【かんたん図解】請負って何?業務委託・派遣・受託…どんなとき、どれを選べばいいの?

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

請負とは?
業務委託・委任・準委任・派遣などの契約形態との違い
請負のメリット
請負のデメリット
請負契約をする際に気を付けたい法律
「偽装請負」になってしまわないために
請負契約をする際の注意点

企業の社内業務を外部に委託し、成果物の完成に対して報酬が発生する「請負」。近年の人手不足を背景に、業務のアウトソーシングを進める企業も増えてきており、請負の活用もその取り組みの一つとなっています。しかし、請負を活用するには、どのような契約を結べばよいのでしょうか。この記事では請負契約の定義と、委任・派遣といった類似する契約形態との違い、メリット・デメリット、契約時の注意点などを図でわかりやすく解説します。

請負とは?

請負とは、企業が業務をアウトソーシングする際の契約形態の一つです。「請負契約」や「業務請負」などと呼ばれることもあります。請負契約の特徴は、「成果物の完成」を約束する契約であり、契約書によって定めた「期限までに」「仕事を完成し、成果物を納めてもらう」ことに対して報酬を支払うという点です。

●請負契約で委託する業務の例

・Web制作
・広告制作
・ノベルティ制作
・システム開発
・セミナー講演 など成果物が明確なもの

また、請負の注文会社は完成までの工程や作業方法などについて、その業務を請け負った会社および個人に指示が出せないことも特徴です。つまり、成果物によってのみ仕事の完成が判断され、その途中の工程や作業については、原則として関与できないのです。ただし、実際に仕事を進める個人が働く場所は問いません。そのため、請負会社で働く場合もあれば、請負を委託した企業へ赴き、働く場合もあります。

請負とは?

業務委託・委任・準委任・派遣などの契約形態との違い

請負契約と類似する契約形態や、混同しやすい用語にはどのようなものがあるのでしょうか。外部委託を適切に活用するためにも、それぞれの契約形態との違いを正しく理解しておきましょう。

業務委託 労働者派遣
請負 委任 準委任
業務の目的 仕事の完成 法律行為となる事務処理 法律行為以外の事務処理 依頼された業務の範囲
報酬の対象 成果物 業務の遂行 業務の遂行 業務の遂行
指揮命令権 受託側 受託側 受託側 派遣先

業務委託との違い

業務委託とは、民法で規定されている「請負契約」「委任契約」「準委任契約」を総称する言葉です。契約書を結ぶときには、「業務委託契約書」という名称を使うこともありますが、法律上存在する言葉ではありません。そのため、業務委託は日常業務において用いられる実務用語として捉えるとよいでしょう。

委任契約との違い

委任契約とは、法律行為をともなう事務処理を委託するときに使われる契約形態です。成果物の有無ではなく「業務の遂行」に対して報酬を支払います。民法第643条では、以下のように定められています。

第643条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

例として、弁護士に裁判の訴訟代理人をお願いする場合などがこれにあたります。訴訟代理人の場合、成果報酬に関する特約がない限り、「勝訴」「敗訴」という結果にかかわらず、「法律行為」そのものに対して報酬が発生します。

●委任契約で委託する業務の例

・訴訟代理人
・税務顧問 など

委託側と受注側との間に指揮命令関係がないことは請負と共通していますが、報酬が発生する対象が異なります。

委任契約との違い

準委任契約との違い

準委任契約とは、法律行為以外の業務を委託するときの契約形態です。民法656条では、以下のように定められています。

第656条 この規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

例えば、「社内のシステム運用」や「文書や情報管理」などを委託するときに用いられます。事務処理の件数や業務時間など、実際に業務を行ったことに対して報酬を支払います。

●準委任契約で委託する業務の例

・システム保守、運営
・コンサルティング
・リサーチ
・顧客向けアンケート
・研修
・DM発送 など

準委託契約の目的は委任契約と同様、「業務の遂行」としているため、受託者は成果物の完成責任を負いません。また、委託側と受注側との間に指揮命令関係がないことは、請負契約、委任契約と共通しています。

準委任契約との違い

派遣との違い

労働者派遣は、許可を受けた労働者派遣事業者(派遣会社)が、雇用する従業員を派遣先企業に派遣し、指定の業務を行う契約です。労働者派遣法第2条第1号には、「労働者派遣」の定義について以下のとおり規定されています。

第2条第1号 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

派遣契約の場合も、委任・準委任契約と同様に「業務の遂行」を目的としています。そのため、成果物の完成にかかわらず報酬を支払います。また、請負では業務を受託した企業に発注者が雇用する労働者に対する指揮命令権がないのに対して、派遣契約では派遣元企業が雇用する労働者に対する指揮命令権が、派遣先企業(派遣を受け入れる企業)にあります。そのため、派遣先企業の指示のもと業務を行うのが一般的です。

派遣との違い

請負のメリット

企業が請負を活用することで、さまざまな効果が期待できます。ここでは、派遣契約との違いや得られるメリットなどを、請負の委託側と受託側の両面からご紹介します。

委託側のメリット

委託側は、請負を活用することで、コストや業務負担を削減することができます。例えば、業務を遂行する上で社内に必要な知識のある従業員がいない場合は、新たな人材の採用や社内教育への投資が必要になります。しかし、請負契約で専門家に委託すれば、それらの工数・コストを削減できます。
また、請負契約の場合は業務を行う労働者を管理する必要がないため、自社の管理業務にかかる負担も削減できます。

受託側のメリット

受託側は請負契約を結ぶことで、他の契約形態に比べ、自由度の高い業務の進め方ができます。請負契約は成果物に対して報酬を支払い、途中の工程について指揮命令を行うことはできません。つまり、受託側からすると「進め方は自由」なのです。そのため勤務時間の自由度も高くなりますし、専門性を活かして効率的な進め方ができます。

請負のデメリット

請負は「成果物の完成」を目的としていることや、委託側に「指揮命令権がない」ことが特徴ですが、これによるデメリットもあるようです。委託側と受託側の双方で注意しておきたいことをご紹介します。

委託側のデメリット

請負契約をする場合、自社の業務でありながら業務の遂行に関して指示ができず、請負会社にすべてを任せることになります。そのため、どのような方法で業務を実施しているのかが社内の知見として蓄積しにくくなります。また、業務途中の管理ができないことから、仮に成果物の完成が契約した期日に間に合わない場合は、何らかの損害を負うことも考えられます。

受託側のデメリット

受託側のデメリットは、成果をあげなければ報酬が得られないことです。請負契約の目的は仕事の完成であり、完成までの工程は報酬の対象になりません。そのため、期限までに完成しなかった場合や成果物に不備があった場合は、請負を委託した企業から損害賠償請求をされる場合もあります。結果が求められる契約のため、請負企業は従業員のスキル管理や業務の進捗管理を行う必要があるでしょう。

請負契約をする際に気を付けたい法律

請負は、民法632条・633条によって以下のように規定されています。

第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

ここで言う「仕事」とは、有形・無形を問わず、請負契約によって委託した業務の結果を意味します。委託側からの仕様や要望に沿って行った「仕事の結果」を成果物として納め、その対価として報酬を支払う仕組みです。しかし、形のない成果物の場合は「仕事が完成したといえるか否か」を明確にしにくいため、トラブルも発生しやすいといえます。請負契約を結ぶときは契約書の記載(特に成果物の内容)を明確にし、委託側と受託側の認識を一致させることが重要です。

第633条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。

請負を委託する企業には、報酬の支払義務があります。成果物が契約通りに完成した場合は、報酬の支払い時期に関する特約がない限り、引き渡しに伴い、報酬を支払うことが原則となります。報酬の支払いに関するルールを契約書に明記しておくとともに、支払い遅延等によるトラブル防止のため、対応漏れが発生しないよう確認しておきましょう。
(参考:『【社労士監修/2020年最新】請負契約を結ぶなら、知っておきたい契約書の書き方と注意点』)

「偽装請負」になってしまわないために

偽装請負とは、契約上は「請負」でありながら、実態は「労働者派遣」に該当することです。法を免れる行為と見なされるため違法となり、委託側・受託側ともに罰則が課せられます。偽装請負に該当するかどうかは、厚生労働省による「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」等を踏まえて実質的に判断されます。契約書などの形式ではなく、就業状況や作業現場などの実態が重要です。

●偽装請負に該当する可能性の高い請負の例

・委託した企業が請負労働者に対して、作業方法の細かい指示を出している
・委託した企業が請負労働者に対して、勤務時間の管理や始業就業時間の指定をしている
・請負労働者の遅刻、早退、業務中の外出の際に、委託した企業が承認している
・請負労働者の人事評価を、委託した企業が行っている
・請負労働者の業務内容が肉体的な労働であるなど、成果ではなく専ら労働力の確保を目的としている

ここからは、偽装請負とならないための対策をご紹介します。

請負契約書の内容は明確に記載する

請負契約を結ぶときは、業務内容や遂行方法をはじめ、起こり得る業務状況を加味した内容を明確に記載しましょう。例えば、請負契約締結後に作業方法や手順の変更が発生した場合、委託側の企業が請負会社の労働者に対して直接指示を出すと「指揮命令」と判断され、偽装請負と判断される可能性が高くなります。契約書の作成時には、変更の必要がないよう仕様書などを用いて業務内容を明確に定めましょう。また、契約内容に変更が生じる可能性がある場合は、変更の可能性を考慮した条項を記載することも有効です。具体的には、「甲は、委託業務の内容、実施方法等契約条件の変更を行う必要があると判断した場合は、乙と協議の上、変更することができる」などといった記載が考えられます。もし変更が生じた場合には、請負会社と協議の上、変更契約や覚書などを作成します。労働者ではなく、契約を結んだ企業間でやり取りすることが重要です。

就業場所の環境を工夫する

請負会社の従業員が、委託した企業に長期間常駐する場合や出張して作業を行う場合、客観的に見ても委託側の指示で作業していないことを説明できるようにします。一つの部屋で、委託側と受託側の従業員が混在しながら作業をすると、同じ企業の従業員と見られるからです。部屋を分けたり、デスクの配置場所を工夫したり、専用のスペースを確保したりして、直接的な指示をしていないことを明示するとよいでしょう。

請負契約をする際の注意点

実際に請負を依頼するときは、どのようなことに気を付けるとよいのでしょうか。ここでは「請負契約書」の作成にあたって考慮しておきたいことや、請負を依頼するときに理解しておきたい注意点をご紹介します。

再委託

再委託とは、請負会社がさらに別の企業や個人に業務を委託することです。請負は「成果物の完成」を目的としており、「誰が」完成させたのかは重要ではないという再委託を肯定する考え方がある一方で、秘密保持の観点や成果物の完成に関する責任の所在が不明確になることなどを理由に、再委託を否定する考え方もあります。委託企業と請負会社とで立場が異なるため、実務上は交渉を経て再委託に関する取り扱いを契約書に明記することが一般的です。

時間請求

偽装請負と判断されないためには、「完成した成果物」と報酬の結びつきを契約書で明確にし、製品や作業の完成を目的として業務を受発注することが重要です。業務を処理するために費やす労働力に関して受発注を行い、「委託料は●時間あたり●●円」というように、投入した労働力の単価をもとに報酬額を算出するような場合は、偽装請負と判断される可能性が高くなります。

成果物の権利

請負では、仕事の成果物に対して「知的財産権」や「所有権」等の権利が発生することもあります。契約書作成にあたっては、トラブル防止の観点から、「委託者側」「受託者側」のどちらが、どのタイミングで、成果物に関するどのような権利を取得するのか明記しましょう。

瑕疵担保

瑕疵担保責任は、2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」という呼び方に変更されました。請負においては、契約の目的となる成果物の「種類」「数量」「品質」などについて契約内容との不適合が生じた場合、受託者が契約不適合責任を負うこととされています。契約不適合が起きた場合は「業務の追完」「損害賠償」「契約解除」の他、「報酬減額」を請求することが可能です。契約書では、「どのよう場合に」「どのような責任を」「誰が」負うのかを明確にすることが必要です。

債務不履行

請負契約で約束した義務を果たさないことを債務不履行といいます。債務不履行の種類には、「①履行遅延」「②履行不能」「③不完全履行」があります。起こり得るケースに応じて請求内容を決定します。なお、天変地異などのやむを得ない理由が原因で、契約で結んだ義務を果たせなかった場合は、債務不履行にはなりません。

債務不履行の種類 内容
①履行遅延 債務者(請負会社)が履行できるにもかかわらず、期日に遅れること
②履行不能 債務者の故意や過失によって、債務を履行することができなくなったこと
③不完全履行 債務はされたものの、契約通りの完全なものではないこと

損害賠償

損害賠償は、債務不履行の全種類の場合で請求できます。ただし、実際に損害が発生したことを立証することが必要です。請負会社の立場としては、無制限な賠償につながらないよう、賠償額の上限等について契約書に明記しておくことも考えられます。債務不履行が起きても契約当事者に損害が発生しない場合は、損害賠償請求は認められません。

契約解除

「契約解除」も債務不履行が起きたときの対応の一つです。「履行不能」などの契約違反の他、委託側と請負側の信頼関係が崩れる問題が起きたときも、契約解除が可能となる場合があります。ただし、契約解除を可能とする理由については、契約書に明確に記載しておくことが重要です。

安全配慮義務

安全配慮義務とは、企業が「労働者の生命や身体を危険から保護するよう配慮する義務」です。原則、従業員との雇用契約を結ぶ企業がその義務を負うとされているため、請負契約においては請負会社に義務があると考えるのが一般的です。しかし、請負会社の従業員の就業場所が委託側の企業である場合、委託した企業にも安全配慮義務、もしくは、それに準じた義務が認められる可能性があります。請負契約の場合も、設備整備や適切な企業運営に努める必要があるでしょう。

まとめ

業務をアウトソーシングする際に使われる契約の一つである請負。請負契約を活用することで、人材採用にかかる時間や人件費といったコストの削減も期待できます。また成果物を完成させることを約束するため、完成までの作業工程や従業員の管理に時間を割くこともありません。しかし、委任や派遣など、他の契約形態との違いや請負の正しい仕組みを理解していないと、トラブルや無意識のうちに偽装請負となってしまう可能性もあります。委託側と受託側とのトラブルが起きないよう、また、法令違反と判断されないよう、双方合意した適法な内容を契約書に記載し、請負を効果的に活用しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/d’s JOURNAL編集部)