“けんせつ小町”が集う建設会社が熊谷に。女性従業員の平均勤続年数17.2年を達成している会社づくりの秘訣とは

d’s JOURNAL編集部
老舗の建設会社で、ヘルメットをかぶる女性技術者が多数
年齢に関わらずいつまでも生き生きと働ける環境を実現
女性活躍の実績をPR、新たな”けんせつ小町”採用へ
【PR】埼玉県が認定する「多様な働き方実践企業認定制度」とは

働き手の減少が日本経済の大きな課題です。特に、建設業界は常に人手不足に悩まされています。また業界全体のイメージも、改善されているとはいえ、3K(きつい・汚い・危険)や雇用条件が悪いなど、若年層を中心にまだまだ払しょくしきれていない現状があります。そんな中、埼玉県熊谷市に立地する建設会社構内でヘルメットを被って活き活きと働く女性を発見。働いているのは建設会社、田部井建設。インタビューで訪れたその会社は、意外にも明治に創業された老舗の建設会社でした。

社内には 「多様な働き方実践企業」という埼玉県から送られた楯と認定証に目が留まります。実際にどんな「多様な働き方」を実践しているのか、その取り組みについて伺ってみました。

老舗の建設会社で、ヘルメットをかぶる女性技術者が多数

田部井建設は、埼玉県熊谷市の郊外に立地する建設会社です。創業はなんと明治15年(1882年)。上野動物園開園やその翌年には鹿鳴館が完成するなど華々しい時代に誕生した老舗の建設会社です。現在の従業員数は64名(2020年4月現在)。その歩みは古く、創業からほどなく地域密着型の総合建設業として関東北部を中心に展開。主事業として土木部門では河川工事、建築部門では学校や福祉施設など公共性の高い建築物の施工、さらに水道工事、舗装、造園などさまざまな事業を手掛けています。

創業当時、同社の立地するエリアは、利根川と荒川に挟まれており、毎年のように洪水により被害を受けていたため、河川の治水事業を中心に事業を展開し、地元密着の企業としてその存在感と認知度を高めてきました。そして1970年代には、太平洋戦争などにより利根川に投棄された不発弾を自衛隊と共同して撤去するといった活動にも参画し、近隣地域に多大な貢献を果たした実績もあります。

老舗の建設会社で、ヘルメットをかぶる女性技術者が多数

そんな地域密着型の事業を展開する田部井建設ですが、女性が多く活躍する企業としても広く知られています。埼玉県が認定する「多様な働き方実践企業」認定制度では、現在最上位である男性社員の育児休業の取得を条件としたプラチナプラス認定を受けています。さらに、毎年2社しか選ばれないハードルの高い賞である「令和2年さいたま輝き荻野吟子賞」を令和2年2月に埼玉県庁知事公館にて
埼玉県知事より直接表彰されたほか、「第10回熊谷市男女共同参画推進表彰」など数多くの受賞歴があります。

もともと現 取締役会長 田部井洋子氏が役員に就任した当時、業界全体の女性就業者比率の少なさや、会社全体の定着率の悪さに着目し、それを憂慮していました。そこで男女に関係なく働きやすい職場とはどんな環境なのかを見直し、職場定着とスキルアップできる環境を目指すべく、さまざまな制度や環境を整えていったことが始まりでした。「子育ては人生で一度きり。子育てを優先しながら、仕事を全うしてくれたら」を掲げて、現在の姿となった田部井建設。同社はその後どのような女性が活躍できる会社づくりを行ったのでしょうか。

まず同社には、一・二級建築士、二級土木施工管理技士、二級建築施工管理技士などの資格を保有する女性従業員が数多く在籍するなど、いずれも高い水準を誇っています。

・女性従業員の割合 15.6%(全国建設業平均14.1%)
・女性従業員の平均勤続年数 17.2年(勤続5年以上対象、全国建設業平均10.7年)
・女性管理者の割合 10%(課長以上、全国建設業平均2.9%)

●「誕生日に休んで良いんです」 働きやすい制度が充実

福利厚生や制度についても見ていきましょう。以下は、男女に従業員が男女に関係なく多様性を発揮して活躍できるために同社が整えた制度と実績です。

・育児休業制度(女性では3回取得後現場復帰、また男性では2名<1カ月程度>の休業取得 実績あり)
・ノー残業デー制度(毎週水曜日)
・バースデー休暇制度
・リフレッシュ休暇(連続6日取得可) など
・公共工事の週休2日制モデル導入(※土日は作業・重機を止めて現場を稼働させない)

特に建設業界の課題ともなっている残業時間をいかに削減できるか、に焦点を当て、取り組んでいる印象を受けます。これらの制度を説明していただいたのは、同社の総務部に籍を置く川島弘美氏(以下、川島氏)です。

「建設業界全体の課題は、残業時間の多さとそれに伴う休暇の取りづらさで、かつ離職率が高いことです。当社は公共工事を中心に受注する総合建設会社のため、比較的工期と案件管理の把握が容易です。そのため体調不良や家庭の事情などで急にお休みをとらなければならなくなったときでも、みんながお互いをフォローし無理なく業務を行える態勢を整えていったのです。おかげさまで社員の定着率も高く、入社5年までの離職率は極めて低くなりました

最近では、本社と現場が離れているため、事業部会議などはZoomといったオンラインコミュニケーションツールを活用し、社員の通勤時間などの負担を減らしています。生産性に関しても大幅に改善し、まさに働き方改革を地でいく環境となっています」。

急に現場を離れなければならない、これは子育て中の従業員には必ず起きること。それを可能にするため、お互いの家庭環境などを職場で共有するのはもちろんのこと、仕事を個人任せではなくチームで共有できる環境を整え、今では、急な呼び出しだけでなく学校の行事にも積極的に参加できるようになったそうです。子育て中でも安心して働けるからこそ、常に現場を抱える業種にも関わらず、田部井建設は従業員にとって長く働ける会社となったのでしょう。

「誕生日に休んで良いんです」 働きやすい制度が充実

年齢に関わらずいつまでも生き生きと働ける環境を実現

日本では70歳までの働き続けられる環境を整備する改正高年齢者雇用安定法の施行(2021年4月1日施行)が迫っています。実は同社では定年延長制度をいち早く採り入れ、雇用延長を申請すればいつまでも活躍できる制度を整えています。現在では、70歳を超えた女性従業員が生き生きと同制度を活用して活躍しています。

従業員の年齢にこだわらない同社。その姿勢は採用の現場でも発揮されています。たとえば、2020年12月には40歳を過ぎた女性一級建築士を積算担当として採用しました。優秀で長く働いてくれる人、という点が主な採用理由です。この女性はこれまで他社に履歴書を送っても面接さえ受けられずに返却されたそうですが、同社はしっかりと受け入れています。こうした年齢やキャリアに関わらず、採用の間口を広く取っていることが、従業員満足度の向上や定着率の良さにつながっています

そしてまた、同社の建築事業部 工事部 設計課主任で一級建築士K.A.さんも、CADオペレーター退職後、子育てブランクを経て同社に採用された一人――。

「出産を機に一度現場を離れましたが、ブランク後のキャリアを築くにあたり、子育てと仕事が両立でき、通勤に便利な職場、そして何より建設業に引き続き携われる会社として田部井建設に出会いました。育児や介護など家庭の事情に合わせて業務の調整ができる当社の環境は魅力的です。職場の同僚や上司の理解も浸透しており、子どもの急な発熱など現場を離れる場合であってもフォローしてくれます。年齢やキャリアにこだわらず受け入れてくれた当社には本当に感謝しています」(K.A.さん)

そう、70歳を迎えても活躍できる環境、子育て中の従業員が安心して働ける職場の提供が同社の魅力です。

同社の建築事業部 工事部 設計課主任で一級建築士K.A.さん

女性活躍の実績をPR、新たな”けんせつ小町”採用へ

「多様な働き方実践企業」として埼玉県に認定されている同社。仕事と家庭が両立できる働きやすい会社としての認知が、企業のイメージアップにつながり、求人の際も効果的にPRすることが可能になりました。そうした働きやすい企業として魅力を感じ、同社の門をたたいたのが建築事業部 建築部 工事課に所属するT.K.さん。群馬県の専門学校を卒業した後、田部井建設に入社しました。今年で入社3年目になる、”けんせつ小町”です。

「田部井建設を知ったのは、学校の就職課での案内でしたが、調べていくうちに女性の技術者が生き生きと働ける会社だなと感じ入社の意思を固めました。実際現場に入ってみると、上司や先輩は過度に気遣うことなく接してくれて、優しさと厳しさがバランスよく織り交ぜられた指導で、日々成長を実感しています。今は小さな改修工事の現場が主ですが、勉強中の一級建築士の資格を取って、もっと大きな現場を進行できる技術者になりたいですね」(T.K.さん)

建築事業部 建築部 工事課に所属するT.K.さん

同社には、資格取得支援として、受験料、テキスト、試験会場までの交通費全額支給される制度があります。さらには実務経験を経た対象社員は残業時間を免除して日建学院への通学が可能といった制度も整えられています。さらに賞与年2回(業績による)、昇給年1回(人事考課による)に加えて、各種資格手当があるなど待遇面も充実しているのです。こうした待遇の良さも、従業員のモチベーションを上げて定着率を高めている要因です。

「資格手当を毎月給付する建設会社は全国でも決して多くはないと思います。それだけ会社の処遇が厚待遇なのです。かくいう私も、限られた時間の中で資格取得の勉強を継続して建設業経理士1級の資格に合格しました。受験にかかる費用も会社に全額負担していただきました。つまり当社は勉強して関連資格を取るほど、そして長く働くほど、どんどん昇給する仕組みとなっています。ですからみんな会社と同僚が好きで、伸び伸びと、そして自分らしく働いています」(川島氏)。

従業員の個々の事情と働くモチベーションをサポートする仕組みを整えることが、田部井建設の安定した成長を支える源泉だったのです。

【取材後記】

建設業界では、さまざまな職種で女性の進出が進んでいますが他の業界と比べると女性就業者の割合は低い状況にあります。田部井建設は、そうした状況を踏まえ、男女問わず働きやすい職場の醸成、そして従業員のモチベーションを向上させる厚遇制度を整えました。こうした環境整備をPRし、採用面においても求職者の確保を成功させており、2020年度の採用活動においては4名の将来有望な従業員を獲得するに至っています。決して大きいとは言えない規模の建設会社ですが、工夫と職場環境を整えることで従業員の意識も向上し、誰もが生き生きと年齢に関係なく働き続ける会社をつくり上げました。実際の会社の雰囲気も大らかで、それでいて明るい。笑顔の絶えない職場だと感じました。そんな田部井建設が取得している、埼玉県の「多様な働き方実践企業」認定制度。ほかにどんな企業があるのか、大変興味が湧きました。

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取材後記
 
取材・文/鈴政武尊、撮影/シナト・ビジュアルクリエーション、編集/鈴政武尊

【PR】埼玉県が認定する「多様な働き方実践企業認定制度」とは

多様な働き方実践企業9つの認定項目
埼玉県では、テレワークや短時間勤務など多様な働き方を実践し、働き方改革に取り組んでいる企業を「多様な働き方実践企業」として認定しています。現在の認定企業数は、3,351社(令和2年12月現在)。従業員の仕事と家庭の両立について、 社会的気運の醸成を図り、男女ともに生き生きと働き続けられる職場環境づくりを促しています。

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