独自の選考プロセス「バーチャルインターン」で、ITエンジニアを50名採用することに成功

2022.09.30
株式会社スリー・イー

ビジネスインキュベーション事業部 事業部長 秋山啓人(あきやま・けいと)

2011年、株式会社スリー・イーに新卒入社。エンジニアや営業、プロジェクトマネージャー等を経験し、現在は新規事業立ち上げを専門とした部署の責任者を務める。

株式会社スリー・イー

ビジネスインキュベーション事業部 採用担当 西村なぎさ(にしむら・なぎさ)

20代の転職支援に特化した一気通貫型の人材紹介会社で営業とキャリアアドバイザーを約6年経験し、株式会社スリー・イーに入社。新規事業部であるビジネスインキュベーション事業部の採用担当を務める。

6日間の無料研修プログラムを受講したら、“自動で合格する”という画期的なシステム
入社承諾率90%前後を維持。バーチャルインターン成功の3つのポイント
素直で前向きな姿勢を大切にする会社のスタンスが、未経験者の活躍をバックアップ

現在、IT・通信関連のエンジニアの需要は急速に高まっています。求人情報・転職サイトdodaが提供する転職求人倍率レポート(2022年9月15日発表)の情報によれば、求人倍率は約10倍となっており、中途採用においてある程度のスキルを持つITエンジニアを採用するのは相当難しくなっています。

そのような状況の中、経験の浅い人や未経験者に裾野を広げて採用し、研修・育成する企業も増えてきています。未経験者まで対象を広げても採用難易度は非常に高く、多くの人事・採用担当者が「どうしたら転職希望者に興味を持ってもらえるのか」「競合他社との差別化を図るにはどのようにすればいいのか」「活躍してくれそうな人材をどう見極めればいいのか」など、さまざまな問題に頭を悩ませています。

エンジニア採用戦国時代とも言われる現代において、株式会社スリー・イーは2021年からの1年間で50名の新規採用(ITエンジニア・未経験者)に成功し、その多くのメンバーが現場の最前線で活躍しています。

今回、その採用成功において欠かすことができない独自の選考プロセス「バーチャルインターン」について、なぜその選考システムを導入しようと考えたのか、その内容は具体的にどんなものか、成功している要因は何かに、採用部門の責任者である秋山氏と、担当者である西村氏にお話を伺いました。

6日間の無料研修プログラムを受講したら、“自動で合格する”という画期的なシステム

──貴社の事業内容と採用の課題について教えてください。

秋山氏:当社は、ネットワーク・セキュリティ・サーバ関連のシステムインテグレータ事業を手掛けています。新たに立ち上げた第三者検証事業では、組み込みの製品やウェブ系のアプリ、ソフトウェアに関する検証作業を請け負っていますが、開発した企業が自分たちで行っていた作業を、常駐している当社のエンジニアが支援するという形で行っています。現在、この第三者検証事業において活躍するエンジニアの採用に力を入れています。

 

──貴社では独自の選考プロセスを導入して、2021年からの1年間で50名の新規採用(ITエンジニア・未経験者)を達成したということですが、これはどのような内容なのでしょうか?

秋山氏:簡単に言うと、1日2時間のオンライン無料研修プログラム(バーチャルインターン)を6日間受講したら、選考合格とする仕組みです。ITエンジニア未経験者が対象で、その内容は主にガイダンスやビジネスマナー研修、ITリテラシー研修、NW(ネットワーク)基礎力Webテストなどとなっており、毎回出席して、全てのプログラムを受講することが選考合格の条件です。

講師がプログラムに則って講義をすることが中心となりますが、受講者(応募者)の疑問や質問に答える形で進めているので、講師と受講者の間で双方向のコミュニケーションが活発に行われます。受講者にとっては、仕事の疑似体験ができてITエンジニアとして働くイメージがつかめますし、当社にとっては、受講者の仕事に対する姿勢や取り組みを通じて強みや人柄を知ることができます。また、会社の雰囲気を知ってもらうことで入社後のギャップをできる限り減らしたいという意図もあります。

──いまお話を聞いただけでも、非常にユニークなシステムだと感じますが、なぜこのような試みをしようと考えたのでしょうか?

秋山氏:バーチャルインターンを始める前の状況についてお話しすると、ITエンジニアの未経験者採用ということで、ある人材紹介サービス会社を介して採用活動をしたところ、200人の応募があったにもかかわらず、一人も採用することができないという経験がありました。また、他の採用手法などで入社した社員の早期退職が少なからずあり、ビジネスマナーや業務の進め方など、基本的な部分でつまずいてしまうケースが多くあったんです。

そのような状況を受けて、一定の母集団を形成して良い人材を確保するためには、他社との差別化ができるような特長のある方法が必要であると判断しました。これは、当社の募集条件が、応募者に対するアピール度や待遇面において若干のハンディがあると考えていたことも影響しています。

また、それまでの経験から「結局、人は一緒に働いてみないとその人となりはわからない」ということを強く感じていて、その点をクリアできる方法はないかと考えました。長時間の面接をしたり、3次、4次と面接をたくさん行ったりしたとしても、その人のことを把握するには限界があります。それに対して、たとえ30分でも時間と場所を共有して一緒に仕事体験をすることができれば、面接ではわからなかった「その人に関する多くのこと」を理解することが可能となります。

入社承諾率90%前後を維持。バーチャルインターン成功の3つのポイント

──バーチャルインターンの導入後、90%前後という素晴らしい入社承諾率を維持していますが、どのような点が成果の要因だと考えていますか?

 

秋山氏:主に3点あります。1つ目は、応募者がITエンジニアとして働くことへの理解が深まったことです。以前は入社して1~2日で辞めてしまう人が少なからずいましたが、バーチャルインターン導入後はそのようなケースがほとんどなくなりました。入社して1日で辞めてしまうような方は、バーチャルインターンの途中で離脱したり、インターンの時点で当社やITエンジニアの仕事への興味が薄れて6日目までたどり着けなかったりして、最終合格とはならないわけです。これは、有効なスクリーニングができているということです。

2つ目は、カルチャーフィットができているということです。バーチャルインターンの導入を検討しているとき、当社の社風に合わない人、求める人物像に合わない人まで入社してしまうのではないかという不安がありました。それは6日間の研修プログラムを受講しさえすれば自動的に合格となるからですが、バーチャルインターンによって疑似的に仕事体験をすることで、応募者自身が当社に合うかどうかが感覚的にわかるため、結果としてミスマッチがなくなりました。つまり、カルチャーフィットの判断という意味でも有効に機能しています。

そして3つ目。バーチャルインターンの最大の功績は、人柄の良い人材を確保できているということです。バーチャルインターンでは講師がレクチャーするだけでなく、受講者からのフィードバックを受けて双方向で活発なコミュニケーションを交わすことが特長ですが、そのやりとりの密度の濃さが受講者に「この環境にいると何となく安心だ」という感覚を与えており、入社承諾率の高さにつながっているのではないかと思います。

ちなみに、バーチャルインターンの講師は当社の社員が務めますが、応募者が講師たちに魅力を感じ「こんな人が会社にいるなら一緒に仕事をしてみたい」と考えて入社してくる人が多数存在します。この点は、採用に関するとても大きな強み(武器)になっていますね。

当初、バーチャルインターンは選考期間が長くなるため、競合他社に比べて選考を辞退する人の数が増えるのではないかという懸念もあったのですが、実際には辞退率は気にならないほど低く、結果的に入社承諾率が高くなっています。

──バーチャルインターンを実施するに当たって、特に意識している点はありますか? 

秋山氏:当社では「正直に伝える」「取り繕わない」ということを応募者に対しても当社の社員に対しても徹底しています。

もちろん当社も決して良いところばかりではありませんが、それも含めてありのままを見せるほうが、誠実さが伝わって良い結果が得られるように思います。実際に、そういう部分を評価して入社してくれる人もたくさんいます。仮に良いところばかりを見せることで採用数が増えたとしても、入社後すぐにわかるはずですし、会社を去ってしまう人が出てしまうのはお互いにとって決して良いことではないため、正直な姿を伝えることを心がけています。

素直で前向きな姿勢を大切にする会社のスタンスが、未経験者の活躍をバックアップ

──ここまで、主にバーチャルインターンについてご説明いただきましたが、採用までの全体の流れと、それをスムーズに運用するための工夫などについてお聞かせください。

西村氏:当社の選考プロセスは、「応募」から「会社説明会」、「バーチャルインターン」という流れになっています。

課題は、転職希望者に応募していただいてから会社説明会に参加する間で辞退者が出てしまうこと。そして、会社説明会からバーチャルインターンに参加いただくまでの期間にも辞退してしまう人がおり、それをどう防ぐかということでした。

前者については、応募していただいた人に電話でフォローしたり、リマインドメールで日程を確認したりするなど、人材サービス会社の担当者からのフィードバックで、基本的な取り組みの中でおろそかになっていた点を強化し、改善を進めていきました。

後者については、応募者のうち、連絡が取れる人とそうでない人を整理するほか、バーチャルインターンを複数同時に行う場合には、研修ごとに集まっている人数や適正な定員の把握、誰がどの講座に参加していただくかなどを一つひとつ決めていきました。

──貴社の未経験者採用率は98%ということですが、未経験エンジニアが活躍するための秘訣はありますか?

西村氏:未経験で入社した多くのエンジニアが、現場の最前線で活躍しています。私たちが一番心配するのはスキル不足などでお客さまからの期待に応えられないことですが、おかげさまで、エンジニアに対して良い評価をいただいています。これはバーチャルインターンのシステムが確かなものである証左だと考えています。

 

私たちが未経験者に求めるものは、スキルや能力の高さではありません。実際に現場では、「入社当初の能力はそれほど重要ではない」とうたっています。それよりも、何でも素直に吸収して、前向きに取り組もうとする姿勢が大切だと考えており、当社ではそれを「かわいげ」という言葉で表現しています。

わからないことがあった時に謙虚に学べるかどうか、失敗してしまった時でも周囲にアドバイスを求めることができるか、理解できるまで(時には適度にしつこく)質問できるかなど、当社の社員は「かわいげ」が大切だということを共通認識として理解しています。

このような共通認識があるからこそ、未経験者であってもプレッシャーを過度に感じずに働けているのだと感じますし、結果的にそういう人材が一番早く成長するということを経験的にもわかっています。今後もこの方針を継続して、年間50名の新規採用を目標に未経験者の採用に力を入れていきたいと思います。

取材後記

ITエンジニアの獲得競争は非常に激しく、たとえ未経験者であっても採用するのが難しいという状況は今後も続きそうです。

スリー・イーが実施しているバーチャルインターンは画期的で、そのベースにあるのは“人間的”とも言える発想です。それは、「結局、人は一緒に働いてみないとその“人となり”はわからない」という考え方です。同社に入社をする理由にバーチャルインターンを担当する社員の魅力を挙げる方が多い点も非常に“人間的”であると感じました。

入社承諾率90%前後を実現している同社独自の選考プロセスは、採用を成功させるための新たなヒントが得られる事例として学ぶことが多いのではないでしょうか。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/森英信(アンジー)、撮影/中澤真央

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