定年延長70歳の時代、企業はどう対応するか。退職金や給与、役職定年…検討事項は多数

東京弁護士会所属 弁護士法人すずたか総合法律事務所 東京事務所

山埼由紀子(やまざき ゆきこ)弁護士 【監修】

弁護士として中小企業向けのリーガルサービスを提供。特に予防法務に力を入れ、経営者向けのセミナーを多数開催。大変好評を得ている。「経営者も従業員も共にハッピーになれる組織作り」を推奨し、女性弁護士ならではの目線できめ細やかなアドバイスをしている。

定年延長制度とはどのような制度?
定年延長制度はいつから始まるのか?
定年延長が検討され始めた背景
既に定年延長制度を導入している企業(随時更新)
定年延長や再雇用を実施した場合に、起こり得る問題と対応策
定年延長にあたり企業が検討すべきこと
国の制度はどう変わるのか?
定年延長にあたって活用できる助成金

近年、社会問題となっている少子高齢化とそれに伴う労働人口の減少。そうした中で、65歳までの雇用確保義務(全企業適用は2025年から)や、政府が「70歳まで働き続けられる環境の確保」を検討し始めるなど、「定年延長」への動きが進んでいます。

2020年1月8日、厚生労働省は、高齢者の希望次第で70歳まで働くことができる制度を整えることに関して、2021年4月から企業の努力義務にすることを決定しました。さらに、2020年2月4日に政府は、“70歳までの就業機会確保を企業の努力義務”とする、高年齢者雇用安定法などの改正案を閣議決定しました。国会で決定すれば、2021年4月に適用する見込みとなります。この決定によると、定年後の継続雇用だけではなく、フリーランスや起業して働く場合にも、業務委託として契約することを企業に求める内容になっています(2020年2月4日現在)。

経験やスキルが豊富な高齢者に力を発揮してもらうために、企業はどのような対応を検討する必要があるのでしょうか。今回は、雇用継続のための制度設計のうち、定年延長の概要や背景、定年延長した際に起こり得る問題と対応策、諸制度を見直す際のポイントなどについて解説します。

定年延長制度とはどのような制度?

従業員が一定の年齢に達したときに、自動的に雇用契約が修了となる「定年制度」。定年延長制度とは、定年となる年齢を「60歳から65歳へ」といったように引き延ばす制度のことです。定年延長制度に関連した法律の内容や、再雇用制度との違いについてご紹介します。

65歳までの雇用確保義務(全企業適用は2025年から)70歳定年も努力義務規定へ

定年延長制度は、2015年4月に改正された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」に規定されています。高年齢者雇用安定法とは、「高齢者の雇用の確保」「再就職の促進などによる高齢者の職業の安定や福祉の増進」「経済・社会発展への寄与」を目的とした法律です。高齢者雇用安定法第9条では、65歳までの安定した雇用の確保を目的とした「高齢者雇用確保措置」として、以下3つよりいずれかの措置を実施することが義務付けられています。

高齢者雇用確保措置の内容

定年が65歳未満の場合、下記①~③のいずれかの措置を実施する必要があります。

 措置①:65歳までの定年の引き上げ
 措置②:65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
 措置③:定年の廃止

高齢者雇用確保措置の内容
(参考:厚生労働省『高齢者の雇用 雇用する上でのルール』)

詳しくは後ほどご紹介しますが、2025年には65歳までの雇用確保が義務化されることになります。また、将来的には「70歳定年」が企業の努力義務になる見込みです。

再雇用制度との違いは?

企業が高齢者の雇用を促進しようとする際、定年延長と同様に検討されることが多いのが、「再雇用制度」です。再雇用制度とは、定年で退職した人を、雇用形態などを変えて再び雇用する制度です。どちらも「高齢者に活躍してもらう」という点では共通ですが、「対象者」「契約期間」「雇用形態」といった点が異なります。

定年延長制度 再雇用制度
対象者

現に雇用している高年齢者全て

対象者を限定できる(限定する基準については、具体性、客観性が必要であり、恣意的な運用は原則禁止)
「経過措置」が認められている

雇用形態

雇用形態、労働条件の変更は不可

正社員(無期雇用契約)からパートなどの有期雇用契約へ変更可能(労働条件ついては、労働者に一方的に不利になってしまうと違法と判断される恐れもあるため注意が必要)

契約期間

定年延長後の年齢まで、期間の定めなし

1年更新などの有期雇用契約が一般的

労働時間

これまでと変わらずフルタイム

フルタイムの場合もあるが、「短時間勤務」や「週3日勤務」といったように労働時間が減ることも多い

賃金・給与

企業、役職によって異なる(役職に就かなくなった場合や給与制度を変えた場合など、賃金が下がることがある)

労働時間の減少により、賃金額が下がることがある

人事評価

これまで通り、評価の対象

企業によっては、対象外の場合がある

(参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進マニュアル~高齢者の戦力化のすすめ~』、d’s JOURNAL『【弁護士監修】定年後再雇用制度を整備・活用する際の注意点を徹底解説』)

厚生労働省が令和元年11月に発表した「高年齢者の雇用状況」によると、高齢者雇用確保措置を行っている企業のうち19.4%が「定年の引き上げ」を、77.9%が再雇用制度など「継続雇用制度の導入」を行っています。この結果から、現時点では「定年の引き上げ」よりも、再雇用制度を含む「継続雇用制度」の導入率が高いことがわかります。

高年齢者の雇用状況
(参考:厚生労働省『令和元年「高齢者の雇用状況」集計結果』 P4(3)雇用確保措置の内訳より)

定年延長制度はいつから始まるのか?

定年延長は民間企業に先立ち、公務員を対象に議論が進められてきました。2018年6月には「公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる方向で検討する旨」が閣議決定されています。
(参考:人事院『定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申し出のポイント』)

公務員の動向を受け、民間企業ではいつから定年延長が始まっていくのでしょうか。民間企業における定年延長の見通しについてご紹介します。

「65歳までの雇用確保」に向けた動き

「高齢者雇用確保措置」の1つである「継続雇用制度」には、年齢により対象者を限定できる「経過措置」があります。経過措置の対象年齢は3年ごとに1歳ずつ引き上げられていますが、2025年3月31日にはこの経過措置自体が終了します。そのため2025年4月1日から全企業に「65歳までの雇用確保」が義務化されることになります。

継続雇用制度の経過措置

対象期間 対象者
2013年4月1日~2016年3月31日 61歳以上の従業員
2016年4月1日~2019年3月31日 62歳以上の従業員
2019年4月1日~2022年3月31日 63歳以上の従業員
2022年4月1日~2025年3月31日 64歳以上の従業員
2025年4月1日 経過措置の撤廃⇒実質的に65歳定年に

(参考:厚生労働省『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」の概要【平成24年8月29日成立】』)
(参考:厚生労働省 東京労働局ハローワーク『高年齢者雇用安定法ガイドブック~高年齢者の雇用の安定のために~』)

「70歳までの就業機会の確保」に向けた動き

内閣官房が2019年5月15日に開催した第27回「未来投資会議」では、高齢者の雇用促進の一環として、「70歳までの就業機会確保」が提言されています。その実現に向けた手段の1つとして定年延長が挙げられており、今後「70歳までの定年延長」が企業の努力義務となる見通しです。政府は、2020年の通常国会で、それに関連する第一段階の法案提出を目指しています。そう遠くないうちに、70歳定年も現実味を帯びてくるでしょう。
(参考:内閣官房日本経済再生総合事務局『高齢者雇用促進及び中途採用・経験者採用の促進』)

「70歳までの就業機会の確保」に向けた動き

定年延長が検討され始めた背景

どのような理由から定年延長が検討され始めたのでしょうか。その背景についてご紹介します。

人口減少・少子高齢化による、労働人口の減少

日本では、人口減少や少子高齢化が社会問題となっています。現在65歳以上の人口の割合は、全人口の3割弱ですが、2065年には4割弱にまで増える見込みです。それに伴う労働人口の減少が予想される中、労働人口の減少による影響を最小限に抑えるため検討されるようになったのが、スキルや経験が豊富な高齢者の活用です。高齢者に力を発揮してもらうための手段として、継続雇用制度や定年延長制度が検討され始めました。
(参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進マニュアル~高齢者の戦力化のすすめ~』)

年金の支給年齢引き上げによる、高齢者の就労意欲の高まり

人口減少や少子高齢化により、年金の財源確保が難しくなっています。そうした中で、厚生年金の報酬比例部分の支給年齢が、2013年度から2025年度にかけて、これまでの60歳から段階的に65歳まで引き上げられることになりました。これは60歳定年の企業で働いている高齢者にとっては、「定年退職後5年が経たないと、厚生年金を受給できない」ことを意味します。「人生100年時代」とも言われるように、健康寿命が伸びている現在、心身共に元気な高齢者は少なくありません。「年金の受給年齢になるまで働きたい」という高齢者の就労意欲の高まりもあり、定年延長が検討されるようになりました。
(参考:日本年金機構『厚生年金の支給開始年齢』)

既に定年延長制度を導入している企業(随時更新)

大手企業を中心に、既に定年延長制度を導入している企業があります。実際に、定年延長制度を導入している企業の事例をご紹介します。

太陽生命保険株式会社 ~高齢者が意欲的に働ける環境づくり~

大手生命保険会社の太陽生命保険株式会社では、「従業員」「お客様」「社会」の全てを元気にする「太陽の元気プロジェクト」の一環として、2017年4月に「65歳定年制度」を導入しました。あわせて、役職定年制度も廃止することで、給与・処遇などは60歳以前と変わらないため、シニア層が自身の能力を発揮し、意欲的に働けることが期待できます。加えて、大手生命保険会社では初となる「最長70歳までの継続雇用制度」もあり、定年退職後もシニア層が活躍できる環境が整っているようです。

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サントリーグループ ~ダイバーシティ経営の一環~

飲料品などを製造・販売するサントリーグループでは、高齢者の一層の活躍を図り、60歳以降の就労希望に応える形で、2013年4月に「65歳定年制」を導入しました。60歳以前の人事制度は変更せず、60歳以降は新たな人事制度が適用となります。多様な人材、価値観を受け入れて経営に活かす「ダイバーシティ経営」の一環として、高齢者の雇用継続を促しているようです。

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定年延長や再雇用を実施した場合に、起こり得る問題と対応策

定年延長にあたり、どのような問題が想定されるのでしょうか。対応策と併せてご紹介します。

賃金に関する問題

定年延長をする際、大きく懸念されるのが賃金に関する問題です。「高齢者に支払う賃金をいくらに設定するのか」「賞与は支給するのか」「給与支払いのためのお金をどのように捻出するのか」など、さまざまな課題があります。高齢者やその他の従業員が賃金に納得しないと、モチベーションの低下につながりかねません。

賃金に関する問題を解決するためには「個別対応ではなく、制度化・ルール化する」「特定の従業員だけが損をしないように配慮する」といった観点から、対応を検討することが重要です。高齢者の賃金は、たとえば「資格手当・職務手当などを見直す」「年齢や役職ではなく、成果に応じた給与制度に変更する」といった捻出方法の中から、自社に最も合ったものを選択するとよいでしょう。なお、賃金規定を改定する場合には、労動基準監督署への届出が必要になるなどの注意点もありますので、十分に留意してください。

組織の年齢構成バランスに関する問題

定年延長により、従業員全体に占める高齢者の割合が増加することで懸念されるのが、年齢構成のバランスです。高齢者が活躍すること自体は企業にとって良いことですが、それによって若手の「人材育成が滞る」「キャリア志向が弱まる」、社内で「世代交代が進まない」といった事態になるのは、望ましいことではありません。
組織の若返りを図るための手段としてまず考えられるのが、役職を退く年齢を決める「役職定年制」の導入です。役職定年制の導入と併せて、「将来の幹部候補の育成を早い段階から進める」「若手社員が役職に挑戦できる機会・雰囲気をつくる」といった対応策を行うとよいでしょう。

モチベーションに関する問題

賃金や年齢構成に関する問題ともリンクするのが、モチベーションの問題です。高齢者は「給与が下がる」「役職に就けなくなる」といった理由から、その他の従業員は「高齢者の賃金・役割に納得がいかない」「高齢者が部下となったときのマネジメントが難しい」といった理由から、仕事へのモチベーションが下がる可能性があります。

モチベーションに関する問題を解決するためには、「高齢者にどのような役割を期待しているのかを伝える」「全社員が納得できる人事制度・給与制度を構築する」「高齢者を部下に持つことになった従業員に対し、研修を行う」などの対応を検討するとよいでしょう。

健康管理に関する問題

健康寿命が伸び元気な高齢者がいる一方で、「若い頃より体調を崩しやすくなった」「体力や集中力が下がった」「持病があり、健康に不安を抱えている」といった高齢者もいるでしょう。健康状態が良くない状態で働いてもらうと、「ミスが増える」「労災に発展する事故が起きる」といった可能性があります。そのため「高齢者の健康管理をどのように行っていくのか」を考えることは、定年延長を進める企業が果たすべき責任の1つと言えます。

健康管理に関する問題を解決するためには、「通院しやすいよう、業務スケジュールを調整する」「体調面での不安に応じて、業務の内容や作業量を調整する」「がん検診やインフルエンザ予防接種を呼び掛ける」といった対応を検討するとよいでしょう。

定年延長にあたり企業が検討すべきこと

定年延長する際には、さまざまな制度を見直す必要があります。定年延長にあたって企業が検討すべきことをご紹介します。

雇用契約の見直し

定年延長では、従業員の労働条件を変更しない場合がほとんどです。労働条件に変更がない場合、雇用契約を新たに結んだり、雇用契約書や労働条件通知書を作り直したりする必要はありません。労働条件が変わった場合は、雇用契約を結び直し、雇用契約書・労働条件通知書を再作成しましょう。

就業規則の変更

退職に関する項目は、就業規則への記載が義務付けられている「絶対的必要記載事項」に該当します。そのため、定年延長する際には就業規則を変更する必要があります。就業規則を変更したら、労働基準監督署に届け出ましょう。

就業規則の変更例(定年65歳の場合)

(定年等)
第●●条 労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

(参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進マニュアル~高齢者の戦力化のすすめ~』p48)

早期退職制度の見直し

早期退職制度には、業績悪化により退職時期を決めて退職者を募る「早期希望退職制度」と、組織の若返りや従業員の自由な生き方を尊重する目的で従業員自身が退職時期を選べる「選択定年制度」があります。選択定年制度では、「最低勤続年数」や「適用開始年齢」などの条件を定めるのが一般的です。そのため、定年延長する場合には、これらの条件を「変更するのかしないのか」を検討する必要があるでしょう。

給与制度の見直し

給与制度への不満は、従業員のモチベーション低下や離職率の増加につながりかねません。そのため、定年延長時には、全従業員が納得できるように給与制度を見直すことが望ましいとされています。「これまでと同じ給与制度を維持する」「従来の定年以降は別の給与制度を適用する」「全従業員を対象に、成果重視の給与制度に変更する」といった方法の中から、自社に最も合ったものを選ぶことを推奨します。

退職金制度の見直し

退職金制度のある企業も多いでしょう。定年延長する際には、退職金を「いつまで積み立てるのか」「いつ支払うのか」を検討し直す必要があります。退職金は「退職一時金」と「退職年金」の併用が一般的なようですが、それぞれにさまざまな算出方法や種類があるため、非常に複雑な制度となっています。税金や年金に関する専門的な知識がなければ制度の見直しが難しいため、税理士や社会保険労務士、弁護士などの専門家からアドバイスをもらうとよいでしょう。

人事制度の見直し

人事制度への不満も、給与制度への不満と同じく、モチベーション低下や離職率の増加につながる可能性が高いとされています。そのため、定年延長にあたっては、全従業員が公平公正に評価される人事制度を構築することが重要です。場合によっては、人事制度全体を大幅に見直す必要があるかもしれません。高齢者のみならず、若手や女性、障がい者など、さまざまな立場の従業員が自身の力を発揮したいと思える人事制度を構築できるとよいでしょう。

役職定年制について

一定の年齢になると役職を退く「役職定年制」のある企業も少なくないようです。また定年延長を機に、新たに役職定年制の導入を始める企業もあるかもしれません。いずれの場合も、高齢者や他の従業員から不満が出ないように「役職定年を何歳とするのか」を慎重に検討するとよいでしょう。

国の制度はどう変わるのか?

定年延長に伴い、国の制度は今後どのように変わっていくのでしょうか?年金と失業保険の今後の見通しについてご紹介します。

年金について

現在、年金の支給開始年齢は原則65歳となっています。2019年5月15日に開催した第27回「未来投資会議」によると、政府は今のところ、「年金の支給開始年齢は変更しない」「年金受給開始年齢を自分で選択できる範囲(現在は70歳まで選択可)は拡大する」という予定のようです。しかし、年金に詳しい専門家の間では「年金の支給開始年齢が70歳以降になるのでは」と予測されています。定年延長に伴い年金がどのように変わっていくのか、今後もその動向に注目が集まりそうです。
(参考:内閣官房日本経済再生総合事務局『高齢者雇用促進及び中途採用・経験者採用の促進』)

失業保険について

定年延長の動きも影響しているからか、高齢者に支払われる失業保険については、2017年に「高年齢求職者給付金」という制度が新設されました。これは、「高年齢継続被保険者(65歳より前から、引き続き同一の事業主に雇用されている65歳以上の被保険者であり、退職日の直前の1年間に、雇用保険に加入していた期間が6カ月以上であることが必要)」に当たる高齢者が失業した際、被保険者だった期間に応じて、基本手当日額の一定日数分を一時金として一括で支給するというものです。高年齢求職者給付金の金額については以下の表の通りですが、こちらも今後どうなっていくのか、その動向に注目が集まるでしょう。

高年齢求職者給付金の金額

被保険者であった期間 給付金の金額
1年未満 基本手当日額の30日分
1年以上 基本手当日額の50日分

(参考:厚生労働省『高齢者関係資料』)

定年延長にあたって活用できる助成金

定年延長を行う際、活用したいのが「65歳超雇用推進助成金」です。高齢者が年齢に関係なく働くことができる「生涯現役社会」の実現を目指して創設された助成金で、所定の要件を満たした場合に受給することができます。65歳超雇用推進助成金には「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」の3コースがあります。各コースの違いを表にまとめました。

「65歳超雇用推進助成金」各コースの違い

65歳超継続雇用促進
コース
高年齢者評価制度等
雇用管理改善コース
高年齢者無期雇用
転換コース
概要

「65歳以上への定年引き上げ」「定年の定めの廃止」「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度」のいずれかを導入した事業主に対して助成を行う(支給は1回限り)

高齢者向けの「雇用管理制度の整備等に係る措置」を実施した事業主に、一部費用の助成を行う(実施期間:1年以内)

「50歳以上かつ定年年齢未満」の有期契約労働者を、無期雇用に転換させた事業主に助成を行う

主な要件の概要

●制度を規定した際に経費を要した事業主であること

●制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること

●高年齢者雇用安定法第8条または 第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと

●1年以上継続雇用されている60歳以上
の雇用保険被保険者が1人以上いること

● 高年齢者雇用推進員の選任、および職業能力の開発・向上のための教育訓練や施設・方法の改善、健康管理、安全衛生の配慮など、高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であること

●「雇用管理整備計画書」を作成し、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出し、計画内容について認定を受けていること

●上記の計画に基づき、高年齢者雇用管理整備の措置を実施し、実施状況や運用状況を明らかにする書類を整備していること

●高年齢者雇用安定法第8条、または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと

●60歳以上の雇用保険被保険者であって、講じられた高年齢者雇用管理整備の措置により、雇用管理整備計画の終了から6カ月以上継続雇用されている者が1人以上いること

●「無期雇用転換計画書」を作成し、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出し、計画内容について認定を受けていること

●有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を、労働協約または就業規則、その他これに準ずるものに規定していること

●上記の無期雇用転換計画に基づき、当該計画の実施期間中に、高年齢の有期契約労働者を、無期雇用労働者に転換していること

●上記の無期雇用転換計画により転換された労働者を、転換後6カ月以上の期間継続して雇用し、賃金を支給すること

●高年齢者雇用安定法第8条、または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと

支給額

●「行った措置の種類」「定年を何歳まで引き上げたか」「引き上げ幅(+何歳分か)」「60歳以上の被保険者数」によって、金額が細分化されている

●「65歳までの定年引き上げ」の場合、10万円~150万円

<中小企業>
雇用管理制度の整備等の実施に要した経費の60%(生産性要件を満たすと75%)
雇用管理制度の導入または見直しに必要な専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費は、初回に限り30万円と見なされ、2回目以降の申請は、30万円を上限とする経費の実費

<中小企業以外>
雇用管理制度の整備などにかかった経費の45%(生産性要件を満たすと60%)

<中小企業>
48万円 (生産性要件を満たすと60万円)

<中小企業以外>
38万円(生産性要件を満たすと48万円)

(参考:厚生労働省『65歳超雇用推進助成金』『「65歳超雇用推進助成金」のご案内』)

【まとめ】
少子高齢化が進む中、どの企業にとっても労働力不足は避けては通れない問題となるでしょう。そうした中で、高齢者雇用確保措置の1つである定年延長は、人材の確保に悩む企業にとって、解決につながる制度です。しかし単に「定年を延長すればよい」というものではなく、高齢者とその他の従業員が、それぞれの強みを活かして活躍できる制度をいかに構築していくかが重要となります。今後の企業成長のための人材戦略の1つとして、定年延長を検討してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/unite株式会社、編集/d’s JOURNAL編集部)