【3分でわかる】ガバナンスとは?コンプライアンスとの違いと企業がすべきこと

d’s JOURNAL編集部

組織における不正行為を未然に防ぎ、体制管理をするために必要不可欠な「ガバナンス」。

企業では「コーポレートガバナンス」とも呼ばれており、経営の管理・監督を行う仕組み全体を指します。「ガバナンス」は健全な企業経営を行っていくために非常に重要です。

この記事では「ガバナンス」の意味や類似した言葉との違い、コーポレートガバナンスを強化していくための方法を簡単に説明します。

ガバナンスとは?

ガバナンス(governance)とは「統治・支配・管理」を示す言葉です。企業におけるガバナンスは「健全な企業経営を目指す、企業自身による管理体制」を指します。

日本では、2000年代ごろに大企業による不祥事が相次いだことから、注目されるようになりました。経営者の独善的な行動や不正、情報漏えいといった経営リスクを未然に防止するためには、ガバナンスの強化が必須です。

具体的には、「内部統制やリスクマネジメントを向上させる部門の設置」や「役割と指示系統を明確にする仕組みづくり」などが挙げられます。

企業がステークホルダー(利害関係者)との信頼関係を築いていくためにも、ガバナンス体制を構築し、強化していくことは重要な取り組みだと言えるでしょう。

ガバナンスとは?

ガバナンスと似ている言葉との違い

ガバナンスと類似し、混同されやすい言葉に「コンプライアンス」「リスクマネジメント」「内部監査」「ガバメント」があります。

それぞれの意味と違いを見ていきましょう。

ガバナンスとコンプライアンスの違い

コンプライアンス(compliance)とは、企業活動における「法令順守」を指すビジネス用語です。

コンプライアンスが順守するのは「法令」だけでなく、業務規定や社内ルールである「社内規範」、社会常識や良識による「社会規範」、企業理念や社会的責任(CSR)といった「企業倫理」なども含まれます。このコンプライアンスを維持・改善するための「管理体制」がガバナンスです。

ガバナンスを強化していくことがコンプライアンスを強化することにもつながります。

ガバナンスとリスクマネジメントの違い

リスクマネジメントとは、想定される経営リスクを事前に把握するための管理手法です。

企業を取り巻くリスクが多様化・複雑化している現代では、リスクマネジメントのプロセスを適切に構築する必要があります。プロセスが適切に構築・運用されることによってリスクが発生した際の損失を最小限に抑えることが可能です。

リスクマネジメントは健全に企業経営を行っていく上では欠かせないもので、ガバナンスにおける大切な機能の一つと言えるでしょう。

ガバナンスとリスクマネジメントの違い

(参考:『【弁護士監修】コンプライアンスの意味と違反事例。企業が取り組むべきことを簡単解説』)

ガバナンスと内部監査の違い

内部監査とは、経営活動への助言や勧告、支援を行う部門のことです。組織内で独立して機能していることが特徴で、ガバナンスやリスクマネジメントにおけるプロセスの有効性を、客観的に評価しコントロールする役割を担います。

ガバナンス体制を構築していくためには欠かせない役割の一つです。

ガバナンスと内部監査の違い
(参考:一般社団法人日本内部監査協会『内部監査基準』)

ガバナンスとガバメントの違い

ガバナンスと似た言葉に「ガバメント」があります。ガバメント(government)は日本語で「政治」や「政府」を表す言葉であるため、「企業の統治」を表すガバナンスとは意味がまったく異なります。

どちらも「統治する」という意味を持つ「govern」が由来となった言葉ですが「ガバメント」の主体は「国」で、ガバナンスの主体は「組織」です。

ガバナンスとガバメントの違い

上場企業が順守しなければならない「ガバナンス・コード」とは?

ガバナンス・コード(コーポレートガバナンス・コード)とは「ガバナンス体制を構築する際に守るべき原則・指針」のことです。

日本金融庁と東京証券取引所が中心となって策定し、2015年3月に公表されました。「上場企業における不祥事を未然に防ぐこと」「日本の国際的な競争力を強化すること」を目的につくられています。

上場企業が順守しなければならない「ガバナンス・コード」とは?
(参考:株式会社東京証券取引所『コーポレートガバナンス・コード』)

上場企業にはガバナンス・コードに関する報告書の提出が義務付けられており、5つの原則が守られていない場合には、「コーポレートガバナンス報告書」で理由を説明する必要があります。

中小企業には適用されないものの、最近では長期的な収益性を高めることを目的に、中小企業でもガバナンス・コードの活用が増えている傾向です。

ガバナンスが効いていると何が良いのか?

「ガバナンスが効いている」というのは、管理が徹底していて統制が取れている状態を指します。ガバナンスを効かせることによって、企業にはどのような影響があるのでしょうか。

ここでは企業にもたらす効果やメリットをご紹介します。

・企業価値が向上する
・企業の持続的な成長力や競争力を高められる

企業価値が向上する

ガバナンスを強化することにより、企業の対外的な信頼や魅力が向上し、優良企業として認知度が高まります。企業の社会的価値の向上は株主やステークホルダーの利益を守るだけでなく、企業の中長期的な発展の支えにもなるでしょう。

また、企業価値は株価算出の基準にもなります。企業価値が向上することで金融機関からの信頼も厚くなり、出資や融資を受けやすくなるなど、財務状態の安定も期待できるでしょう。

企業の持続的な成長力や競争力を高められる

ガバナンスの強化により企業経営を円滑に進められれば、中長期的に収益力を高めることができます。収益力が向上すれば、新規事業への投資や優秀な人材の獲得など、競争力を高めるための施策を積極的に取り入れられるでしょう。

また企業の成長は、経営層だけでなく社内全体のエンゲージメントを高め、より強固な組織体制の構築にもつながることが期待されます。

ガバナンスが効かないと何が起こる?

「ガバナンスが効いていない」というのは、企業内の監視体制が適切に行われていない状態を指します。その場合、企業にはどのようなことが起こるのでしょうか。

ここではデメリットやリスクについてご紹介します。

・不正や不祥事を防止できず、社会的信用を失う
・世界経済のグローバル化に対応できない

不正や不祥事を防止できず、社会的信用を失う

ガバナンスが効いていない状態では、企業内の監視体制が行き渡らず、経営や業務プロセスにおいて不正や不祥事が発生するリスクが高まります。

一度不祥事が発生すれば、社会的信用を大きく失うことは免れません。消費者や投資家から大きな批判が起こった結果として経営不振となり、倒産に陥る可能性もあるでしょう。

世界経済のグローバル化に対応できない

グローバル化が進む中で市場競争を勝ち抜くためには、ガバナンスの強化は欠かせません。

企業統治がなされていない状態では経営の健全性や透明性、業務執行の効率性を確保できず、世界経済のダイナミックな変化に柔軟に対応できなくなるでしょう。

特に海外への市場拡大や事業展開などを視野に入れている企業では、価値観や文化の差で生じるリスクにより、経営状態の悪化も懸念されます。

コーポレートガバナンスを強化する方法

コーポレートガバナンスを強化するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは強化するために効果的な施策をご紹介します。

・内部統制を構築・強化する
・第三者視点での監視体制をつくる
・コーポレートガバナンスを社内へ浸透させる

内部統制を構築・強化する

ガバナンスを強化するためには内部統制の構築と整備が重要です。内部統制が機能していればこそ、社内外に対する「透明性の高い情報の開示」が可能となります。

社内で順守すべきルールを定め、ルールに従って業務が行われているかを監視・指導する体制を構築しましょう。そのためには取締役会や内部監査部門など、各部門の役割を明確にすることが重要です。

第三者視点での監視体制をつくる

一部の経営陣や社員による不正を防ぐには、第三者的視点での監視体制が有効です。そのためには内部監査だけでなく、独立性を持って客観的に評価できる、専門人材による監視体制をつくることが効果的でしょう。

外部による監査が入ることにより、社内ではなかなか気付くことができない不透明なルールや業務プロセスが発見しやすくなります。社外取締役や社外監査役、報酬委員会などを設置することが有効でしょう。

コーポレートガバナンスを社内へ浸透させる

コーポレートガバナンスを強化するためには株主や社外だけでなく、従業員に対しても考えや方向性を浸透させることが重要です。

行動規範や倫理憲章などを作成し、従業員が業務遂行や意思決定するための判断基準を明確にしましょう。また、従業員が行う業務プロセスを可視化して、業務の遂行内容を把握することも大切です。

「業務フローをまとめてマニュアル化する」などの対策を行うとよいでしょう。

まとめ

ガバナンス体制の強化は、企業が継続的な成長を遂げていくために不可欠な取り組みだと言えます。

不祥事や不正を未然に防ぐだけでなく、「優良企業としての社会的な認知度が高まる」「企業経営が健全・円滑に進む」「ステークホルダー(利害関係者)の利益を最大化できる」といったメリットがあるからです。

今回の記事を参考に、ガバナンス強化に向けた施策を取り入れてみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、企画/d’s JOURNAL編集部)

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