【社労士監修・サンプル付】就業規則の変更&新規制定時、押さえておきたい基礎知識

社会保険労務士法人クラシコ

代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

就業規則とは何か?
就業規則の必要性
就業規則は作成しないと法律違反になる?
就業規則の必要記載事項【サンプル付】
就業規則を新たに作成したときの届け出フロー【サンプル付】
就業規則の周知方法
就業規則の変更フロー
就業規則に違反した場合の対応方法

職場のルールについて定めた文書である「就業規則」。賃金や労働時間、休日や年次有給休暇などの労働条件、退職時の手続きなど、就業する上で必要な事項が記載されています。常時10名以上の従業員を雇用する企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が義務付けられています。そして、単に作成・届け出をするだけではなく、従業員へ周知されてこそ効力を持ちます。今回は、就業規則を新たに作成する際の記載の仕方やフロー、届け出後の変更方法、就業規則に違反した従業員への対応についてわかりやすくご説明します。また、作成時に活用できる就業規則のサンプルや記載例も掲載しています。

就業規則とは何か?

就業規則とは、企業と従業員との約束事を明文化した、職場におけるルールブックです。英語では「Rules of Employment」と表現します。就業規則には、賃金や労働時間、休日などの「労働条件」のほか、業務に対する姿勢や職場・備品の使用など、従業員が守るべき行動規範を定めた「服務」などを明記して社内に周知します。記載内容に関する基本的なルールはあるものの、内容は企業によってさまざまです。

就業規則の必要性

就業規則があることで、企業や従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。

社内ルールを明文化することにより、人や時期による判断のばらつきがなくなる

仮に就業規則がない場合、社内で何らかの判断をする際に、人や時期によってばらつきが生じやすくなります。人により異なる対応をしていると、従業員同士で衝突が起きたり、統率が取れなくなったりするなどの問題も発生します。社内ルールを明文化しいつでも自由に確認できれば、従業員が安心して働ける職場環境の整備につながります。

企業と従業員間でのトラブルを防ぐことができる

就業規則がないと、企業と従業員の間で認識の違いが生まれ、トラブルに発展する恐れもあります。たとえば「解雇を予告または通知した社員から不当だと訴えられる」などです。しかし、解雇に関する規定を明記しておけば、従業員の行動なり態度が、解雇に該当するかどうかの判断基準となります。また、解雇に至っては規定そのものがないと行うことができない、または紛争の原因になる可能性もあります。就業規則を作成することで、従業員とのトラブルを未然に防ぐと同時に、トラブルが発生した際にも適切に対応することができます。

就業規則は作成しないと法律違反になる?

就業規則については労働基準法で定められており、作成しなければ法律違反になるケースがあります。どのような場合に作成が必要なのかを解説します。

常時使用する労働者が10名以上の場合、労働基準監督署への届け出が義務付けられている

労働基準法第89条では、「常時10名以上の労働者を使用する使用者」に対して、就業規則の作成と届け出を義務付けています。「常時10名以上の労働者」がいるかどうかについては判断が難しいところですが、下記のような条件で労働者をカウントします。

●常時使用する労働者数のカウント方法

事業所・事業場ごとにカウントする
(たとえば従業員が5名の小規模な事業所を複数持っている企業は作成義務なし)
※常時労働者には、非正規雇用のアルバイトやパート、契約社員も含む
※産休中や育休中であっても、籍がある限りは含む

つまり、繁忙期だけ一時的・短期間の契約で雇用している従業員を除き、事業所に従業員が10名以上いる場合には作成が必要となるのです。当然、10名以上在籍していれば、10名未満の人数でローテーション勤務を組んでいる場合にも、就業規則を作成する義務が発生します。就業規則の作成義務があるにもかかわらず作成していない場合は労働基準法違反となり、30万円以下の罰金刑の対象となります。

10名未満の場合は、就業規則がなくても法律違反にはならない

労働者が常時10名未満であれば、就業規則がなくても違法ではありません。しかし、就業規則は企業にとってのルールブック。トラブルを未然に防ぐために、義務ではなくとも作成しておきたいところです。

就業規則の必要記載事項【サンプル付】

就業規則にどのようなことを規定すべきかは、法律で定められています。

新たに就業規則を作成するときの基本ルール

就業規則に記載する事項は、大きく3つに分けられます。1つ目は必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」、2つ目は当該事業場で定める場合に記載しなければならない「相対的必要記載事項」、3つ目は使用者が任意に記載できる「任意記載事項」です。なお、本来記載すべき必要記載事項の一部を欠く就業規則を届け出たとしても、労働基準法第89条違反の状態はそのまま残りますので注意が必要です。

絶対的必要記載事項 相対的必要記載事項
【労働時間に関する事項】
①始業および就業の時刻
②休憩時間、休日、休暇
③就業時転換
【賃金に関する事項】
④賃金
⑤昇給【退職に関する事項】
⑥退職(解雇の事由を含む)
①退職手当
②賞与・最低賃金額
③食費、作業用品などの負担
④安全衛生
⑤職業訓練
⑥災害補償・業務外の傷病扶助
⑦表彰・制裁
⑧その他の事項

(参考: 厚生労働省『就業規則を作成しましょう』)

ここからは、「絶対的必要記載事項」の詳細と記載例についてご紹介します。

絶対的必要記載事項①: 始業および就業の時刻

企業は、法律で定められた「法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)」の範囲内で、「所定労働時間」を定めることができます。また、始業および終業の時刻を定める必要があるため、「始業9時~終業18時」など、明確な時間を記載しましょう。時間外労働が発生する企業をはじめ、変形労働時間制やフレックスタイム制を導入している企業では、それらの規定に関しても明記します。

●所定労働時間 記載例(1日の所定労働時間を8時間とする場合)

第〇条(所定労働時間)
1. 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とし、始業・終業時間は次のとおりとする。
始業: 09:00
終業: 18:00
2. 始業時刻とは、所定の就業場所で業務を開始する時刻を言い、終業時刻とは業務の終了の時刻を言う。
3. ただし、業務の都合やその他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、または繰り下げることがある。この場合、前日までに労働者に通知する。

(参考:『【弁護士監修】短時間勤務制度を育児や介護、通院等で正しく運用するための基礎知識』)
(参考: 『【かんたん図解】変形労働時間制とは?弁護士監修で正しい労働時間・休日の計算方法と導入フローを解説』)
(参考: 『フレックスタイム制を簡単解説!調査に基づく84社の実態も紹介』)

絶対的必要記載事項②: 休憩時間、休日、休暇

労働基準法では、6時間を超える勤務の場合は少なくとも45分、8時間を超える勤務の場合は少なくとも60分与えなければならないと定められています。「12時~13時(60分間)」など具体的な時間を明記するようにしましょう。なお、休憩時間は労働時間の途中で取得させることが正しく、業務開始前や終了後に取得させることは違法です。

●休憩時間 記載例

第〇条(休憩時間)
1. 休憩時間は、原則として12時から13時とする。
2. 休憩時間は、自由に利用することができる。ただし、外出する場合は所属長に届け出て許可を受けなければならない。
3. 1項の時刻については、業務の状況または季節により、事前に予告した当該勤務日の所定労働時間の範囲内で、就業時間および休憩時間を繰り上げまたは繰り下げ、場合によっては変更することがある。

休日には、労働基準法で定められた「法定休日」と、企業が就業規則や個別の雇用契約で定める「所定休日」があります。法定休日は、労働基準法第35条で最低でも週1日は設定することが義務付けられています。法定休日が確保できていれば、所定休日は企業が任意で決めることができます。

●休日 記載例

第〇条(休日)
1.  休日は次のとおりとする。ただし、業務の都合上、他の日と振り替えることがある。
①日曜日
②土曜日
③国民の祝日
④年末年始(原則として12月29日から翌年1月3日まで)
⑤その他、会社が指定した日
2. 前項の休日のうち、法定休日を上回る休日を所定休日とする。
3. 変形休日制が適用される場合は、4週間を通じて4日以上の休日を与えるものとし、この起算日は、毎年4月第1土曜日とする。

就業規則における休暇とは、「労働義務がある日に、本人の申し出により企業が労働義務を免除すること」を意味します。休暇には年次有給休暇や育児休業、介護休業などの「法定休暇」と、自社のニーズに合わせて任意で設定する「特別休暇」があります。ボランティア休暇や病気休暇など、独自の休暇を設定している企業が増えています。

●年次有給休暇 記載例

第〇条(年次有給休暇)
1. 入社日より6カ月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した社員に対して、6カ月を超えた日(これを応答日とする)に10日の年次有給休暇を与える。
2. 前項以降の年次有給休暇の付与日数は次のとおりとする。ただし、応答日前日までの過去1年における所定労働日の出勤率が8割以上である者に限る。
〈勤続期間(継続勤務)〉      〈付与日数〉
・入社日より勤続1年6カ月後の応答日  11日
・入社日より勤続2年6カ月後の応答日  12日
・入社日より勤続3年6カ月後の応答日  14日
・入社日より勤続4年6カ月後の応答日  16日
・入社日より勤続5年6カ月後の応答日  18日
・入社日より勤続6年6カ月後の応答日  20日
・以後毎年の応答日          20日
3. 年次有給休暇は、特別の理由がない限り、少なくとも2日前までに所定の手続きにより届け出なければならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、指定した日を変更することがある。
4. 第1項、第2項の出勤率の算定に当たっては、年次有給休暇、産前産後の休業期間、育児休業期間、介護休業期間および業務上の傷病による休業の期間は出勤したものとして取り扱う。
5. 社員の過半数を代表する者との書面協定により、各社員の有する年次有給休暇のうち5日を超える日数について、あらかじめ時季を指定して与えることがある。
6. 労使協定を締結した場合は、次の各号に定める要領で、時間単位での年次有給休暇(以下、時間年休という)を付与することができる。
①時間年休は、1時間単位で取得することができる。
②時間年休は、1年間に付与された年次有給休暇のうち5日間以内とする。
③時間年休を計算する場合の1日の時間数は8時間とする。
④前年度から繰り越しがある場合であっても、当該繰り越し分を含めて5日以内となるように設定する。
⑤時間年休の取得をする場合は、少なくとも2日前までに所定の手続きにより届け出なければならない。ただし、業務の都合によりやむを得ない場合は、指定した時間もしくは日を変更することがある。
7.  年次有給休暇の有効期間は、付与日から2年間とする。
8. 年次有給休暇に対しては、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。

(参考:『【弁護士監修】有給休暇は2019年4月に取得義務化へ~買い取りルールや計算方法~』)
(参考: 『特別休暇の定め方―どんな条件で何日取得可能?就業規則は?|申請書フォーマット付』)

絶対的必要記載事項③: 就業時転換

工場勤務や医療施設など途切れることなく人が働いている業態では、労働者を2組以上のグループに分類し、交替で働かせる「就業時転換」が必要となります。このような交替制を導入する企業は、就業規則に交替制の詳細を記載する必要があります。

●就業時転換 記載例

第〇条(就業時転換)
1.会社は、第〇条(労働時間)の規定にかかわらず、○○部門においては次のとおり交替制勤務させるものとする。
2.交替制勤務を命じた場合の始業、終業の時刻および休憩時間は次のとおりとする。
(早番) 始業 6時 終業  15時 休憩  正午から1時間
(遅番) 始業14時 終業  23時 休憩  18時から1時間
3.交替制勤務の勤務割については、毎月1日を起算日とし、その前月末日までに確定させるものとする。

絶対的必要記載事項④: 賃金

賃金に関して必ず記載しなければならないのは、「賃金額の決定」「賃金の計算方法」「支払方法」「賃金の締切日や支払日」です。賞与などの臨時に支払われる賃金は、絶対的必要記載事項ではありませんので、除外されます。賃金額には、基本給だけでなく、皆勤手当や技術手当などの各種手当や時間外労働・休日労働などに関わる割増賃金率などの詳細も含まれるため、併せて記載します。賃金に関する規定は記載内容が多いため、別紙で「賃金規程」を作成する場合もあります。

●賃金規程に関する項目

項目 内容
賃金の構成 基本給・手当など項目の定義を明確に規定
賃金の支払い 計算期間や、支払日、支払方法、臨時支払などを具体的に規定
賃金の計算基準 出勤率の計算、中途入社、退職者、復職者、休職者の賃金計算、端数処理などを規定
基本給 給与額の設定について規定
手当 営業手当、職務手当、時間外手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、年次有給休暇中に支払う賃金、役付手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、精皆勤手当、別居手当などを規定
昇給 昇給の時期や評価項目に関する規定
賞与 支給日、支給基準、評価期間に関する規定

●賃金の支払い方法 記載例

第〇条(賃金の支払いと控除)
1. 賃金は、労働者に対し、通貨で直接その全額を支払う。
2. 第1項について、労働者が同意した場合は、労働者本人の指定する金融機関の預貯金口座または証券総合口座への振込により賃金を支払う。
3. 次に掲げるものは、賃金から控除する。
①源泉所得税
②住民税
③健康保険、厚生年金保険および雇用保険の保険料の被保険者負担分
④労働者代表との書面による協定により、賃金から控除することとした社宅入居料、財形貯蓄の積立金および組合費

●締め切り日、支払日 記載例

第〇条(賃金の計算期間および支払日)
1. 賃金は、毎月〇日に締め切って計算し、翌月〇日に支払う。ただし、支払日が休日に当たる場合は、その前日に繰り上げて支払う。
2. 第1項の計算期間の中途で採用された労働者または退職した労働者については、月額の賃金は当該計算期間の所定労働日数を基準に日割計算して支払う。

絶対的必要記載事項⑤: 昇給

昇給の時期は、「毎年4月1日に賃金改定を行う」などと具体的な日付で明記するとわかりやすいでしょう。企業の業績などの状況により改定をしないケースがある場合や、昇給の時期が不定期の場合などは、その旨を記載しなければなりません。

●昇給 記載例

第〇条(昇給)
1. 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年〇月〇日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。
2. 顕著な業績が認められた労働者については、第1項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。
3. 昇給額は、労働者の勤務成績などを考慮して各人に応じて決定する。

絶対的必要記載事項⑥: 退職・解雇

従業員の退職には、「雇用期間の満了」「自己都合退職」「休職期間満了」「死亡」など、さまざまなケースがあります。退職のケースや退職の申し出の時期、支給品の返納義務などについて、具体的な記載が必要です。定年退職制度がある場合は、年齢や退職の時期、継続雇用制度を導入している場合はその詳細も明記しましょう。また解雇の項目では、解雇事由が必要です。解雇予告についても記載される例が多く見受けられます。

●退職 記載例

第〇条(退職)
1. 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。
①退職を願い出て会社が承認したとき、または退職願を提出して◯日を経過したとき。
②期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき。
③第◯条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき。
④死亡したとき。
2. 労働者が退職し、または解雇された場合、その請求に基づき、使用期間、業務の種類、地位、賃金または退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付する。

解雇に関しては、労働契約法第16条で、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする」と規定されています。そのため、従業員が納得できるような解雇事由を明記する必要があります。

●解雇 記載例(モデル就業規則を参照)

※解雇に関しては、企業規模により有効性の判断にも相違があるため、規定例などを参考に各社で個別に吟味が必要です。

第〇条(解雇)
1. 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
①勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
②勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できないなど就業に適さないとき。
③業務上の負傷または疾病による療養の開始後、3年を経過しても当該負傷または疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき、または受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む)。
④精神または身体の障害により業務に耐えられないとき。
⑤試用期間における作業能率または勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
⑥第◯条第◯項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
⑦事業の運営上または天災事変、その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小または部門の閉鎖などを行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
⑧その他、前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。
2. 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告する。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。
3. 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第◯条第◯条第◯項第◯号に定める懲戒解雇にする場合、または次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。
①日々雇い入れられる労働者(ただし、1カ月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く)。
②2カ月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く)。
③試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く)。
4. 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求があった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

相対的必要記載事項の記載内容

相対的必要記載事項は、絶対的必要記載事項と違って記載がなくても「不備」とはなりませんが、当該事業場で定める場合に記載する必要があります。ここでは、項目の種類と記載内容をご紹介します。

項目 記載内容
退職手当 「退職金の支払額」「計算基準」「支給の基準」について明記する
賞与 賞与など臨時的に支払われる賃金制度がある場合は詳細を明記する
最低賃金額 毎年更新される各都道府県の最低賃金額を上回る内容であるか、注意が必要
食費・作業用品などの負担 ・業務内容に応じて企業から支給するものに対する一部徴収について記載する
・労働者に食事や作業着、制服などを支給する場合の個人負担分の割合などを明記する
安全衛生 ・労働安全衛生法に関わる安全衛生
・火災などの災害が発生した際の対応や指揮命令系統などについて明記する
職業訓練 新入社員研修や管理職研修などの研修制度を設けている場合、期間や内容などの詳細を記載する
災害補償・
業務外の傷病扶助
・業務中や通勤途中に発生した労働災害や通勤災害に対する補償
・業務外の事故や病気にかかった場合の生活保障制度である傷病手当金や補償制度
表彰・制裁 ・表彰制度などがある場合は「表彰の審査対象となる行動」「表彰の方法」を記載する
・制裁制度については「制裁の種類」「程度に応じた処分内容」「解雇やその際に発生する損害賠償」について明記する
その他の事項 ・休職
・配置転換
・出向
・出張旅費
など前述の項目以外の内容で、社員に対して守ってほしいルールがある場合に記載する

雇用形態ごとに規則が異なる場合はつくり分けることも

契約社員やパート・アルバイト、嘱託社員など、雇用形態が複数あり、それぞれの条件が異なる場合、雇用形態ごとに就業規則を作成する企業もあるようです。従業員が自身の雇用形態の就業規則を確認しやすくなり、ルールも周知しやすくなります。一方で、雇用形態によって不利なルールが生じないように注意が必要です。

就業規則を新たに作成したときの届け出フロー【サンプル付】

就業規則を作成したら、労働基準監督署に届け出を行います。届け出の流れや、必要となる添付書類についてご紹介します。

就業規則を新たに作成したときの届け出フロー

ステップ①: 届出に添付する労働者の過半数代表者からの意見書をもらう

就業規則を労働基準監督署へ届け出る場合、就業規則と合わせて「意見書」の提出が必要となります。意見書とは、労働者代表から意見を聴取した証明となる書類で、就業規則を作成する際は、労働者の過半数で組織する労働組合、該当する組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが定められています。様式に決まりはありませんが、書面には労働者の代表者に就業規則に対する意見を書いてもらい、署名・捺印してもらいます。特に意見がない場合でも、「特に意見はありません」などと記入した上で添付します。

(参考:東京労働局 労働基準法関係 様式集

ステップ②: 就業規則届を作成

届け出る際の添付書類として、就業規則の表紙となる「就業規則届」の作成も必要です。意見書と同様に決まった様式はなく、「企業の名称」「企業の所在地」「企業の代表者の職氏名」などが記載されていれば書式は自由とされています。就業規則の表紙となる就業規則届を作成後、代表者印を押印します。

(参考:東京労働局 労働基準法関係 様式集

ステップ③: 就業規則、意見書、就業規則届を管轄の労働基準監督署へ届け出る

「意見書」と「就業規則届」を添付した就業規則を2部用意して、管轄の労働基準監督署へ提出します。1部は労働基準監督署に提出し、もう1部は労働基準監督署で受付印を押されたものが返却されるため、企業で保管します。

就業規則の周知方法

労働基準法第106条では、「就業規則は各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければならない」と定められています。周知には以下のような方法があります。

●就業規則の周知方法

<法律上で定められているもの>
①常時各作業場の見やすい場所へ掲示する、または備え付ける。
②書面で労働者に交付する。
③PCなどの機器にデジタルデータとして記録し、各作業場で労働者がいつでも内容を確認できる機器を設置する。

<より浸透させるための取り組み>
①従業員と個別に面談を行って趣旨を説明し、内容を確認後に書面でサインをもらう。
②集合研修の機会を設けて、説明を行う。
③経営者が幹部やリーダー層へ説明し、一般社員へ説明する。

いずれの方法でも「周知」されていることが重要であり、それぞれの企業に合った方法を選択できます。掲示するだけでは十分に周知できない可能性があるため、「個別面談や集合研修の場で説明する」などの働き掛けによって、従業員に理解してもらうことが重要です。一方で、就業規則は企業機密でもあるので、やみくもに公開するのではなく、「就業規則を印刷しない」「社外への持ち出し禁止」などのルールを設けることも検討しましょう。

就業規則の変更フロー

一度作成した就業規則を、変更しなければならないケースがあります。
「労働関連の法令が改正された場合」や「最低賃金が改定された場合」、また「経営状況の変化で現行の規定を変更しなければならない場合」などです。では、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。就業規則を変更するまでの流れをご紹介します。
就業規則の変更フロー

ステップ①: 就業規則の変更箇所を経営陣で承認

就業規則の変更に当たっては、まず総務部などの担当部署で変更案の草案をまとめます。正社員のほか、パートやアルバイトといった非正規労働者がいる場合には、適用される従業員の範囲を決めることも必要です。その後、法律に抵触する部分がないか、法務担当者などによる確認を行います。問題がなければ、取締役会で承認を受けるなど、経営陣の合意を得ます。

ステップ②: 届出に添付する労働者の過半数代表者からの意見書をもらう

就業規則を変更する際にも、「意見書」の添付が義務付けられていますが、手続きは新規作成の場合と同様です。ただし、就業規則を不利益に変更する場合は、労働者の同意を取り付けるなど、別途対応が必要です。労働者の過半数の代表者に特に意見がない場合にも、意見書には「特に意見はありません」と記載します。労働組合に加入している場合には労働組合の名称、それ以外の場合には、代表者の選出方法についても記入が必要です。

(参考:東京労働局 労働基準法関係 様式集

ステップ③: 就業規則変更届を作成

就業規則を変更した場合は、届け出る際の就業規則の表紙となる書類「就業規則変更届」を作成し、添付します。決まった様式はなく、「企業の名称」「企業の所在地」「企業代表者の職氏名」などが記載されていれば書式は自由とされています。

(参考:東京労働局 労働基準法関係 様式集

ステップ④: 就業規則、意見書、就業規則変更届を管轄の労働基準監督署へ届け出る

変更を届け出る場合は、変更した部分の就業規則を添付して新旧対照表などにすれば、全文を添付しなくてもかまわないというルールになっています。育児休業規程や退職金規程など、就業規則とは別の規程がある場合は、就業規則と併せて届け出ます。労働基準監督署へ届け出る部数については、「変更した就業規則」「変更した箇所が確認できる書類」「意見書」「就業規則変更届」をそろえたものを2部用意し、労働基準監督署へ提出します。1部は労働基準監督署に提出し、もう1部は労働基準監督署で受付印を押されたものが返却されるため、会社で保管します。

ステップ⑤: 従業員へ変更の周知を図る

就業規則を変更しただけでは意味がありません。内容を変更した場合においても、その都度、変更後の内容を従業員に周知するようにしましょう。

就業規則に違反した場合の対応方法

就業規則に違反する従業員がいた場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。違反した場合の対応についても、事前に就業規則に定めておくことで、適切に対応することができます。ここでは、就業規則の記載方法と、違反が起きた場合の対応方法についてご紹介します。

就業規則に懲戒に関する内容を明記しておく

違反した場合の処分について、就業規則の「懲戒」という項目で定めることができます。懲戒には一般的に下記の種類があります。

●懲戒の種類と内容

懲戒の種類 内容
訓告 文書によって厳重注意をし、将来を戒める
けん責 始末書を提出させ、将来を戒める
減給 1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が1賃金支払期の賃金総額の10分の1以内で減給する
出勤停止 出勤停止を命じ、この期間の賃金を支払わない
降格 資格等級の引き下げや役職の引き下げ
諭旨退職 合意退職に応じるよう勧告する
懲戒解雇 解雇予告期間なしに即時解雇する

ただし、労働契約法第15条で「懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、当該懲戒は無効とする」と定められており、使用者側にとって有利になる懲戒事由だけを盛り込めるわけではありません。また「懲戒」は、最終段階である「解雇」を踏まえて事由を定めておくことが大切です。

●懲戒の種類と懲戒事由の適用 記載例

第〇条(懲戒の種類と懲戒事由の適用)
1. 懲戒事由は以下のとおりとし、情状に応じて、訓告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、懲戒解雇に処する。
①無断もしくは正当な理由なく欠勤、遅刻、早退したとき。
②出退勤時刻にかかる情報の不正、または不正を依頼した場合。
③第◯章に定める服務の規定に違反した場合。
④経歴を偽り、採用されたとき。
⑤故意または過失により、災害または事故を発生させ、会社に損害を与えたとき。
⑥職務上の地位を利用し、第三者から報酬、もしくはもてなしを受けるなどしたとき。
⑦暴行、脅迫その他不法行為をして、会社の信用を害したとき。
⑧正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかったとき。
⑨会社の業務上の秘密を外部に漏洩、または漏洩しようとしたとき。
⑩その他、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき。

就業規則違反が起きた場合の対応方法

就業規則違反が起きた場合の対応方法

従業員が就業規則に違反したとき、すぐに懲戒に踏み切るのではなく、対象の従業員や周囲にもヒアリングを行い、状況を把握することから始めましょう。「そもそも就業規則の内容を理解していない」「本人だけでなく、チーム・部署・組織全体の在り方にも原因がある」といった可能性もあります。客観的に状況を捉えた上で対処方法を検討し、本人や周囲に提示しましょう。変化が見られない場合は個別に注意を行い、それでも改善されない場合は懲戒を検討します。就業規則に記載した内容に応じて、段階を踏んで処分を科す必要があります。
(参考:『問題社員の特徴と違法にならない対応方法。協調性がない・無断欠勤…どう対応する?
(参考:『【弁護士監修】パワハラ防止法成立。パワハラ問題へ企業はどう対応する?対策法を紹介

【まとめ】

就業規則は、社内における「規則」を明文化したものです。基本的なルールはありますが、企業の規模や業種、従業員数、経営状態、業態などによって必要なルールが異なるため、サンプルを流用するだけではなく自社に合った内容であることが重要です。常時使用する労働者が10名未満で作成・届け出の義務がない場合でも、就業規則を作成することで「社内ルールの見える化」や「労使間トラブルの防止」などのメリットがあり、企業のリスク軽減にもつながります。今回の記事を参考に、就業規則の作成や見直しに取り組んでみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/社会保険労務士法人クラシコ、編集/d’s JOURNAL編集部)