書類選考のポイント|採用要件に合う人材を判断する6つのチェック項目

d’s JOURNAL編集部

採用活動の初期段階で行う書類選考は、自社に適した人材を絞り込むために欠かせないプロセスです。しかし実際のところ、書類選考に通過した転職希望者であっても、面接の場で印象にギャップを感じられるケースも珍しくありません。

そこで本記事では、書類選考を適切に実施するために見るべきポイントや、必要な事前準備を紹介します。精度の高い書類選考を行いたい人事・採用担当者は、ぜひ参考にしてください。

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書類選考の目的は自社に合う人材を見極めること

書類選考は、限られた時間とリソースの中で、自社に適した人材を効率良く見極めるために実施します。

全ての転職希望者と面接を行うことが理想ですが、現実的には難しいケースがあると思います。応募の数が多いほど、日程調整や面接の準備にかかる企業の負担が増大し、採用活動全体のスピードや精度に影響が出てしまいます。そのため、事前に書類選考を実施し、面接に進む転職希望者を絞り込む必要があるのです。

書類を通じて転職希望者のスキルや経験、志向性などを把握することで、ミスマッチのリスクを減らせます。さらに、書類選考の段階で情報をしっかりと読み取っておけば、面接時により深い質問を投げかけられ、評価の精度が高まります。結果として、長期的に活躍してくれる人材を採用するための土台を築けるのです。

書類選考で見るべき6つのチェックポイント

転職希望者の中から自社にマッチする人材を選び出すには、書類選考時に見るべきポイントを明確にし、統一した基準で評価することが重要です。以下のチェック項目を意識すれば、選考の精度が高まり、以降の工程もスムーズに進行できるでしょう。

書類選考を行う際に意識してチェックしたいポイント
●募集条件のマッチ度
●基本的なビジネスマナーの可否
●文章の作成能力と表現力の有無
●自己PR・志望動機の具体性と熱意
●転職回数と理由の妥当性
●必要資格・免許の保有状況

①募集条件のマッチ度

まず確認したい項目は、転職希望者が求人票に記載された条件を満たしているかどうかです。例えば、特定のスキルや必要な経験年数など、自社の求める人材像に合致していることをていねいにチェックしましょう。

これらを満たしていない転職希望者は、選考を進めたとしても採用のミスマッチにつながります。

②基本的なビジネスマナーの可否

応募書類の見た目や内容から、転職希望者が身に付けているビジネスマナーも確認してください。誤字脱字の有無はもちろん、用紙の清潔さや証明写真の鮮明さなど、細部まで確認することが重要です。

もちろん一概には言えませんが、こうした点をおろそかにする転職希望者は、実務でも細部の確認を怠る可能性もあるため、確認したいポイントです。

③文章の作成能力と表現力の有無

履歴書や職務経歴書の記載内容からは、転職希望者の文章作成能力が読み取れます。「わかりやすい構成で、内容が整理されているか」また「適切な言葉遣いができているか」「論理的に考えをまとめられているか」などが判断のポイントです。

文章作成が主業務ではない職種であっても、多くの場合は業務上で文章を書く機会が発生します。その際に支障を来さないよう、書類選考の時点で文章作成能力を見ておくことは重要です。

④自己PR・志望動機の具体性と熱意

転職希望者の熱意や、自社との相性を見る上で、自己PRや志望動機の内容は重要です。単に熱意を伝えるだけにとどまらず、具体的な経験を基に自身の強みを説明できていることが評価のポイントとなります。

また、自社の事業内容や価値観に対する理解度も確認しておきたいところです。自己PRや志望動機の内容があいまいだったり、他社でも通用するような一般的な表現が多用されていたりする場合は「熱意が感じられない」と判断できるでしょう。

⑤転職回数と理由の妥当性

履歴書で確認できる、過去の転職回数や在籍期間は、転職希望者の安定性を判断する材料の一つです。短期間での転職を繰り返している場合には、継続してはたらく意欲や環境への適応力が課題になる可能性があります。

ただし、キャリアアップやスキルの習得を目的としていた場合など、前向きな背景があることも考えられるため、理由の妥当性にも目を向けましょう。

⑥必要資格・免許の保有状況

業務に必要な資格や免許がある場合は、その確認も欠かせません。特に専門性が求められる職種では、該当する資格の有無を重視する必要があります。

取得見込みである場合や、過去に取得していたが現在は更新切れである、といったケースについても、書類内で明確に記載されているかを確認しましょう。

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書類選考をスムーズに進めるための3つの事前準備

自社に適した人材を的確に見極めるためには、書類選考前の準備が不可欠です。ここでは、選考の精度と効率を高めるために、企業が事前に取り組んでおきたい3つの準備事項を紹介します。

書類選考の事前準備
●自社の求める人材像を定義する
●書類選考で重視するポイントを決める
●評価基準を明確にする

①自社の求める人材像を定義する

採用活動を行うことが決まったら、最初に自社が求める人材像を定義しておきましょう。募集する職種の業務内容に応じて、必要なスキルや経験、志向性などを洗い出し、それらを言語化することが大切です。

こうした「人材要件」をあらかじめ整理しておかなければ、選考時の判断基準が不明瞭(ふめいりょう)になり、たとえ採用できたとしてもミスマッチや早期離職を招く恐れがあります。なお、このとき「採用ペルソナ」を設計することで、より明確な基準の設定が可能となります。

(参考:『採用ペルソナとは?設定ノウハウや手順・具体例をまとめて紹介【テンプレート付】』)

②書類選考で重視するポイントを決める

人材要件が定まったら、次に書類選考で重視するポイントを決めておきます。これは選考基準のばらつきを防ぐ意味でも重要です。

例えば、スキルや資格の有無を重視するのか、それとも文章の作成能力や志望動機に着目するのかなど、評価する項目とその優先順位を明確にしましょう。職種やポジションによって重視すべきポイントは異なるため、事前に各部門とコミュニケーションを取り、それぞれの要求を把握した上での調整が望まれます。

(参考:『欲しい人材に出会えないのは“書類選考”に問題?すぐ取り入れたい職務経歴書の確認方法』)

③評価基準を明確にする

書類選考で評価するポイントに基づき、評価基準を具体化します。これにより、選考の公平性が高まることに加えて、選考スピードも向上します。

また、自社独自の評価基準シートを作成しておくこともお勧めです。誤字脱字の有無や文章の構成の明快さ、経験内容の具体性など、複数のチェック項目を設けて、合格ラインを数値化または段階評価できるように設定すると良いでしょう。評価基準をシート形式でまとめておくことで、複数の担当者が関与する場合でも客観的かつ一貫性のある選考が可能になります。

(参考:『採用基準とは?具体的な設定手順や自社にマッチした人材の見極め方|テンプレ付』)

書類選考を行う際の注意点

続いて、書類選考を行う際に気を付けたい点を紹介します。

書類選考を行う際の注意点
●評価基準の統一で主観的な評価を避ける
●多様性を尊重した公平な採用を実施する
●迅速な選考で人材流出を防止する

評価基準の統一で主観的な評価を避ける

人事・採用担当者の先入観や主観によって評価が偏ると、本来見込まれていた自社に適した人材を見逃す可能性があります。例えば、学歴や業界経験に過度に依存した判断をすると、それ以外の多様な背景を持つ転職希望者を正当に評価できなくなるでしょう。

こうした評価の偏りを防ぐには、あらかじめ評価基準を明文化し、先述の評価基準シートを用いて、客観的なチェック項目を整備することをお勧めします。また、複数人による評価体制を導入すれば、個人の好みに左右されない、より公平な選考が可能になります。

多様性を尊重した公平な採用を実施する

採用活動では、性別や年齢、国籍、家族構成といった属性に基づいた評価は、厳に慎む必要があります。応募書類に記載された写真や年齢などの情報に引きずられて判断することは、意図せず差別的な選考につながります。

評価の中心はあくまでも職務遂行能力や過去の実績、当人の意欲など、業務に直結する要素です。厚生労働省が示すガイドラインを順守し、選考の場では公平性を保つことを意識しましょう。

(参照:厚生労働省『公正な採用選考の基本』)

迅速な選考で人材流出を防止する

書類選考に時間をかけ過ぎると、転職希望者の離脱や競合他社への流出を招くリスクがあります。転職希望者の多くは複数の企業に同時に応募しているため、選考のテンポが遅いと不利になる可能性が高まります。

選考を円滑に進めるには、事前に選考スケジュールを明確にし、関係者間での共有を徹底することが基本です。選考のやりとりがスムーズに進むと、転職希望者に安心を与えられ、企業イメージの向上にもつながります。

(参考:『今、選考スピードアップは必須。どう現場を巻き込む?他社事例やデータを活用して社内協力を得る方法』)

書類選考を成功に導くためのコツ

最後に、書類選考ひいては採用活動を成功させるために、人事・採用担当者が知っておきたいコツをお伝えします。状況に応じて外部のサービスを活用し、精度の高い採用活動を実現しましょう。

書類選考を成功に導くためのコツ
●能力検査を実施する
●性格適性検査を実施する
●人事・採用担当者へのトレーニングを行う
●採用コンサルティングを活用する
●採用代行を活用する

能力検査を実施する

必須ではありませんが、書類だけではわからない転職希望者の認知力や問題解決能力などを測るため、併せて能力検査を実施するという手もあります。能力検査を取り入れることで、より客観的に、転職希望者のスキルや論理力を比較できます。

検査結果は「何点以上であれば良い」というものではないため、自社の基準で必要な得点水準を設定すると良いでしょう。

性格適性検査を実施する

能力検査と併せて性格適性検査を実施することも、自社に適した人材を採用するために効果的です。性格適性検査では、書類や面接では見えにくい性格面の特徴、例えばコミュニケーションの傾向や協調性などを把握できます。検査結果を参考に業務内容や企業文化との相性を評価すれば、長期的に定着してくれる人材を見極められるでしょう。

ただし、検査結果の内容は絶対ではないため、全てをうのみにするのではなく、あくまでも判断材料の一つとし、書類選考や面接と組み合わせることが大切です。

人事・採用担当者へのトレーニングを行う

選考に携わる人事・採用担当者自身の判断力を高めることは、極めて重要です。評価基準やバイアス抑制の研修によって、選考時の評価の偏りを減らし、公平性と一貫性を高めることが期待できます。

研修では、評価基準の共有やスコアリング方法の実践演習、ケーススタディーの議論などを通じて、全員が同じ判断軸で転職希望者を評価できる体制をつくります。

(参考:『採用を成功に導く面接官の5つのトレーニング方法と実施するメリット』)

採用コンサルティングを活用する

採用に関する経験とノウハウを持つ、採用コンサルティングを利用する方法もあります。自社の求める人材像の整理から評価基準の策定、選考フローの設計改善など、専門家視点のアドバイスを受けることで、選考の質と精度の向上が望めます。

社内のリソースが限られており、採用活動に人員を割けない場合や、より戦略的な採用活動を実施したい場合にお勧めです。

採用代行を活用する

社内のリソースが不足しているときは、採用代行の活用も有効です。採用代行はRPO(Recruitment Process Outsourcing)とも呼ばれるサービスで、書類選考をはじめとする採用活動を委託できます。

採用活動の経験が豊富なプロの手が加わることで、迅速かつ客観的な選考が可能となります。サービスによって対応できる業務は異なっているため、あらかじめホームページで依頼できる内容を確認しておくと良いでしょう。

(参考:『RPO(採用代行)とは?費用や委託できる業務範囲、メリット・デメリットについて解説』)

書類選考では、自社が求める人材像を明確にし、評価基準を統一することがポイント

本記事では、書類選考で意識してチェックしたい具体的なポイントや、事前の準備事項を解説しました。

書類選考は、採用活動全体の精度に影響を及ぼすといえるほど、重要なプロセスです。履歴書・職務経歴書を見る段階で、自社に合った人材を適切に絞り込めれば、入社後のミスマッチや早期離職を防ぐことにもつながります。そのためには、担当者ごとにばらつきが出ないよう、企業が求める人材像や評価するポイントを事前に定めておくことが大切です。

また、採用活動のリソースを確保できない場合は、採用コンサルティングや採用代行を活用すると良いでしょう。

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(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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