採用チャネルとは?主な種類と選び方・注意点を紹介

d’s JOURNAL編集部

「自社が求めるような人材に出会えない」「求人広告を打っても応募が集まらない」という場合は、採用チャネルを根本的に見直してみることが大切です。採用チャネルとは、採用に至るまでの経路のことであり、サービスの進歩とともに多様化・複雑化しているのが現状です。

この記事では、採用チャネルのおもな種類と、自社に合ったチャネルを選定するためのポイントや注意点について解説します。

採用チャネルとは


「チャネル」とは経路やルートのことであり、おもにマーケティングの分野で使われる用語です。ここではまず、人材採用の領域における意味について確認しておきましょう。

採用チャネルの概要

「採用チャネル」とは、企業が採用活動を行うにあたり、採用候補者にアプローチするための手段や媒体を指します。採用候補者の属性は問わず、就職・転職に向けて動いている顕在層だけでなく、まだ具体的な動きを見せていない潜在層までが対象となります。

代表的な採用チャネルとしてあげられるのは、従来広く用いられてきた求人広告や人材サービス会社による仲介です。そこから、サービスの進歩とともに採用チャネルの種類も多様化してきており、現在では企業側から主体的にアクションを起こせる選択肢も増えています。

企業側が候補者に直接アプローチを行うダイレクトリクルーティングは、その代表的な例といえるでしょう。

採用チャネルが多様化する背景

従来の採用チャネルは、求人広告の発信や人材紹介会社の利用が主流であり、企業は候補者からの応募がくるのを待つしかないという状態が一般的でした。その代わり、大手の求人広告(求人媒体)は認知度が高く、ほとんどの求職者もこれらのサービスを利用していたため、採用チャネルとしての役割は十分に果たしていたといえます。

しかし、現在ではデジタル技術の普及により、多くの求職者が多様なルートで情報収集するようになりました。インターネットやSNS、企業独自の採用サイトといった媒体を活用し、多角的に情報を集めることが可能になったのです。

また、現代の求人環境は、労働人口の減少による売り手市場化が長く続いており、企業同士の採用競争が激化しています。こうした背景により、企業が優秀な人材を採用するためには、さまざまな採用チャネルに対応する必要性が生まれています。

既存の「待ち」の採用だけでなく、ときには企業が自ら動く「攻め」の採用も重要になっているといえるでしょう。

採用チャネルのおもな種類と特徴


前述の通り、採用チャネルは時代の変化にともなって多様な形に発展してきています。ここでは、採用チャネルのおもな種類と特徴について見ていきましょう。

採用チャネルの3つのタイプ

採用チャネルは大きく「公募型」「人材サービスの利用」「能動的採用」の3つのタイプに分類できます。公募型とは、求人広告や採用サイトなどで不特定多数に向けて情報を発信し、オープンな状態で募集をかける方法です。

古くから用いられている方法でもあり、母集団を広げるのに役立つほか、自社の認知度や信頼性を向上させる効果もあります。人材サービスの利用は人材サービス会社や派遣会社などを通じて採用を行う手法であり、専門職やエグゼクティブ層といったハイクラス人材にも接触できるのがメリットです。

一方、1人あたりの採用費用は高くなるため、どちらかといえばポジションや経験などの条件を絞ったピンポイントでの採用に向いています。そして、3つめの能動的採用とは、企業が自ら求職者へアプローチをかける方法です。

後ほどご紹介するダイレクトスカウト(ダイレクトリクルーティング)やリファラル採用などが代表的な手法です。

各採用チャネルの特徴

3つの採用チャネルには、それぞれ異なった特徴があります。ここでは、採用チャネルをより細分化し、各チャネルの内容や特徴について解説します。

①求人広告:多様な人材を採用できる

求人広告は、Webサイトや求人情報誌などの求人広告(求人媒体)に自社の求人広告を掲載する方法です。大手の求人サイトは、数多くのユーザー登録数を誇るため、不特定多数の求職者に自社の情報を見てもらえる可能性があるのがメリットです。

また、求人情報誌は地元密着型で発信されることが多く、特定エリアでの人材採用に絞って効率的に募集できるのが強みです。一方、求人広告は情報を掲載するだけで料金が発生する仕組みであるため、たとえ採用につながらなくても費用がかかってしまいます。

さらに、掲載スペースや使用できるフォーマットが制限されるため、自社の魅力を自由に発信するのが難しいのもデメリットです。また、基本的に企業は「待ち」の姿勢で応募を受ける形になるため、募集してくる候補者のスクリーニングは選考が開始するまで行えません。

そのため、ピンポイントで特定の条件に当てはまる人材を獲得したいケースよりも、大量一括採用や安定した母数が必要な新卒採用を行いたい場合に適した方法といえます。

②採用オウンドメディア:採用候補者と直接やりとりが行える

採用オウンドメディアとは、自社が主体的に運営する採用サイトのことです。採用オウンドメディアの大きな特徴は、自由に自社のメッセージを発信できる点にあります。

求人広告のように表現や掲載スペースの制限がないため、企業の色や魅力を存分に伝えることができ、求職者に強く訴求できるのがメリットです。たとえば、経営者のメッセージや先輩従業員の声、実際に働いている様子を映した映像など、さまざまなコンテンツを自由に発信することができます。

自社の強みや働き方を正確に理解してもらえるため、転職潜在層にも興味を持ってもらえる可能性があるとともに、採用におけるミスマッチも防ぐことができるでしょう。自社の特徴をきちんと把握したうえで応募してもらえるため、入社後にイメージとのギャップを感じさせてしまうリスクが軽減されるのです。

ただ、オウンドメディアで一定の成果をあげるためには、SEO対策にきちんと力を入れる必要があります。成果が出るまでには大きな費用と時間がかかるため、単発での人材採用を行うには、やや過剰な取り組みといえるでしょう。

オウンドメディアをきちんと機能させるためには、数年単位での中長期的な採用計画が求められるため、導入の是非は自社の経営方針と照らし合わせて検討する必要があります。

③人材サービスの利用:採用業務の負担軽減につながる

人材紹介会社を通じて求職者との接点を得て、採用へとつなげる手法です。基本的には転職エージェントや人材エージェントと呼ばれる担当者に、自社が求める人材の条件を伝えておき、それに基づいて適切な候補者を紹介してもらうという仕組みです。

大きなメリットは、人材サービスを専門に扱う会社のノウハウやデータベースを活用できる点にあります。自社で求職者を探すのに比べて、選考にかかる時間や人手を大幅に削減できるとともに、面接のスケジュール調整なども代行してもらえます。

さらに、近年では、業種・職種特化型のエージェントも増えており、専門的な人材に採用候補を絞って紹介してもらうことも可能です。そのため、公募型では出会えないようなタイプの人材とも接触できる可能性が高くなります。

なお、人材紹介会社の料金形態は、採用が決まった時点で費用が発生する成功報酬型が多いです。成功報酬型では、採用に至らなかった場合は費用が発生しないため、じっくりと候補者を見極められるのも特徴といえるでしょう。

一方、1人あたりの採用コストは高額な傾向にあり、一度に大量の人材を求める場合は予算を大幅に圧迫してしまうリスクがあります。

(参考:『人材紹介サービスを活用するメリット・デメリットとは?』)

④ダイレクトスカウト:採用コストを抑えられる

ダイレクトスカウトとは、求人サービスのデータベースから企業自ら欲しい人材を探し、条件に合った候補者をスカウトする手法です。企業が能動的に動くのが大きな特徴であり、ダイレクトリクルーティングやダイレクト・ソーシングと呼ばれることもあります。

ダイレクトスカウトでは、自社が求める条件に沿って細かく人材をサーチするため、採用後のミスマッチが起こりにくいのがメリットです。また、受動的な姿勢では接点がつくれない転職潜在層にもアプローチできるため、採用の可能性が大きく広がるのも利点といえます。

ダイレクトスカウトを扱う求人サービスの料金形態は、データベースの利用料のみの場合と、採用決定時に別途で費用がかかる成功報酬型の2種類があります。人材データベースの内容や職種・ポジションの傾向は、取り扱う企業によっても異なるため、条件に合うかどうかを事前にチェックしておくことが大切です。

(参考:『自社に最適な人材採用を。ダイレクト・ソーシングの活用方法』)

⑤リファラル採用:自社にマッチした人材を見つけられる

リファラル採用とは、自社の従業員に友人や知人を紹介してもらうことで採用候補者を募る手法であり、ダイレクトスカウトと同じく能動型採用の一種です。大きな特徴は、自社の企業風土や働き方を熟知した従業員の判断を通じて、適した人材を紹介してもらえる点にあります。

自社と候補者のどちらもよく知る従業員が間に入るため、採用のミスマッチが起こりにくくなるとともに、候補者も安心して選考に臨みやすくなるでしょう。新規採用が難しくなっている現在では、効率的な採用活動を行うための選択肢として、特に注目度が高まっている手法といえます。

一方、候補者が従業員の知人という間柄である以上、採用に至らないケースや採用後にトラブルが発生してしまう場合は、人間関係にマイナスの影響をもたらす恐れもあります。そのため、リファラル採用を導入する際には、紹介者の立場や信頼関係にも丁寧に配慮することが大切です。

また、当然ながら自社に対する従業員満足度が高くなければ、そもそもリファラル採用の仕組み自体が機能しません。企業と従業員の信頼関係によって成り立つ制度であるため、導入が適しているかどうかは慎重に検討する必要があります。

(参考:『リファラル採用とは|メリット・デメリットや導入方法と成功事例を紹介』)

⑥SNS:転職潜在層にアプローチできる

SNSの運用も代表的な能動的採用の一種です。自社の公式アカウントを通じて企業情報の発信を行うことで、多くの求職者に興味を持ってもらい、採用サイトやオウンドメディアへの流入を増やすのがおもな目的です。

SNSの大きなメリットは、プラットフォームそのものが強力な拡散力を持っている点にあります。魅力的な情報や興味深いデータを発信すれば、ユーザーによって自発的に拡散されていくケースもあるため、認知を一気に広げられる機会があるのです。

また、SNS広告を用いれば、ユーザーのタイムラインやフィードに自社の情報を掲載できるため、大きく認知を拡大することができます。費用はかかってしまいますが、ユーザーの属性に応じて掲載する対象を絞り込めるため、効率的な訴求が可能です。

さらに、SNSは自社が一方的に情報を発信するのではなく、ユーザーとの双方向的なやりとりが可能な点も大きな特徴です。質問や相談を受け付けることもできるため、求職者との距離を縮めたり、信頼性を構築したりするのにも役立つでしょう。

ただ、SNSには炎上リスクもあるため、運用するうえでは最低限のリテラシーと知識が必要となります。場合によっては企業の信用を損なう可能性もあるため、運用には細心の注意を払うことが大切です。

⑦転職イベント:直接自社の魅力を伝えられる

転職イベントは転職希望者が集うイベントに出展し、自社の魅力をアピールする方法であり、公募型の採用手法のなかでも、ある程度は採用候補者を絞り込めるのが特徴です。開催する主体は大手転職サイトから地元企業、地方自治体などのさまざまなケースがあり、規模や対象者もイベントによってバラバラです。

そのため、自社が求める人材像に合わせて出展するイベントを選べば、効率的な募集が行えます。また、求職者と直接的な接点を築けるため、自社の魅力を丁寧にアピールしたり、求職者からの質問を受け付けたりすることも可能な点がメリットです。

ただし、転職イベントの開催・出展には場所の確保やブースの準備、運営のための人員確保などが必要となるため、それなりに多くの費用がかかります。取り組むべきかどうかは、採用したい人数や自社の人員を踏まえて慎重に検討しましょう。

⑧ハローワーク:無料で求人を行える

幅広い求職者を募るという目的においては、厚生労働省が管轄する行政機関・ハローワークに求人募集を依頼するのも一つの方法です。ハローワークは全国に500ヶ所以上設置されており、企業の依頼に応じて専用の端末で表示される求人広告に掲載してもらったり、Webサイトで公開してもらったりすることが可能です。

民間の求人サイトとは異なり、利用料や掲載料はかからないため、費用をかけずに広告を打てるのが大きなメリットといえます。また、ハローワーク自体の知名度や信頼性が高いため、幅広い求職者に見てもらいやすいのも利点です。

ただし、求人情報に掲載できる内容は、おもな仕事内容や賃金、福利厚生といった基本的なものに限られています。そのため、広告の内容で自社の独自性を打ち出すのは難しい面があります。

採用チャネルを選定するときのポイント


これまでご紹介したように、採用チャネルにはさまざまな種類があります。ここでは、自社に合った採用チャネルを選ぶときに意識したいポイントについて解説します。

人材の数と質のどちらを優先させるかを決める

適した採用チャネルは、企業の採用目的によって異なります。まずは、採用計画において人材の数と質のどちらを優先させるべきかを明確に固めましょう。

一度の多くの人員を確保する必要がある場合は、公募型の求人広告や転職イベントなどが向いています。一方で、質の高い人材を集めるのであれば、人材紹介サービスやダイレクトリクルーティングでピンポイントに狙いを定めるほうがよいでしょう。

転職希望者に応じた採用チャネルを選ぶ

採用チャネルは、自社が採用候補とする求職者の属性に合わせて選ぶことも大切です。たとえば、20代の若年層を採用するのであれば、比較的に利用者の多いSNSの運用が効果的といえます。

それに対して、ミドル世代のハイクラス層や高度な専門職人材を採用する場合は、ハイクラス専門の人材サービスの利用や、ダイレクトスカウトを活用するほうが有効です。

採用活動にかかる手間やスピードを考慮する

採用活動にかけられる時間によっても、適した採用チャネルは異なります。急な欠員や新規プロジェクトの立ち上げなどで、より短期的な人員確保が求められる場合は、採用までの工数がかからない人材紹介サービスなどが向いています。

反対に、じっくりと自社の採用力を強化したい場合は、採用オウンドメディアやSNSの運用に力を入れることが大切です。自社が主体となって発信できる土壌を耕すことで、目先の期間だけでなく、長期にわたって採用活動の質を高められます。

採用コストを比較する

採用チャネルごとに費用は異なるため、費用面で比較することも重要です。たとえばあまり費用をかけずに採用を行う方法としては、リファラル採用やSNSの運用があげられます。

ただし、SNSの運用には人的リソースを必要とするため、その分の費用は見込んでおく必要があります。また、外部のサービスを利用する場合は、同じ採用チャネルであっても依頼する内容や方法によって費用が異なるので、事前によく比較しておきましょう。

採用コストについて、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『採用コストの平均相場は?コスト削減の施策や計算方法を解説』)

採用チャネルを選ぶときの注意点


最後に、自社に適した採用チャネルを選ぶときの注意点を確認しておきましょう。

ペルソナを明確にしておく

これまで見てきたように、適した採用チャネルはどのような採用計画を立てるかによって異なります。自社がどのような人材を求めているかを明確にしなければ、効果的な採用チャネルを選ぶことはできません。

そのため、まずは採用チャネルの選定の前に、採用ペルソナを設定しましょう。採用ペルソナとは、自社が求める人材像について事細かに特徴を洗い出し、実在する人物のようにキャラクター化したものを指します。

年齢や経験、前職の年収といった基本的な事柄から、仕事の価値観や意思決定の癖なども含めて、細かな性質まで設定していくのが特徴です。採用ペルソナを明確化することで、採用に携わる関係者全員で共通認識が持てるようになり、質の高い採用活動が行えるようになります。

採用ペルソナについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『採用ペルソナとは?重要性や設定ノウハウ・具体例をまとめて紹介【シート付】』)

複数のチャネルを組み合わせて活用する

自社の状況に応じて、いくつかの採用チャネルを組み合わせて活用するのも効果的です。たとえば、自社の採用力を根本から強化したい場合は、採用オウンドメディアとSNSの運用に力を入れながら、必要に応じてSEO対策やSNS広告なども取り入れると有効です。

また、自社とのマッチ度を重視して人材を採用したい場合は、リファラル採用を軸としながら、必要に応じてダイレクトスカウトを併用するといった方法もあります。各採用チャネルの特徴を比較・分析し、自社のニーズに合わせて柔軟に組み合わせを検討するとよいでしょう。

過去の採用データを分析する

採用活動の質を高めるためには、過去のデータを分析することにも注力する必要があります。過去に活用した採用チャネルがあれば、母集団形成や採用人数などの実績を詳細に洗い出し、採用候補者との相性や費用対効果を分析しましょう。

また、新たに導入を検討する採用チャネルについては、他社における導入実績を調べてみるのもおすすめです。そのうえで、実際に運用するのであれば、実行段階と運用後のデータも詳細にとっておき、新たな分析の材料にすることが大切です。

費用対効果を考える

採用チャネルの有効性は、単なる採用結果だけでなく、費用対効果も踏まえて測定する必要があります。特に求人広告やイベント運営などは、採用につながらなかったとしても費用がかかってしまうのが特徴です。

採用に費やした期間を振り返り、1人を採用するのにどのくらいの費用がかかっているのかを細かく計算しましょう。そのうえで、ダイレクトスカウトや人材紹介サービスで1人を採用する場合と比較してみると、各採用チャネルのコストパフォーマンスを適切に評価できます。

また、リファラル採用であれば「紹介した従業員の実質的な負担や紹介にかけた時間」、SNS・オウンドメディアの運用であれば「管理・運営にかけた時間」をそれぞれ正確に把握しておく必要があります。これらの時間を費用として数値化すれば、その他の採用チャネルとも比較がしやすくなるでしょう。

まとめ

現在の求人市場は、深刻な人手不足による採用競争の激化が続いています。こうした時代背景にあって、企業が競争優位性を確保するためには、多様な採用チャネルを上手に活用することが重要です。

採用チャネルにはさまざまな種類があり、それぞれ費用や効果、導入に適した状況が異なります。各チャネルの特徴や強みを把握したうえで、自社の採用課題を丁寧に洗い出し、最適な採用戦略を立てましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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