DX人材の採用が困難な理由と成功させるためのポイントを解説

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d's JOURNAL
編集部

「社内でDXへの取り組みが始まったものの、肝心のDX人材が採用できない…」とお悩みではありませんか?近年、DX人材は売り手市場であり、ノウハウがない状態で採用活動を進めても採用は難しいでしょう。

そこで本記事では、DX人材の採用に関する課題を踏まえた上で、採用活動を成功に導くための9つのポイントを解説します。「DXをスムーズに進めたい」とお考えの人事・採用担当者は、ぜひご覧ください。

DXを推進していく上で必要な人材とは

採用活動のポイントを知る前に、DXに必要な人材の定義を把握しておきましょう。

経済産業省のDXに関する資料では、DX人材について以下の通り言及がなされています。

自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材

(引用:経済産業省『DXレポート2中間取りまとめ(概要)』)

DXと聞くと、ITに関する技術力の有無が優先されるように思えますが、それ以上に「自社の事業や戦略について熟知している」ことが大切であると、この定義からは読み解けます。

単にIT化を進めるだけではなく、ITを用いて組織そのものに変革をもたらすことが、DXの最終的な目標です。よって、自社業務のどの領域でDXを進めるべきなのか、そして最終的にどのような組織となるべきなのかを考えられる人材が必要不可欠なのです。そのため場合によっては、ITには精通していないものの、現場経験の長いベテラン社員をDX人材としてアサインする、という選択が最善となることもあるでしょう。

もちろん、ITに強い人材が必要な場面もあるはずです。そのようなケースも考慮すると、DXは得意領域が異なる複数の人材で推進することが望ましいといえます。

(参照:『DX人材とは|職種・求められるスキル例や育成と採用のポイントを解説』、『求められる人材要件はDXのフェーズごとに異なる!DX人材の育成と組織づくりのポイント』)

DX人材の代表的な6つの職種

前項で説明した通り、DXの推進には複数の役割が必要となります。そうした事情を踏まえて、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)ではDX人材を以下の6つの職種に分けて定義しています。

DX人材の6つの職種

職種名 役割
プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む)
ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材
アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材
データサイエンティスト/AIエンジニア DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材
UXデザイナー DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材
エンジニア/プログラマ 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材

(引用:独立行政法人情報処理推進機構『デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査』)

プロジェクトの主導や企画立案などといったマネジメント業務を担う職種が、プロデューサーやビジネスデザイナーなどです。DXを滞りなく進める上で、非常に重要度の高いポジションだといえます。

そのほかの4つの職種は、システムの設計・実装や画面構築、インフラ構築など、技術面での役割を担います。当然これらも重要な職種であるため、一つでも欠けることがないように、人材の採用や育成は適宜行いたいところです。

DX人材に必要なスキル

DX人材には、5つの観点で必要なスキルが定められています。それぞれの詳細は以下の通りです。

DX人材に必要なスキル

分類 スキル
ビジネスアーキテクト ・DXの目的や改善すべき課題を定める能力
・関係各所との調整・マネジメントスキル
・プロセスの進捗管理能力
デザイナー ・顧客・ユーザーの視点からサービスを設計するスキル
・開発プロセスや方針を策定するスキル
データサイエンティスト ・データの収集・分析を行う仕組みの構築スキル
・分析したデータの活用方法の策定スキル
ソフトウェアエンジニア ・DX環境で稼働するシステム・ソフトウェアの設計・開発スキル
・構築した環境の保守・運用スキル
サイバーセキュリティ ・DX環境に対するサイバーセキュリティ対策スキル
・発生し得るセキュリティリスクの検討・評価スキル

上記のスキルセットと先ほど紹介した6つの職種を照らし合わせれば、自社に必要な人材の要件を導き出せます。

(参照:経済産業省『デジタルスキル標準』)

DX人材の採用が難しい理由

DX人材の採用は多くの企業が力を入れている取り組みではありますが、思うように進まないケースも少なくありません。しかし、なぜDX人材の採用は難航するのでしょうか?そこには、以下の5つの要因が深く関係しています。

採用競争が激しい

DX人材を採用できない大きな理由の一つが、昨今の採用競争の激化です。

DX人材の持つさまざまなスキルは、容易に獲得できるものではなく、非常に貴重です。その一方で、DX人材に対するニーズは国内外問わずに急速に高まっています。つまり、需要が供給を大幅に上回っているということです。

このような売り手市場の状況下では、DX人材の採用は難しいと言わざるを得ません。

給与や待遇にギャップがある

待遇面を見直せる会社であれば、採用競争の問題はクリアできるかもしれません。しかし、特に中小企業など人材採用に多くの費用をかけられない会社では、そのような対応を取ることも難しいでしょう。

また、近年は待遇だけではなく、リモートワークやフレックスタイムといった、はたらき方の柔軟性も重視される傾向にあります。こうした制度面の条件が満たせない企業も、DX人材の採用では後れを取ってしまいます。

DX人材を適切に評価する制度がない

DX人材のスキルや成果を適切に評価できる制度がないことも、採用の難しさに拍車をかけています。

DX人材のスキルセットは、一般の社員とは大きく異なります。そのため、評価制度にDX人材用の特例を設けている企業も少なくありません。

反対に、一般社員向けの評価制度・人事制度しかない企業では、DX人材のはたらきを正しく評価できない可能性があります。そのような企業に対しては、DX人材としても「ここでは自分のことを評価してもらえない」と考えざるを得ないでしょう。そこへ先ほどの待遇面の差なども合わさった結果、DX人材が他社へと流れてしまうのです。

社内に教育する環境がない

即戦力となるDX人材を採用したとしても、自社の業務や経営課題など固有の事情に関しては教育を実施しなくてはなりません。しかし社内の状況次第では、DX人材の教育にリソースを回せない場合もあります。

安定してはたらける環境であることをアピールできなければ、DX人材が自社を選ぶ可能性も下がってしまうでしょう。そのため、評価制度と合わせて教育環境も整備する必要があるのです。

自社の魅力が伝わりづらい

待遇面や評価制度さえ整備すればDX人材を採用できる、というわけではありません。転職活動中のDX人材に自社の情報や魅力が伝わっていなければ、転職先の候補に入ることすらかなわないためです。

繰り返しになりますが、DX人材の採用には数多くの企業が力を入れているため、必然的に求人の数も膨大になります。掲載内容が他社とほとんど変わらない、あるいは、あいまいな業務内容しか書かれていないなどの状況では、自社の求人がDX人材の目に留まる可能性は非常に低いといえます。

DX人材を採用するためのポイント

DX人材の採用が非常に難しいことは確かですが、何も打つ手がないわけではありません。以下のポイントを押さえれば、DX人材を採用できる可能性を高められるでしょう。

DX戦略の目標を明確化する

自社のDX戦略の目標をはっきりと定めることが、DX人材の採用を成功させるための第一歩です。

DXでは、企業の在り方や活動の仕方などを、デジタル技術によって抜本的に変革していくことになります。しかし、「何が課題でどのように変えていくべきなのか」という目標が明確になっていなければ、具体的な施策や必要となるスキルセットも定まりません。そうなれば、求人を出す際に「自社ではこのような取り組みを検討しています」とアピールできず、DX人材の関心も引けないでしょう。

反対に、DX戦略の目標を明確化し、求めるスキルや任せたいポジションなどを明示できれば、活躍の場を得たいDX人材に「ここは魅力的な職場だ」と思ってもらえます。DXへの取り組みに力を入れている旨を周知して、転職先の候補に含めてもらうことが大切です。

(参照:『DX戦略とは?取り組みで得られるメリットや注意点を紹介』)

具体的にどのようなDX人材が必要なのかを検討する

DX戦略の目標とともに、DX人材の要件を定めることも大切です。

ITを用いたソリューションの検討、またはデータの分析、AI技術の活用、クラウドの運用など、DX人材は状況に応じて多種多様な業務をこなす必要があります。それゆえにDX人材の採用時は、自社で任せる業務の内容や求めるスキルレベルを決めることが、より重要となるのです。

求めるDX人材の要件を具体的に決められれば、アプローチすべき対象が絞られて、採用活動を効率良く進められます。また、DX人材側としても、その会社で自分が活躍できるかどうかを判断しやすくなり、転職先の有力候補として検討してもらえるようになります。

(参照:『その集め方が間違っているのかも!?正しい「DX人材の採用要件定義」、教えます』)

採用基準や待遇を柔軟に設定する

自社の要件に合致するDX人材を採用できれば理想的ですが、必要なスキルが多岐にわたる関係上、全ての要件を満たす人材が見つかるとも限りません。そのため、時には採用基準を柔軟に設定した上で採用活動を進める必要もあります。最低限備えていてほしいスキルレベルだけは設けて、それ以上の領域に関しては、その人材のポテンシャルや入社後の成長によってカバーしてもらう、という流れです。

柔軟性が求められる部分としては、待遇面も挙げられます。「DX人材の採用が難しい理由」で述べたように、DX人材と通常の人材を同じ基準で評価することは困難です。活躍が見込めるDX人材を採用したいのであれば、給与額や入社後のポジションを臨機応変に調整して提示するべきでしょう。

はたらく環境や条件面を配慮する

DX人材の採用に向けて、職場のデバイスや開発環境の設備なども整備しておきたいところです。最新のツールや十分なスペックの設備が使えることは、DXに取り組む上で非常に重要な要素であるためです。

はたらく環境だけではなく、はたらき方などの労働条件にも配慮する必要があります。特に、リモートワークやフレックスタイム、私服勤務などは可能であれば許可すると良いでしょう。DX人材はこれらの勤務形態ではたらくことを望む傾向が強いため、労働条件として提示できれば強いアピールポイントとなり得ます。

採用チャネルを多様化する

DX人材を自社に招きたいのであれば、さまざまな採用チャネルを活用しましょう。求人サイトや人材紹介サービス、ダイレクト・ソーシングなど、多面的に採用活動を展開すればDX人材にアピールできる機会も増えます。

また、自社の業界に特化しているサービスを使えば、DX人材の中でも、即戦力としての活躍が見込める人材を採用できる可能性が高まります。各種SNSを活用して、DX人材に直接アプローチするという手法も場合によっては有効です。

(参照:『採用チャネルとは?主な種類と選び方・注意点を紹介』)

自社の魅力を伝える

自社ではたらくメリットやDXに対する取り組み状況など、魅力となる点をしっかりとアピールすることは、採用活動の基本かつ重要なポイントです。

DX人材は現在売り手市場であるため、自社の魅力を効果的に伝えられなければ転職希望者は集まりません。「ここでなら活躍できそうだ」とDX人材が思える要素を洗い出して、求人情報や自社サイトなどで積極的に発信することが大切です。その際は、DX戦略の明確化や柔軟な待遇の設定など、ここまでに説明してきた対応を事前に実施しておきたいところです。

採用プロセスの効率化を図る

採用プロセスの見直しが、DX人材の採用につながることもあります。

引く手あまたであるDX人材は、転職活動の際、基本的には複数社の選考を受けているものです。そのため、面接の日時調整や選考の進みが遅いと、その間に別の企業へ入社を決めてしまうかもしれません。

このような機会損失の発生を防ぐためにも、採用プロセスを見直して、スピーディーな選考を実現する必要があります。AIによる転職希望者のスクリーニングや人材紹介サービスのサポートなど、さまざまな手段を活用して採用プロセスの効率化を図りましょう。

(参照:『採用フローとは?押さえておきたいポイントと課題の改善策』)

心理的安全性を確保する

DX人材がポテンシャルを最大限に発揮できるように、職場の心理的安全性を確保しておく必要もあります。

DX推進を急ぎ過ぎるあまり、DX人材にばかり業務を任せたり、過度な期待をかけたりしてしまうこともあるかもしれません。しかし、どれだけスキルとノウハウがある人材であっても、そのような環境で活躍することは難しいでしょう。DX人材に一定の期待はしつつも、当人が困難に直面した際に誰かを頼れるように職場環境は整備しておくことをお勧めします。

また、業務負担やプレッシャーを減らすだけではなく、「どのようにはたらきたいか」という希望を可能な限り汲み取っていくことも重要です。「○○のスキルをもっと活かしたい」「より重要性の高い事業に携わりたい」など、本人の意向をヒアリングした上で、それらが実現できるような業務を任せられると理想的です。

組織全体でDXに取り組む姿勢を持つ

DX人材だけに負担をかけないという点では、全社員が一丸となってDXに取り組むことも大切です。

DXの最終目標は、会社全体の方針やシステムに関わる変革を起こすことにあります。これを実現するためには、一部のDX人材だけではなく、社員一人ひとりが主体的に施策へ取り組む必要があるのです。

DXの意義や方針を全社的に周知し、社員が協力し合える体制を敷きましょう。その上で、組織全体でDXに取り組んでいることをアピールすれば、「ここでなら心置きなく活躍できそうだ」と転職希望者にも好印象を与えられます。

DX人材を採用以外で集める方法

DX人材を登用する方法としては、採用以外にも「社内人材の育成」と「外部人材の活用」の2つが挙げられます。それぞれの詳細を順に説明します。

社内人材の育成

新しい人材を採用せずに既存の社員をDX人材として育成する、という選択肢も持っておくことをお勧めします。社員であれば業務知識はすでに持っているはずなので、その部分はスキップして、DXに関わる部分を集中的に教育できます。

DX人材の育成は容易ではありませんが、これからも需要が高まっていくことを考慮すれば、将来に向けた投資として取り組む価値は十分にあるはずです。また、スムーズに育成を進めるためにも、採用する場合と同様にDX人材の理想像は事前に固めておきましょう。

(参照:『【育成スキルマップ付】採用できない…、育成に難航中…、これから…という方へ。DX人材職種別育成ノウハウ』)

外部人材の活用

「採用もうまくいっていない上に、自社で一から育成することも難しい…」とお悩みであれば、外部人材の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

例えば、DX人材を紹介してくれる経営支援サービスを利用すれば、DXに精通している人材をすぐに自社に迎え入れられます。また、DXに関する一部の業務を外部に委託して一定期間だけサポートを受ける、といった方法を取ることも可能です。

一つの方法だけにこだわらず、さまざまな手段を活用してDXを推進することが重要だといえます。

DXの目的を明確化し、採用基準や採用プロセスの見直しを行うことがDX人材の採用につながる

今回は、DX人材の採用が難しい理由、そして採用活動を成功させるための9つのポイントを解説しました。

DXに関するさまざまなスキルを持つDX人材は、多くの企業が必要としており、苛烈な採用競争が繰り広げられています。競合他社に後れを取らないためにも、DXの目的を明確化した上で、採用基準・待遇の改善や採用プロセスの見直しなどを行い、自社を積極的にアピールしましょう。

(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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