外国人採用を成功させるため、押さえておきたいアプローチと選考・質問方法

株式会社With World

代表取締役
一般社団法人日本国際化推進協会 事務局長
田村 一也【寄稿】

プロフィール

前回、『【外国人採用】日本企業への就職を目指す外国人材の特徴-彼らが日本で働きたい理由とは』では、外国人材の特徴、日本人との違いについて触れました。そのうえで、今回”外国人採用”の基礎では、いよいよ外国人材の募集と選考について、まとめたいと思います。

※本記事は、株式会社With World 代表取締役、一般社団法人日本国際化推進協会 事務局長の田村 一也氏に寄稿いただいたものです。

在日外国人材は、どこにどれぐらいの人数がいるのか?

まず、外国人材といっても様々です。前回の記事でも触れた「技術・人文知識・国際業務」を想定して、進めていきましょう。
在日外国人材はどこにどれぐらいの人数いるのか
募集方法の具体的事例を紹介する前に、そもそも日本に現在どの国の出身者が多いのでしょうか?採用難易度は国籍によっても大きく変わります。例えば、「国籍」と「専門領域(文理)」、さらには「語学力」を掛け合わせると、かなりニッチなターゲットを狙って採用しなければなりません。国籍ごとの在日留学生数を知るには、(独)学生支援機構が毎年発表するデータが参考になります。もし、留学生以外の外国人材も含めて、各エリアに何人いるのかを知りたい場合は、法務省の統計データを参照してください(平成29年5月1日現在)。

出身国(地域)別留学生数

国(地域)名 留学生数 構成比
中国 98,483人 41.2%
ベトナム 53,807人 22.5%
ネパール 19,471人 8.1%
韓国 15,457人 6.5%
台湾 8,330人 3.5%
スリランカ 3,976人 1.7%
インドネシア 4,630人 1.9%
ミャンマー 3,851人 1.6%
タイ 3,842人 1.6%
マレーシア 2,734人 1.1%
アメリカ合衆国 2,648人 1.1%

国内外の外国人材へアプローチする方法

さて、外国人材に向けての具体的なアプローチ方法ですが、【国内】or【海外】×【直接】or【外注】に分けて説明していきます。

①【日本国内】にいる外国人材を、【直接】採用する場合

国内で、直接アプローチする方法は主に2つあります。

1.留学生が多い大学に直接足を運ぶ方法

1つ目は、留学生が多い大学に直接足を運んで求人募集をすることです。留学生が多い大学についても、先ほど同様、(独)学生支援機構のデータが参考になります。
ここで注意したいのは、大学に就職支援の協力を求めるときです。留学生が就職活動で訪れる場所は“キャリアセンター”だけではありません。留学生の受け入れからサポートまで行う“国際部(留学生課・留学センターなど)”にも訪れることがあります。大学によって、どの部署が留学生のサポートをするのか役割が若干異なります。キャリアセンターに留学生担当がいるケースも現状は稀ですので、両方にアプローチをすることを推奨します。さらに、理系については、日本人同様、研究室単位で教授にアプローチしたほうが有効かもしれません。

学校名 分類 留学生数
早稲田大学 私立 4,767人
東京福祉大学 私立 3,000人
東京大学 国立 3,260人
日本経済大学 私立 2,708人
立命館アジア太平洋大学 私立 2,818人
筑波大学 国立 2,326人
大阪大学 国立 2,184人
九州大学 国立 2,089人
立命館大学 私立 1,860人
京都大学 国立 2,009人

2.留学生協会へのアプローチ

もう1つの直接アプローチ方法は、留学生協会です。地域によっても異なりますが、東京を中心に留学生が多いエリアでは、国籍や学校単位で留学生協会が存在します。
例えば、留学生で最も多い国籍は中国ですが、中国は大学ごとに留学生協会(日本でいうサークルに近い組織)が存在するケースが多いようです。一方、最近人数が増えているベトナムは、国籍で留学生協会があり、東京をはじめ、関西(京都・大阪・兵庫)にそれぞれ協会が存在します。大規模な組織になると企業スポンサーを付けて、独自にジョブフェアを開催することもあります。求人募集では、特定の国籍に限って募集をかけることはできませんので、このような特定の国の留学生が集まる団体へのアプローチは、ターゲットが明確なときに効果的です。

なお、留学生は”口コミ”の影響範囲が日本人以上に大きいです。理由は、日本語情報へのアクセスが弱いため。良い採用ができると、その人材をハブとして留学生の募集がしやすくなるケースが少なくありません。ある企業の採用状況を見ても、初めは母集団形成に苦労しますが、まだ外国人材採用が一般的でない現状では、募集コストが日本人よりも下がる可能性があるかもしれません。

②【日本国内】にいる外国人材を、【他のサービスを用いて(外注して)】採用する場合

これは日本人同様、“求人メディア”や“人材紹介サービス”、 “ジョブフェア”の3つがあります。留意すべき点としては、どのような外国人材に強い人材サービス会社なのか?という点を見極めることです。
外国人留学生の領域では、株式会社パソナが最も多く採用イベントを多種多様に展開しています。
人材サービス会社の特徴を見るときの切り口は、登録者(利用者)の「学位」「学歴」「国籍」「文理」の4つの点で異なります。いくつか例を挙げると、

●理工系に強い人材サービス会社『リュウカツ』を運営する株式会社オリジネーター
●ASEAN人材に強く『ASEAN JOB FAIR』を運営する株式会社ベネッセi-キャリア
●『Next Stage Asia Jobhunting』を運営しているネクストステージアジア株式会社

などがあります。このように、日本人学生の採用で一般的な大手人材会社とは異なるプレーヤーが多数存在しています。
なお、採用予算が限られる場合は、外国人版のハローワークとして東京・名古屋・大阪・福岡に『外国人雇用サービスセンター』があります。ここでも求人募集やジョブフェアに出展することができます。
『ASEAN JOB FAIR 2019』の様子

(『ASEAN JOB FAIR 2019』の様子)

 

③【海外(現地)】にいる外国人材を、【直接】採用する場合

現地での採用も近年徐々に増えてきています。これは決して多くはありませんが、一部の企業では海外の大学までリクルーティングをしに行くことがあります。また、身近なところでは、韓国政府が国内の若者の就職難を背景に海外での就職支援を推し進めています。その施策に取り組むKOTRA(大韓貿易投資振興公社)は、ジョブフェアを開催し、日本語が堪能な韓国人学生と日本企業のマッチングを図っています。

④【海外(現地)】にいる外国人材を、【他のサービスを用いて(外注して)】採用する場合

【海外(現地)】×【外注】の場合も、こちらも人材サービス会社は限られています。

●米国・英国・シンガポールなど、世界のトップ層をターゲットにしたジョブフェア『TOP CAREER』を運営するフォースバレー・コンシェルジュ株式会社
●アジアのTOP層を日本に招待する面談会『NIKKEI ASIAN RECRUITING FORUM』を開催する株式会社日経HR
●1社ずつ海外で面談会をアレンジし、採用に繋げるサービス『Bridgers(ブリッジャーズ)』を展開する株式会社ネオキャリア

があります。
他にも海外からリクルーティングを行う人材会社はありますが、複数の国にまたがって人材紹介サービスを行うには、双方の国で職業紹介免許を取得する必要があるため簡単ではありません。それゆえ、サービス提供ができる企業が限られているのが現状です。

募集方法の最後に、中途領域について少し触れておきたいと思います。中途領域は、新卒領域以上に外国人材専門の人材会社が少ない状況です。その中でも長年外国人材サービスを提供している株式会社グローバルパワーでは、社会人経験がある外国人材も利用する『NINJA』という外国人向けの就職情報サイトを運営しています。東京を中心に、外国人材を扱う人材会社は年々増えていますが、どのような特徴があるのかを見極めながらターゲットや予算に合わせて、上手く活用することが求められています。

直接 間接
国内  ・教育機関へのアプローチ
∟キャリアセンター
∟国際部(留学生課)
∟研究室(教授)・留学生協会
 ・外国人材専門の人材サービス会社の活用
∟ジョブフェア/面接会
∟人材紹介/派遣
∟求人メディア(新卒/中途)
∟外国人雇用サービスセンター
(東京・名古屋・大阪・福岡)
海外 ・教育機関へのアプローチ
・現地機関の活用
∟KOTRA
 ・外国人専門の人材サービス会社の活用
∟ジョブフェア/面接会
(現地に行く/日本に呼ぶ)
∟人材紹介サービス

外国人材の採用するうえで知っておきたい選考方法

面接する際にも、外国人材は日本人と異なるところがあるので注意が必要です。ただし、人材が優秀かどうかは、企業の採用基準によって異なります。例えばとある企業では、あえて成長志向が高過ぎる外国人材を採用しない企業もあります。最も重視したい要素が、他者との協調性や柔軟性であり、その企業の事業特性や環境等を考慮した場合、長期就業できる可能性が高まり、結果的に活躍できる人材の要素が“成長志向”ではないと判断したためです。このように、自社にとって優秀かどうかは、日本人同様、個別企業によって異なります。ここでは、外国人材だからこそ、日本人とは異なる観点で、「一緒に働く海外人材を探すために、効果的な質問」「効果的ではない質問」について、お伝えします。

一緒に働く外国人材を探す際、効果的な質問【家族の承諾と生活環境】

面接で聞いておきたいこととして、「日本で働くことについて周りの承諾を得ているのか」「食事等で配慮すべきことがあるのか(特に寮に住む必要がある場合)」があります。いずれも内定後に辞退理由になる事項でもあるため、面接の段階で確認しておくことが必要でしょう。
「日本で働くことについて周りの承諾を得ているのか」について、外国人材の方々で家族や周囲を重要視される方は多いです。地域によっては、帰国がし難いエリア出身の方も少なくないので、家族とどのようなコミュニケーションを取っているかを確認することは採用に繋げるうえで重要です。
「食事等で配慮すべきことがあるのか(特に寮に住む必要がある場合)」について、これは過去にあった事例です。入社後、研修で工場勤務となり、初めは食事付きの会社寮に住んでもらうことになった。その結果、内定者が意思決定できなかったという事例です。一方で、食事に制限がある方でも、自分で必要な食料を調達し、料理をすることはできます。そのため、この時は借り上げ社宅にすることで、個別対応を行い、辞退を避けることができました。このようなイレギュラーを早めに知り、それに柔軟に対応できるか確認しておくことも重要になります。

一緒に働く外国人材を探す際、あまり効果がない質問【志望動機やキャリアプラン】

あまり意味をなさない質問は、”志望動機”や”10年後どうなりたいか”という質問です。理由として下記2点が挙げられます。

理由①:イメージができていない状態

外国人材であるがゆえ、「早期退職するのではないか」と不安を感じ、質問したくなる気持ちは分かります。しかし、未だ日本において外国人材にとってロールモデルとなる人材が少ないのも事実。つまり、彼ら自身、将来どのように日本で活躍できるのか、明確なイメージを持てない状態で、日本企業への就職に挑戦しているケースが多いのです。そのため、もし質問するとしても、例えば1次面接で会社概要や事業内容、入社後のキャリアパスを説明したうえで、次の面接で感想とともに質問をするというようにしないと、上手く回答ができない外国人材がほとんどでしょう。

理由②:終身雇用制度やプロセス重視は日本独自

また、終身雇用を背景に長期的に仕事に携わり、成長できる人材か否かを計ろうとする、プロセス重視の日本企業の面接に対し、外国人材は結果重視のアピールをすることが多いです。具体的には、志望動機に対して「私は◯◯ができる(学んできた)、だから御社で働きたい(活躍できる)」というアピールをすることも少なくありません。それに対して、すぐにNG判断をするのではなく、日本人とは文化的に、思考プロセス的に異なる前提を持ってコミュニケーションを図り、合否を判断することが大切になります。

【まとめ】

今回、外国人材の募集と選考について触れましたが、ここではまとめきれないことも正直まだあります。それくらい、外国人材の採用には特殊性があり、すぐに受け入れが出来るというより試行錯誤が必要になる領域であるように思います。いきなり多くの外国人材を募集し、受け入れることは非常に負荷がかかりますので、少しずつ外国人材採用について考え、トライしていくことをお勧めしたいと思います。