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レジリエンスとは、困難を乗り越えるための精神的回復力を示す言葉です。先行きが不透明で変化の激しい現代のビジネス環境において、レジリエンスは持続可能な発展を遂げるための重要な資質として注目されています。
この記事では、レジリエンスの重要性や正しい意味について解説します。そのうえで、個人・組織としてどのようにレジリエンスを強化していくべきか、具体的な方法やポイントも詳しく見ていきましょう。
「レジリエンス」とは「困難をしなやかに乗り越えて回復する力(精神的回復力)」を指す言葉であり、もともとは物理学で用いられていた用語です。
ここでは、ビジネスの分野で注目を集めるようになった理由も含めて、レジリエンスの具体的な意味や使われ方について見ていきましょう。
レジリエンスとは、「回復力」や「復元力」「再起力」「弾力」といった意味を持つ言葉であり、もともとは「外から加わった力によって変形した物質が元に戻ろうとする力」を表す物理学の用語です。
心理学の分野では、ここから意味が転じて、「強いストレスを受けたあとに、危機やストレスを乗り越えて回復・適応する力」を示す言葉となっています。
このように、ストレスを受けてからの精神的回復力を指す言葉であり、単に精神的な強さを示しているわけではないという点に注意が必要です。
レジリエンスはビジネス以外のさまざまな分野でも使用されており、使われる状況によっても意味が少しずつ異なります。「組織レジリエンス」とは、環境の変化にともなって起こるリスクや困難を乗り越え、組織として適応する能力です。
また、「災害レジリエンス」は、災害による被害や損害から復興する力のことであり、都市機能の回復を速やかに行えるような備えなども含んだ考え方です。そのほかにも、地球環境の変化に対する復元力や適応力を示す「環境レジリエンス」や、サイバー攻撃を受けてからの回復力を示す「サイバーレジリエンス」などがあります。
いずれにしても、レジリエンスは困難を完全に回避することより、困難に直面してからの立ち直りに重きを置いている点が特徴です。
レジリエンスはさまざまな用語と混同されやすい面があるため、類似した用語との違いから理解を深めていくことが重要です。ここでは、4つの代表的な用語と比較しながら、レジリエンスへの理解を深めていきましょう。
メンタルヘルスは「精神の健康」を意味する用語であり、ストレスの軽減や緩和、精神的な側面でのサポートなどを幅広くとらえた言葉です。
法律の改正によって従業員50名以上の企業ではストレスチェックが義務付けられるなど、労働環境づくりにおけるメンタルヘルスの重要度は年々増しています。
一方で、困難やストレスに直面したときの回復力を示すものがレジリエンスです。
ストレス耐性は精神的なストレスに耐える力のことであり、レジリエンスを構成する一つの要素としてとらえられています。ストレス耐性が高ければ、強いストレスにさらされても比較的に早く乗り越えることができるため、レジリエンスの考え方においては重要なポイントです。
ただし、レジリエンスの主眼はあくまでも治癒力や回復力、しなやかさにあり、単にストレスを耐え忍ぶ精神的な剛性を追求するものではありません。
ハーディネスとは、精神的なストレスを跳ね返す防御力を指します。ハーディネスがストレスを受けない・感じない能力であるのに対し、レジリエンスはストレスを受けてからの回復力に着目する点が違いです。
ストレスコーピングとは、ストレスに対して上手に対処することを指します。ストレスの原因に働きかける「問題焦点コーピング」や、ストレスに対する考え方や感じ方を変化させる「情動焦点コーピング」などの方法があり、いずれもストレスの処理能力に着目した考え方です。
一方で、レジリエンスはストレスを受けてからの回復力を指す言葉です。ストレスコーピングの実践とレジリエンスの兼ね備えにより、ストレスに強い個人・組織の確立が可能となります。
これまで見てきたように、レジリエンスはさまざまな文脈で用いられている言葉です。ここでは、ビジネスシーンにおける社員のレジリエンスの向上が注目されている背景に焦点を当てて解説します。
ビジネスシーンで注目を集める背景には、「VUCAの時代の到来」と「労働者のメンタルヘルス対策」の2つが関係しています。
「VUCA時代」とは、企業や社会などを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状態が続いている時代のことです。VUCA時代の到来により、既存の価値観やビジネスモデルなどが通用しなくなる場面も増えてきました。
そうしたなかで、企業に求められているのは、「いかにして自ら変化を起こしていくか」という変革への対応力です。そのためには、組織を構成する各メンバーに、「意思決定力や迅速な対応力」や「状況の変化に対応する臨機応変さ」「多様性を受け入れるコミュニケーション力」「最もよい答えを導き出す問題解決力」が求められます。
これらの力は、後ほど紹介する「レジリエンスの要素」とも合致するため、ビジネスシーンにおいて、レジリエンスが注目されているのです。
厚生労働省が発表した『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』によると、メンタルヘルスの不調により連続1カ月以上休職した労働者(退職した方を含む)がいると答えた事業所は、全体の「9.2%」でした。全体の約1割の企業において、連続1カ月以上休職する労働者がいるという状況が続いています。
また、労働者の「54.2%」が、現在の仕事や職業生活に関して強い不安やストレスを感じている事柄があると答えました。このような結果からも、職場におけるメンタルヘルス対策が、企業にとって急務となっています。
メンタルヘルス対策を考えるうえで重要な「ストレス耐性」や「心身の健康」は、レジリエンスと関係が深い事柄であるため、レジリエンスへの関心が高まっているのです。
(参考:厚生労働省『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』)
(参考:『【よくわかる】労働安全衛生法とは?違反しないために企業は何をするべき?重要点を解説』)
レジリエンスを正しく理解するために、ここではもう少し掘り下げて具体的なポイントを解説します。レジリエンスに関連する「因子」と「要素」について詳しく見ていきましょう。
レジリエンスを理解するうえでは、「危険因子」と「保護因子」という2つの因子について知っておくことが大切です。これらは主に医療の現場で用いられることが多い言葉であり、レジリエンスの考え方にも応用することができます。
危険因子とは、ストレスや困難な状況をもたらす原因です。具体例として、戦争や災害、病気、貧困、家庭の問題、虐待といったものが該当します。
レジリエンスを高めると、危険因子に対しても適切に向き合えるようになります。
保護因子とは、ストレスやネガティブな状況を乗り越える要因です。つまり、レジリエンスを直接的に促す要因と考えられます。
具体例としては、個人の精神的な特性、相談相手の有無、友人・職場の人間関係、問題解決能力などが該当します。レジリエンスを高めるためには、保護因子となる要素に着目して、じっくりと見つめ直すことが大切です。
続いて、レジリエンスを導く要素を2つに分けて見ていきましょう。
レジリエンスを促す重要な保護因子として、心理学者である小塩真司氏らの研究グループでは、「精神的回復力」を取り上げています。さらに、精神的回復力は、「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」の3つの因子に分けて考えられます。
新奇性追求とは新たな事柄・人に興味を持ったり、慣習にとらわれずにチャレンジしたりするスタンス・行動です。困難な状況から脱却できる力を生み出す特性であるため、レジリエンスには欠かせない要素といえます。
感情調整とは、喜怒哀楽のうち、特にマイナスな感情をコントロールすることを指します。ストレスによって過度に悲観的になってしまうのを防ぐ特性です。
肯定的な未来志向とは、未来への期待感や前向きなビジョンを持つことです。将来を前向きに思い描き、具体的なプランを立てて実践すると、精神的な回復が促されていきます。
レジリエンスに関連する要素として、「資質的要因」と「獲得的要因」という考え方もあります。前者は持って生まれた気質に強く影響を受ける特性であり、楽観性や社交性、行動力、統御力などを示します。
一方で、後者は発達の過程で後天的に身につけやすい特性であり、自己理解や問題解決志向、他者の心情理解などです。組織としてレジリエンスを向上させるうえでは、先天的な資質のみに頼るのではなく、獲得的要因に目を向けたアプローチが重要です。
ここまで、レジリエンスの具体的な内容や要素について見てきました。ここからは、レジリエンスの向上が実際に企業へどのような影響をもたらすのかについて、4つのメリットに分けて解説します。
レジリエンスの向上は、従業員の心身の健康増進につながります。激しい環境の変化にともない、業務の増加や新たなスキルの習得などの負荷が重なれば、心身のバランスを崩すリスクが高くなります。
個人や組織のレジリエンスが高ければ、ストレスへの対応力、回復力が向上するため、健康を維持しやすくなるのです。また、離職率の低下にもつながるため、長期的に見れば組織の力や生産性の向上につながります。
現代のビジネス環境は、IT技術の進歩や顧客ニーズの大幅な変化により、あらゆる企業が変革を求められる状況にあります。そうしたなかでは、失敗への恐れやプレッシャーに負けず、自ら変化を生み出していける変革力が強い組織の条件となります。
組織としてのレジリエンスが高まれば、各メンバーが失敗を恐れずに挑戦できるようになるため、イノベーションが生まれやすい環境が整えられていくでしょう。難易度の高い目標にも前向きに取り組めるようになり、組織全体としての競争力が向上していきます。
レジリエンスを向上させる大きな目的は、環境変化に対する柔軟性を高めることです。VUCA時代にあって、企業は市場や社会情勢の目まぐるしい変化に対応していかなければ、競争力を失ってしまうリスクを抱えています。
たとえば、既存の技術が通用しなくなったとき、組織としてのレジリエンスが不十分であれば、そのダメージを回復できないまま競争力を失っていってしまいます。レジリエンスが高ければ、速やかにダメージを回復して変化に適応し、新たな競争力を身につけることが可能です。
レジリエンスは、外部からの投資評価や顧客からの評価において、一つの指標とされるケースも多い傾向です。レジリエンスの高い企業は、それだけ社会変化やリスクに対応しやすいと判断されるため、優れた評価を得られる機会が増えます。
そのため、自社への投資促進や企業ブランド向上にもつながります。
レジリエンスの高さ・低さは何によって決まるのでしょうか。ここでは、日本において長年レジリエンスの研究に取り組む「レジリエ研究所」が示す「レジリエンスの6つの要素」を紹介します。
レジリエンスの高さを判断する6つの要素
要素 | 具体例 |
---|---|
自分の軸 | 「何が自分にとって大切か」という価値観 |
しなやかな思考 | 変化に対する柔軟性、多様な考え方の受容 |
対応力 | 自身や周囲の状況を理解した上での優先順位付けや問題解決 |
人とのつながり | 上司や同僚といった周囲の人々との関係構築 |
セルフコントロール | 感情的になり過ぎず、冷静に自分自身をコントロールすること |
ライフスタイル | 食事や睡眠、運動のバランスが取れている生活 |
(参考:レジリエ研究所『レジリエンスとは』)
(参考:『【面接質問集あり】注目の「レジリエンス」とは?「ストレス跳ね返し人材」の見抜き方』)
自分の軸とは、「何が自分にとって大切か」という価値観のことです。自分の軸が定まっていれば、想定外のことに直面しても、情報を事実として受け取り、自分軸に基づいた判断ができます。
一方で、自分の軸がないと、世間の言葉や周囲の状況に過剰に影響を受け、強いストレスを感じる原因となってしまいます。
しなやかな思考とは、「変化に対する柔軟性」や「多様な考え方の受容」を意味します。しなやかな思考があれば、自らの考え方を尊重したうえで、自分とは異なる考え方も受容し、柔軟に自身を変化させていくことが可能です。
一方で、思考がしなやかでないと、他者の意見を尊重できなかったり、周囲と対立しやすくなったりと、無用な衝突の原因をつくってしまいます。
対応力とは、自身や周囲の状況を理解したうえでの優先順位付けや問題解決です。対応力があれば、「今、自分にできることは何か」「そのために、何を優先するとよいか」を理解でき、問題解決につなげられます。
一方で、対応力がないと、状況分析や優先順位付けが不十分となり、問題解決のハードルが高くなってしまいます。
人とのつながりとは、上司や同僚といった周囲の人々との関係構築を意味します。一人ではどうしても解決できない問題に直面したとき、特に必要とされるのが人とのつながりです。
周囲と良好な関係性が築かれていれば、困難な状況においても互いに助け合うことができ、スムーズに脱却できます。一方で、人とのつながりを築けていないと、いざというときに助け合いができず、なかなか困難から抜け出せなくなってしまいます。
セルフコントロールとは、感情的になり過ぎず、冷静に自分自身をコントロールすることを意味します。普段は周囲と良好な関係を築けていたとしても、大きな変化・困難に直面すると衝突・対立が生まれるケースも珍しくありません。
そうした状況において求められるのが、セルフコントロールです。セルフコントロールができれば、「衝突の原因は何か」「自分は何に苛立っているのか」などを冷静に俯瞰(ふかん)できます。
一方で、セルフコントロールが不十分だと、感情的な対立や人間関係の悪化につながるでしょう。
ライフスタイルとは、食事や睡眠、運動のバランスが取れている生活のことです。いくら気力があっても、体力が追い付いていないと困難は乗り切れません。
そのため、これまで紹介した5つの要素を持つうえで必要不可欠だとされているのが適切なライフスタイルです。健全なライフスタイルを送ると、心身を健康に維持できます。
一方で、ライフスタイルが乱れていると、体の不調が心の不調につながっていってしまうでしょう。
ここまで紹介したように、レジリエンスの高低は、6つの要素の程度に影響していることがわかりました。このことから考えられる、レジリエンスが高い人、低い人にそれぞれ見られる特徴をご紹介します。
レジリエンスが高い人には、次のような特徴があると考えられます。
●考え方や発想が柔軟
●一喜一憂せず、物事に向き合える
●自分にも人にも優しく、周囲と協力関係を築きやすい
●自分自身のよい面を認識できている
●困難なことに直面しても、すぐには諦めない
反対に、レジリエンスが低い人には次のような特徴があるといえます。
●柔軟な考え方・発想が苦手
●目の前のことに、一喜一憂しがち
●自分にも人にも厳しく、問題を一人で抱え込みがち
●自分自身の悪い面に意識が向きがち
●困難なことに直面した際、諦めが早い
このように、個人におけるレジリエンスは日常的な業務に大きな影響を与えるのはもちろん、組織全体にも波及していきます。自社のメンバーのレジリエンスが強化されると、組織全体にも前向きで柔軟性の高い風土が築かれていくのです。
ここまでレジリエンスの高低の要因や、レジリエンスが高い人、低い人の特徴について解説してきましたが、自分はレジリエンスが高いのか、低いのか、気になった方も多いのではないでしょうか。
レジリエンスの測り方は多種多様で、全世界共通で使われている尺度はありません。ここでは、それぞれの研究者による4つの尺度について紹介します。
尺度の名称 | 尺度を開発した研究者 | 尺度の概要・特徴 |
---|---|---|
レジリエンススケール | Wagnild&Young氏 | 「個人的コンピテンス(Personal Competence)」と「自己と人生の受容(Acceptance of Self and Life)」という2因子 から測定 |
森らのレジリエンス尺度 | 森敏昭氏ほか | 「 I am 因子」「 I can 因子」「 I have 因子」「 I will/do 因子」という4下位因子から測定 |
精神的回復力尺度 | 小塩真司氏ほか | 精神的な落ち込みからの回復を促す心理的特性である精神的回復力を、21項目から測定 |
二次元レジリエンス要因尺度 | 平野真理氏ほか | レジリエンス要因を、資質的要因と獲得的要因とに分けて捉えることができる |
Wagnild&Young氏が考案したレジリエンススケールでは、「個人的コンピテンス(Personal Competence)」と「自己と人生の受容(Acceptance of Self and Life)」という2因子25項目から、レジリエンスを測定。さまざまな年代で使用でき、内的整合性や妥当性が高い尺度として知られています。
(参考:HR Portal『The Resilience Scale™ (RS™)』)
森 敏昭氏らが考案した森らのレジリエンス尺度では、自分自身を受け入れる力である「 I am 因子」、問題解決力である「 I can 因子」、他者との信頼関係構築力である「 I have 因子」、成長力である「 I will/do 因子」の4下位因子を基にレジリエンスを測定。診断項目は、29項目に分かれています。
小塩 真司氏らが考案した精神的回復力尺度では、精神的な落ち込みからの回復を促す心理的特性を意味する「精神的回復力」を測定できます。項目は、全21項目。回答全体を「精神的回復力」とすることも、「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」という3つの下位尺度に焦点を当てて診断することも可能です。
(参考:早稲田大学パーソナリティ心理学研究室『ARS日本語』)
平野 真理氏らが考案した二次元レジリエンス要因尺度は、レジリエンス要因を持って生まれた気質と関連の強い「資質的要因」と後天的に身に付けていきやすい「獲得的要因」とに分けて捉えることができる尺度です。パーソナリティーの気質と性格を分けて捉える尺度である「Temperament Character Inventory 日本語版(TCI)」を用いて、作られました。
(参考:日本パーソナリティ心理学会『尺度使用マニュアル <尺度名>「二次元レジリエンス要因尺度」』)
企業や組織としてレジリエンスを高めるためには、場当たり的な取り組みではなく、計画的な施策を実行していくことが大切です。ここでは、レジリエンスの向上につながる4つの方法をご紹介します。
企業のレジリエンスを高めるといっても、基本は個人のレジリエンス向上にあります。個人レベルで従業員のレジリエンスが高まっていくと、日常的な価値判断において柔軟性が生まれ、組織全体としての力も向上されていくのです。
そのためにはまず、企業としてレジリエンスの重要性や内容を理解し、各従業員へ浸透させていく施策が必要となります。レジリエンスについて学ぶための研修を行ったり、マニュアルを作成したりしながらの環境整備も大切です。
組織内のレジリエンスを高めるには、採用段階からレジリエンスに着目した選考を行うことも大切です。応募者については採用時の面接や適性検査で確認するのが望ましいでしょう。
面接時に応募者のレジリエンスを把握するためには、質問を工夫する必要があります。レジリエンスの要素の一つである「自分の軸」について聞く場合を例に、具体的な質問例を見ていきましょう。
レジリエンスの要素の1つ「自分の軸」を把握する質問例
言い換え前 | 「レジリエンス」を把握しやすくする質問へ言い換えた後 |
---|---|
「あなたの強みは何ですか?」 | 「あなたの持ち味はなんですか?」 |
「あなたの弱みは何ですか?」 | 「あなたの課題や欠点はなんですか?」 |
「強み」という言葉を質問に使うと、英語力や専門的知識といった具体的なスキルしか把握できなくなる可能性があります。
代わりに、「持ち味」という言葉を使うことで、「人より深く、物事を考えられる」「どんな状況であっても、チャレンジ精神を失わない」といった抽象度の高い回答を引き出せ、自分の軸を持っているかどうかを判断しやすくなるのです。
組織全体のレジリエンスを高めるためには、自社のビジョンや方向性を明確に示し、各従業員へ浸透させることも重要です。急激な環境変化に見舞われたとき、真っ先にその影響に気づくのは、現場の従業員であるというケースも決して少なくはありません。
そうしたときに、社内にきちんとビジョンとミッションが行き渡っていなければ、現場のメンバーが自信を持って判断することは難しくなり、変化に気づいても声を上げるまでに時間がかかってしまいます。そうなれば、他社よりも変化への対応に遅れてしまうなど、さまざまなデメリットが生じます。
組織全体にビジョンが共有されていれば、現場のメンバーも自信を持って業務判断ができるようになり、全社が一丸となって困難に向き合えるようになるのです。
困難に立ち向かえる柔軟な組織をつくるためには、失敗を恐れずにチャレンジできる企業文化の構築が大切です。そのためには、職場環境の見直しを図ることも重要となります。
たとえば、人事評価において減点方式を用いている場合、従業員にはどうしても消極的なスタンスを取らせてしまいます。そうなれば、困難に直面したときにもなかなか具体的な手が打てず、ダメージからの回復が難しくなるでしょう。
「抑圧的な態度を控える」「挑戦する姿勢を評価するシステムを構築する」など、チャレンジを肯定する企業文化をつくることがレジリエンスの強化につながるのです。また、ミスが起こったときには、そのデータを蓄積しておき、以降の取り組みに活用できるような仕組みを整えるのも効果的です。
「BCP」とは、Business Continuity Planningの略語であり、日本語では「事業継続計画」を意味します。主に災害などの有事に備えて、企業や組織があらかじめ検討しておく計画や準備のことです。
大規模な自然災害などに見舞われたときには、速やかにダメージを回復し、事業や組織のシステムを復旧させる必要があります。また、サイバー攻撃により既存のシステムが障害を負ったり、完全にストップしたりする事態にも備えておかなければなりません。
そのためには、トラブルを踏まえた制度や仕組みづくりを行ったり、ガイドラインを整備したり、システムを強化したりすることが不可欠です。BCPを適切に行えば、組織としてのレジリエンスをハードの面から向上させられます。
レジリエンスは困難を柔軟に乗り越えていく回復力のことです。変化の激しい現代のビジネス環境にあっては、個人と組織のどちらにおいても、レジリエンスの向上が重要な課題となっています。
個人におけるレジリエンスは、それぞれが生まれ持った資質に左右される部分もありますが、トレーニングによって後天的に強化することも可能です。また、組織としてのレジリエンスも、仕組みやシステムを整えれば強化できます。
レジリエンスの重要性と正しい意味を理解し、強化するための方法を丁寧に検討して、しなやかで力強い組織づくりに取り組みましょう。
(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】
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