認するのかまで設計することが、採用後のミスマッチを減らす第一歩になります。

また、要件に合う人材ほど、競合他社の選考も同時に受けています。企業が転職希望者を見極めるだけでなく、転職希望者からも選ばれているという前提に立ち、面接を通じて自社の魅力を伝えることが欠かせません。

中堅・大手企業では面接官の人数も多いため、面接の品質にばらつきがないか、「うちに入りたいのだろう」という一方的な態度になっていないかを振り返る必要があると思います。

中小企業は「魅力がない」のではなく、「言語化できていない」ことが課題

──従業員数300名未満の企業では、なぜ母集団形成や応募獲得に苦戦しやすいのでしょうか?

谷合氏:まず大きいのは、転職市場での認知度です。転職を考えたときに会社名が思い浮かばなければ、転職希望者はその企業について調べようとはしません。求人を出しても、転職先の候補として想起されていない企業も多いと思います。

もう一つは、自社の魅力の打ち出し方です。給与や福利厚生、安定性だけで中堅・大手企業と比較すると、中小企業は見劣りしてしまうこともあるでしょう。だからこそ、自社ではたらくことで得られるものは何かを見つけ、言語化する必要があります。

ところが、社内で長くはたらいている人ほど、自社の魅力には気づきにくいものです。たとえば、エンジニア出身者が創業した企業には、経営者の思いを反映したエンジニアファーストの評価制度や人事制度があるかもしれません。それが他社にはない強みでも、自社では当たり前になっているため、採用上の魅力として認識されていないケースがあります。

経営との距離の近さや風通しの良さ、意思決定の速さも強みになり得ます。大規模なプロジェクトでなくても、少人数だからこそ一人ひとりの裁量が大きく、幅広い仕事を経験できることもあるでしょう。

社内だけで考えるのが難しければ、中途入社者やエージェントなど、外部の視点も借りながら魅力を整理することが大切です。

──自社の魅力を整理した後は、どのような取り組みが必要ですか?

谷合氏:採用チャネルを広げることも選択肢です。人材紹介サービスだけを使っている中小企業は少なくありませんが、求人媒体やダイレクト・ソーシングなども組み合わせることで、これまで接点を持てなかった転職希望者にも情報を届けやすくなります。

ただし、むやみにチャネルを増やせばよいわけではありません。ダイレクト・ソーシングを始めても、担当者がスカウトを送る時間を確保できず、活用しきれないケースがあります。また、転職希望者がなぜ転職したいのかを理解せず、一方的にスカウトを送っても、相手のニーズには届きません。

自社の魅力は何か、それはどのような人に響くのかを整理した上で、求める人物に適したチャネルと打ち出し方を選ぶ必要があります。

どの方法で、どのようなメッセージを届ければ採用につながるのかを検証し、自社なりの勝ち筋を見つけることが、採用力の向上につながります。

採用活動を「点」ではなく「線」で捉える

──採用難を感じていても、自社のどこに課題があるのか、整理できていない企業も多いと思います。まず何を見直すべきでしょうか?

髙尾氏:今回の調査データを、自社の課題を言語化するための入り口として使っていただきたいですね。

人事・採用担当者は日々の業務に追われ、「大変だとは感じているけれど、何が原因なのか説明できない」という状態になりやすいのではないでしょうか。

調査項目を見ながら、「多くの企業が困っているこの項目は、自社にも当てはまる」「全体では回答が少ないけれど、自社では大きな課題になっている」と照らし合わせることで、状況を整理しやすくなると思います。

ただし、企業規模別の傾向が、全ての企業にそのまま当てはまるわけではありません。大枠を把握した後は、自社の採用活動を細分化し、どの工程に課題があるのかを探ることが大切です。

谷合氏:従業員数300名以上の企業であれば、自社で活躍する人材を選考で見極められているか、その人に自社を選んでもらうための魅力づけができているかを点検したいですね。

300名未満の企業では、自社ではたらく魅力を整理し、誰に、どのチャネルで届けるのかを見直すことが出発点になります。

外部のエージェントなどへ相談する際には、「なぜ採用したいのか」をできるだけ整理しておくと、その後の議論が深まります。単に人手が足りない、離職者が出たという話だけでは不十分です。事業がどのような状況にあり、今後どこを目指しているのか、そのためになぜ人材が必要なのかを共有していただければ、求める人材像や求人の打ち出し方についても具体的な提案ができます。

もちろん、最初から全ての情報がそろっている必要はありません。現場へのヒアリングなど、整理する段階から外部の力を活用していただくことも可能です。

採用は、母集団形成や書類選考通過率、面接通過率といった一つひとつの「点」だけで捉えるものではありません。認知や採用ブランディングから始まり、誰に何を伝えるのか、どのような面接体験を提供するのか、入社後にどう活躍してもらうのかまでを、一つの「線」として考えることが重要だと考えています。

採用全体を俯瞰し、自社なりのストーリーを描くことは、簡単ではないかもしれません。だからこそ、自社だけで課題を抱え込まず、外部の知見も活用しながら採用活動を見直していただけたらと思います。

【取材後記】

今回の取材で印象に残ったのは、企業規模別の傾向を知るだけでなく、自社の状況に引き寄せて考えることの重要性でした。自社は、採用活動のどこで詰まっているのか。これがわかれば、次に打つべき手も見えてくるはず。日々の忙しさの中でも一度立ち止まり、採用を入口から入社後の活躍まで見渡すきっかけとして、今回の調査結果を役立ててみてはいかがでしょうか。

企画・編集/平尾千晶、酒井百世(doda人事ジャーナル編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

他社の採用計画はどう変わる?2025年度下期法人市場調査レポート

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