ワークライフインテグレーションとは?導入するメリットや注意点、ポイントを解説

d’s JOURNAL編集部

働き方改革の推進にともない、仕事と従業員のプライベートとの関係性が重要視されるようになってきています。そうした流れのなかで注目を集めているのが「ワークライフインテグレーション」と呼ばれる用語です。

この記事では、ワークライフインテグレーションの基本的な捉え方やメリットや実践時のポイントなどを解説します。

ワークライフインテグレーションとは


「ワークライフインテグレーション」(Work-Life Integration)には、「ワーク(職業生活)」と「ライフ(プライベート)」を統合するという意味があります。ここでは、ワークライフインテグレーションの基本的な捉え方について見ていきましょう。

ワークライフインテグレーションの意味

ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートのどちらにも目を向け、双方を充実させることでより豊かな人生を実現するといった意味を持ちます。従来の価値観では、「私生活は仕事に持ち込まない」といったように、仕事とプライベートを別個のものとして捉えるのが一般的な考え方でした。

しかし、現実的に見れば、仕事と個人の生活を切り分けて考えるのは非合理的な側面があるのも確かです。また、インターネットの普及によって、そもそも明確な区別を行うこと自体が難しくなっています。

それに対して、両者を統合することでどちらにも相乗効果を生み出そうとするほうが、「職業生活においても個人の生活においてもよりよい結果をもたらす」というのが、ワークライフインテグレーションの基本的な考え方です。

ワークライフインテグレーションが注目されている理由

ワークライフインテグレーションが注目される背景には、働き方改革の進展が挙げられます。多くの企業が働き方の見直しを行うなかで、リモートワークやフレックスタイム制の導入などにより、柔軟な労働環境の実現を果たす会社も増えています。

労働人口の減少による人手不足が続く現代において、多様な働き方を実現できる企業は、採用市場で競争優位性を確立しやすくなるでしょう。特に近年では、仕事への価値観も変容しており、プライベートとの両立を望む声も強くなってきています。

こうした動きのなかで、ワークライフインテグレーションの重要性が高まり、社会的な注目度も上昇しているのです。

ワークライフバランスとの違い

ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートを充実させるという点では、すでに広く浸透している「ワークライフバランス」と共通する部分も多いといえます。しかし、ワークライフバランスは仕事とプライベートのバランスを保ち、豊かな生活を送るために調整するといった意味を持つ言葉です。

そのため、厳密にいえば「仕事とプライベートを線引きしている」と考えることもできます。それに対して、ワークライフインテグレーションはどちらも線引きをせず、相乗効果によって両方を充実させるという考え方が基本となっています。

その点においては、ワークライフバランスを発展させたものがワークライフインテグレーションであるということもできるでしょう。

ワークライフインテグレーションを導入するメリット


ワークライフインテグレーションの考え方を取り入れることで、企業にはさまざまなメリットがもたらされます。ここでは、4つのポイントに分けて見ていきましょう。

従業員のスキルアップが期待できる

ワークライフインテグレーションが実現されれば、従業員は自然な形で「仕事も人生における一つの要素」であると捉えることができます。その結果、プライベートの経験を踏まえて仕事に活かしたり、前向きな姿勢で資格の取得に取り組んだりと、従業員の自発的なスキルアップを促せるのがメリットです。

また、反対に仕事での経験をプライベートに活かしながら、個人の人生そのものを向上してもらうこともできます。

働き方の選択肢を増やせる

ワークライフインテグレーションを実現する過程では、柔軟性の高い働き方を目指す必要もあります。例えば、リモートワークや時短勤務制度を導入すれば、育児や介護との両立を目指す方や、フルタイムでの勤務が難しい方などの採用も可能です。

多様なライフスタイルに応じた働き方を提案できるようになれば、採用力の強化につながり、組織の戦力を大きく広げられます。また、専門的なスキルが求められる業務を外注するなど、企業としても柔軟な戦略を取り入れやすくなるでしょう。

業務の見直しにつながる

ワークライフインテグレーションを推進するには、業務フローの見直しやITツールの導入による作業の省力化などに取り組む必要もあります。結果として、無駄な経費や労力の削減にもつながるため、組織全体としてのパフォーマンスが向上していきます。

生産性の向上に結びつけられる

従業員が働きやすい労働環境を整えることで、モチベーションのアップにつなげられるのも重要なメリットです。プライベートの充実により、仕事に対する意欲が自然と高まっていくため、一人ひとりのパフォーマンスも向上していくでしょう。

また、柔軟な働き方が実現されれば、ストレスの軽減などによって離職率の低下も期待できます。人材が長く定着していけば、採用・育成にかかる費用も削減され、組織の生産性がさらに向上します。

生産性の向上について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『【5つの施策例付】生産性向上に取り組むには、何からどう始めればいいのか? 』)

ワークライフインテグレーションを推進するためのポイント


ワークライフインテグレーションを実現するためには、企業が主体となって明確な施策を打ち出していく必要があります。ここでは、推進するためのポイントを3つに分けてご紹介します。

導入する目的をきちんと伝える

ワークライフインテグレーションを推進するには、全社的な取り組みが求められます。一部の経営層や管理職だけで理解を進めても、現場の責任者や従業員の共感や賛同が得られなければ、取り組みを進めることはできません。

そのため、まずは導入する目的を明確化し、しっかりと社内に共有していく必要があります。「生産性の向上を目指す」「長時間労働や残業を減らす」といった具体的なテーマを掲げて、従業員の理解を丁寧に得ることが大切です。

業務フローや労働環境をチェックする

ワークライフインテグレーションを導入するのであれば、どうしても労働時間の軽減は避けて通れないテーマとなります。その状態で業績を維持・向上させていくためには、既存の業務フローやシステムを見直し、無駄を省くことが大切となります。

例えば、ITツールの導入によってデータの管理・入力業務を減らしたり、一部の業務に裁量労働制を取り入れたりするなど、全体の効率化を図るのが重要です。また、リモートワークが行える労働環境を整えるなど、柔軟な働き方が行えるようにしていくのも課題といえます。

人事評価制度の見直しを行う

新たな働き方やシステムを導入するうえでは、人事評価制度の見直しも同時に行う必要があります。例えば、新たにリモートワークを導入する場合、既存の評価方法ではオフィスに出勤する従業員との間で不公平感が生まれてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、職務や働き方、成果などに応じて適切な評価が行えるように、必要に応じた制度の改善を図ることが大切です。人事評価制度の見直しについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『人事評価制度の種類と特徴を押さえて、自社に適した制度の導入へ【図で理解】 』)

ワークライフインテグレーションを取り入れる注意点


最後に、ワークライフインテグレーションを取り入れるうえで、注意すべきポイント2点に分けて解説します。

マネジメントを適切に行う必要がある

リモートワークやフレックスタイム制などを導入する場合は、勤怠や労務のマネジメントを適切に行わなければなりません。従業員のモチベーションを保つためにも、定期的に1on1ミーティングを行ったり、労務管理システムの導入を検討したりすることも大切です。

また、ワークライフインテグレーションは導入した成果を判定するのが難しい側面もあります。取り組みが形骸化してしまわないためにも、定期的に従業員のモチベーションチェックやストレスチェックなどを行い、変化を定点観測するのも一つの方法です。

ITツールの導入などを検討する

多様な働き方を実現するうえでは、どうしてもオフィスで一律に働くスタイルと比べて、従業員の勤務態度などを把握しづらくなります。そこで、目標設定や評価プロセスの見える化を図るために、人事評価に関してもITツールを活用してみるのも有効です。

また、リモートワークに対応するためには、どこからでもデータにアクセスできるようにシステムのクラウド化を図る必要があります。このように、ワークライフインテグレーションをスムーズに実現するためには、焦って具体的な施策を打ち出すのではなく、じっくりと環境整備を進めることが大切です。

まとめ

ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートを切り離さず、相乗効果によって双方を充実させていくという概念です。その点においては、ワークライフバランスよりも一歩先へ進んだ考え方ということもできます。

ワークライフンインテグレーションを導入するには、全社的な取り組みが必要となるため、じっくりと目的やゴールを浸透させていく必要があります。ITツールの導入や人事評価制度の見直しといった準備も重要となるため、中長期的なプランを立てて、じっくりと取り組みましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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