好きや夢中は仕事にするべき!? “はたらく”は楽しいかどうかが重要。子どもから大人へアドバイスも

d’s JOURNAL編集部

プロフィール

在宅ワークや副業なども当たり前になってきた今、私たちの“はたらく”にはさまざまな考え方や働き方、多様性が出てきました。

仕事体験テーマパーク「カンドゥー」。その施設内にて、「親子で楽しく“はたらく”を考えてみよう!」と題したトークセッション&ワークショップが開かれました。登壇者は、「うんこドリル」シリーズの駒井一基氏、無限プチプチの開発者でも知られるおもちゃクリエイター高橋晋平氏、そしてアートエデュケーションやワークショップデザインを専門とする臼井隆志氏など。

大人が楽しくはたらくを語る姿を見て、10年、20年先の未来を担う子どもたちはどう感じるのか。普段なかなか親子で話すことのない“はたらく”について考えてみる本イベントにて、どんな考え方や意見が出てきたのでしょうか。

子どもはもちろん、現職で活躍するすべてのはたらく人、あるいは転職希望者、新卒で就職活動をされている学生、採用を担当する人事担当者など、一度は思いを巡らせたことのある“はたらく”について。今回のセミナーレポートを通じて改めて考えてみたいと思います。

体験型テーマパーク「カンドゥー」でワークショップを開催

千葉県に立地するイオンモール幕張新都心ファミリーモール(千葉県千葉市美浜区)内には、「カンドゥー(Kandu)」と呼ばれるテーマパークが常設されています。これは、子どもたちがあこがれる仕事にチャレンジできる体験型テーマパークとして幅広い層から人気を集めています。

パーク内には常時30種類以上の仕事体験ブースが用意され、そのコンセプトも「親子3世代で楽しめるテーマパーク」とされています。体験ができる職業は、パイロットや警察官、ショップ店員、モデル、歯科医など子どもたちあこがれの職業に加え、おしごとアドバイザー・おしごとライターやユーチューバーなど近現代に適した職業まで体験できるようです。

それもそのはず、協賛ブランド・パートナーや協力企業として、イオンモール、オンワード樫山、日本自動車連盟(JAF)、セコム、ソフトバンク、日本航空、日本旅行、森永乳業、宇宙航空研究開発機構など、名だたる企業が名を揃えており、本格的なセット、本物さながらのコスチュームなど、本物に近い職業体験ができるのも人気だといいます。

そのカンドゥー内で、「親子で楽しく“はたらく”を考えてみよう!」と題したトークセッション&ワークショップが開かれました。ワークショップは親子で一緒に“はたらく”を楽しんでいる大人のお話を聞き、子どもが夢中になること、楽しいこと、興味あることを発見するヒントにしてもらうことを目的としています。

第1部がトークセッション。パーソルキャリア株式会社の執行役員 dodaエージェント事業部 事業部長である大浦征也氏が司会進行役を務め、ゲストに株式会社文響社、「うんこ編集部」にて累計850万部を超える「うんこドリル」シリーズの編集を行う駒井一基氏(以下、駒井氏)、そして株式会社ウサギにて代表取締役であり、「∞(むげん)プチプチ」をはじめ、さまざまなおもちゃの企画・開発に携わってきたおもちゃクリエイターとしても名高い、高橋晋平氏(以下、高橋氏)が登壇しました。

また第2部のワークショップのメインゲストとして、アートエデュケーションやワークショップデザインを専門とする臼井隆志氏(以下、臼井氏)が登壇し、アートで学ぶ「未来の“はたらく”って、どんなのかな?」を開催。親子でアートを楽しみながら、未来の“はたらく”について一緒に考え、日常の「好き!」「楽しい!」といった好奇心や探求心を改めて体験するイベントになりました。

次段からは、第1部のトークセッションの模様についてレポートします。

2人のプロフェッショナルが語る、好きなこと・夢中になれることは仕事にするべきか

まずは、うんこのプロ駒井氏、そしておもちゃづくりのプロ高橋氏に、それぞれの“はたらく”を通じて感じた仕事の意義などについて聞いてみます。まずは駒井氏のコメントから。特に「うんこの無限の可能性」について熱く語られる一幕がありました。

「私は「うんこドリル」の編集者として普段仕事をしています。うんこドリルとは、その名の通り、「うんこ」という言葉に秘められた不思議な魅力をフル活用してつくった勉強ドリルのことです。漢字や算数のほか、最近では高校生向けの大学入試に使用する英単語帳などにも携わっています。

私たちが目指しているのは、勉強を楽しいものに変えていくこと。子どもたちが勉強を「好きになる」ことが挙げられます。子どもたち目線を最重要においてつくられています。子どもとうんこは親友と呼べるくらい親密性がある、うんこには無限の可能性があるわけですね。

また、うんこを通じて感じることは、人は興味を持つことでそれをエネルギーに変えられること。それが成長の原動力になっています。つまり興味や好きが成長のポイントというわけです。

強烈な単語や印象に残ったワードには、記憶の定着や脳を活性化する働きが研究機関によって認められているので、学習力向上にも一役つながっている。だから楽しく何かをするというのは、子どもはもちろん大人の“はたらく”にも良い影響を与えられるわけですね」(駒井氏)。

好きなことをする、楽しく仕事にするということが、自分の成長や人生にとってもプラスに働くということ。駒井氏は自身の経験と仕事を通じてそれを痛感したのだそう。

さて、次に「∞(むげん)プチプチ」などをはじめ、さまざまなおもちゃに携わってきた高橋氏にも同様の質問をしたところ、このようにコメントしてくださいました。

「カンドゥーにはたくさんの仕事がありますし、子どもさんたちももちろんそうですが、その親御さんだって転職してこんな仕事についてみたいと思う方も多いでしょう。私はこれまでさまざまなおもちゃを手掛けてきましたが、どうして私がいまおもちゃクリエイターをやっているかをお話しします。

実は私は子どものとき、プラモデルや工作、ゲームなどモノ作りが好きだった。それにとても恥ずかしがり屋だった。人前でしゃべるなんてもってのほかでした。ですが、人を笑わせてみたい、楽しませたいと思う一面もすごく強かったんです。そして、いつかそれを自分の得意なことで叶えたいと思っていたんですね。

そんなわけで私はいまおもちゃを作っていて、その最初の入り口はバンダイではたらくことでした。∞(むげん)プチプチや鳩時計「OQTA」などもその中で生まれてきました。

ですから、これまでの経験から分かったことは、自分のやりたい仕事や、やってみたいと思える仕事に出会うには、こんな自分になってみたい・こんな考えを持っていきたいという気持ちと、現状で好きなことや得意なもの、その間あたりを探してみるときっと自分にベストなものを見つけられるのではないかなと思います」(高橋氏)。

興味の向くことや好きなこと、自分の理想とするものを仕事にしてきた高橋氏。どうしたらそんなモチベーションが生まれるのか、どうしたら面白いプロダクト(おもちゃ)を実現できるのか、その秘訣を続けて聞いてみました。

「私はたまたま『こんなことを叶えたい』をおもちゃで表現していると思っています。実は、昔から不安症みたいなところがあって、いろいろと手元にある道具をいじるくせがありました。例えば、ずっとボールペンとか触っていたりとかね。

ですから誰にも指摘されずに公然といじれるようなものが欲しかった。それが∞(むげん)プチプチ開発にもつながりました。例えば、現代社会はみんなイライラしがちな側面もあります。だからイライラを解消するものを作ろうといった発想です。

結局仕事は、それぞれの『叶えたいこと』にヒントがあると思っています。自分の好きなことや長所じゃなくて、苦手なものや短所のほうに、今はできないけど、できるようになりたいものに実はビジネスのヒントがある。それを自分の得意なことで解決できないかなと考えるのが、“はたらく”ということなんだと思いますね」(高橋氏)。

世の中的には強みを生かすという風潮になりがちですが、コンプレックスや苦手意識の中にエネルギーが眠っているものだと、2人はともに語ります。弱みや悩みを克服したい、むしろそれが将来大好きになる要素があるかもしれない。そんな希望にあふれたお話を展開されていました。

さらに髙橋氏は子育てについても言及します。「子育ては何が正解かわからない。でも人を笑わせたり、喜びを与えたりすることが大好きになってもらう人間に育ってほしい。そんな育て方を実践しています。仕事って人を笑わせることであり、家族を笑わせること。親は笑ってあげることしかできないので、1秒でも多く笑ってあげたいなと思って暮らしています。」と――。

子育てに絡めて、はたらくことと生きることがイコールであり、それが仕事にも通じていると高橋氏はコメント。また仕事は楽しいことばかりじゃない。それでも子どもに「仕事が楽しい」って思ってもらわなければ子どもは将来仕事が楽しいものだとは思わない。感情をコントロールするのは難しいけれど、ずっと笑っていることは重要だということを熱を込めて説明してくれました。

そもそもはたらくとはなんだろう?子どもの答えに真理が隠れていた

イベント終盤。来場されている子どもたちにも、「みんなにとってはたらくとはなに?」と問いかけ、考えて、発表してもらうシーンがありました。

Aくん 「みんなのため(仕事を)する」
Bちゃん 「みんなをえがおにする」
Cくん 「だれかのやくにたつこと」

駒井氏は、「はたらくとは、はた(他者)を楽にすること――。みんなを笑わせることにも通じていると、子どもたちの考えた“はたらく”概念に終始感心しきりでした。誰か人のために役立ち、そして笑顔にすることが、“はたらく”ことの本質なのかもしれません。

さらに、登壇者両氏に対しても同様のテーマでコメントしてもらいました。駒井氏は「世界をぶりぶり広げること」と回答。

「うんこ編集者は、自分の小さいころにはなかった職業。それは世界が新しく広がっていき、仕事の概念の変化と新しい価値観が生まれたからこそ生まれました。うんこドリルも最近誕生したものだから、それをもっと広げていきたい。これまでになかった新しい価値を見つけて、どんどん広げていくことが、“はたらく”ということじゃないかなと感じています」(駒井氏)。

髙橋氏は「笑わせること」と、前述の自身の体験談と併せてコメントしました。

「結論は、人を喜ばせるということでしょうね。うんこ編集者やおもちゃクリエイターという仕事は聞くからに面白そうな仕事。でもどんな仕事だって人を喜ばせられない仕事なんてないはずなんです。すべての職業は人を笑わせることができると信じている。だから自分のやれること、叶えたいことを通じて人を笑顔にする。それを喜びとして感じてもらうことが“はたらく”ことの本質じゃないかと認識しています」(高橋氏)。

バンダイでも引き続き人を笑わせることができたはずなのに、なぜその世界を飛び出して、自分の会社を立ち上げたのでしょうか。最後にその勇気やモチベーションは何だったのかを聞いてみました。

「勇気はいりましたよ。当時は自宅を買ったばかりでしたし(笑)。でも手に触れられる距離感でお客さんに『あはは』と笑ってほしかったので、自分の作ったものに関して、『これいいよね』とお客さんと話して共感して一緒に喜べる世界観を実現したかったんです」(高橋氏)。

一方で、今でこそうんこドリル編集者で通っている駒井氏だが、その経歴は少々風変わりです。うんこドリルを出版している会社に入ったのはつい1年ほど前のこと。それまでは外部の編集プロダクションとして仕事をしていたのですが、逆にそこから入社を果たしたそうです。

そうした働き方もあることについて、「自分としては入社の際に『うんこを通じて世界を広げていきたいです』というお話をしました。目標や扱うテーマが同じでしたので、働く場所や形態に拘りはありませんでした」とコメント。

色々なはたらくを考えさせられた約2時間のイベント。この時代、いろいろな場所やいろいろな働き方、つまり選択肢があることが重要です。現代の“はたらく”が、どういうことなのかが見えてきました。

【取材後記】

人を笑わせようとしたら難しいがまずは自分が笑えばいい、はたらくことは大変なこともあるかもしれないが、でも笑えばきっと世界が広がっていく――。家の中で仕事をする機会が増えてきた昨今、仕事と家庭が地続きに思えてきます。しかしそんな状況下だからこそ、せめて楽しむこと、笑顔でいることは大事なのだと感じます。また駒井氏は最後に会場にいるお子さんに向かって「人を喜ばせることは本当に楽しいよ」と伝えていました。はたらくことの本質は、楽しいことにあるのだと実感した濃密な時間となりました。

【関連記事】
With/Afterコロナ時代の働き方改革 「チームビルディングにブートキャンプはいかが」
カゴメ&参天製薬。ハード・ソフト両面必要、”生き方改革”の先にタレントの自律がある
Amazon×千代田化工建設、経営視点で押さえるべきDX成功ポイント
その問題は本当にコロナが原因?マクドナルドに学ぶ危機局面での事業成長とは

文/鈴政武尊、編集/鈴政武尊