SES企業のエンジニア採用がうまくいかない原因と具体的な対策を紹介

d’s JOURNAL編集部

SES(System Engineering Service)とは、クライアント企業に対して技術者を派遣する仕組みのことを指します。システム開発やインフラ環境の構築、それらの運用保守などを担うエンジニアを派遣するためのサービスです。

しかし、SESを提供する企業においては、エンジニアの採用が思うように進まないというケースがあるでしょう。

この記事では、ITエンジニアを取り巻く業界の動向や採用活動がうまくいかない原因、具体的な対策などを詳しく解説します。

ITエンジニアの採用環境

SES企業に限らず、ITエンジニアの採用環境は多くの企業で厳しい傾向が見られます。どのような背景があるのかも踏まえて、ITエンジニアの採用環境について解説します。

IT業界の動向

ITエンジニアの採用環境は、IT業界の動向に大きく影響を受けるところがあります。経済産業省が公表している「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。

一方で、クラウド・IoT・ビッグデータ・AIなどの分野の拡大、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速、5Gなどの高速通信への対応といったIT業界そのものへの需要の高まりは、年々増しています。

IT人材の不足はSES企業にとっても課題であり、従来の採用活動にとらわれない柔軟な対応が求められているといえるでしょう。
(参照:経営産業省『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果』)

競合他社との採用競争の激化

ITエンジニアの採用がなかなかうまくいかない背景には、IT業界を取り巻く環境変化だけでなく、人材不足によって競合他社との採用競争が激化している点も挙げられます。応募者側からすれば、少しでも自分のスキルや能力を高く買ってくれる企業に入社したいと思うため、待遇面や働き方などで他社との差が大きければ、思うように採用活動が進まない部分があるでしょう。

採用条件などの見直しを定期的に行って、競合他社の採用動向もチェックしておくことが大切です。

応募者とのコミュニケーションの変化

採用担当者と応募者とのコミュニケーション手段は、時代によって変化しています。従来は電話やメールが中心でしたが、今ではチャットツールやWeb会議ツールなど、幅広い手段があります。

そのため、応募者と活発にコミュニケーションが取れない環境では、採用を決定しても内定辞退が増える一因になる恐れがあります。ITエンジニアの採用率を高めるには、応募者の視点に立って連絡を取りやすい方法をあらかじめ準備しておくことが大事です。

選考期間が短くなっている傾向がある

ITエンジニアの職種は、応募から入社までのスパンが短くなっている傾向が見られます。応募者とすれば採用活動にあまり時間をかけたくないので、基本的に選考期間が短い企業のほうに関心を持ちやすいでしょう。

社内の選考プロセスや承認手続きなどに時間がかかってしまっては、応募者は他社への入社を決めてしまうかもしれません。採用条件などに問題が見られない場合は、採用プロセスそのものに問題が生じている場合もあるので、しっかりとチェックしてみましょう。

応募者の心理・志向に注目

ITエンジニアの採用を円滑に進めるには、応募者の視点に立って採用活動を考えることも重要です。応募者の心理や志向などについてまとめると、以下の点が挙げられます。

ITエンジニアにおける応募者の心理・志向

・条件面を重視する傾向にある
・自身のキャリアを転職先で活かせるか
・ニーズの高いスキルを身につけられるか
・どういう意図で募集しているのかを知りたい
・入社後のキャリアパスを知りたい
・柔軟な働き方ができる会社がよい

それぞれの点について、さらに詳しく解説します。

条件面を重視する傾向にある

応募者は現在の仕事に何らかの不満を抱えているため、新たな仕事を求めている点を見落としてはなりません。どの程度の条件で満足するかは人によって違ってきますが、競合他社と比較して条件面が見劣りする場合は、応募そのものは減りやすい傾向にあるでしょう。

特に長期的に働いていくことを考えている応募者にとっては、不利な条件で働き続けることに対して抵抗感があるでしょう。応募者がなぜ仕事を求めているのかという点を改めて踏まえたうえで、必要に応じて採用条件などを見直してみてください。

自身のキャリアを転職先で活かせるか

IT業界未経験の場合を除き、応募者はそれまで培ってきたスキルや経験を活かしたいと思うものです。自分のキャリアを活かせそうな企業であれば、応募者にとってもメリットが大きいため、自ずと応募数や採用率は高まるでしょう。

先に述べたように、現在はIT人材が不足している売り手市場なので、転職活動を行っている応募者のもとには毎日のようにスカウトメールが送られてきます。さまざまな企業からアプローチを受けているため、「自分のキャリアを高く評価してくれている企業」でなければ、そもそも応募する動機が湧いてこない部分があるでしょう。

また、採用活動が思うように進まないと感じる場合、企業側が発信している求人広告の内容に問題があることもあります。どのような人材を求めているのかあいまいなままでは、求人広告を見た人の興味や関心を引き付けることが難しいといえます。

ペルソナ設計を見直すなどして、自社が求める人材と応募者の動機がマッチングするような取り組みを行っていくことが大切です。

ニーズの高いスキルを身につけられるか

応募者は採用時の待遇に関心を持っていますが、将来どのようなスキルが身につけられるかにも興味を抱いています。IT業界で働き続けるには、常に最新の技術や知識を習得する必要があるため、入社後に何を学べるかには強い関心があるといってよいでしょう。

そのため、求人広告を作成するにあたっては、トレンドとなるキーワードを盛り込んでニーズの高いスキルを身につけられる点をアピールすることが大事です。例えば、IoTやAIなど最新技術に関する言葉を盛り込むと目を引きやすいですし、新規事業・自社サービス・上流工程といった業務の特徴を表すキーワードを使ってみるのも効果的だといえます。

また、AIであればPython、モバイルアプリ開発であればDartなど、開発に必要なプログラミング言語なども明記しておくと、応募後の働き方などをイメージしやすくなるでしょう。

どういう意図で募集しているのかを知りたい

長く働き続けたいと考える応募者ほど、どのような意図で企業が人材を募集しているのか知りたい傾向があります。もちろん、人によって応募に至るまでの経緯はさまざまですが、なぜ人材募集を行っているのかよくわからない企業に応募しようとはあまり考えないでしょう。

先に述べたように、応募者に人材募集の意図を伝えるには、ペルソナ設計が欠かせません。ペルソナとは、ビジネスの領域においては求める人物モデルを意味しています。

採用活動の場合、自社で働いてもらいたい人の属性やスキル、能力などが挙げられるでしょう。既存社員の状況などを踏まえたうえで、組織としてどのような人材が不足しているのか、また将来的に不足が見込まれるのかを精査して、求人広告を出してみましょう。

入社後のキャリアパスを知りたい

応募者は入社後のキャリアパスについても、強い関心があります。その企業に入社することで、ITエンジニアとしてどのようなキャリアを築けるのかといった点です。

中途採用の場合、入社後は即戦力として既存事業に配属されることになりますが、新卒採用の場合と同じように入社後のキャリアパスをあらかじめ提示することが、応募動機につながっていくでしょう。

将来にわたって、キャリアを高めていくことに期待が持てれば、応募してみようという気持ちにもなるはずです。

柔軟な働き方ができる会社がよい

IT業界は若い世代の人材も多数活躍していますが、若手になればなるほど柔軟な働き方ができる労働環境を求める傾向があります。ワークライフバランスを配慮したり、必要に応じて休みが取りやすかったりすると魅力的な職場だと思われやすいでしょう。

ITに関する業務は時期によって繁忙期があったり、急なトラブル対応のために残業しなければならなかったりするときもあります。しかし、その場合も残業時間の上限を明示するなどして、応募者にとってわかりやすい条件を提示することが大事です。

採用時にきちんと説明しておかなければ、実際に入社をしてからミスマッチを感じ、早期離職につながりかねないので注意が必要だといえます。せっかく採用した人材を失ってしまっては、採用コストの負担だけが残るので企業側にとっても損である点を押さえておきましょう。

ITエンジニアの採用率を高めるための7つのポイント

採用活動を円滑に行うためには、ITエンジニアの採用率を高めるための基本的なポイントを押さえておく必要があります。主なポイントとして、次の点が挙げられます。

ITエンジニアの採用率を高める7つのポイント

・求人広告を作成するときはペルソナ設計を行う
・競合他社の動向を意識した給与設定
・業務内容をできるだけ詳細に記載する
・ワークライフバランスを重視する
・カジュアル面談を開催する
・採用説明会の頻度を多くする
・内定後のコミュニケーションを大事にする

各ポイントの重要な点を細かく解説します。


求人広告を作成するときはペルソナ設計を行う

応募者を募るための求人広告は、作成前にペルソナ設計をきちんと行うことが大切です。自社が求める人材像があいまいなままだと、応募を検討してくれそうな人材を逃してしまう恐れもあるでしょう。

人材の応募数自体が少ない場合は、求人広告そのものに問題があることが考えられます。応募状況などをチェックしたうえで、ペルソナ設計について見直しを行ってみましょう。

また、求める人材と応募してくる人材のミスマッチが起こると、入社後のモチベーションの低下にもつながります。現場の担当者の意見なども交えながら、どのような人材が必要であるかを精査してみてください。

競合他社の動向を意識した給与設定

ITエンジニアの採用活動を円滑に進めるには、競合他社の動向を意識した給与設定を行うことが大事です。特に転職活動を行っている方からすれば、今の勤務先に対して待遇面の不満を抱えていることもめずらしくありません。

そのため、他社のほうがよい条件を提示しているならば、そちらに応募しようとするのは自然な流れでもあります。採用条件を設定するにあたり、競合他社が設定している給与水準や業界全体の相場をチェックしてみましょう。

また、ITエンジニアの職種によっても違いはあるので、スキルや業務における責任の度合いなどを加味して、適正な給与設定を行うことが大切です。
(参照:『【完全版】効果が出る求人広告の作り方①~ターゲット設定編~』)

業務内容をできるだけ詳細に記載する

求人を募るときは、業務内容をできるだけ詳細に記載することが大切です。大まかな業務内容では、応募者からすると自分のスキルや経験がどの程度活かせるのかわからない部分があるでしょう。

職種別に求められるスキルや経験、将来的に目指すことができるキャリアパスなどを記載することによって、応募者もイメージがしやすくなります。業務内容は実際に働き始めてから差が生じないように、細かい部分まで書いておくほうがよいでしょう。

ワークライフバランスを重視する

若手のITエンジニアほど、ワークライフバランスを重視した働き方を求める傾向が見られるでしょう。仕事とプライベートをどちらも充実させたいという希望にできるだけ対応するほうが、多くの応募を見込むことができます。

一般的には、残業が少なく休みの取得が難しくない企業のほうが、応募は集まりやすいといえます。ただし、すべての職種を一律で対応するのは難しい部分があるでしょうから、まず一部の職種だけでもワークライフバランスを意識した働き方に変えることで、応募者を逃す割合を減らせるでしょう。

カジュアル面談を開催する

採用に関する問い合わせがあったときには、カジュアル面談を実施してみるのも、採用活動の一環として有効な手段だといえます。カジュアル面談とはその名前のとおり、堅苦しくない形で面談を行うものであり、リラックスした雰囲気で会話をしながら進めるタイプのものです。

カジュアル面談においては、下記のようなポイントを意識しておく必要があります。

カジュアル面談のポイント
・採用の合否に関係がないことを事前に伝えておく。
・服装はフォーマルなものでなくてもよいことを伝える。
・リアル面談とWeb面談のどちらにも対応できるようにしておく。
・応募者の希望によって、社内のITエンジニアを同席させる。

カジュアル面談の狙いは、気軽にさまざまな話題をやりとりすることでリラックスした応募者から本音を引き出し、仕事に関するイメージを共有し、自社をアピールすることだといえます。応募数はそれなりにあっても採用までつながらないというときは、カジュアル面談を活用してみるとよいでしょう
(参照:『カジュアル面談とは|導入メリットや面談の流れを解説【質問集付き】』)

採用説明会の頻度を多くする

ITエンジニアの採用説明会は、Web会議を上手に活用して、開催する頻度を増やしていくことも重要です。従来は採用説明会を行うときは、リアルな会場を手配する必要があったので準備に手間がかかっていました。

Webでの開催を多くすることで、応募者は実際に会場まで足を運ぶ必要がなく、自分の都合に合わせて参加できます。応募者の利便性を考えた場合、採用説明会は多いほうが人材が集まりやすくなるでしょう。

内定後のコミュニケーションを大事にする

採用が決まり、内定を出した後もコミュニケーションをしっかりと取ることが重要です。なぜなら、応募者は必ずしも1社だけに応募しているわけではないからです。応募者が複数の企業に応募をしているときは、特に意識的にやりとりを行っていく必要があります。

もしも、何もコミュニケーションを取っていないと、いきなり内定辞退の連絡がくるかもしれません。内定辞退を防ぐためには、内定者の状況把握や内定承諾の期限を設けるなどの対応が必要です。

ただし、内定者から他社にも応募をしていることや他社の都合で内定承諾の期限を調整してもらいたい旨の連絡があったときには、むやみに否定してはなりません。内定者の都合や希望を優先してあげることで、結果的に内定承諾につながる可能性が高くなるでしょう。

親身になって相談に応じることで、自社が内定者を大事にしている点をアピールすることも大切です。また、仮に内定辞退となったとしても、他社を決めた理由は何かを教えてもらい、今後の採用活動の改善につなげてみましょう。
(参照:『選考辞退や内定辞退を減らすためのコミュニケーション術~効果的な面接・フォローの羅針盤~』)

内定承諾率をアップさせるために採用担当者が心がけておきたいこと

ITエンジニアの採用活動を進めるときには、内定承諾率をアップさせるために、採用担当者が心がけておくべき事項がいくつかあります。主な留意点として、次のものが挙げられます。

内定承諾率を高めるための7つのポイント

・採用担当者の印象が志望を大きく左右する
・面接時は応募者の緊張を和らげる工夫をする
・企業や業務に関する説明を丁寧に行う
・応募者に応じて適切な動機づけを心がける
・内定通知を送る段階でさらに詳しい情報を提示する
・熱心にコミュニケーションを取り続ける
・応募者ごとにアプローチ方法を変える

各ポイントの大事な部分を解説します。

(参照:『面接官のやり方と心得|事前準備や質問例など基礎ノウハウを解説【マニュアル付】』)

採用担当者の印象が志望を大きく左右する

採用担当者の印象はよくも悪くも、応募者の志望に大きな影響を与えます。よい印象の担当者であれば、前向きに応募を検討してもらえるでしょうが、悪い印象だと応募を控えるかもしれません。

そのため、採用担当者に誰をあてるかという点は、企業の採用活動において重要なポイントだといえます。担当者になった方が気をつけておくべき点として、主に以下のようなものが挙げられます。

採用担当者が気をつけておきたいチェックポイント

チェックポイント 留意点
身なり ・清潔感を抱かせる服装や髪形
・身だしなみに気を配る
応対 ・採用担当者自身も自己紹介を行う
・来社してくれたことに感謝の気持ちを伝える
面接の姿勢 ・採用とは直接関係がない話題にも触れて、雰囲気を和ませる
・応募者の本音を引き出すために、企業側として開示できる情報を誠実に伝える
会話 ・基本的に、応募者の話に耳を傾けるという姿勢で面接を進める
・話を途中で遮らずに、しっかりと応募者の考えに耳を傾ける
質問事項 ・思想や家庭環境、宗教などに関する質問をしない
・コンプライアンスに触れるような質問を避ける

上記に挙げたポイントはあくまで基本的なものなので、企業によって採用担当者が守るべきマニュアルを整えてみるとよいでしょう。また、面接を行うにあたっては応募者が提出した書類にきちんと目を通すなどして、しっかりと準備を整えておくことも大切です。

必要な準備を疎かにしていると、真剣に採用活動に取り組んでいない企業だと悪い印象を与えかねないので注意しましょう。あくまで、面接は企業側と応募者側の双方がお互いを知るための機会であることを忘れずに、誠実な姿勢で向き合っていくことが大切です。

Webに掲載する求人情報などを細かく記載することは大事ですが、やはり非言語の部分での印象というものは面接などを通じてしかわからない部分があります。採用担当者の年齢が応募者と近ければ、入社後に一緒の部署で働く可能性もあるため、「一緒に働きたいと思えるか」という点は、応募者も意識している部分でもあります。

面接時の印象はごまかしが利かない部分であるからこそ、入念に準備を整えて対応していくことが求められます。実際に面接を行う前に、採用担当者の間でロールプレイングを行い、問題点がないかをチェックしてみましょう。

面接時は応募者の緊張を和らげる工夫をする

面接を行うときは、どのような形で進めていくかをあらかじめシミュレーションしておくことが大事です。よくありがちなのが、面接が始まると少しアイスブレイクを設けるだけで、いきなり志望動機や経験などのヒアリングを行うケースです。

この進め方自体が悪いわけではありませんが、矢継ぎ早に質問をされると応募者は緊張したまま面接を受けることになり、思うように本音を口にできないかもしれません。応募者の本音を聞けないことは、企業側にとってもマイナスであり、応募者との間でうまく認識を共有できない恐れがあります。

緊張を和らげて気兼ねなく話をしてもらうには、気遣いのある言葉を投げかけることや、自己開示を意識することが大切です。これらを実践することによって、応募者の満足度を高めることにつながり、採用率をアップさせていくことになるでしょう。

応募者を気遣う言葉の例としては、次のようなものが挙げられます。

応募者に向けた気遣いの言葉の例

・Webでの面接は初めてですか?
・わからないことがあったら、その都度質問して頂いて大丈夫ですよ。
・ここまでの段階で、何か不明な点はありませんか?

上記はあくまで一例ですが、これらのトークは面接が始まったときだけ行うものではなく、流れのなかで適切に言葉をかけていくことが大切です。採用担当者がちょっとした気遣いを見せてくれるだけで、応募者の緊張がほぐれやすくなるでしょう。

また、自己開示の例としては次のようなものが挙げられます。

応募者に向けた気遣いの言葉の例

・Webでの面接は初めてですか?
・わからないことがあったら、その都度質問して頂いて大丈夫ですよ。
・ここまでの段階で、何か不明な点はありませんか?

上記はあくまで一例ですが、これらのトークは面接が始まったときだけ行うものではなく、流れのなかで適切に言葉をかけていくことが大切です。採用担当者がちょっとした気遣いを見せてくれるだけで、応募者の緊張がほぐれやすくなるでしょう。

また、自己開示の例としては次のようなものが挙げられます。

採用担当者の自己開示の例

・私も転職活動を行っていたときは、〇〇な悩みがありましたが、△△さんの場合はどうでしょうか?
・私が今の会社に入ったのは、□□の分野でキャリアを積みたいと思ったからです。
・私にも家族がいますが、そのなかで転職活動を進めていくのは大変ですね。

採用担当者の基本的な姿勢として、応募者に質問を行う前に必要に応じて、自己開示を積極的に行ってみましょう。自らの経験や同僚などの話から、転職活動時の入社理由、悩んでいたことなどをそれとなく話すことで、応募者に共感を抱いてもらえることがあります。

応募者の経歴やスキルなどを踏まえて、共通点を見出せる部分の話を振り向けてみると、本音を引き出しやすくなるかもしれません。面接において自己開示が有効な手段となるのは、「自己開示の返報性が働くからだといえるでしょう。

相手に尋ねる前に、まずは自分の話をすることによって、何でもオープンに話してくれる人だという印象を抱いてもらえます。そういう相手であれば、どのような話題でもしっかり受け止めてくれるだろうといった前向きな予測が働くため、面接でのコミュニケーションがより深いものとなるはずです。

自己開示は手短な形で端的に伝えていくことが重要だといえます。双方向のコミュニケーションを意識することによって、お互いが相手のことを見極めやすくなるでしょう。

企業や業務に関する説明を丁寧に行う

面接時に気をつけておきたい点は、自社の事業や業務内容について、丁寧に説明を行うことです。何も意識をしないまま面接を行うと、単に取り組んでもらいたい業務の説明だけで終わってしまうことがあります。

タスクの説明だけでは、応募者は「自分を採用しなくてもよいのではないか?」と疑問を持つ部分も出てくるでしょう。また、業務を通じて何を得られるのかという点も不明確なため、競合他社に関心が向いてしまう恐れもあります。

ITエンジニアに限らず、転職活動を進める応募者は「どのような会社なのか?」「その事業は何に貢献しているのか?」といった点は気になるものです。自社が目指している経営の方向性やビジョンなどを論理的に説明していくことで、他社との違いを感じ取ってもらえるでしょう。

例えば、開発エンジニアを募集する場合に、以下のような説明を行うと応募者の納得感を得ることにつながります。

段階 ポイント
実務レベル 日常業務に関する説明をする(プロジェクトの例・使用するプログラミング言語・開発フロー・チーム構成など)
価値レベル 日常業務がもたらす価値の説明をする(他社よりも優れたシステムを構築することによって、クライアントの業務効率化をサポートする)
目的レベル 日々の業務が何を目指して行われているのか目的を説明する(ITサービスの支援を通じて、クライアントの経営課題の解決につなげる)
意義レベル 自社の事業がどのような社会的意義を持っているかを説明する(快適なIT環境を整備することで、利便性の高い社会を実現する)

上記のようなストーリーで丁寧な説明を行うほうが、単に「△△さんに担当してもらう業務は□□です」と伝えるよりも、仕事への意義などを感じてもらいやすくなるでしょう。転職活動を行っている方は、すでに経験やスキルがしっかりと備わっている方も多いので、何のために自分の能力を発揮できるかという点を重視しているケースもめずらしくありません。

たとえ、他社と似たような事業目的やビジョンを抱えていたとしても、直接応募者に言葉として伝えることは大事です。話す内容だけでなく、伝え方にも気を配ることによって、応募者からさらによい反応を引き出せるでしょう。

応募者に応じて適切な動機づけを心がける

一口に応募者といっても、一人ひとりが多様なバックボーンを持っているものです。そのため、応募者ごとに自社の何に魅力を感じるかはさまざまだといえます。

競合他社よりも大きく優れた点があるなら別ですが、「当社の魅力は〇〇!」とあまり決め打ちしてしまうと、かえって特徴のない会社だと思われる恐れがあります。初めて採用活動を行う場合は難しい部分がありますが、採用活動を継続して行っている場合はこれまでの応募者の志望動機や転職理由などから、自社のアピールポイントを打ち出してみましょう。

自社の応募者に見られる特徴を洗い出すことによって、求める人材に訴求したアピールポイントを見つけられるはずです。いわゆるキャリアアンカーを重視したアプローチを行っていくことが大切だといえます。

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを形成するなかにおいて、他に譲ることができない価値観や欲求のことを指します。主なキャリアアンカーについては、次のとおりです。

8つのキャリアアンカー

キャリアアンカーの種類 ポイント
安定性 安定した環境で働きたい、転勤をできるだけ避けたい
ワークライフバランス 仕事と家庭、プライベートなどのバランスを取りたい
出世 組織のなかで高いポジションを得て、周りから認められたい
専門性 技術をとことん突き詰めて、世界レベルまで目指したい
社会貢献 世の中に大きく貢献したい、よりよい社会を築く手伝いをしたい
自由度 仕事の裁量が大きく、自由に取り組んでみたい
起業家志向 いずれは独立して、自分の力でチャレンジしてみたい
挑戦 困難な問題だからこそ、乗り越えてみせたい

さらに、応募者からは転職理由についても詳しく尋ねてみましょう。「キャリアアップのために転職をした」といっても、開発職として技術を極めていきたいのか、マネジメント力を発揮して、組織づくりに貢献していきたいのかでは異なります。

また、求人広告などの求人情報のどのあたりに興味を持って応募してきてくれたのかを尋ねてみてもよいでしょう。応募者の志望動機を深く掘り下げていくことによって、応募者の本音を引き出すことにつながるはずです。

本音を引き出すアプローチとしては、次のような点がポイントになるでしょう。

応募者の本音を引き出す3つの質問ポイント

・何が満たされれば、現職にとどまりますか?
・現職で最もお世話になっている方に、転職することを伝えたらどのような反応を示すと思いますか?
・もしも、当社に入社したとして一番期待することは何ですか?

ただし、これらの質問に対して応募者が十分に答えられなくても問題ありません。今後のキャリアパスを一緒に考えてみましょうと伝えるだけでも、ずいぶんとよい印象を与えることにつながるでしょう。

内定通知を送る段階でさらに詳しい情報を提示する

採用を決定して内定通知を送る段階においては、少し工夫をすることで内定承諾率を高めることが可能です。ポイントとしては、内定通知を行うときに給与や就業時間、休日休暇などの基本的な情報だけでなく、以下の情報を盛り込んだ内容を伝える点が挙げられます。

内定通知書を送るときの2つのポイント

・手当なども含めた支給可能性がある年収を提示する
・将来的な年収アップの情報も伝える

まず、基本的な給与の支払額だけを提示してしまうと、内定者はその金額だけしか受け取れないと誤解してしまう恐れがあるので注意が必要です。給与に関しては気になる部分ではありますが、内定者の立場からは質問をしづらい部分でもあります。

そのため、本人が希望する収入に見合っていないと、内定辞退につながる可能性があるので気をつけましょう。できれば、本人の家族構成や住居費、入社後に想定される残業時間などを踏まえて、一人ひとりの状況に合わせた年収予想額を提示してあげることです。

きちんと想定した試算であることを伝えておけば、認識の齟齬を心配する必要もないでしょう。年収に対する希望を高めてあげることによって、働く意欲をアップさせることが大切です。

そして、現在予想される年収だけを提示すると、他社との将来性を比較する内定者もいるかもしれません。特にキャリアアップの志向が強く、自分の市場価値を高く評価してもらいたいと思っている内定者であれば、現在の予想年収だけ提示していては不十分です。

そのため、自社での支給実績などを踏まえたうえで、同様の職種・スキルなどのケースで将来的にどれくらいの年収になるのかを提示してあげるとよいでしょう。将来の年収の値上がり幅まで伝えてあげることで、たとえ現在の年収が他社より低かったとしても、内定を承諾してくれる可能性が高まるといえます。

熱心にコミュニケーションを取り続ける

内定者は実際に入社するまでにさまざまな情報に触れるため、何のアプローチも行わないままでいると心変わりをしてしまう可能性があります。内定者によっては複数の会社から内定をもらっているケースもあるため、内定通知書を受け取った会社同士を比較することは自ずと想定されます。

そのため、内定通知書を送ってからも積極的に、企業側からコミュニケーションを取っていくことが重要です。熱心なアプローチがあることで、「自分が求められている」「これまでの経験やスキルを発揮できそう」といった前向きな気持ちを内定者に抱いてもらえるようになります。

内定者に対して期待している部分や一緒に働きたいという気持ちをストレートに、電話や面談などを通じて伝えましょう。同じような条件が他社からも提示されていれば、最終的にどの会社に入社するかの判断は、採用担当者のアプローチ次第だといえます。

もちろん、内定者の負担を考慮したうえでアプローチを行うべきですが、自社が内定者を必要としている思いをしっかりと伝えてみましょう。

内定者ごとにアプローチ方法を変える

内定通知の方法は一律に行ってしまいがちですが、実は内定者ごとに通知方法を変えるほうが効果的だといえます。なぜなら、内定通知書が送られてきてすぐに入社を決断するタイプの方がいる一方で、じっくりと考えて返答をしたいと考えている方もいるからです。

そのため、「内定への返答期限は1週間以内」と期限を設けるのは、合理的な根拠がなければ、あまり意味のないことだともいえます。内定通知書を送るときには、内定者がどのようなタイプであるかをよく見極めたうえで、最適なアプローチ方法を選んでみましょう。

内定者がどのようなタイプであるかは、面接などを通じてある程度把握できているはずです。また、他社からも内定を受け取っていたり、自社への優先度が低かったりする内定者に対しては追加で情報提供を行い、状況に応じてヒアリングを実施してみるとよいでしょう。

さらに、内定への返答期限を長めに設定することによって、結果的に内定承諾率がアップするといえます。電話やメール、面談などを通じてできるだけ多くの接点を持ち、内定者と継続的なコミュニケーションを取ってみてください。

ITエンジニアの採用活動における注意点

ITエンジニアの採用活動を積極的に推進するには、あらかじめ気をつけておきたい点を把握しておくことが大事です。特に注意しておきたい点として、以下の4つが挙げられます。

採用活動における4つの注意点

・応募書類だけで選考しない
・業務内容や人事評価はできるだけデータで示す
・面接時は社内のエンジニアにも参加してもらう
・電話やメール以外のコミュニケーションツールも活用する

それぞれの注意点について、ポイントを解説します。

応募書類だけで選考しない

ITエンジニアの採用活動を進めていく流れのなかで気をつけておきたい点は、応募書類だけですべてを判断しないということです。応募者が多数いれば、書類選考である程度選ばなければなりませんが、応募者がそれほど多くなければ書類に書かれている経歴だけで判断するのは避けたほうが無難です。

ITエンジニアの実力は、職務経歴書などだけでは十分に判断することができません。応募書類のなかで気になる部分や不足している情報などがあれば、カジュアル面談を実施するなどして、応募者と積極的に対話をしてみましょう。

そして、採用面接まで進められる人物かどうかをよく見極めることが大事です。見極め作業を怠って書類選考だけで落としてしまっては、せっかくの採用機会を失う恐れがあるので注意しましょう。

業務内容や人事評価はできるだけデータで示す

採用活動を行う際は、応募者に対して入社してもらう前提で必要な情報を開示していくことが大切です。自社のITエンジニアがどのような業務に携わっているかは、採用する前に具体的な内容を伝えるようにしましょう。

業務や求められるスキルなどを応募者と共有することによって、入社後のミスマッチを減らすことができます。特にSES企業においては、基本的な業務内容がクライアント先での仕事となるため、応募者にとっては働くときのイメージを持ちづらいという印象があります。

また、人事評価がどのように行われるのかも気になる点だといえるでしょう。担当する業務や評価、給与などの面であいまいさが残ってしまえば、入社に対するモチベーションも低下してしまいがちです。具体的な情報を開示することで、入社後の働くイメージをしっかりと持ってもらいましょう。

面接時は社内のエンジニアにも参加してもらう

カジュアル面談や採用面接の場においては、できれば社内のエンジニアにも同席してもらいましょう。エンジニアに同席してもらうメリットは、業務やスキルなどに対する疑問や質問などを丁寧に説明できることです。

企業側としては応募者に対して十分な説明を行うことができ、応募者にとっても納得感が増すでしょう。ITエンジニアの採用活動を成功に導くには、応募者の視点に立って考えていくことが何よりも欠かせません。

採用を担う人事部だけが担当するのではなく、必要に応じて他部署の協力も仰いでみましょう。

電話やメール以外のコミュニケーションツールも活用する

応募者と連絡を取るときは、電話やメールだけではうまくコミュニケーションが取れないこともあります。必要に応じて、チャットツールやWeb会議ツールなどを柔軟に活用することによって、きめ細かなアプローチを行うことができるでしょう。

特に電話やメールは、少々堅めのコミュニケーションになってしまいがちなので、気軽に質問ができるフランクな連絡手段も用意しておくほうがよいでしょう。SlackやLINEなどのメッセージアプリなどを使うことで、気軽に連絡を取りやすくなるはずです。

また、Web会議ツールを活用すれば、企業側・応募者双方にとって時間の節約にもつながるでしょう。ただし、コミュニケーションツールを活用するときは、必ず会社のアカウントを使用することが大事です。

採用担当者個人のアカウントでは敬遠されてしまいますし、場合によってはトラブルの原因となってしまうこともあります。コミュニケーションツールの利用方法について社内できちんと指針を定めたうえで、効果的な利用を図ってみてください。

まとめ

SES企業にとって、ITエンジニアの採用は日常的な経営課題として取り組むべき内容だといえます。IoTやAIなどのニーズの高まりによって、IT業界そのものへの注目度は高まっていますが、IT人材そのものは不足している状態が続いており、競合他社との間で人材の獲得競争が起こっているといえるでしょう。

自社への応募を活性化させるには、応募者が抱えている心理や志向を踏まえたうえで、待遇面や働き方などで積極的にアピールをしていくことが大事です。また、採用を決定した人材に対して、内定承諾率を高めるためのアプローチも欠かさないようにしましょう。

安定的な人材確保を行っていくには、採用計画の定期的な見直しと改善が必要です。他社や応募者の動向などを探りながら、自社に合った採用活動を進めてみましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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