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【弁護士監修】働き方改革法施行でいつ何が変わる?企業が注意すべきことを簡単解説

PROFILE

中地総合法律事務所 第一東京弁護士会所属

中地 充(なかちみちる)弁護士【監修・寄稿】

1979年12月18日生。弁護士になる前は、知的財産の分野を扱うメーカーに勤めていたという経歴。そのため、企業における労務関係、契約書チェック、M&A、債権回収など、企業内外におけるトラブルや交渉に強みがある。経営者様の視点にたって、常にベストな提案を行うことを心がけている。

働き方改革関連法案が参院本会議で可決となりました(2018年6月29日午前)。早ければ2019年より順次施行される予定となっています。その結果、

    残業時間の上限規制や有給休暇取得の義務化、勤務時間インターバル制度、同一労働同一賃金など、その内容は多様で企業側での対応も必要となってきます。賛否が分かれている「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」も話題です。では、働き方改革法はいつから何が始まるのか?企業は何にどう対応すべきなのか?法案の内容を踏まえ、解説します。
    (本記事は、2018年6月28日時点のものとなり、随時更新となります)

    「働き方改革関連法」案とは、残業・有休・賃金などの制度変更-労働基準法や労働契約法などが改正

    「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」として、安倍内閣が推進する働き方改革。“多様な働き方”を可能とするとともに、広がりつつあるといわれる“格差の固定化”を回避するこことも改革の狙いです。従来の働き方を変えることにより、労働者の意欲や能力を引き出し、豊かな社会と個人をつくる。そうすれば、国、労働者、経営者それぞれがメリットを享受できます。とはいえ、働き方改革を提唱するだけでは、実現性・実効性が乏しく成果は見込めません。

    そこで「働き方改革」を実現・浸透に向けて、法律によるルール作りが必要になります。例えば、長時間労働の是正と多様な働き方に対応するためには、労働基準法、労働安全衛生法といった法律の改正が必要となります。こうした働き方改革の関連の、法整備を目的とする法律案の通称が、「働き方改革」関連法案です。働き方改革法に関する要望や監督指導を徹底する内容で、47項目からなります。「高度プロフェッショナル制度・脱時間給制度」の創設が柱となっており、労働基準法や労働契約法など8本の法律を改正する運びです。

    「働き方改革関連法」施行の目的は、多様な人材が働ける環境を整え労働力の不足を補うこと

    日本では、かつてない勢いで少子高齢化が進行し、総人口も2008年をピークに減少に転じています。そのため、労働力として国の経済を支える生産年齢人口(15歳~64歳)も、1995年をピークに減少に転じ歯止めのかからない状況です。具体的な数でみると、生産年齢人口は、2015年には7592万人でした。それが将来の予想として、2030年には6773万人、2060年には4418万人に減少していくとされています。これに伴い、労働人口も減少傾向にあるのは一目瞭然でしょう。

    我が国の人口の推移

    我が国の人口の推移

     
    いつまでも戦後以降の働き方に固執していると、労働力が不足し国の経済力にも大きな影響を与えかねません。そこで、「多様な人材が働ける環境を整え、労働力の不足を補う」というのが働き方改革の目的の1つです。

    また、経済を成長させるためには、労働力の確保とともに生産性の向上も必要です。そのため、長時間労働の是正や多様な人材が活躍しやすい環境整備を行うことで、労働意欲を高め生産性の向上を実現しようとしています。正社員と非正規社員の格差も大きな社会問題です。公正な待遇を確保し、同一労働同一賃金が実現されれば、非正規の労働者に経済的余裕が生まれ、労働意欲の増加にもつながります。フレックスタイム制、特定高度専門業務・成果型労働制(=「高度プロフェッショナル制度・脱時間給制度」)といった制度の充実も、働き方改革法案の目玉と言われています。

    このような働き方改革が実現すれば、各人のライフプランにあわせ、多様で柔軟な働き方が選択でき、労働力の確保や生産性向上にもつながると考えられています。

    「働き方改革関連法」施行のメリットとデメリット

    「働き方改革関連法」施行のメリットとデメリット

    企業における働き方改革のメリット-優秀な人材の確保と生産性向上

    働き方改革のメリットとしては、労働者それぞれに合わせた働き方が実現することがあげられます。これは、企業にとっても多彩な人材を確保し活用するチャンスと言えます。これまで働きたくても働けなかった人材が、労働市場に登場することにより、中小企業も優秀な人材を多く確保できる可能性が高まります。また、働きやすい環境を整えることにより、生産性が高まることも大きなメリットです。

    企業における働き方改革のデメリット-有給休暇や賃金などの制度の見直しが発生

    企業の負うデメリットとしては、労働環境を整えるためある一定の負担を強いられることがあげられます。特に「同一労働同一賃金」については、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者に対して、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等を説明することも義務化される予定ですので、導入・実行までの綿密な計画が必要となります。労働者の職業生活が充実するよう、労働時間の短縮、労働条件の改善など、労働環境の整備に努めることも事業主の責務とされています。そのため、残業時間の上限規制、有給休暇取得の義務化、産業医・産業保健機能の強化などこれまで対応が不十分なものがあれば、企業内の制度を整えなければいけません。

    「働き方改革関連法」案施行は2019年4月

    働き方改革関連法案の施行日ですが、2019年4月から順次施行されます。ただし、同一労働・同一賃金など、企業の側に一定の準備が必要な一部法律については、2021年4月以降を予定しています。

    中小企業についてですが、残業時間の上限規制、同一労働・同一賃金、に関する施行日は、大企業の1年後とされています。さらに、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、現在実施されている中小企業への猶予措置は、2023年4月に廃止される見通しです。

    働き方改革関連諸制度の適用時期

    大手企業中小企業
    高度プロフェッショナル制度

    2019年4月~

    2019年4月~

    残業時間の上限制限

    2019年4月~

    2020年4月~

    同一労働同一賃金

    2020年4月~

    2021年4月~

    ※各種制度説明は下記参照

    「働き方改革関連法」案施行で、企業に求められる7つの対応

    「働き方改革関連法」案施行で、企業に求められる7つの対応
    「働き方改革」関連法案が施行されると、企業側として対応すべき事項がいくつかあります。そのうちポイントを7つに絞り、具体的に求められる対応を紹介します。

    1.残業時間の上限規制。企業が人手不足に陥る可能性も。

    長時間労働の是正を目指し、時間外労働には上限規制が導入されることになります。時間外労働の原則は、これまで通り月45時間、年360時間となっており、変化はありません。しかし、例外として労使協定を結ぶことにより、残業は月45時間まで認められていました。さらに特例があれば、事実上、無制限に残業をすることができました。ところが、法案成立後は、「原則月45時間、年360時間」と定められます。労使協定で特例を設けた場合でも、年720時間(単月では100時間未満)を超えることはできません。さらに、次の条件も同時に満たすことが求められます。

    (1)2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内であること
    (2)1カ月の労働時間が、休日労働を含んで100時間未満であること
    (3)月45時間、かつ、年360時間が原則なので、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう1年のうち、6カ月までとすること

    現在、繁忙期には労働者に相談して残業による労働力を確保している、といった企業もあるかと思います。そのような労働力の調整方法は、働き方改革関連法案が施行されると違法となり罰則が科されてしまいます。まずは、毎月の仕事量を見直し年間通じて同等になるよう調整する、といった経営方法の変更や、合理化・機械化などによる労働力を補う工夫を検討してみましょう。
    なお、残業時間の上限規制は、自動車運転業務、建設業、医師への適用は5年間猶予される見込みです。また、自動車運転業務の上限は、年960時間と一般業務の年720時間に比べ、240時間多く設定されています。
    ※大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用開始。また、自動車運転業と建設業、医師は2024年4月に適用開始となる。

    2.有給休暇取得の義務化。休暇取得率が低い企業は環境整備を

    厚生労働省が2017年末に発表した『就労条件総合調査』によると、2016年の有給休暇取得率は49.4%となっています。これは、前年より0.7ポイント増加していますが、政府が目標とする70%には遠く及ばない数字です。また、従業員1000人以上の大企業の有給休暇の取得率は55.3%であるのに対し、30~99人の中小企業は43.8%と企業規模による格差もみうけられます。

    今回の改正では、有給休暇が一定程度義務化されます。それにより、より良いワーク・ライフ・バランスが実現されることを目指すものです。具体的には、有給休暇を従業員がきちんと取得できるように「使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、毎年5日間日時を指定して有給休暇を与えなければならない」とされています。ただし、事業主が日時を指定する、計画的付与などにより取得された有給休暇の日数分については、改めて指定の必要はありません。

    現在、人手不足などにより労働者と合意のうえで、有給休暇を買い取っている企業の場合。最低5日間は有給休暇を取得させることが必要になります。企業側はデメリットに感じる有給休暇の義務化ですが、そうとばかりは言えません。社員の意欲や生産性が上がることや、働きやすさが離職率の低下につながることは、企業にとっても大きなメリットです。

    つまり、特定の労働者にしかできない仕事があり、その労働者に有給休暇を与えられていなかった、といった事情があるなら、これを機に組織を見直してみてはどうでしょうか。誰かが欠けても他の者が補い、業務が滞りなく進むのが、強くリスク管理のいきとどいた組織です。業務の標準化、人材の育成などを進め、働きやすい環境を整えることにより、業務の効率化や企業の発展に繋げていきましょう。

    3.「勤務間インターバル制度対応」には勤怠管理の見直しが必要になる可能性も

    終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」は、制度自体の認知度が低いことと相まって、総務省の調査では2016年の実施率はわずか1.4%にとどまっています。
    しかし、すでに勤務間インターバル制度を導入しているEU諸国では、24時間につき最低連続11時間の休息が定められています。例えば、10時~18時が就業時間の企業で、深夜24時まで残業した場合。始業時刻は10時ですが、残業終了後11時間経過する翌日11時までは休息時間として労働させることは許されません。

    そこで日本では、労働時間等設定改善法に、勤務間インターバル制度の普及促進といった条文が盛り込まれる予定です。ただ、文言としては、「事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする」といった努力目標でEUのような具体的な規定ではありません。しかし、勤務間インターバルを確保することは、昨今話題となっている過労死を理由とする企業側への訴訟トラブルを防止するために大切な取り組みです。したがって、労働者の健康を守り、かつ、会社を訴訟トラブルから防止するためにも、勤怠管理の一環として勤務間インターバルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

    現在厚生労働省では、過重労働の防止及び長時間労働の抑制を目的として、勤務間インターバルを導入した企業に助成金を交付しています(申請期間2018年12月3日まで)。働き方改革法に具体的な記載がないため、助成金交付の要件を勤務間インターバルの参考として紹介しておきます。

    助成金が交付される休息時間数としては、9時間以上11時間未満と、EUなみの11時間以上の2段階が提示されています。このことから、勤務間インターバルを導入する場合、少なくとも9時間以上の休息を与えるのが望ましいでしょう。また、就業規則等において、「○時以降の残業と○時以前の始業を禁止する」「残業を認めない」といった定めがあり、実質的に休息時間が確保される場合も、勤務間インターバルを導入しているとみなされています。

    4.同一労働同一賃金化へ向けて、雇用形態別の業務定義の見直しが必須

    .同一労働同一賃金化へ向けて、雇用形態別の業務定義の見直しが必須
    短時間・有期雇用労働者に対する不合理な待遇差を解消し、公正・平等な待遇を確保するための規定が整備されます。雇用形態にかかわらず同一労働を行えば、同一の賃金が支払われることが原則です。能力や仕事の成果が適正に評価されることで、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の意欲が高まります。

    有期雇用労働者が、正規雇用労働者と①職務内容(=業務内容+責任の程度)、②職務内容・配置の変更範囲(=人材活用の仕組み・運用等)が同じと考えられる場合、同等の待遇確保が義務化されます。そして、派遣労働者に対しても派遣先と同等もしくは、同業務と平均的な賃金を支払うことが義務化されます。
    また、パートタイム労働者や有期雇用労働者・派遣労働者に対し、正規雇用労働者と待遇差を設ける場合、その内容・理由等を説明しなければいけません。成果・能力・経験等による賃金差は合理的な理由として認められていますので、賃金差がある場合それらの根拠を示す必要があります。

    あわせて、不合理な待遇差を解消することと、説明義務が確実に果たされるよう、行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)も整備されます。裁判外紛争解決手続(行政ADR)とは、労働者が経済的負担を負わず争えるよう、無料で利用できる紛争解決手続きのことを指します。いずれにしろ、企業として対応すべきなのは、雇用形態別の業務定義を見直し、不合理な待遇差別があれば是正を行うことです。企業活動に与える影響の大きい事項ですので、早めの準備対策を心がけましょう。
    ※大手企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から適用開始

    5.高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)導入には、新たな働き方の定義が必要

    「高度プロフェッショナル制度(高プロ)・脱時間給制度」とは、コンサルタントや金融ディーラーなど年収1075万円以上の専門職を対象に、残業代支給ではなく成果で給与が決定される制度です。高プロの対象者は、労働時間の規制が外され、多くの労働基準法上の規定が適用されなくなります。従来の裁量労働制では、「みなし時間」を労働時間とし、それを超えた分の残業代は支払われませんでした。高プロでは、本人が同意すれば、労働時間の規制がないため、残業代だけでなく深夜や休日に働いたとしても、割増賃金などは発生しません。また本人の意思で、制度から外れることも可能です。
    ただし、年104日以上かつ4週4日以上休日を付与することは必要です。そのうえで、以下から1つを選択することが義務化されています。さらに、高プロ対象者の在社時間等が一定時間を超える場合、医師による面接指導を受けさせることも必要です。

    (1)働く時間の上限設定(2)勤務間インターバル(3)連続2週間の休日取得(4)臨時の健康診断

    高度な専門性をもった人員をいかに活用するかは、企業の命運にも関わります。その一方、理論上48日休みなく働き続けることも可能となり、「残業抑制・過労死防止」に対する懸念の声も多く、企業としても注意を払わなければならないでしょう。
    ※2019年4月から適用開始

    6.産業医・産業保健機能の強化

    産業医
    労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、労働者の健康管理等を行う産業医の選任が義務付けられています。2015年12月からは、労働者のストレスチェックも事業者に義務付けされました。産業医・産業保健機能のさらなる強化を目標とし、働き方改革関連法案にも次のような内容が盛り込まれています。

    ●産業医の選任義務のある事業場の事業者は、衛生委員会に対し、
    産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等の報告をすること
    ●産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供し、産業保健業務が円滑に行える環境を整えること

    産業医は、労働者の健康を守るとともに、職場巡視を行い職場の作業方法や衛生状態をチェックし必要な提言を行う役目も担っています。安心で快適な職場環境を作るためにも、信頼関係を構築していきましょう。

    7.割増賃金率猶予措置の撤廃で、人件費が増える可能性も。生産性効率化に向けた取り組みを

    2010年の労働基準法改正により、月60時間を超える時間外労働については、賃金割増率が50%と定められました。大企業にはこの規定がすでに適用され、割増された残業代が支払われています。しかし、経営基盤の弱い中小企業に対しては大きな負担となるため、一定の猶予期間が設けられており現在も猶予期間継続中です。その猶予期間を2023年4月1日に廃止する案が、働き方改革関連法案のひとつとして審議されています。法案が可決されれば、2023年4月以降は中小企業も割増賃金を支払わなくてはなりません。人件費が膨らむと、経営的を圧迫する要因にもなります。

    まずは、残業が月60時間を超えないよう、生産性効率化に向けた取り組みが必要です。それでも長時間の残業が発生しそうなら、社員や契約社員の採用による増員や、社外へのアウトソーシングを検討すべきかもしれません。

    【まとめ】

    長時間労働改善、非正規雇用の格差是正、多様な働き方への環境整備などを目指す「働き方改革」。改めて人事制度を整えることで、人材が定着し生産性が向上するなど、企業にとってメリットがある内容が多く含まれています。「人事や経営を見直す良いチャンス」と捉え、対策を考えていきましょう。

     

     

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