帰属意識、自社は低い?高い?すぐ実践できる「帰属意識を高める15の施策」-計測シート付-

d's JOURNAL編集部
帰属意識とは?
帰属意識が高い場合のメリット
帰属意識が低い場合のデメリット
帰属意識を高めるには?まずは4つのステップ
帰属意識を高めた事例

ビジネスシーンにおいて、「会社の一員である」という自覚を意味する「帰属意識」。帰属意識が高いと、組織力が強まり、従業員の定着率や生産性の向上につながります。一方で帰属意識が低いと、離職率が上がったり、従業員の士気が下がって生産性が落ちたりするといった問題が発生します。労働力人口の不足により、人材の獲得競争が激化する中で人材確保を図ろうと、帰属意識の向上に取り組む企業も増えています。今回の記事では、自社の帰属意識の測り方や、帰属意識を高めるためにすぐに取り組める施策をご紹介していきます。

帰属意識とは?

帰属意識とは、「集団に属している意識」のこと。英語では「sense of belonging」と表現されます。ビジネスシーンでは、「その会社の一員であるという自覚」を意味する言葉として使われます。近年では雇用の流動化や、非正規労働者の増加、働き方の多様化などにより、従業員の帰属意識は低下しつつあると言われています。

帰属意識とは?

 

●エンゲージメントと従業員満足度との関係性
エンゲージメントと従業員満足度との関係性

エンゲージメントとの関係性

帰属意識と似た意味の言葉に「エンゲージメント」があります。エンゲージメントとは、本来「約束」「誓約」という意味を持つ言葉ですが、人事用語では「組織に対する従業員の帰属意識や貢献意欲」を意味します。従業員のエンゲージメントが高いということは、従業員が「その企業で働くことに誇りを感じている」、あるいは「企業の方向性を理解した上で、前向きに業務に取り組んでいる」という状態を指します。つまり、エンゲージメントは帰属意識を測る一つの指標であり、エンゲージメントを高めると帰属意識も高まると考えられるでしょう。
(参考:『エンゲージメント向上は生産性UPや離職防止に効果あり。概念や測定法、高め方を解説』)

従業員満足度との関係性

従業員満足度とは、従業員個人が組織や仕事内容、職場環境や人間関係などに、どれぐらい満足しているのかを測る指標です。ES(Employee Satisfaction)とも呼ばれます。従業員満足度が高いということは、従業員が自社に対して「働きやすい」「居心地がよい」と感じている状態を指します。従業員満足度は、従業員エンゲージメントや帰属意識の「ベース」であると言えるでしょう。つまり、従業員満足度を高めることで、従業員エンゲージメントも高まり、その結果「この企業の一員でありたい」という帰属意識を高めることにもつながると考えられます。

帰属意識が高い場合のメリット

従業員の帰属意識が高い企業には、どのようなメリットがあるのでしょうか。次の3つに分けて解説します。

メリット①:離職が少なく、定着率が上がる

帰属意識が高い企業では「ここで働き続けたい」と考える従業員が多いため、離職する従業員が少なくなります。すると長く働き続けてくれる従業員が自然と多くなり、人材の定着率が高くなります。さらに従業員が定着することで、業務に支障を来すような急な人手不足や人員の入れ替わりが起こりにくくなり、職場環境と生産活動も安定します。職場環境が安定すると、より働きやすさが増し、「ここで働き続けたい」と考える従業員が増える…という好循環につながっていきます。

メリット②:従業員同士の結び付きが強くなり、生産性が向上する

帰属意識が高い職場では、従業員同士の結び付きも強く、チームの一体感が得やすいといったメリットがあります。そのような組織では「仲間のために協力しよう」「チームで力を合わせて乗り越えよう」といった意識を持ちやすく、相互協力やコミュニケーションが活性化しやすくなるでしょう。その結果、業務の効率化や組織の生産性向上につながりやすくなります。またチームの結びつきが強い組織では、教育に関する姿勢・体制も整っていることが多く、新しく入社した人が早く業務や組織になじめるようになるといった効果もあります。結果的に、新規採用した人材の生産性も高くなるでしょう。

メリット③:採用・教育コストの削減

帰属意識が高く、従業員が定着する企業では、頻繁に採用を行う必要がなくなります。そのため、求人や採用活動にかかるコスト・工数を削減できるというメリットがあります。当然、採用後の育成コスト・工数の削減にもつながります。また、雇用が安定していると、突発的な退職による欠員補充が不要となり、必要なタイミングで必要な人材をじっくり見極めて採用できるため、採用する人材の質を向上させることもできます。
加えて、帰属意識が高いと採用手法にも変化が生まれます。従業員が友人や知り合いを採用候補者として紹介する「リファラル採用」なども活発になると考えられるでしょう。リファラル採用は、仕事の内容をある程度把握した従業員による紹介なので、自社にマッチする人材を獲得しやすく、求める人材を絞って採用できるためコストも抑えられます。このように、帰属意識が高いと採用や教育にかかるコスト・工数を抑えながら、自社に合った人材を採用できるようになるのです。
(参考:『リファラル採用、社員は協力している?20代・30代の本音調査』)

帰属意識が低い場合のデメリット

従業員の帰属意識が低い企業では、「生産性が下がる」「離職率が上がる」「採用コストがかかる」といったデメリットが考えられます。帰属意識が低いと、従業員の「組織や仕事に対する関心」が希薄になり、チームで発生した事象や担当する業務に関しても「自分には関係がない」と思うようになるでしょう。業務を「自分ごと」として捉えられないため、成果を生み出すための努力や、自身を成長させるための向上心が生まれにくく、組織全体の生産性も下がると考えられます。
また、帰属意識が希薄な従業員は、退職することへの抵抗も少なく、簡単に離職してしまいます。「この会社には自分の居場所はない」と感じている従業員に対して、面談や給与交渉など引き止めるための施策をいくら取り入れたとしても、効果は期待できないでしょう。従業員が定着せず離職率が高まれば、採用・育成にかかるコストや工数が増大し、結果として企業の経営を圧迫することにもつながります。

帰属意識を高めるには?まずは4つのステップ

帰属意識を高めるためには、どのような施策をどのような流れで取り入れるとよいのでしょうか。4つのステップについて解説します。
●帰属意識を高めるために必要な4つのステップ
帰属意識を高めるために必要な4つのステップ

ステップ①:自社の帰属意識が高いか低いか、現状を把握する

従業員の帰属意識を高めるためには、まず自社の帰属意識が高いか・低いかについて、現状を把握することが大切です。帰属意識の高さは、一般的に「従業員満足度調査」や「従業員エンゲージメント調査」などを用いて測ることが多いようです。これらの調査の実施にあたっては、独自のアンケートを作成する方法と、外部のコンサルティング会社や調査会社に依頼する方法があります。また紙のアンケートを回収する方法や、WEB上でアンケートを実施する方法などもあります。実施のコストや工数などを考慮しつつ、自社に合う方法を選びましょう。

従業員満足度調査

従業員満足度調査とは、従業員が今の職場で「働きやすいと感じているか」や「満足して働けているか」を知るための調査です。仕事内容や働く条件、設備などに対して、どの程度満足しているのかを確認できる設問を用意しましょう。

●従業員満足度調査の質問項目例

1.あなたの職場には、業務を遂行するための十分な設備が整っていますか
2.現在の業務量は、あなたにとって適切だと思いますか
3.現在の業務内容は、あなたに合っていると感じますか
4.あなたの職場は、困ったことがあると相談しやすい雰囲気ですか
5.評価制度と給与について、納得感がありますか

従業員エンゲージメント調査

従業員エンゲージメント調査とは従業員の「働きがい」について知るための調査です。エンゲージメントの測定方法として近年注目されているのが、米ギャラップ社が実施している通称「Q12(キュートゥエルブ)」です。これは12個の質問をし、それぞれ1~5段階で回答してもらうことで、業務への前向きな姿勢や、自分が役立っていると実感できる「働きがい」の度合いを測ることができるとされています。

●エンゲージメントの質問項目「Q12(キュートゥエルブ)」

1.私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている
2.私は自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている
3.私は仕事をする上で、自分の最も得意とすることを行う機会を毎日持っている
4.直近一週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした
5.上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれている
6.仕事上で、自分の成長を励ましてくれる人がいる
7.仕事上で、自分の意見が考慮されているように思える
8.自分の会社の使命/目標は、自分の仕事を重要なものと感じさせてくれる
9.自分の同僚は、質の高い仕事をすることに専念している
10.仕事上で、誰か最高の友人と呼べる人がいる
11.この半年の間に、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
12.私はこの一年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った

上記以外にも、独自の視点で質問項目を設定することができます。その場合は「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の浸透」「人間関係やコミュニケーション」「職場環境」「働き方や制度」「目標設定や評価」など、自社の帰属意識を高めるために関係すると考えられる項目を設定しましょう。

(参考:経済産業省主催 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会『平成30年度産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)』)
(参考:『エンゲージメント向上は生産性UPや離職防止に効果あり。概念や測定法、高め方を解説』)

方法②:自社の課題と原因を特定する

調査で得られた数値を基に、帰属意識の低下につながる自社の課題と、その原因を確認しましょう。数値が低い質問項目が、帰属意識を低下させている課題であると捉え、どのような原因があるのかを洗い出します。「課題」と「考えられる原因の例」を表にまとめました。

●調査結果から考えられる原因(例)

調査結果 考えられる原因(例) 課題
企業理念に関する質問で数値が低い ●ミッション・ビジョン・バリューと従業員の認識に乖離があるのではないか
●企業理念や方向性をリーダーが発信する機会が少ないのではないか
企業理念やミッション・ビジョン・バリューを浸透させる
業務量や業務内容が適切かどうかを尋ねる質問で数値が低い ●業務過多により、ワークライフバランスが乱れているのではないか
●業務のフィードバックを受ける機会が少なく、成長を実感できていないのではないか
●ワークライフバランスを充実させるための制度を整える
●業務のフィードバックを行い、成長を実感させる
社内の人間関係に関する質問で数値が低い ●人間関係でトラブルが発生している可能性がある
●上司や部下との関係でミスマッチが起こっているのではないか
●コミュニケーションを取る相手が限られているのではないか
●社内に相談できる相手がいないと感じているのではないか
社内に相談できる窓口(相手)を用意する
目標設定や評価方法に関する質問で数値が低い ●評価方法やプロセスに不満を感じている可能性がある
●本人の意欲やスキルに対して、目標設定が適切でないのではないか
●チャレンジの機会が少ないと感じているのではないか
本人の意欲やスキルに対して、適切な目標を設定する
キャリアに関する質問で数値が低い ●社内研修やワークショップなど、学びの場が少ない可能性がある
●ロールモデルになるような人材がおらず、キャリアを描けていない可能性がある
●社内研修やワークショップなど、学びの場を設ける
●自分の能力や得意分野を活かせる環境を用意し、成長を実感させる
職場設備や環境に関する質問で数値が低い ●業務上で必要な設備やツールが整っていないことで、不都合が生じているのではないか
●オフィス環境が従業員の健康にリスクを及ぼしている可能性がある
必要な環境・ツールを洗い出し、設備投資をする

例えば、「職場の人間関係は良好か?」といった社内の人間関係に関する質問の数値が低かった場合、『人間関係やコミュニケーションに課題がある』と考えられます。そこから、「人間関係にストレスを感じているのではないか」「コミュニケーションを取る時間が減少しているのではないか」など、考えられる原因を全て洗い出します。自社の状況や従業員の属性などさまざまな情報と掛け合わせて、原因を分析するようにしましょう。

方法③:課題に合わせて施策を打つ

調査によって自社の課題と原因を特定したあとは、解消のための施策を速やかに取り入れましょう。施策は複数用意し、どの施策が一番効果的かを検討します。以下に、それぞれの課題ごとに考えられる具体的な施策をまとめました。

●課題に合わせた具体的な15の施策

課題 具体的な15の施策
自社のミッション・ビジョン・バリューを浸透させる 1. 社内報などでミッション・ビジョン・バリューに関するストーリーを伝える
2. ミッション・ビジョン・バリューを基にしたワークショップや取り組みを実施
業務のフィードバックを行い、成長を実感させる 3. 1on1など定期的な面談を行う
4. メンター制度の導入
本人の意欲やスキルに対して、適切な目標を設定する 5. OKRの導入
社内コミュニケーションを活性化する 6. コーヒーブレイクの導入
7. チャットツールを活用したコミュニケーション活性
8. 社内部活動などの実施
社内に相談できる窓口を用意する 9. ブラザー・シスター制度の導入
ワークライフバランスを充実させる 10. 短時間勤務制度
11. フレックスタイムの導入
12. テレワークの導入
自分の能力や得意分野を活かせる環境を用意し、成長を実感させる 13. ジョブローテーションを行う
社内研修やワークショップなど、学びの場を設ける 14. OJTの実施
15. リカレント教育を受講するための休暇制度を導入

方法④:効果測定

施策を打ったあとは、効果を測定する必要があります。課題や施策ごとの変化を知るために、面談や5分程度で応えられるようなアンケートを実施するとよいでしょう。調査で得られたデータは、今後行う調査結果と比較できるように保存し、振り返りに活用します。また、分析結果は積極的に従業員に開示しましょう。そうすることで「単なる調査ではなく、自分たちの回答が会社の経営に反映されている」という信頼を構築できます。

帰属意識を高めた事例

帰属意識を高めるために、企業ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。帰属意識を高めた事例を3つご紹介します。

事例①:株式会社クレオフーガ ~リモートワークにおける円滑なコミュニケーションの取り組み~

ストックミュージックサービスなどの開発運営を行う株式会社クレオフーガは、リモートワークにおけるコミュニケーションを円滑にする取り組みを積極的に取り入れています。同社は、岡山本社と東京支社の2拠点があり、それぞれの拠点でリモートワークをしている従業員がいます。円滑なコミュニケーションを行う取り組みとして、全社テレビ会議や日報などの定例的な報告に加え、チャットでのコミュニケーションを頻繁に図っているそうです。また社内ラジオを活用して、企業方針や業務報告を従業員へ情報共有するとともに、従業員同士の情報交換の場を提供しています。コミュニケーションの質と回数を上げることで、帰属意識の向上を目指しています。
(参考:『社内コミュニケーションは質と量。岡山と東京を結ぶ、リモートワークへのスタンスとは』)

事例②:株式会社アトラエ ~定期的に会社の課題についてディスカッションの場を持つ~

求人メディアやAIビジネスマッチングアプリなどを展開する株式会社アトラエは、従業員の帰属意識を高めるために、定期的に会社の課題についてディスカッションする場を設けています。企業ビジョンの共有や創業者に対して抱いている疑問を発信できる機会を持つことで、従業員に「この会社は自分たちの会社だ」という当事者意識や責任感を感じてもらい、意識改革に取り組んでいるそうです。
(参考:『「労働時間を短くするよりエンゲージメントを高める」アトラエの考える働き方改革』)

事例③:パーソルキャリア株式会社 ~「良い組織をつくる」ことを全員に「自分ごと化」させる~

転職サイトやエージェントサービス、転職イベントなど、多彩なサービスを展開するパーソルキャリア株式会社では、「良い組織をつくる」ことを従業員に「自分ごと化」させることで、帰属意識の向上を目指しています。同社のIT部門組織では、エンジニアを対象に企業が掲げるミッション・バリューの他に、グループごとにスローガン(行動指針)を設定する取り組みを行ったそうです。そうすることで「自分たちで決めたスローガンは守り抜く」と主体的に行動するようになり、組織活性化につながったと言います。メンバーの力を最大限に発揮するというマネジメントにより、主体性を図るための組織スコアを大きく向上させることにつながりました。
(参考:『「受け身型 IT部門」からの脱却。エンゲージメントが高い自律型組織のつくり方』)

まとめ

帰属意識を高めることで「従業員のモチベーションアップによる生産性の向上」「企業と従業員が共に成長できる」「自社に合った人材流出の防止」などのメリットが期待できます。自社の帰属意識が高いか・低いかは、「従業員満足度調査」や「エンゲージメント調査」を活用して知ることができます。帰属意識の低さに課題を感じている企業は、まず4つのステップに取り組み、その結果に応じて具体的な施策を実行してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)