離職率が高くなる会社の特徴とは?基本的な原因と対策を解説

d’s JOURNAL編集部

多くの業種や職種で人手不足が経営課題となるなか、人材をいかに定着させるかは重要なポイントだといえるでしょう。新たに人材を採用する取り組みを行うことは大事ですが、一方で従業員が長く働き続けられる職場環境を整備していくことも必要です。

離職率が高い会社にはいくつかの特徴が見られるため、自社の現状がどうであるかを定期的にチェックしてみましょう。この記事では、離職率が高まる原因や対策について詳しく解説します。

離職率が高い会社の特徴


新たに人材を採用しても、なかなか定着してもらえないという場合、慢性的な人手不足に陥りやすくなります。離職につながる原因はさまざまですが、主なものとして次のような点が挙げられます。

離職率が高い会社の5つの特徴
・人事評価制度に問題を抱えている
・業務量が多く、労働時間が長い
・職場の人間関係が悪化している
・人材を育成する体制が整っていない
・経営理念やビジョンが浸透していない

上記の点について、さらに詳しく解説します。

人事評価制度に問題を抱えている

離職率が高くなる会社の特徴として、まず人事評価制度に問題を抱えている場合が挙げられます。従業員からすれば、「一生懸命に仕事に取り組んでいるのに、会社がなかなか評価してくれない」「現在の業務と待遇が釣り合っていない」など、人事評価に関する不満が生じる場面があります。

すべての従業員が納得する人事評価制度の構築は難しい部分がありますが、企業側が具体的な改善策をとらなければ、従業員のモチベーションは低下してしまい、離職率が高くなってしまうでしょう。近年では、リモートワークなどの普及によって働き方も多様化してきています。

制度そのものに問題はなかったとしても、フルタイムでの出勤を前提とした人事評価制度となっている場合、在宅勤務を行う従業員などにとって適切な評価をなされていないといった不満が生じる恐れがあります。

また、競合他社や業界の平均水準と比較して、著しく待遇が悪い場合も制度への不満を抱えやすくなるでしょう。

業務量が多く、労働時間が長い

慢性的な人手不足などを理由として、特定の部署や従業員の業務量が過剰に多い状態が続いてしまうと、離職率が高くなる傾向が見られます。残業を頻繁に行わないと業務が片付かなければ、自ずと労働時間が長くなってしまい、従業員はなかなか休みを取ることができません。

思うように休暇が取得できない状態であれば、ストレスなどの影響からメンタルヘルスの不調が生じる恐れもあります。仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、やがて離職につながる原因になるでしょう。

業務を遂行するために必要な人員を割り当てていたとしても、目標設定が高過ぎたり、従来の業務フローのまま進めていたりすれば、効率の悪い業務に時間や労力がかかっている可能性があります。

職場の人間関係が悪化している

職場の人間関係がうまくいっていなければ、従業員はストレスを感じてしまいやすくなり、離職を考えるような場面もあるでしょう。特に人の入れ替えが激しい職場であったり、新入社員をサポートする体制がきちんと整えられていなかったりすれば、人間関係が次第に悪化していく場面が生じてきます。

また、仕事に関する悩みや相談事が生じても、年齢の近い同僚がおらず誰にも相談できないまま、不安を抱えてしまうというケースもあります。毎日のように顔を合わせる従業員同士の人間関係が悪化すれば、チーム全体のパフォーマンスが低下するだけでなく、離職の原因を生み出すことにもつながるでしょう。

離職者が増加する流れができてしまうと、状況を改善するのに時間がかかる恐れがあるので、コミュニケーションが円滑に行われているかを把握しておく必要があります。

人材を育成する体制が整っていない

職場の労働環境に問題がなかったとしても、将来的なキャリアに不安を抱えてしまうと、従業員が離職を考える原因になるでしょう。定期的に面談を実施していても、現在の業務に関することや人事評価のみに話が終始すれば、「このまま働き続けて大丈夫なのだろうか」といった考えを従業員は抱きやすくなります。

従業員の人材育成に消極的な姿勢の会社は、キャリア支援についても消極的だと思われてしまいがちになるので注意が必要です。人材育成に関する計画を定めていない会社の場合、たとえキャリア支援に取り組んでいても場当たり的な対応になりがちな部分があります。

業務に必要なスキルを身につけてもらうだけでなく、従業員自身が活き活きとした気持ちで仕事に取り組むためのキャリア支援を行うには、中長期的な視点に立ってキャリア支援を行っていくことが大切です。

経営理念やビジョンが浸透していない

会社が掲げる経営理念や事業に関するビジョンがうまく浸透していなければ、従業員が仕事に対するやりがいを見出すのは難しい部分があるでしょう。与えられた業務をただこなしていくだけでは、仕事に対するモチベーションは低下してしまいます。

経営目的や事業計画を達成するために、従業員に仕事を任せていくことは大事ですが、従業員自身が設定した目標と擦り合わせる機会を設けるのも重要です。会社が一方的に指示を出すのではなく、従業員とともに考えていく姿勢を見せなければ、離職率を高める原因となるでしょう。

離職率の基本的な捉え方


離職率を改善するには、基本的な考え方をよく理解しておくことが大事です。ここでは、離職率の具体的な計算方法や平均的な水準を解説します。

離職率についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『離職率とは?計算方法と従業員を定着させるためのポイントを解説 』)

離職率の計算方法

離職率とは、特定の期間において従業員が離職した割合を示す指標のことです。期初から期末までの1年間で計算するケースが多いですが、離職率のデータを用いる目的に応じて、計算の根拠となる期間が設定されます。

具体的な計算式は、次の通りです。

離職率の計算式
離職率=離職者数÷従業員数×100%

定年退職者などが多いタイミングでは離職率が高くなる傾向が見られるため、過去のデータと比較して考える必要があります。また、業界平均よりも高い状態が続いているのであれば、どのような原因があるのかを調べることが肝心です。

一般的に、従業員の不満が高くなれば離職率は増加する傾向にあるため、早めの対策を講じることが求められます。

離職率の平均

厚生労働省が公表している「令和4年 雇用動向調査結果の概況」によれば、離職率は全体で15.0%となっており、前年と比べると1.1%増加していることがわかります。業種別では、「宿泊業、飲食サービス業」で26.8%、「サービス業(他に分類されないもの)」で19.4%、「生活関連サービス業、娯楽業」で18.7%の順に離職率は高くなっています。

また、「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」において、就業後3年以内の離職率は新規高卒就職者で37.0%、新規大卒就職者で32.3%という結果です。

(参照:厚生労働省『令和4年 雇用動向調査結果の概況』 )
(参照:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)』 )

離職率が高いことで生じるデメリット


離職率が高いままの状態が続いてしまえば、以下のようなデメリットが生じやすくなります。

離職率が高いことで生じる3つのデメリット
・人材が思うように集まらない
・採用にかかる費用が増加してしまう
・業務に支障が出る

各デメリットについて解説します。

人材が思うように集まらない

離職率が高い状態が続いてしまうと、新たな人材を集めにくくなるでしょう。自社のイメージが悪化することで、人材募集の点においてマイナスの影響が出てしまいがちです。

SNSなどを通じて、誰でもインターネットに情報を投稿できる時代であるため、いったん企業イメージが悪化すれば、状況を改善するまでに時間がかかります。労働環境に問題があるといった情報が拡散すれば、新たに募集をかけても思うように人材が集まらないでしょう。

また、せっかく採用しても早期離職につながってしまい、人材がなかなか定着しないという状況に悩まされてしまいます。

採用にかかる費用が増加してしまう

離職率が高く、多くの人が辞めていく会社の場合、常に採用活動を行わなければならないでしょう。採用活動を続けるには、それなりに費用もかかるので負担が大きくなる可能性があります。

また、新たに人材を採用してもいきなり業務を任せられるわけではないため、人材教育にかける費用も考慮しなければなりません。逆にいえば、人材が定着しやすい企業であれば、そうした費用が発生しづらくなるため、労働環境の改善のために費用をかけられるといえます。

業務に支障が出る

業務に必要な人材がいなくなれば、状況によっては日常の業務にも支障が出る恐れがあります。特別なスキルを持っていたり、ベテランの従業員が辞めてしまったりすれば、提供するサービスの質の低下につながる場合があるでしょう。

顧客からの信頼低下が起こってしまえば、業績が悪化する原因にもなるので気を付けましょう。新たな人員を配置したとしても、以前と同じ水準で業務を遂行するまでには時間がかかるため、影響が長引くことが想定されます。

離職率を低下させるための対策


離職率を低下させるには、自社が抱えている課題を把握したうえで、具体的な施策を実施していくことが求められます。主な対策として、次のものが挙げられます。

離職率の低下に結び付けるための7つの対策
・人事評価制度の見直し
・労働環境の改善を行う
・従業員とのコミュニケーションを増やす
・サポート体制を構築する
・多様な働き方を推進する
・キャリア支援を行う
・採用のミスマッチを減らしていく

対策の内容やポイントを解説します。

人事評価制度の見直し

離職率を低下させるには、どのような立場で働いている従業員にとっても、公平・公正な人事評価制度を構築することが大切です。自らの働きぶりに対して適切な評価が行われているのであれば、従業員の納得感も高まるでしょう。

従業員に対する人事評価は直属の上司だけでなく、チームメンバーや他部署の従業員の意見なども取り入れながら、オープンなものにしていく必要があります。また、勤務形態や職種に応じて評価基準を定め、わかりやすい仕組みに整えていくことも肝心です。

自社にとって適した人事評価制度のあり方は、組織の状況や競合他社の動向などによって変わってきます。そのため、定期的に見直しを行うことが大切であり、従業員との面談やアンケート結果などを踏まえて改善していきましょう。

労働環境の改善を行う

従業員が離職を考える一つの原因として、労働環境に対する不満が挙げられます。特に業務の過剰な負担が生じている場合、なかなか休みを取ることができず、ストレスを抱え込んでしまうケースがあるでしょう。

従業員の意見を交えながら業務フローの見直しなどを図り、特定の従業員に過度な負担が生じていないかを定期的にチェックしていくことが重要です。必要な人員の補充だけでなく、ITツールの導入なども検討して、どのような形であれば業務を効率化できるのか考えていく必要があります。

離職率の低下に向けた取り組みを行うことは、結果として業務の効率化や生産性の向上に結び付くため、以前よりも強固な組織を築くことにつながるはずです。誰にとっても働きやすい労働環境であれば、自ずと離職率も低下するでしょう。

従業員とのコミュニケーションを増やす

従業員が離職を考える理由はさまざまなので、組織全体として労働環境の改善を図ると同時に、個々の従業員としっかり向き合っていくことも大事です。上司と部下が直接やりとりを行う1on1ミーティングを定期的に実施するなどして、日ごろから従業員とのコミュニケーションを円滑にしてみましょう。

業務に関する悩みや人事評価に対する意見交換だけでなく、将来的なキャリアの構築も含めて話をすることで、「この会社で長く働いていきたい」という思いが養われるはずです。また、上司との交流だけでなく、チームメンバーや他部署の従業員とも関わる機会を設けることで、風通しのよい組織の構築につながり、安心して働ける環境を提供できるでしょう。

サポート体制を構築する

メンター制度とは、ベテラン従業員が業務経験の浅い新入社員をサポートする仕組みをいいます。日々の業務に関する悩みの相談だけでなく、スキルアップやキャリア開発につなげる支援を個別に行う制度です。

新しく入社した従業員は、仕事の悩みを抱えやすい状態にあるため、そのまま放置してしまえば早期離職につながる恐れがあります。離職を未然に防ぐための取り組みとして、従業員をサポートする体制を構築しておくことは、組織全体の力を高めることにもつながるでしょう。

多様な働き方を推進する

働く意欲が高い従業員であっても、家庭の状況などからフルタイムでの勤務が難しい場合があります。フルタイムを前提とした働き方しか企業側が提示できなければ、意欲のある従業員の離職につながる可能性があるので気を付けておきましょう。

他社の動向なども踏まえながら、リモートワークや時短勤務など、従来の働き方にとらわれない多様な働き方を取り入れていくことが大事です。さまざまなライフステージに対応した働き方ができる環境であれば、従業員が長く働き続けてくれるはずです。

キャリア支援を行う

従業員の人材育成は、中長期的な計画を策定したうえで取り組んでいくことが大切です。また、自社が求める人材像と従業員の希望や考えを擦り合わせることも、キャリア支援においては欠かせない部分だといえます。

定期的な面談を実施するとともに、社内でキャリアを築いていけるように適切な人事管理に取り組んでいきましょう。継続して人材育成に取り組む企業ほど、従業員の満足度も高まりやすいので、離職率の低下に結び付いていくはずです。

日ごろの業務から離れて、将来のキャリアについても考えられるように、研修制度を充実させたり、資格の取得などのために休暇を与えたりすることで支援していく体制を整えてみましょう。

採用のミスマッチを減らしていく

離職率を低下させるためには、そもそも採用の段階でミスマッチが起こることを避けるのも重要です。入社してからイメージと違った感覚を抱かれてしまうと、早期離職につながる恐れがあるでしょう。

人材を募集する段階において、自社が求める人材像を明らかにし、応募者からの問い合わせなどにも丁寧に対応することが求められます。また、内定を出してからも入社前のフォローを適切に行うなどして、入社後のミスマッチが起こりづらい体制を整えていくことが大事です。

採用のミスマッチについて、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『ミスマッチとは?新卒・ミスマッチが起こる原因は?企業に与える影響と対応方法を紹介』 )

まとめ

離職率が高い会社の特徴として、労働時間の長さや待遇面での不満などが挙げられます。多くの業種で人手不足が問題となるなか、離職率が高い状況が続いていれば日常業務にも悪影響を及ぼす場面があるでしょう。

従業員が仕事に対して意欲を持ち、長く働いてくれる環境を整えるには、人事評価制度の見直しや労働環境の改善に取り組むことが欠かせません。従業員の意見や考え、ニーズを面談など通じて把握し、具体的な改善策を実行したうえで離職率の低下につなげていきましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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