全社挙げての女性活躍推進で、女性管理職ゼロから1割超に大幅増。製造業初の「プラチナえるぼし」を獲得!

2022.07.27
株式会社ヨロズ

専務執行役員 春田力(はるた・ちから)

1990年入社。本社営業部、ヨロズアメリカ社営業部、ヨロズオートモーティブノースアメリカ社社長を経て、2008年に本社人事部長。以後ダイバーシティの推進に当たるとともに、現在人事、総務、情報システム、調達、経費購買など広範な部門を管掌する。

会社存亡の危機を自覚し、ダイバーシティ経営を追求
本社、工場それぞれに適した制度を当事者自らが提案
女性管理職の登用で残業が激減。男性育休取得にも好影響
多様なリーダーの在り方を示し、管理職昇格への不安を解消

内閣府が女性管理職比率30%という目標を掲げ、2015年に女性活躍推進法を成立させたものの、企業の組織改革は思うように進まず、女性管理職の比率は主要先進国中、最低水準にとどまっています。そのため、2019年に法改正が行われ、2022年4月から従業員数101人以上の事業主についても、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定と公表、および女性活躍推進に関する情報公開が義務付けられました。

このような状況下、横浜市に本社を置く自動車サスペンション部品のトップメーカー、株式会社ヨロズでは、法制化以前から女性活躍推進に注力。女性管理職1割超を達成するなど大きな成果を上げ、女性活躍を推進する企業の中でも、特に優良な企業に与えられる認定「プラチナえるぼし」を2021年に製造業で初めて取得しています。

また、同社は、全ての部署に外国人を1人以上配置を目指すなど、早期からグローバル化とダイバーシティ推進に取り組み、多大な実績を上げています。同社がなぜ女性をはじめとする多様な人材の活用に力を入れ、またそれをどのようにして成功に導いたのか、ダイバーシティ経営を推進する春田氏に伺いました。

会社存亡の危機を自覚し、ダイバーシティ経営を追求

──製造業は一般的に男性社員の比率が高く、それに伴い管理職も男性中心の企業が多いですが、貴社が女性の活躍推進に取り組んだきっかけは何だったのでしょうか?

春田氏:女性活躍推進についての議論が始まったのは2013年ごろで、当時は「女性活躍推進」という言葉そのものが耳新しかった時期でしたが、この社会課題を自社の課題としても捉えていかなければならないという経営トップからの声が発端でした。

 

女性活躍推進に関しては、経営面から言えば、日本の労働人口の減少が叫ばれる中、今後どのように人材を確保していくのかという問題にも直面していました。ご指摘の通り、製造業は女性活躍の場が少ない場合が多く、特に当社の製品は重量もあるので女性が扱うのも大変です。そういう職場で、女性にいかに快適に、かつ長期にわたって働いてもらえるかを真剣に考えなければ、私たち製造業は存続できないのではないかという危機感が高まっていました。

人材確保という点では、高齢者についても同様です。当社は海外にも広く事業展開しているので、豊富な知見・技術を持ったキャリアの長い社員にも海外で活躍してもらわなければなりません。そこで、熟練技能者などの雇用期間を70歳まで延長しましたが、このように高齢者、女性、外国人を含め、全ての社員が働きやすく、仕事にやりがいを持てる環境づくりに向けたダイバーシティ経営の推進が求められていたわけです。

本社、工場それぞれに適した制度を当事者自らが提案

──女性活躍推進に当たっては、どのような体制・プロセスで臨みましたか?

春田氏:まずは女性社員の皆さんの意見を聞こうということで、オンライン会議システムを使って各拠点のメンバーに参加してもらい、「女性会議」を実施しました。ところが、これがまったく盛り上がらない。皆さん、じっと黙って座っているだけなんです(笑)。

 

事情を探ってみると、皆さん遠慮があって、思っていることを言えなかったようなんです。その遠慮の原因の一つが、本社部門と製造部門(工場)の仕事内容や働く環境の違いです。両部門それぞれに勤務体制も異なりますから、本社の女性が「こうしてほしい」と思っていても、それを全社に適用すると製造の現場が混乱することになる。逆に現場の女性が求めていることを本社でやろうとしても業務上の無理が生じる。お互い、それがわかっているから、何も言えなくなっていたんですね。

もう一つの遠慮は、男性社員に対するものです。たとえば、「女性も管理職になって活躍してほしい」と号令をかけても、男性管理職が部下の先頭に立って残業もこなしている姿を日々見ていますから、自分には同じ働き方はできないし、したくないと思ってしまう…会議の場で管理職にはなりたくないとは言えないので、黙っているしかなかったということがわかりました。

──そうした問題を解消するために、どのような手を打ちましたか?

春田氏:本社と工場の整合性が取れない問題に関しては、無理に統一するのではなく、本社、工場それぞれに取り組みを進めることにしました。具体的には、社長直轄の組織として本社と工場それぞれに「スマートワークコミッティ」を設置し、社長自ら委員長を務め、各々が抱えている課題や要望を洗い出して解決策を検討し、制度に反映させる形にしたのです。

その取り組みの中で、たとえば本社ではフレックスタイムも拡充されました。フレックスタイム導入に当たって、最初はコアタイムを設定していたのですが、経営トップからの意見もあり、スーパーフレックスにすることになりました。それを活用して、産後4カ月で職場に復帰した女性もいます。彼女は午前6時から午後3時までを勤務時間にしたのですが、そのスケジュールの方が授乳のタイミングに合わせられるので働きやすいということでした。

また、有給休暇についても、職場の実情に合わせた取得促進の取り組みを進めました。月末に仕事が集中する部署などは繁忙期に有給を取れないので、月末を外して計画的に休みを取るように調整を図る一方、月末に仕事が集中しないよう業務プロセスの変革にも努めています。

──工場では、どんな施策に取り組んだのでしょうか?

春田氏:時間有給の制度ができましたね。現場では、一定のメンバーがチームを組んで製造に当たっていますので、誰かが1日休んでしまうと仕事が回りづらくなります。そこで、時間単位で細かく休みを取れるようにすることで、子どもが病気になったときに少しの間仕事を抜けて病院に連れて行くとか、保育園に用事があるときに少し外出するとか、いろいろ融通を利かせられるようになりました。

また、工場では、製造の各工程が連携して業務を行っていますので、ある部署だけが有給を取るというのは難しく、休みを取るなら工場を止めて全員で休んでしまう方が効率がいい。そのような事情を考慮した結果、一斉有給取得日を決めて、工場全体で休みを取るという施策が実現しました。さらに、特に外国籍の社員に喜ばれているのですが、長期休暇の前後1日ずつ有給休暇が取れるようにもしました。これは、平日であれば航空券を安く購入できるため、本国に帰る方たちの費用負担を軽減しようという配慮から生まれたものです。

有給取得に関しては、各部署で目標取得率を決めてそれぞれが実行プランを考え、その実績を数字にして可視化し、全員で意識共有・意識向上を図る工夫もしました。そのかいあって、当社の有給取得率は大きく改善しました。

女性管理職の登用で残業が激減。男性育休取得にも好影響

──管理職になることに女性社員が積極的ではないという話がありましたが、どのようにしてそれを乗り越えて女性管理職を増やしていったのでしょうか?

 

春田氏:最初は2人の女性にロールモデルになってもらいました。管理職としてやっていくには、本人が管理職になるということに対して自覚し、強い意志を持って臨まなければ長続きしません。そのため、まず面談を行って管理職の役割や責務を理解してもらうとともに、本人の気持ちや不安に感じていることなどについて話し合った上で、最終的な意思確認をするようにしました。初めは女性管理職がいませんでしたから、男性管理職が面談せざるを得ません。何をどう話し、どんなアドバイスをすればいいか、お互い戸惑いもありました。

特に、最初の2人はどうすればチームをうまく機能させ、成果を上げることができるのかといろいろ悩んだでしょうし、大変な思いもしたはずです。人事部では、女性管理職へのハードルを取り除くために、社内アンケートや聞き取りを行い、その声を面談の場などに活かして不安解消に努めるとともに、管理職を含め女性社員が働きやすい環境づくりを一歩一歩進めていきました。

こうした地道な積み重ねが実って女性管理職は徐々に増加し、現在女性管理職比率が1割超と高く、取締役も9人中2人が女性のため、自動車関連業界においてはある時期には最も高い女性比率の組織になっていました。女性管理職が増えたことで、女性同士で面談や気軽な相談などが行われるケースも多くなったので、相手の心情がよく汲み取りやすくなりましたし、お互いに気兼ねなく話しやすい場ができましたね。

──女性管理職が増えたことで、社内的にどのようなメリットをもたらしているのでしょうか?

春田氏:メリットの一つとして、残業が減ったというのが大きいですね。それまでは残業があることが当たり前の雰囲気でしたが、家事育児への理解がある女性が上司になれば、部下も仕事をテキパキこなして定時で退社しようという姿勢が身に付いてくる。結果的に、残業が減って業務効率も上がるんです。

また、どうしても終業時間までに仕事が片付きそうにないときや、家庭の事情で休みを取らなければならないときは、他の人に手伝ってもらって仕事を回そうという工夫もするようになります。それによって、仕事が属人化せず、職場の連携も高まるという効果も得られます。加えて、女性がワークライフバランスを大切にする姿を見て、男性社員の育休取得率が上がってきました。当社では今、子育てサポート企業に与えられる「くるみんマーク」を取得する準備を進めているところです。

多様なリーダーの在り方を示し、管理職昇格への不安を解消

──女性活躍を推進し「プラチナえるぼし」を取得したことによって、どんな影響がありましたか?

春田氏:取得するまでは、当社が何か新しい取り組みをするとなると、他の自動車メーカーの後追いになるケースが多かったのですが、今回は神奈川県の企業初、かつ製造業でも初めての「プラチナえるぼし」ということで、部品メーカーでも新しい取り組みにチャレンジして成果を出すことができるのだという自信が生まれました。株主の方々からもご好評を頂いていますので、社員のモチベーションも上がっています。

また、採用面にも良い影響が出ていて、「プラチナえるぼし認定」の前の「えるぼし認定」を受けたころから、新卒採用で面接に来た女性から「えるぼしを取得されていることを知って応募しました」という声もよく聞きましたし、中途採用で入社した社員の中にも、えるぼし認定を受けていることがきっかけで当社を選んだという人が少なからずいます。プラチナえるぼし認定については、当社の採用ページで簡単に紹介しているだけですが、それだけでも大きな訴求効果があるのだと実感させられましたね。

──これから女性活躍推進に力を入れようとしている企業の皆さんに、アドバイスをお願いします。

春田氏:当社は、目標数値を掲げて女性管理職の比率向上に取り組みましたが、ロールモデルがいなかったので、最初は大変でした。管理職への登用に際しては、面談などで本人の意向をきちんと聴き取り、管理職の役割などを丁寧に説明して、不安を解消することが重要です。

管理職になったら、従来の男性管理職のように「俺に付いてこい」と部下を引っ張っていかなければならないのではないかと勝手に考え、自分には荷が重いと二の足を踏んでしまう女性もいます。しかし、リーダーシップには、そういう形だけでなく、「サーバントリーダーシップ」というものもあります。これは、部下が働きやすい環境をつくってその能力を引き出し、主体的な行動を促すもので、それによって仕事に対するモチベーションが上がり、組織の生産性を向上させることができます。

当社で実施しているリーダーシップ研修などでも、サーバントリーダーシップを取り上げていますが、研修を受けた女性からは、「リーダーシップにもいろいろなタイプがあることがわかったので、自分も頑張ってキャリアアップを目指したい」といった声を聞くようになりました。

 

また、職場の環境づくりにおいて留意しなければならないのは、「働きやすい環境」は人それぞれに違うということです。ですので、全社一律の制度をつくるだけではなく、各職場やそこで働く社員に適した制度をそれぞれで考え、提案してもらう。そして、それを経営トップが理解し、後押しするような企業風土があれば、社員のモチベーションが高まるとともに、自ら考え、行動しようという自主性も育まれていくと思います。

取材後記

女性活躍推進法の改正により、女性管理職登用の動きはますます加速しています。しかし、その取り組みに着手したものの、「女性は管理職に向かない」といった職場の偏見や慢性的な長時間労働、女性社員自身のモチベーションの低さなどがネックとなって、思うような進捗が見られない企業もあるのではないでしょうか。

これに対し、株式会社ヨロズは女性だけを対象とするのではなく、社員の誰もが働きやすく、やりがいを持てる職場づくりという視点に立ち、経営トップが指揮を執って社内の意識改革を進めました。加えて、全社一律の制度を押し付けるのではなく、それぞれの職場の当事者が自律的に具現化していくことで、モチベーションアップ、生産性向上などさまざまな効用を得ています。

法改正への便宜的な対応に留まらず、多様な人材の活躍推進に本腰を入れることが、競争力の向上につながると感じました。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/森英信、撮影/中澤真央

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