ワークライフバランスの取り組みとは?基本的な捉え方とポイントを解説

d’s JOURNAL編集部

「ワークライフバランス」は、従業員が活き活きと働ける職場づくりを行ううえで重要なテーマとなります。ワークライフバランスの追求は、多様な人材を活用できる環境づくりにもつながり、企業にも大きな利益をもたらすといえます。

この記事では、ワークライフバランスの基本的な捉え方やメリット、取り組む際のポイントについて見ていきましょう。また、企業における具体的な実践例もあわせて紹介します。

ワークライフバランスとは


「ワークライフバランス」とは、文字通り仕事と生活の調和を図ることを指す言葉です。ここでは、語句の基本的な意味や類似した用語との違いなどを解説します。

ワークライフバランスの意味

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を意味する言葉であり、もともとは1980年代のアメリカで生まれた概念です。その後、日本でも雇用不況や長時間労働による問題の表出などによって、1990年代以降から注目を集めるようになりました。

ワークライフバランスでは、仕事だけに重きを置くのではなく、育児や介護、自己研鑽や趣味の時間といったプライベートにも目を向け、双方のバランスを取ることを目指します。プライベートの充実が、従業員の心身の健康や家庭環境の向上につながり、仕事にもよい影響が生まれるというのがワークライフバランスの基本的な考え方です。

ただし、単に「仕事とプライベートの時間を均等に分ける」という状態を示しているわけではありません。調和が図れる度合いは人それぞれ異なり、置かれているライフステージによっても変化するため、柔軟な捉え方が重要になるでしょう。

ワークライフインテグレーションとの違い

ワークライフバランスと類似した言葉に「ワークライフインテグレーション」があります。インテグレーションとは「統合」を意味する英単語であり、ワークライフインテグレーションには仕事と生活を人生の一部として統合するといった意味があります。

統合という言葉が含まれているように、ワークライフインテグレーションでは仕事と生活を分離せずに扱う点が特徴だといえるでしょう。そのため、ワークライフバランスをより発展させた考え方とされることもあります。

ワークライフマネジメントとの違い

仕事と生活のバランスに関する概念には、「ワークライフマネジメント」という言葉もあります。これは、一般的に従業員個人が主体的に仕事と生活の好循環・相乗効果を目指して、自らマネジメントすることを指す言葉です。

それに対して、ワークライフバランスはどちらかといえば企業や組織が主体となって、メンバーに向けて行うのが特徴です。個人の人生や生活を充実させるためには、従業員自身の積極的な姿勢と、企業の充実したサポートの双方が必要となります。

そうした意味で、ワークライフマネジメントとワークライフバランスは車の両輪のようなものといえるでしょう。

ワークライフバランスの取り組みが必要とされる理由


ワークライフバランスが必要とされる背景には、現在のビジネス環境におけるさまざまな側面が関係しています。ここでは、3つの要因に分けて解説します。

労働力不足への対応

日本では少子高齢化にともなう労働人口の減少により、深刻な働き手不足が続いています。経営自体は黒字であっても、担い手が見つからずに倒産してしまうというケースもあり、人手不足は多くの企業にとって重要な課題となっています。

子育てと両立できない職場環境は、少子化を加速させる要因となるため、国としても早急な対策が求められている状況です。そうしたなかで、ワークライフバランスに対する社会的な要請が強まっているというのが一つの要因といえます。

多様な働き方への対応

共働き世帯の増加などにより、社会における働き方の価値観も大きく変化しています。結婚や出産の前後でも就業を続ける女性の割合は増え、「男性が外で働き、女性は家庭を守る」という従来の考え方が一般的ではなくなったことで、企業にも多様な働き方を想定した環境づくりが求められています。

また、労働人口の減少による人手不足も関係し、多様性への理解が進んでいない職場では、人材確保の面で大きく不利になってしまうケースも少なくありません。ワークライフバランスの向上を目指すなかで、女性や高齢者も活躍しやすい環境が整えられ、企業の組織力を強化することにつながるのです。

従業員のモチベーション維持への対応

ワークライフバランスの向上は、「長時間労働による健康問題」「過度なストレスによるメンタルヘルスの不調」を解消することにもつながります。職場の労働衛生を保つことで、従業員の離職や退職を予防できるため、人材を手放さないためにも重要な取り組みとなるでしょう。

また、近年では働き方だけでなく、仕事そのものに対する価値観も多様化しているのが特徴です。「仕事を通じて企業だけでなく社会にも貢献したい」「ライフステージに合わせたキャリア形成をしたい」など、仕事に対する希望の幅が大きく広がっています。

企業が働き方やキャリア形成に柔軟性を持たせることで、従業員にとっては選択肢が広がるため、モチベーションの維持につながるでしょう。従業員のモチベーションを向上させる方法については、以下の記事でも詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『【1分で解説】モチベーションアップには何が必要?従業員のモチベーションを上げる5つの方法』 )

ワークライフバランスの取り組みで得られるメリット


ワークライフバランスの取り組みを進めることで、企業にはさまざまなメリットがもたらされます。ここでは、5つのポイントに分けて見ていきましょう。

従業員のモチベーション維持につながる

前述のように、ワークライフバランスは仕事と生活の調和を保つことで、双方によい効果をもたらすものです。プライベートを犠牲にせずに済む仕組みを確立すれば、生活そのものが充実し、仕事へのモチベーションも自然と向上していくと考えられます。

実際のところ、内閣府が公表している「両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書概要」によれば、男女ともに「ワークライフバランスが図れていると感じている人のほうが仕事へのモチベーションが高い」という調査結果が示されています。

企業イメージの向上が期待できる

現代の企業経営では、自社の成長だけでなく、CSR(企業の社会的責任)がますます重視されるようになりました。どのような方針をとるかによって、投資の獲得や取引先の拡大にも影響を及ぼす可能性があるため、企業イメージの維持・向上も重要なテーマとなっています。

ワークライフバランスの実現ができていれば、「人を大事にする企業」として、自社のイメージアップを図ることも可能です。例えば、各都道府県が行っているワークライフバランス認定企業制度などを利用すれば、ワークライフバランスを大事にする会社として広くアピールすることもできます。また、関連する認定制度としては、ほかにも次のようなものがあります。

ワークライフバランスに関連する認定制度
・安全衛生優良企業認定 ホワイトマーク(厚生労働省認定)
・健康経営優良法人 中小規模 ブライト500 認定(日本健康会議認定)
・ユースエール認定(厚生労働省認定)
・くるみんマーク認定(厚生労働大臣認定)
・えるぼし認定 ・プラチナえるぼし認定(厚生労働大臣認定)

人材の確保に結びつけられる

ワークライフバランスの実現は、多様な人材の確保にもつながります。仕事とプライベートの両立を図るためには、柔軟な労働環境や働き方を実現させなければなりません。

その過程において、「テレワークの導入」や「時短勤務の導入」なども自然に実現されていくと考えられます。そうなれば、育児や介護との両立を希望する従業員なども活躍できる土台が築かれ、社内の組織力を大きく向上させられるでしょう。

また、近年では高給や昇進のみを是とする考え方から、プライベートや家族との時間も大事にするという価値観へとシフトしている側面もあります。そのため、きちんと休日がとれる仕組みや家族を大切にできる環境などを実現することで、従業員の帰属意識が高まったり、人材の定着率が向上したりする効果も期待できます。

費用の削減を図れる

ワークライフバランスを実現するうえで、長時間労働の削減は避けて通れません。そのため、自然と従業員の残業代やオフィスの運営費といった費用が削減され、キャッシュフローの改善につながるのも大きな利点です。

さらに、ワークライフバランスの充実によって従業員の定着率が高まれば、新たな人材を採用したり育てたりする費用も削減されます。従業員の離職が目立つ企業においては、課題を直接的に解決することにもつながるため、特に大きな効果が見られるでしょう。

また、労働時間を短縮する過程では、生産性の向上も重要な課題となります。日々の業務を見直し、業務効率改善の取り組みを重ねるなかで、組織全体としてのパフォーマンス向上も期待できるようになります。

イノベーションの創出につながる

ワークライフバランスが充実している組織では、個人のスキルアップや自己研鑽に使える時間も確保しやすくなります。その結果、資格取得のための勉強時間を確保したり、地域活動をして経験を広げたりと、幅広い視点で従業員の能力を高めてもらうことができます。

また、個人の特性によっては、副業によって独創的なキャリア形成を目指してもらうことも可能です。業務外の活動で得られたスキルや知識、人脈はシナジー効果を生み出し、仕事にもさまざまな刺激をもたらします。

そのため、組織全体としての視野が広がり、イノベーションの創出につながる可能性も期待できるでしょう。

ワークライフバランス実現のための取り組み


それでは、実際に企業がワークライフバランスの実現を目指すうえでは、どのような取り組みに力を入れるべきなのでしょうか。ここでは、具体的な取り組み内容を紹介します。

休業制度

ワークライフバランス施策の代表的な取り組みとして挙げられるのが、休業制度の充実です。企業独自の育児休業制度や介護休業制度を設けることで、子育てや介護をしながら働きたいという従業員のニーズにしっかりと応えられるようになります。

特に、近年では男性の育休に対する注目度が高まっています。そのため、女性はもちろん、男性従業員の育休制度にも力を入れることで、ワークライフバランスに関する企業のイメージは大きく向上するといえるでしょう。

また、休業制度を設ける際には、休職者の復帰支援にもきちんと目を向ける必要があります。例えば、休業中に行われたシステム変更や社内制度の更新については、復職前にしっかりと研修の機会などを設け、丁寧に情報を共有することが大切です。

そのうえで、復職後の働き方やキャリア形成については、個別にヒアリングを行いながら柔軟に決めていくとよいでしょう。

休暇制度

ワークライフバランスを向上させるうえでは、休暇制度の充実も重要な施策となります。休暇制度においては、まず年次有給休暇の消化率の向上を目指すことが基本です。

有給休暇の取得率を高めるには、労働力や業務負担の見直しを図り、現実的に休みを申請しやすい環境を整えなければなりません。そのうえで、企業独自の取り組みとして、「取得目標の設定・管理を行う」「計画的付与制度を導入する」「時間単位での有給休暇付与制度を導入する」といった方法を取り入れてみると有効です。

さらに、ユニークな取り組みとしては、「年次有給休暇の積立制度」が挙げられます。これは、失効してしまう年次有給休暇日数を一定の範囲内で積み立てて、各種の特別有給休暇に展開するというものです。

また、有給休暇以外の特別休暇制度を充実させることも、ワークライフバランスの実現を進める有効策になります。具体的には、看護休暇や半日休暇制度、アニバーサリー休暇制度、配偶者出産休暇などのさまざまなパターンが考えられます。

企業の考え方や従業員の性質によっても有益性の高い休暇制度は異なるので、休暇制度を検討する際には、あらかじめ社内のメンバーにヒアリングしておくのもよいでしょう。

働く時間の見直し

労働時間の見直しも、ワークライフバランスを直接的に向上させる施策となります。例えば、長時間労働を防ぐためにも、「ノー残業デー」や「残業の事前申告制」などを導入するのも一つの方法です。

そのほかの代表的な施策としては、「フレックスタイム制度」「就業時間の繰り上げおよび繰り下げ」などが挙げられます。出退勤の時間を柔軟に調整することで、これまで時間帯の問題で受け入れることができなかった従業員も、問題なく働いてもらえるようになります。

例えば、子どもの送り迎えなどで退勤時間に制限がある従業員でも、勤務時間が調整できれば安心して働くことができるでしょう。また、時短勤務や週休3日制など、希望に応じて労働時間の短縮に応じられるような仕組みを整えることも大切です。

働く場所の見直し

勤務場所もワークライフバランスに大きく関わる要素の一つです。例えば、転勤がある職場では、育児中の従業員などを対象に転勤の制限をかけることで働きやすさを向上させられます。

また、業種や業務内容によっては実現が難しいケースもありますが、勤務場所をオフィスに限定せず、ある程度の自由度を持たせることもワークライフバランスの向上につながります。代表的な施策として挙げられるのが「テレワーク制度」です。

コロナ禍の影響によって、対面によるコミュニケーションが制限されたことで、多くの企業や従業員がテレワークに対応するようになりました。感染が落ち着いてからも、通勤負担の削減や空き時間の有効活用などの効果があることから、テレワークを導入し続ける企業も決して少なくありません。

それ以外の施策としては、「サテライトオフィス制度」が挙げられます。サテライトオフィスとは、本拠から離れた場所に設置される比較的に小規模なオフィスのことです。

働ける場所を増やすことで、従業員も自宅から近いオフィスを自由に選択できるようになるため、多様なエリアの人材を柔軟に活用できます。例えば、郊外のベッドタウンに設置すれば、対象エリアに住む従業員の通勤時間が短縮され、ワークライフバランスの実現を後押しできるでしょう。

その他の取り組み

ワークライフバランスを向上させるには、企業の方針や従業員の価値観に応じて独自の制度を構築するのも有効な方法です。例えば、「従業員の資格取得に関する受験料・受講料の一部負担」「保育料や介護ヘルパー費用の助成」といった経済的支援は、適用条件が明確であり、従業員も利用しやすい制度といえます。

また、子育てと両立する従業員が一定数以上いる場合は、「事業所内保育施設の設置」も有効な施策となります。それ以外の施策としては、定年退職を控えた従業員を対象とした「再雇用制度」、育児や介護などの「情報提供・相談窓口の設置」なども選択肢の一つです。

ワークライフバランスの取り組みを実施するときのポイント


これまで見てきたように、ワークライフバランスに関する施策にはさまざまなものがあります。取り組みを実施する際には、手当たり次第に試すのではなく、ポイントを的確におさえて運用することが大切です。

ここでは、内閣府の「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」をもとに、施策を有効に打ち出すためのポイントを解説します。

自社のルールを定め、周知する

ワークライフバランスの実現は、制度の構築や施策の打ち出しだけで必ずしも前に進んでいくとは限りません。取り組みがきちんと推進されていくためには、経営トップのリーダーシップが極めて重要となります。

なぜなら、ワークライフバランスに関する取り組みは、社内の業務やマネジメントシステムを根本から見直すことにつながるためです。施策を実践するうえでは、既存のやり方やシステムを変えなければならない場面もあるでしょう。

これまで慣れ親しんだ方法を変えるとなれば、きちんと従業員の理解を得なければ施策を前に進めることができません。そのため、経営トップが旗振り役を担い、ワークライフバランスの取り組みの意義やベネフィット、目標を明確に発信することが不可欠となるのです。

担当者や管理職向けの研修を行う

速やかに取り組みを浸透させていくためには、経営トップの考えを理解し、現場レベルで実践していける担当者や管理職の存在が重要な役割を担います。ワークライフバランスの担当者は、企業によって組織上のどこに位置付けるのかが異なりますが、基本的には人事部や総務部、ダイバーシティ担当部署などとの相性がよいとされています。

これらの部門からメインの担当者を選任し、じっくりと話し合いや研修を行ったうえで、取り組みの実働部隊として動いてもらうようにしましょう。担当者には、「さまざまな従業員の意見を集める」「経営トップの代弁者になってもらう」といった重要な役割があります。

実務上の負担が大きくなることも予想されるため、しっかりとフォロー体制を整えておくのも重要なポイントです。

従業員とのコミュニケーションを活性化させる

ワークライフバランスの施策を打ち出す際には、従業員にとって本当に役立つものかどうかを丁寧に見極めることが大切です。そのためには、社内での円滑なコミュニケーションが欠かせません。

しかし、組織内のコミュニケーション力は日頃のやりとりで磨かれるものであり、一朝一夕に高められるものではありません。普段から、従業員一人ひとりのプライベートな事情や抱えている業務の状況などについて、職場内で積極的にコミュニケーションを図れる仕組みを整えましょう。

特に、ワークライフバランスは個人の状況や価値観によって最適解が異なるので、従業員への理解を深めることが重要な一歩となります。

取り組みの進捗を見える化する

ワークライフバランスは、直接的に企業の売り上げや生産性を向上させる取り組みではありません。それだけに、施策の成果が目に見えにくく、どうしても取り組みが中だるみしやすい側面もあります。

施策の実行が長期間に及ぶ場合は、モチベーションを維持するための仕組みとして、進捗を可視化することが重要です。また、経営トップや管理職も、個別の施策がどのくらい進んでいるのか、あるいは遅れているのかを把握する必要があります。

そのため、施策については具体的な数値目標を決め、定期的に達成の度合いを測る機会を設けることが大切です。例えば、残業時間の減少率や有給休暇取得率などを目標として設定し、優れた事例があれば表彰するなどして積極的にアピールするとよいでしょう。

取引先や顧客と連携して取り組む

必要に応じて、取引先や顧客の理解を得ることも、ワークライフバランスの取り組みを推進するうえでは重要なポイントとなります。これまでと比べて、従業員の稼働時間や働き方に大きな変化が生まれる可能性もあるため、実務への影響も踏まえてしっかりと対策しなければなりません。

例えば、「自社のホームページなどで営業時間や会社が設定した休日を明記する」といった方法をとるのも一つです。また、そもそも長時間労働によって業界そのものが成り立っている場合は、他社に先駆けて改善の手を打つことで、自社の独自性を大きく確立できる可能性もあるでしょう。

ワークライフバランスを導入した取り組み事例を紹介


ワークライフバランスの実現にあたっては、企業によって異なるアプローチの仕方があります。ここでは、4つの企業における実践例を通して、取り組みのヒントを探ってみましょう。

事例①株式会社技術製作所

高知県にある建設機械メーカーの株式会社技研製作所では、2018年度にゼロだった男性育休取得率をわずか1年間で、30%にまで引き上げました。男性従業員が育児に参加しやすい職場環境を整備し、3年間で男性育休取得率は100%となり、積極的な取り組みを行っています。

以前から女性を経営幹部に登用するといった取り組みを行ってきましたが、男性従業員が全体の8割を占める職場であるため、思うように計画が進むか懸念があったそうです。2018年に「ポジティブ・アクション(女性の活躍推進)プロジェクト」をスタートさせ、男性従業員の育休取得推進だけでなく、チャットボットの活用や健康経営、介護休業体制の強化など包括的な取り組みを行っています。

プロジェクトを進めるにあたって、全従業員向けの社内アンケートを実施し、従業員が抱きやすい不安や悩みの解消を行いました。同時に、社内の意識改革や雰囲気の醸成に努め、プロジェクトを推進しています。

(参考:『【3年で男性育休取得率ゼロから100%へ】男性8割のメーカーがイクメン企業に大変貌!その秘訣とは? 』)

事例②株式会社サカタ製作所

新潟県にある建築金具メーカーの株式会社サカタ製作所では、以前は人手不足に悩まされており、長時間労働が常態化していました。そうした労働環境を改善するために、2014年には「残業ゼロ」を掲げ、さまざまな業務改革に取り組んだ結果、2019年には平均残業時間を月1.2時間まで削減しました。

また、2018年以降は男性従業員の育休取得率を100%で維持し、生産性の向上とワークライフバランスの実現を両立させています。具体的な取り組みとして、無駄な業務や属人化している業務の洗い出すことで「仕事を見える化」し、時差出勤の導入による時間外労働の削減などの取り組みを行ったそうです。

一連の取り組みの結果、残業時間の大幅な削減を達成し、年間3,500万円の残業代の圧縮につながりました。削減分を賞与として従業員に還元するなど、モチベーションを高めるための施策も実施することで、全社的な取り組みとして推進しています。

(参考:『残業ゼロを目指し、男性育休取得率100%へ。中小企業のハンデ乗り越え、生産性向上とワークライフバランスを実現 』)

事例③株式会社ALL CONNECT

福井県にある株式会社ALL CONNECT(オールコネクト)は、通信回線やスマートフォンなどの通信インフラを取り扱っている企業です。同社では「年間休日選択制」を採用しており、最大150日まで休日が取得できる仕組みを整えています。

従業員の平均年齢が若いという特徴があり、さまざまなワークスタイルを希望する従業員のために、年間休日数を自分で選べる制度を2020年から始めています。誰もが働きやすい選択が行えるように、1時間あたりの能力を基に評価設定を行っているのが特徴です。

また、目標の達成度や不足点を従業員に対して毎月フィードバックする「月次評価制度」を導入しており、短いスパンで成果を高める仕組みも整えています。一連の取り組みによって離職率が低下し、誰にとっても働きやすい職場環境の創出につながっているといえるでしょう。

(参考:『年休は最大150日、20代管理職3割、3人に1人女性社員。共働き率全国1位の福井県発企業が仕掛ける「女性」「若手」集まる職場づくり 』)

事例④株式会社CAKEHASHI corporation

株式会社CAKEHASHI corporation(カケハシコーポレーション)は、Webマーケティングを主体とした事業展開を行っており、日本の商品やサービス、インバウンド観光関連などを通じ、主に台湾人向けのインバウンド集客支援として実践しています。同社では、週休3日制の導入や年間休日130日以上を達成しつつ、業績を高めるための社内体制の構築に取り組んでいるのが特徴です。

仕事とプライベートとのメリハリをつけるために、月に一度の割合で代表者との「やる気アップ面談」を実施し、従業員一人ひとりが自ら3カ月ごとの目標設定を行う場を設けています。仕事の成果だけでなく、そのプロセスも重視しており、同時にプライベートの目標設定(資格の取得を目指す、家族との時間を大切にするなど)も行っています。

また、社内の業務において「社内完全内製」の仕組みを整え、業務時間外に外部とのコミュニケーションができるだけ発生しないように工夫されているそうです。従業員のモチベーションを高めるためのさまざまな施策を実施しており、働きやすい職場環境の整備に結びつけているといえるでしょう。

(参考:『「日本×台湾」のいいトコどり。年休130日、昼寝も可能…なのに連続増収、離職ゼロ維持するグローバルな会社の秘密 』)

まとめ

ワークライフバランスは、基本的には従業員の健康を守り、仕事と生活の調和がとれる状態を築くことを目的としています。しかし、その結果として社内の生産性が向上するため、企業にとってもさまざまなメリットをもたらす取り組みといえるでしょう。

ワークライフバランスに関する具体的なアプローチは、企業の状況や従業員の性質によっても異なります。従業員の状況を丁寧にヒアリングしたり、他社の事例を参考にしたりしながら、自社に合った施策を導入してみましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

生産性向上や離職防止などのメリットも!健康経営が今注目されている背景とは?

資料をダウンロード