【弁護士監修】有期雇用契約はどう結ぶべき?雇止めや契約解除などの注意すべきルール

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

有期雇用契約とは?
有期雇用契約の種類
改正労働契約法で定められた有期雇用契約に関する3つのルール
有期雇用契約の契約期間は原則上限3年
有期雇用契約を結ぶ際に必要な事項
有期雇用契約として雇う際に最低限守るべき事項
有期雇用契約期間が満了した場合
有期雇用契約をやむを得ない事由で解除するには

企業と労働者が労働期間を定めて労働契約を結ぶ「有期雇用契約」。有期雇用契約で働く労働者にとって課題となっている「雇止めの不安の解消」「処遇の改善」などを解決するために、2020年4月1日より新たに「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました。この改正法では、正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇差の禁止を目的としています。労働者と有期雇用契約を結ぶ場合、企業ではどのような対応が必要となるのでしょうか。今回の記事では、有期雇用契約の概要をはじめ、契約を結ぶ際のルールや注意すべきポイントなどについて解説します。

有期雇用契約とは?

有期雇用契約とは、「1年間」「6カ月間」など、企業と労働者が労働期間を定めて結ぶ労働契約であり、「期間の定めのある労働契約」と呼ばれるものです。有期雇用契約は期間の満了に伴い終了します。英語では「Fixed-term employment contract」と表現されます。

無期雇用契約との違い

無期雇用契約とは、「期間の定めがない労働契約」を意味します。有期雇用契約の契約期間は原則として上限3年であるのに対し、無期雇用契約には契約期間がありません。そのため、無期雇用契約に契約更新はなく雇用が継続されますが、有期雇用契約の場合は、契約更新月にやむを得ない事由などで雇用契約が更新されない可能性があります。また、有期雇用契約では待遇や職務、仕事内容、福利厚生など、契約期間以外の諸条件は基本的に変わりませんが、給与に関しては原則契約時に決められた金額のまま昇給しないことが多いのに対し、無期雇用契約では能力に応じて昇給する場合もあります。

有期雇用契約 無期雇用契約
契約期間

原則として上限3年

なし

雇用の安定性

契約更新月に打ち切る可能性がある

契約更新する必要なし

給与

原則契約時に決められた金額のまま昇給しないことが多い

能力に応じて昇給する場合がある

福利厚生

正社員や無期雇用に比べて適用範囲が狭い

適用される

試用期間との違い

試用期間とは、企業が採用候補者に対し、「自社の従業員として適正か」「自社で活躍する人材となるか」を見極めるために設ける期間のことです。正社員の試用期間であれば、試用期間中から正社員と見なすことができ、試用期間後も雇い続けることを前提としています。また、試用期間における本採用の見送りや解雇は事実上可能ですが、会社都合の解雇となります。この場合、一般的な従業員と同様に「客観的に合理的な理由」が存在していることや「社会通念上相当」であることが求められます。

一方、有期雇用契約では、基本的に期間が終われば雇用契約が終了します。これにより期間満了時に契約を更新しなくても解雇にはなりませんが、期間満了前の契約解除は「やむを得ない事由」がなければできません。企業側から一方的に契約を解除するのであれば、解雇と同じ扱いとなるため、30日前には判断して通知する必要があります。また、有期雇用契約の期間が試用期間に相当すると判断された場合、通常の試用期間と同様の扱いになることもポイントです。これにより、期間満了という理由だけでは雇止めができなくなることもあります。有期雇用契約期間が満了した場合については、後ほど詳しくご紹介します。
(参考:『【弁護士監修】試用期間の解雇は可能?本採用を見送る場合の注意点とは』『【弁護士監修・完全版】解雇予告手当の複雑な計算方法や支給ルール、流れを解説』)

有期雇用契約の種類

有期雇用契約で働く労働者とは、事業主に直接雇用されており、「1年間」「6カ月間」単位の有期雇用契約を結んでいる、または更新している人を言います。一般的に「契約社員」「嘱託社員」「パートタイム・アルバイト」などが該当するでしょう。ただし、これらの名称にかかわらず、各社が独自に位置づけている雇用形態についても、契約期間に定めがある場合は有期雇用契約の労働者となります。ここでは有期雇用契約の種類について解説します。

●雇用契約の種類

無期 有期 有期 有期/無期 有期/無期
雇用形態

正社員

契約社員

嘱託社員

パートタイム・アルバイト

派遣社員

雇用主

就業先

就業先

就業先

就業先

派遣会社

労働時間

フルタイム

フルタイム

フルタイム/短時間

短時間の場合が多い

フルタイム/短時間(派遣元による)

契約社員

契約社員とは、「雇用期間に定めがある従業員」のこと。雇用契約で定めた期間だけ働き、契約期間が終了した時点で更新しなければ、別の職場に移ることができます。契約社員には、有期雇用契約の労働者の中でも高度な専門的知識を持つ「高度専門職型契約社員」と、勤務時間がフルタイムなど正社員に準じた働き方をする「準社員型契約社員」が含まれます。

嘱託社員

嘱託社員とは、契約社員の一種で、「雇用期間に定めがある従業員」に分類されます。一般的に、定年退職後に契約社員として再雇用された労働者を嘱託社員と呼びます。定年退職後の人材を対象にしているため、柔軟な働き方に対応できるよう労働時間を短く設定していることも多いようです。
(参考:『【弁護士監修】嘱託社員とは?契約する際におさえておきたい雇用のポイント』)

パートタイム・アルバイト

パートタイム・アルバイトとは、正社員に比べて短い所定労働時間・労働日を定めて、補助的・臨時的な業務を行う従業員のことです。企業によって、有期雇用契約にしている所もあれば、無期雇用契約としている所もあります。1日8時間労働などのフルタイム勤務よりも短時間で働ける勤務形態であるため、家庭の都合に合わせた就業や学業と両立するための短時間労働というイメージがあるでしょう。

派遣社員

派遣社員とは、派遣元企業(人材派遣会社)と雇用契約を締結し、派遣先企業(勤務する企業)で業務を行う雇用形態です。雇用契約は派遣社員と派遣元との間、派遣契約は派遣元と派遣先との間で結ばれます。給与や勤務・労働条件などは派遣元業によって異なります。

改正労働契約法で定められた有期雇用契約に関する3つのルール

2013年4月1日に施行された改正労働契約法により、有期雇用契約に関して①無期労働契約への転換②「雇止め法理」の法定化③正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止という3つのルールが整備されました。その後、2018年7月に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)により「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート労働法)」が改正され、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」という新たな法律になりました。派遣労働者に関する「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(いわゆる労働者派遣法)」も改正。この改正により、2020年4月(中小企業は2021年4月)から、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者について、正社員などとの間の不合理な待遇差の禁止がその判断方法も含めて明確化され整備されました。それに伴い、労働契約法20条の「③正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止」は削除されています。各ルールの内容についてご紹介しましょう。

ルール①:無期労働契約への転換

無期労働契約への転換とは、「有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときは、有期雇用労働者の申込みより期間の定めのない労働契約に転換できる」というルールです。改正労働契約法第18条で定められており、「無期転換ルール」とも呼ばれています。

無期転換ルールは全ての企業が対象です。無期転換ルールの対象とならないよう、無期転換申込権が発生する前に雇止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないとされています。また、有期雇用契約の満了前に、使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けた場合も、雇止めが認められない可能性があるため、企業側の慎重な対応が求められます。

なお、有期雇用契約の契約社員や派遣社員が5年を超えて勤務すると無期雇用契約への転換ができますが、有期雇用から無期雇用になれば必ずしも正社員の待遇になるというわけではありません。無期雇用契約社員とは、契約期間以外の労働条件を有期雇用契約時と同一とする「無期雇用ルール」によって転換した社員と定義されます。有期契約社員から無期契約社員に転換して変化することは、「契約期間が無期限になることのみ」です。

無期転換ルールが適用される例として、「契約期間が1年の場合は、5回目の更新後の1年間」「契約期間が3年の場合は、1回目の更新後の3年間」といったケースが挙げられます。無期転換ルールに該当する有期雇用契約の労働者が、企業に対して無期転換の申込みを行う「無期転換申込権」を行使した場合、企業側は拒否できず、無期労働契約が成立します。

●無期労働契約への転換が適用される時期

無期労働契約への転換が適用される時期

(参考:厚生労働省『有期契約労働者の無期転換ポータルサイト~無期転換を円滑にサポートします~』)

ルール②:「雇止め法理」の法定化

「雇止め法理」の法定化とは、改正労働契約法第19条で定められた「労働者保護の観点から、過去の最高裁判所の判例により一定の場合にこれ(雇止め)を無効とする」というルールです。「雇止め」とは、期間の定めのある雇用契約において、雇用期間が満了したときに使用者(雇い主)が契約を更新せず、雇用関係が終了になることを指します。

雇止めは、契約期間の満了にすぎないため、使用者が更新しなくても直ちに違法となるわけではありません。しかし、雇止めを無条件に認めてしまうと、長年有期雇用契約を更新していた労働者や、有期雇用契約が更新されることを期待していた労働者が突然、雇止めとなってしまう可能性があります。そのため、有期雇用契約の労働者を保護する目的で、改正労働契約法第19条に雇止め法理が明文化されました。雇止め法理の対象となるのは、次の①、②のいずれかに該当する有期雇用契約です。

①過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
②労働者において、有期労働契約の期間満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

(参考:厚生労働省『「雇止め法理」の法定化(第19条)』)

ルール③:正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止

2018年7月に「働き方改革関連法」が公布され、2020年4月1日より「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」として施行されました。「パートタイム・有期雇用労働法」では、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止しています。これまでは同じ仕事をしていても、雇用形態によって賃金が異なるというケースがありましたが、当制度の導入によって「どのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働き続けることができる」よう、対応が進むと期待されています。大企業に対しては既に2020年4月から施行されており、中小企業に対しては2021年4月1日から施行される予定です。

パートタイム・有期雇用労働法への改正ポイントは3つあります。1つ目は「不合理な待遇差の禁止」で、同一企業内において正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇に不合理な待遇差を設けることを禁止するものです。2つ目は「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」です。非正規社員は「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるというものです。事業主は非正規社員から求めがあった場合は、説明する義務があります。3つ目は「行政による事業主への助言・指導などや裁判外紛争解決手続きの整備」です。都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行うというもので、事業主と労働者との間の紛争を、裁判をせずに解決する手続きを意味しています。

また、不合理な待遇差の禁止などに関する指針として「同一労働同一賃金ガイドライン」の適用が開始されました。いわゆる「同一労働同一賃金」とは、雇用形態による不合理な待遇差を禁止する原則のこと。雇用形態にかかわらず、仕事ぶりや能力などに応じた処遇を受けられるようにすることで、「多様な働き方」や「労働者のモチベーションや生産性の向上」を実現することが目的です。
(参考:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』『同一労働同一賃金ガイドライン』)
(参考:『【弁護士監修】同一労働同一賃金で、企業はいつどのような対応が必要?』)

現在では、有期雇用契約の従業員に正社員と同等の仕事を任せていることは珍しくありません。有期雇用契約に関する3つのルールを守るとともに、多様な就労ニーズに応え、柔軟な働き方の実現を促す仕組みを設けることは、勤務時間や勤務地に制約がある有期雇用契約従業員の活躍の場を広げることにつながります。企業にとって人材の確保や人材の活用を図る上でも、有期雇用契約従業員にキャリア開発の機会を提供することが、今後ますます重要となっていくでしょう。

有期雇用契約の契約期間は原則上限3年

有期雇用契約が労使双方にとって良好な雇用形態として機能するよう、有期雇用契約には契約期間の上限があります。労働基準法第14条1項では、有期雇用契約は一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、契約期間の上限は原則3年と定められています。ただし、職業選択の自由に対しての弊害に配慮し、労働契約期間の初日から1年を経過した日以後においては、使用者(雇い主)に申し出ることで、労働者はいつでも退職できるとしています。また、特例として「契約期間の上限を5年」とするケースもあります。労働時間の上限について、下の表にまとめました。

●労働契約期間の上限

労働契約期間の上限 特例の内容
原則3年 特例③に定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る
上限が5年となる特例 特例①:高度な専門的知識や技術、または経験を有する労働者との間に締結される雇用契約
特例②:満60歳以上の労働者との間に締結される雇用契約
有期の建設工事等の期間が認められる特例 特例③:一定の事業の完了に必要な期間を定める雇用契約

(参考:厚生労働省『労働契約期間の上限について』)

有期雇用契約の「契約期間の上限を5年」とする特例

「高度な専門的知識や技術、または経験を有する者」、または「満60歳以上の者」と有期雇用契約を締結する場合、特例として「契約期間の上限を5年」とすることが認められています。高度な専門的知識等を有する者とは、厚生労働大臣が定める下記のいずれかの基準に該当する人のことを指します。

●厚生労働大臣が定める「高度な専門的知識等を有する者」

①博士の学位を有する者
②公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士のいずれかの資格を有する者
③システムアナリスト試験またはアクチュアリー試験に合格している者
④特許法に規定する特許発明の発明者、意匠法に規定する登録意匠を創作した者または種苗法に規定する登録品種を育成した者
⑤大学卒で実務経験5年以上、短大・高専卒で実務経験6年以上または高卒で実務経験7年以上の農林水産業の技術者、鉱工業の技術者、機械・電気技術者、システムエンジニアまたはデザイナーで、年収が1,075万円以上の者
⑥システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1,075万円以上の者
⑦国等よりその有する知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者

(参考:厚生労働省『労働契約期間の上限について』)

なお、満60歳以上の労働者との間に締結される雇用契約を上限5年とする趣旨として、満60歳以上の労働者は一般的に雇用機会の確保が困難なため、その継続雇用を持続させることを目的としています。

事業の完了に必要な期間を定める場合は、その期間が契約期間として認められる

「一定の事業の完了に必要な期間を定める」雇用契約とは、3年ないし5年を超えても、例外的に契約期間の上限を「当該事業の終期までの期間」とするものです。その事業が有期的事業であることが客観的に明らかな場合であり、その事業の終期までの期間を定めた契約のことを指します。例として、4年間で完了する土木工事の際に、技師を4年間の契約で雇い入れるケースが挙げられます。工事の途中で契約期間が満了になると、工事の続行に支障が生じるといった不都合を考慮して定められた特例です。

有期雇用契約を結ぶ際に必要な事項

企業と労働者が雇用契約を結ぶ際には、「雇用契約書」の締結や「労働条件通知書」の交付を行います。雇用契約書とは、企業と労働者の間で雇用契約の内容について合意がなされたことを証明する書類のこと。一方、労働条件通知書とは、企業から労働者に対して「契約期間」「就業場所」「就業時間」「給与」などの労働条件を明示するための書類です。記載内容はほぼ同じですが、雇用契約書は取り交わしが必須ではないのに対して、労働条件通知書は労働基準法で交付が義務づけられているという違いがあります。

なお、この2つは「労働条件通知書 兼 雇用契約書」という双方の役割を兼ねる書面として作成することもできます。ただし、労働条件通知書は法律によって記載事項が決められているため、注意しましょう。以下では便宜上、労働条件通知書に必ず記載しなければならない事項を「必須記載事項」、該当がある場合のみ書面や口頭で明示する必要がある事項を「明示記載事項」と記載します。
(参考:『【弁護士監修・雛型付】雇用契約書を簡単作成!各項目の書き方と困ったときの対処法』『【Word版】労働条件通知書 兼 雇用契約書』『【記入例・雛型付】労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方をサクッと解説』)

必須記載事項

労働条件通知書に記載が義務づけられている「必須記載事項」は、以下の9項目です。

①労働契約期間(有期契約労働者に対する労働契約の更新有無とその基準)

有期雇用契約を結ぶ際には、有期雇用契約であることを明示した上で契約期間について記載しましょう。試用期間がある場合は、その期間を明示するか、「入社後何カ月間」と記載します。

また、労働契約を更新する可能性の有無や更新基準についても記載します。更新の有無については、「自動的に更新する」「更新する場合がある」「契約の更新はしない」のいずれかを必ず明示する必要があります。更新の判断基準についても、「契約期間満了時の業務量」「勤務成績、態度」「能力」「会社の経営状況」「従事している業務の進捗状況」のうち、該当するものを記載しましょう。

②就業場所

会社名、支店名など具体的な就業場所を記載します。

③従事する業務内容

入社後に担当する業務内容について記載します。複数の業務を兼務する場合、一つに限定せず、該当する業務内容を全て記載します。

④始業時刻・終業時刻

労働時間の始まる時間と終わる時間を必ず記載します。始業時間・終業時間の定めがない場合は、労働時間に関するルールを記載します。また、労働時間のうち休憩時間を何分与えるか、所定労働時間を超えて労働する可能性があるかどうかも記載しなければなりません。ただし、休憩時間について具体的な時刻のルールや、所定労働時間を超える労働の有無について具体的な見込み時間は記載する必要はありません。

⑤休日・休暇

労働する必要がない休日に関して「毎週土・日・国民の祝日」「年末年始(12月29日~1月3日)」「週当たり2日」というように、必ず記載します。休暇に関しては、年次有給休暇の日数や付与条件、その他の休暇について記載します。詳しい日数や条件については「詳細は、就業規則を参照」と記載して、労働条件通知書 兼 雇用契約書には記載しない方法もあります。

⑥賃金

賃金の決定方法や計算方法(月給、日給、時給など)、支払い方法、賃金の締め切りおよび支払い時期に関する事項を記載します。残業代を支給する場合は残業時の「割増賃金率」を、みなし残業代を支給する場合は「何時間相当の残業代としていくら支給するか」を明記します。また、社会保険料など控除対象となる項目についても記載する必要があります。

⑦退職に関する事項

退職や解雇といった退職事由、退職の何日前までに連絡が必要かといった自己都合対象の際の手続きなど、退職に関する事項を必ず記載します。

⑧就業時点転換に関する事項

この項目は、労働者を2組以上に分けて就業させる、いわゆる交替制勤務がある場合にのみ記載する必要があります。始業時間・終業時間が「何日おきに変わるのか」「どういった順番で変わるのか」など、勤務パターンや交替期日、交替順序について記載します。

⑨パートタイム労働者に対する必須記載項目

パートタイム労働者に対しては、上記事項に加え、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口の担当者の部署、役職、氏名」という4つの事項についても文章などで明示しなければなりません。

明示記載事項

明示記載事項とは、各企業で規定がある場合、説明するように通達しなければならない項目です。これらの項目に関しては、労働条件通知書には含めずに、別途資料を用意し共有することも可能です。明示記載事項の例として、下記の9項目が挙げられます。

・昇給に関する事項
・退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定方法、計算方法、支払い方法、支払い時期に関する事項
・臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
・労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
・安全、衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰、制裁に関する事項
・休職に関する事項

明示記載事項の具体的な記載事項に関しては、下記参考URLをご確認ください。
(参考:厚生労働省『労働基準』)
(参考:『【記入例・雛型付】労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方をサクッと解説』)

有期雇用契約として雇う際に最低限守るべき事項

有期雇用契約の労働者を雇う際、労務管理上、対応が必要な3つの事項について解説します。

就業規則の作成・見直し

有期雇用契約の従業員を初めて雇用する際には、就業規則の作成・見直しをすることが肝要です。労働条件は雇用契約書などで定めているから大丈夫だと判断し、正社員用の1種類しか就業規則を設けていないという企業もあるかもしれません。しかし、正社員用の就業規則に、適用対象者が明示されていないことや、有期雇用契約者にも適用される旨が記載されている企業も見受けられ、その場合には、有期雇用契約の労働者に対しても、無期雇用契約を締結した労働者と同様の就業規則が適用されることになります。しかし実際には、有期雇用契約と無期雇用契約では「賃金」「有給休暇」など待遇面に違いがあることが多いでしょう。そのため、有期雇用契約の労働者を対象とした就業規則を整備する必要があります。
(参考:厚生労働省『有期雇用契約労働者を雇用する事業主の皆様へ』)

社会保険の加入、雇用保険について

社会保険は雇い入れ日から加入が必要となります。例外として、「週の所定労働時間および月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3未満」の場合や、加入条件を満たしていても「業務の特性により繁忙期などで2カ月以内の期間を定めて雇用される有期雇用契約者」の場合は、社会保険に加入させる必要はありません。ただし、雇用契約が2カ月以内でも「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」といった雇用継続を期待させる文言が更新条項にある場合は、社会保険に加入させる必要があります。社会保険の未加入は処分の対象となるため、注意しましょう。

また、雇用保険に関しては、有期雇用契約を締結した労働者でも「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」という場合には、加入の対象となります。

条件を満たしている場合は育児休業、介護休業を取得させる

産前産後の休業については労働基準法に定めがあり、有期雇用契約であるか否かにかかわらず、全ての労働者を対象としています。育児休業や介護休業については、「同じ会社で1年以上継続して働いている場合」「子が1歳6カ月になった日までに契約が満了することが明らかでない労働者」「介護休業の開始予定日から93日が経過した日から6カ月を経過する日までには契約が満了することが明らかでない労働者」というように一定の条件を満たせば、育児休業や介護休業を取得できます。妊娠がわかる前は契約更新を前提として勤務させていたにもかかわらず、妊娠したことを理由に契約期間の終了とともに雇止めしようとした場合、妊婦に対する「不利益取扱い」に該当し、違法となることがあるため、注意しましょう。
(参考:厚生労働省『育児休業や介護休業をすることができる有期契約労働者について』)

有期雇用契約期間が満了した場合

有期雇用契約の期間が満了した場合は、「雇止め」または「契約を更新」となります。

雇止め

雇止めは、基本的には契約期間の満了にすぎないため、使用者が更新をしなかったとしても直ちに違法となるわけではありません。しかし、一定の有期雇用契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までにその予告をしなければなりません。

雇止め予告の対象となる有期雇用契約は、「有期労働契約が3回以上更新されている場合」「1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合」「1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合」が挙げられます。また、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なく雇止め理由を明示しましょう。
(参考:厚生労働省『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について』)

雇止めが認められた裁判事例

私立大学で非常勤講師として勤務し、過去に20回にわたり有期雇用契約を更新してきた原告に対して、大学側はそれ以降、雇用契約が終了したとして原告との契約更新を拒否しました。これに対し、裁判所は原告と大学側との結び付きが専任教員に比べて薄く、雇用契約が1年契約であることを原告が認識していたことを受けて、「契約が20回更新されても期間の定めのないものに転換したとは認められない」として大学側の雇止めを認めました。

当裁判事例のように、「契約上の業務内容や地位が臨時的なもの」「当事者が有期契約であることを認識している」「更新手続きが厳格に行われている」「同じ立場の労働者で雇止めの例が多くある」といった場合には、原則どおり雇止めが認められる可能性が高くなります。
(参考:厚生労働省『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について』)

契約を更新

契約を更新する際は、従業員に対して契約更新の有無を通知しなければなりません。ただし、「期間満了時に異議がない場合は自動的に更新される」などの条項が契約にある場合は、自動的に契約が更新されます。また、契約期間の経過後に更新の手続きをすることなく勤務し続ける場合は、民法第629条1項により、「黙示の更新」として契約が更新されたものとして扱われます。

有期雇用契約を何回も自動更新することは禁じられる行為ではありませんが、自動更新を繰り返すほど、その有期雇用契約は実質的な無期雇用契約と考えられる可能性があります。労働者の側にも、次の契約も当然更新されるであろうという期待を抱かせることになり、前述した労働契約法第19条の「雇止め法理」が適用される可能性が高くなります。従業員に誤解を与えたり、トラブルに発展したりすることを避けるため、契約の自動更新は避けるべきと言えます。万が一、自動更新の条項を導入するとしても、自動更新の条項に「ただし、労働条件見直しの可能性がある」などの文言を追記した方がよいでしょう。

有期雇用契約をやむを得ない事由で解除するには

労働契約法第17条により、有期雇用契約の中途解雇については、期間の定めのない労働契約の場合よりも強く規制されています。このことから、使用者は有期契約労働者に対してやむを得ない事由がなければ、契約期間中に解除することはできません。ここで言うやむを得ない事由とは、天災事変その他の事由で事業の継続が困難になった場合が典型的な例として挙げられます。また、労働者は民法628条より、やむを得ない事由が使用者の過失によって生じた場合には、雇用契約の解除に対して損害賠償を請求することができます。

やむを得ない事由をもって解雇する場合でも、「解雇予告期間として定められている30日前に予告する」または「即日解雇をする場合は30日分以上の平均賃金を支払う」、解雇予告の期間が30日より短くなる場合は「短縮した日数分の平均賃金を支払う」といった対応が必要です。ただし、「日々雇い入れられるもの」「契約期間が2カ月以内の者」「4カ月以内の季節的業務に使用される者」「試用期間中の者(14日以内)」という労働者は適用除外となります。
(参考:『【弁護士監修・完全版】解雇予告手当の複雑な計算方法や支給ルール、流れを解説』)

まとめ

企業と労働者が、労働期間を定めて雇用契約を結ぶ「有期雇用契約」。改正労働契約法により、無期労働契約への転換②「雇止め法理」の法定化③正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止という3つのルールが定められ、「働き方改革関連法」の成立により「正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止」に関する法規制が改めて整備されました。有期雇用契約で労働者を採用する際は、企業には就業規則や人事労務に関する制度の整備が求められます。今回の記事を参考に、有期雇用契約を結ぶ際に必要となる労働条件通知書の作成、雇止めや契約更新への対応の見直しに取り組んでみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/d’s JOURNAL編集部)