エッセンシャルワーカーの意味・職種とは?注目されている背景と現状を詳しく解説

d’s JOURNAL編集部

私たちが日常生活を維持していくために、無くてはならない職業に就いている人々を意味する「エッセンシャルワーカー」。新型コロナウイルス感染症の拡大が進む中、エッセンシャルワーカーの重要性が注目されています。

この記事では、エッセンシャルワーカーの定義や話題となった背景、抱える課題などについて紹介します。

エッセンシャルワーカーとは?

「エッセンシャルワーカー(essential worker)」とは、人々の生活にとって必要不可欠な労働者のこと。英語で「必要不可欠な」を意味する「essential」と、「労働者」を意味する「worker」を組み合わせた言葉です。エッセンシャルワーカーは、私たちが日常生活を維持していくために重要な役割を担っています。また「worker」と、「決定的な・重要な」を意味する「critical」と組み合わせて「クリティカルワーカー(critical worker)」や、「鍵、基幹」を意味する「key」と組み合わせて「キーワーカー(key worker)」と呼ばれることもあります。

エッセンシャルワーカーの例として、医師・看護師をはじめとする「医療従事者」や、バスやトラックの運転手といった「運輸・物流に携わる職種」、介護や福祉などの分野で生活相談員として働く「ソーシャルワーカー」などが挙げられます。なお、エッセンシャルワーカーの職種については、後ほど詳しく紹介します。

エッセンシャルワーカーが話題となった背景

エッセンシャルワーカーが話題となった背景には、新型コロナウイルス感染症の影響があります。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、世界各国で経済活動の自粛や「ロックダウン」と呼ばれる都市封鎖が行われました。また、日本では2020年4月に緊急事態宣言が発令されたこともあり、職場での不特定多数との接触を避けるため、在宅勤務を導入する企業が急増。そうした変化に伴い、認識されるようになったのが、働く時間や場所を「柔軟に調整できる業務」と「調整するのが困難な業務」という2種類の業務があるという事実です。

公共交通機関を利用して職場に出勤したり、職場で不特定多数の人と接したりすれば、その分だけ感染のリスクは高まります。しかし、それでもなお、私たちの日々の生活を維持するために現場で働き続けなければならないのが、エッセンシャルワーカーです。世界各国の大統領・首相が、コロナ禍にもかかわらず現場で働き続けるエッセンシャルワーカーに対して、相次いで敬意を表したこともあり、エッセンシャルワーカーが話題になりました。

「ブルーカラー」から「エッセンシャルワーカー」への変化

ブルーカラーとは、作業着で業務にあたることが多い技能系や作業系の職種に就いている人々のこと。「現場で働く肉体労働者」という意味合いが含まれています。ブルーカラーは、オフィス内で事務系の業務を行う人々を指す「ホワイトカラー」と区別するための言葉として使われてきました。

ブルーカラーの人々は、コロナ禍でも私たちの日々の生活を支えるために、現場で働き続けなければなりません。そのため、私たちのために働いてくれている彼らに感謝や敬意を示すため、「必要不可欠な」という意味を持つ「エッセンシャルワーカー」という呼び名が最近使われるようになりました。コロナ禍によりエッセンシャルワーカーが注目されるようになったことに伴い、彼らの業務に対する私たちの意識も変化してきているものと考えられます。

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人々の生活を支えるエッセンシャルワーカーの職種

エッセンシャルワーカーには、どのような職種が該当するのでしょうか。人々の生活を支えるエッセンシャルワーカーの職種について表にまとめました。

エッセンシャルワーカーの職種

分野 具体的な職種 勤務場所 役割
医療 ●医師
●看護師
●薬剤師 など
●病院
●薬局 など
●患者の治療
●薬の処方
●新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者の検査
●新型コロナウイルス感染症患者の治療 など
公務員 ●市役所職員
●区役所職員など
●市役所
●区役所 など
●行政サービスの提供
●新型コロナウイルス感染症関連の助成金・貸付・減免などの対応
介護・保育 ●介護士
●保育士 など
●介護施設
●保育園 など
●高齢者の介助
●園児の保育
●施設内での感染防止対策 など
金融 ●銀行員
●信用金庫の職員 など
●銀行
●信用金庫 など
●窓口業務
小売店 ●小売店の店員 ●コンビニエンスストア
●スーパーマーケット
●ドラッグストア など
●商品の販売
●商品の発注 など
運輸・物流 ●公共交通機関の職員
●トラック運転手
●宅配便の配達員 など
●公共交通機関
●全国各地
●公共交通機関の運行
●荷物の運搬
●荷物の配達 など

医療

「医師」や「看護師」「薬剤師」などの医療従事者が、エッセンシャルワーカーに該当します。私たちの健康のためには、病院や薬局で働く医療従事者の存在が必要不可欠です。コロナ禍において、医療従事者は「通常の診療や薬の処方」に加え、新型コロナウイルス感染症の「疑いがある患者の検査」や「感染者の治療」も行っています。医療の最前線で、高い緊張感・使命感を持ちながら日々業務に励んでいる医療従事者は、エッセンシャルワーカーの典型と言えるでしょう。

公務員

「市役所職員」や「区役所職員」などの公務員も、エッセンシャルワーカーに該当します。地域住民が安全・快適に暮らせるよう、さまざまな行政サービスを提供するのが、市役所や区役所の職員の役目です。最近では国民1人あたり一律10万円が支給される「特別定額給付金」や、新型コロナウイルス感染症に関連した「各種助成・貸付・減免」などの対応も必要となっているため、職員の負担が増えています。コロナ禍でも、地域住民の生活を守るために日々業務に励む公務員は、私たちにとって必要不可欠な存在と言えるでしょう。

介護・保育

高齢者を介助する「介護士」や、園児を保育する「保育士」などの介護・保育の従事者も、エッセンシャルワーカーに該当します。介助や保育は人と人との触れ合いを伴うものであるため、業務をする上で、利用者との「密接」を避けることは困難です。コロナ禍において、職員は介護施設や保育園といった施設内での感染防止にも力を入れながら、高齢者や園児をサポートしています。新型コロナウイルス感染症の感染リスクを感じながらも業務を行う介護・保育の従事者は、高齢者や園児、またその家庭にとって重要な役割を担っていると言えるでしょう。

金融

「銀行員」や「信用金庫の職員」といった金融機関の職員も、エッセンシャルワーカーに該当します。現金の預入や銀行口座への振込、融資の受付などの窓口業務を担う金融機関の職員は、地域住民や企業で働く人々にとって必要不可欠な存在です。金融機関では対面での接客をする時間が長いため、顧客との「密接」が生じやすい環境にあります。そうした中、日々業務に励む金融機関の職員は、地域社会にとって無くてはならない職種と言えるでしょう。

小売店

コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアといった小売店の従業員も、エッセンシャルワーカーに該当します。日々の生活で食料品や生活必需品を消費している私たちにとって、商品を販売・発注する小売店は、必要不可欠な存在です。コロナ禍において、不特定多数の顧客と接しながら業務にあたる小売店の従業員は、私たちにとって最も身近なエッセンシャルワーカーとも言えるでしょう。

運輸・物流

電車・バスといった「公共交通機関の職員」や全国各地に荷物を発送する「トラックドライバー」、各家庭に荷物を届ける「宅配便の配達員」といった運輸・物流の関係者も、エッセンシャルワーカーに該当します。乗客を運ぶ公共交通機関や、荷物を運ぶ車両があってこそ、私たちは快適な生活を送ることができます。運輸・物流の関係者は、コロナ禍でも社会のために働いている、非常に重要な職種です。

このほか、地域社会のために活躍する「警察官」や「消防士」、電気・ガス・水道といった「ライフラインに携わる事業者」、農業・漁業といった「第一次産業の従事者」、食品や衛生用品などの製造を行う「第二次産業の従事者」なども、エッセンシャルワーカーに該当します。

日本・海外のエッセンシャルワーカーが抱える問題

エッセンシャルワーカーを取り巻く環境は、決して望ましいものとは言えないようです。日本・海外のエッセンシャルワーカーが抱える問題について、紹介します。

感染のリスク

新型コロナウイルス感染症の感染リスクを下げるため、各国では国民に「密閉」「密集」「密接」の「3密」を避けるように促しています。しかし、在宅勤務が難しく、不特定多数の人と接触する機会も多いエッセンシャルワーカーは、どうしても「3密」の環境下に置かれがちです。そのため、エッセンシャルワーカーは他の職種の人々よりも、新型コロナウイルス感染症の感染リスクが高いとされています。

待遇・賃金

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、エッセンシャルワーカーの業務負荷・心理的負荷は増しています。しかし、労働時間・休日などの「待遇」や、給与・賞与などの「賃金」は改善されていないようです。「労働組合の連合会が、エッセンシャルワーカーの最低賃金アップを訴えた」「新型コロナウイルス感染症の影響で病院の経営が悪化し、医療従事者の賞与がカットされた」といった話題がニュースで取り上げられる機会も増えました。危険と隣り合わせの中、私たちの生活のために日々働いているエッセンシャルワーカーの待遇・処遇改善は、早急に改善すべき課題です。

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エッセンシャルワーカーに対する支援や感謝の取り組みの広がり

エッセンシャルワーカーに対する支援や感謝の取り組みが広がっています。国や地方自治体、企業の取り組みについて紹介します。

新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業:厚生労働省

新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業とは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止・収束に向けて、日々業務を行っている医療従事者や医療機関の職員に、感謝の気持ちを伝えるための慰労金事業です。重点医療機関や新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている医療機関、帰国者・接触者外来設置医療機関、PCR検査センターなどで働く、医療従事者や職員を対象としています。医療機関の種類に応じて、1人あたり5万円から20万円の慰労金が給付されます。
(参考:厚生労働省『新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業』/『病院・診療所・訪問看護ステーション・助産所等の管理者の皆さまへ 「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」のご案内』)

新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分):厚生労働省

新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)とは、介護サービス事業所における「感染症対策の支援」や「介護サービス再開に向けた支援」、介護サービス事業所・施設で働く職員への「慰労金」からなる交付金事業です。感染症対策の支援については、「感染症対策に必要な物品の購入」や「外部の専門家による研修実施」などにかかった費用が助成の対象になります。介護サービス再開に向けた支援には、「利用者への再開支援への助成」と「環境整備への助成」があります。また慰労金については、新型コロナウイルス感染症患者への対応の有無によって、1人あたり5万円または20万円が給付されます。
(参考:厚生労働省『新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)』/『新型コロナウイルス感染症対策を行う介護サービス事業所・施設 介護サービス事業所・施設に勤務する職員の皆さまへ』)

ブルーインパルスの飛行:防衛省(航空自衛隊)

2020年5月、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が東京上空を飛行しました。新型コロナウイルス感染症の対応にあたる医療従事者に対して、敬意と感謝を示す目的で行われた取り組みです。医療従事者が病院から手を振ったり、人々が空を見上げたりと、エッセンシャルワーカーのみならず自粛を強いられていた人々からも好評だったようです。
(「新型コロナウイルス感染症へ対応中の医療従事者等に対する敬意、感謝を示すためのブルーインパルスによる飛行の実施について」(防衛省) (https://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/R2/20200529.pdfを加工して作成)

エッセンシャルワーカーへの感謝・応援メッセージの募集:埼玉県川島町

埼玉県川島町は、エッセンシャルワーカーへの感謝・応援メッセージを募集しています。この取り組みは、昼夜を問わず現場の最前線で働くエッセンシャルワーカーへの敬意を示す目的で行われているものです。「メール」や「はがき」「手紙」で寄せられたメッセージは町のホームページに掲載されます。

スニーカーを1300足提供:ダイアナ株式会社

婦人靴やハンドバッグを販売するダイアナ株式会社では、エッセンシャルワーカーへの感謝の気持ちを込めて、スニーカーをプレゼントする「ダイアナエッセンシャルワーカー応援スニーカー」キャンペーンを開催しました。日本在住のエッセンシャルワーカーを対象とした取り組みで、当初は1000足の提供を予定していましたが、予想を上回る応募があったため、1300足を提供することに決めました。

まとめ

医療や介護・保育の従事者、公務員、小売店の店員、公共交通機関の職員など、彼らは私たちの生活に欠かせない「エッセンシャルワーカー」です。エッセンシャルワーカーは、「新型コロナウイルス感染症の感染リスク」や「待遇・賃金の課題」を抱えながらも、人々の健康・生活のために日々業務に励んでいます。「応援のメッセージを募集する」「衛生用品や食料品を提供する」といったエッセンシャルワーカーに感謝や敬意を示す取り組みを、企業として実施してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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