退職面談とは?実施のためのプロセスと注意点を解説
d’s JOURNAL編集部
従業員が退職の意向を明らかにしたとき、会社側にはどのような対応が求められるのでしょうか。円満な退職プロセスを実現するために、「退職面談」を行う企業も少なくはありません。
適切な退職面談を実施できれば、大事な戦力の流出を食い止められる可能性が生まれるとともに、今後の社内改善に活かせるヒントも見つかります。この記事を通じて、退職面談の目的や手順、実施における注意点を把握しておきましょう。
退職面談とは
自社からの退職を希望する従業員に対し、企業側が実行できるアプローチの一つとして「退職面談」があります。まずは、退職面談の概要と重視される理由について見ていきましょう。
退職面談の概要
退職面談とは、退職を決めた従業員と企業が話し合いを行う面談のことです。大切な従業員が退職をすれば、自社にとっては大きな戦力の流出につながります。
そこで、退職面談を行って丁寧に意思疎通を図り、不本意な損失を避けるというのが一義的な目的です。しかし、単に従業員を引き留めることのみを目的とするわけではありません。
退職に至った経緯をヒアリングし、改善できる要因がないかを探りながら、組織運営の質を向上させていくことも重要な目的です。退職時には自社に対する率直な意見を伝えやすい面があるため、会社をよくしていくうえで貴重なヒントが見つかることもあるでしょう。
そのため、面談の担当者は、基本的には人事部のメンバーから選ばれます。直属の上司や同じチーム関係者ではなく、少し距離のあるメンバーが担当することで、第三者的な立場から意見を拾い上げられるようになります。
退職面談が重視される理由
退職面談は組織力の低下を避けるうえで重要な取り組みとされています。従業員が退職すれば、必要な人員を確保するために労力と費用が発生してしまいます。
さらに、退職するのが重要なポジションにある従業員であった場合は、すぐに同程度の戦力を確保できるとは限りません。退職面談によって考え直してもらうきっかけとなれば、戦力の流出を寸前で避けることにもつながります。
また、退職理由が人間関係や組織運営に関するものであった場合、企業側がきちんと把握していなければ、連鎖的な退職が起こってしまう要因にもなり得ます。原因をしっかりと究明するためにも、できるだけ話しやすい雰囲気で退職面談を行い、率直な意見を集めることが重要とされているのです。
退職面談を実施するメリット
退職面談を行うメリットについて、ここでは3つのポイントに分けて整理しましょう。
本質的な退職理由を知ることができる
退職面談は直属の上司や関係者ではなく、人事部が担当するのが一般的であるため、退職希望者の本音を打ち明けてもらいやすいのが特徴です。中立の立場にある担当者が、一対一でじっくりと話をする機会を設けることで、退職の本質的な理由を知れる可能性があるのです。
さらに、退職にあたって、今後の段取りを落ち着いて決められるのも大きなメリットといえます。例えば、業務の引き継ぎについては、担当していた本人のほうが細かなポイントを把握しているため、適任者などを判断しやすいといえるでしょう。
また、早めに退職面談が行われれば、会社側が転職相談に応じることも可能なため、退職希望者にとってもメリットがあります。
不本意な理由での退職を減らせる
ネガティブな理由で退職を検討している場合、状況を改善することで退職を引き留められる場合があります。例えば、自身のスキルと業務とのミスマッチに悩んでいるケースでは、相談内容に応じて配置転換を提案することで、退職を思い直す可能性も十分にあるでしょう。
また、チーム内の人間関係に悩みを抱えている場合も、配置転換によって問題が解消される可能性があります。次年度で異なる部署に配属するなどの提案ができれば、再び自社で活躍してもらえる可能性が見つかるでしょう。
そのほかのケースとしては、育児や介護、配偶者の転勤などにともない、物理的に出勤が難しくなってしまったという場合も考えられます。この場合、企業の業種や業務内容によっては、リモートワークの選択肢を提示することで不本意な退職を避けられる可能性もあります。
離職防止の取り組みにつなげられる
面談によって退職者から直接意見をもらうことで、さらなる離職を防ぐための取り組みにつなげられるのもメリットです。労務環境の問題が退職理由であった場合には、その内容を詳しく聞くことで、具体的な問題点を従業員目線から把握できます。
例えば、企業側が十分だと判断して提示した給与、福利厚生について、従業員側が密かに不満を感じているというケースは少なくありません。この状態を放置すれば、ハッキリと退職の意向を表明した従業員以外にも、連鎖的に離職が起こってしまうリスクがあります。
労務改善のヒントが見つかれば、すぐに実現することは難しかったとしても、今後の取り組みに活かすことは可能です。
(参考:『離職防止に効果的な取り組みとは|離職の原因や施策アイデア・事例を解説 』)
退職面談を実施する手順
退職面談は場合によってデリケートな側面に触れる可能性もあるため、実施する際にはしっかりと段取りを組んで臨むことが大切です。ここでは、退職面談の手順を4つのステップに分けて見ていきましょう。
退職理由について尋ねる
従業員の退職の意向が明らかになったときは、できるだけ早い段階で面談の日取りを決めることが大切です。前述のように、状況次第では退職を思い直してもらえる可能性もあるため、気持ちがほかへ移ってしまう前に速やかに手を打ちましょう。
退職面談では、やはりまず退職理由について尋ねる必要があります。どのような経緯で退職を考えるに至ったのか、抱えている不満などをしっかりと把握することで、次に打つべき手を検討できるようになります。
自社に対する率直な意見をもらう
退職面談ではできるだけ率直に意見をもらうことが大切です。自社の企業風土や組織体制、キャリア支援などについて、よかった点と悪かった点の両面から意見を聞き出すのが望ましいといえます。
しかし、退職を希望する本人からすれば、これまで勤めていた会社に対してネガティブな意見を伝えるのは、あまり気が進むものではありません。そのため、本音を聞き出すためには、質問の仕方や項目を工夫する必要があります。
退職面談における質問例
・退職を決意したきっかけは何ですか?
・上司やマネージャーからのサポートは感じられましたか?
・自社で働いてみてよかった点はありますか?
・キャリア形成やトレーニングで適切なチャンスが用意されていると感じましたか?
・自社の担当業務にやりがいを感じられたことはありますか?
・自社で働くことをどのような人にすすめたいと思いますか?
・退職を考え直すとしたら、どのような条件が考えられますか?
質問時のポイントは、「具体的であること」「客観的に答えやすいものであること」「ポジティブな意見も引き出せる項目を設けること」などが挙げられます。例えば、質問が「自社のどのような点に不満がありましたか?」のようにあいまいであれば、相手もどのように答えればよいかがわからず、回答に詰まってしまうでしょう。
具体的かつ客観的な質問を心がけることで、中身のある回答が得られやすくなるのです。また、自社で働いてみてよかった点も尋ねることで、相手も「単に愚痴や不満を言うだけの場ではない」と理解しやすくなるため、率直な意見を出しやすくなります。
退職後のフォローを行う
退職面談では、たとえ退職の意向が変わらなかったとしても、できるだけ自社によいイメージを持った状態で新出発を切ってもらうことが大切となります。退職後の働き方について尋ね、必要に応じて転職のサポートなどを行いながら、良好な関係を保ち続けることが重要です。
また、退職後の計画を知ることは、自社で満たせなかったニーズを把握することにもつながります。キャリアや労務環境などについて、従業員が新たな職場に何を期待しているのかを知れば、自社のどの点に不満を感じていたのかが浮き彫りになるはずです。
退職までのスケジュールを決める
退職するまでの具体的な流れやスケジュールを決めることも、退職面談の重要な目的です。業務の引き継ぎについては、移行に必要な期間や後任の担当者、データの管理方法などを細かく相談し合い、周囲への影響をできるだけ小さく抑えましょう。
また、場合によっては、新しい環境にうまくなじめず、もう一度自社で働くいわゆる「出戻り」の可能性も考えられます。一度自社を退職した従業員を再び雇用することを「アルムナイ採用」といい、新たな人材を採用するのに比べて、「すでに自社の業務について理解している」「即戦力として活躍できる」といったメリットがあります。
近年ではアルムナイ採用を取り入れる企業も増えているので、自社でも導入する可能性がある場合は、退職面談のタイミングで伝えてみてもよいでしょう。
退職面談を行うときの注意点
退職面談を行うにあたっては、トラブルに発展しないように細心の注意を払う必要があります。ここでは、特に重要な注意点を3つご紹介します。
無理に引き留めようとしない
退職を決めている従業員に対しては、無理な引き留めは行わないようにすることが大切です。すでに次の目標が決まっている場合、自社の都合ばかりを押し付ければ、面談の雰囲気が悪くなってしまう原因にもなります。
まずは丁寧に従業員の考えを聞き、どのような経緯で退職に至ったのかを探りながら、今後の組織運営に活かせるポイントを見つけましょう。
(参考:『退職希望者を会社は引き止めるべきか、送り出すべきか【退職理由・交渉のホンネ】 』)
冷静に話し合いを行う
退職に至る原因にはさまざまなパターンがありますが、基本的にはネガティブなものが多いと考えられます。退職理由を尋ねれば、どうしても自社に対する否定的な意見が出てくる場面は多くなるでしょう。
しかし、途中で口を挟んだり発言を否定したりすれば、せっかく率直な意見を伝えてもらえる雰囲気をつくって台無しになってしまいます。そのため、担当者は決して感情的にならず、冷静にヒアリングを続けることが大切です。
そもそも、退職面談そのものは、退職希望者にとってそれほどメリットがありません。どちらかといえば、会社側が改善のヒントを見つけるために行う側面が強いので、「協力してもらう」というスタンスを心がけるとよいでしょう。
立ち入った質問は避ける
退職理由を明らかにすることは重要ですが、トラブルを予防するうえで、あまり立ち入った質問は避けるほうが無難です。例えば「具体的にどのメンバーと折り合いがつかなかったのか」のような踏み込んだ質問は、相手にプレッシャーを与えてしまう恐れもあるので、慎重に判断する必要があります。
また、「プライベートに問題があったのではないか」「キャリアについての考えが甘いのではないか」といった本人を否定するような質問も、退職面談の目的からは逸脱してしまうので避けるべきです。最後まで良好な関係を保つためにも、担当者には誠意のある対応を徹底してもらうことが大切です。
まとめ
退職面談を適切に行えば、情報の行き違いや認識のズレによる不本意な退職を防ぎ、大事な従業員の流出を避けられる可能性もあります。また、退職を引き留められない場合でも、退職理由について率直に伝えてもらうことで、組織改善のヒントにつながるケースもあります。
つまり、退職面談は自社のあり方や組織の状態を見直すきっかけにもなるということです。さらなる離職を防ぐためにも、退職面談の目的や方法をしっかりと把握し、今後の改善に役立てましょう。
(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)
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