制度だけでは社員は動かない。「手が挙がる」組織を生む“キャリア自律”【テルモ×パーソルキャリア人事責任者対談】

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テルモ株式会社

人事部長

本庄 正治(ほんじょう・まさはる)

プロフィール
パーソルキャリア株式会社

人事本部 本部長

大竹 航(おおたけ・わたる)

プロフィール
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  • テルモは課長級の管理職ポジションを原則公募・4年任期とし、アソシエイト(社員)が自らキャリアを選ぶ仕組みを構築。制度導入後は30代課長級管理職の人数が倍増、若手の離職率も低下した
  • パーソルキャリアでは年間500~600名が「キャリアチャレンジ」に応募。このうち年間約200名が実際に異動しており、社員がキャリアオーナーシップを体現している
  • 社員の意思を尊重するほど、人事は組織をコントロールしにくくなる。それでも本人に選択権を渡すほうがよいと考え、制度と対話でキャリア自律を支援する両社

「社員に主体的にキャリアを考えてもらいたい」─そう願って制度や機会を設けても、行動変容までつなげるのは難しいものです。では、キャリア自律が根付く企業では、どのような取り組みが進められているのでしょうか。

「課長級の管理職ポジションの公募制」という大胆な改革でアソシエイト(※1)の挑戦を促してきたテルモ。社内公募や複業など多彩な機会を用意し、社員のキャリア選択を支援するパーソルキャリア。

制度をつくるだけでは、社員は自主的に動かない。「キャリア自律の実現」を目指しながら、制度で挑戦を促すテルモと、個人の自発性に委ねるパーソルキャリアの人事責任者が、制度を機能させるための試行錯誤とその先に見据える課題を語り合いました。

※1:テルモグループでは、社員をともにはたらく仲間として「アソシエイト」と呼んでいます。

創業100年超えとベンチャー。異なる文化の2社が目指す“キャリア自律”

──まずは、お2人の経歴と、現在の役割について教えてください。

本庄氏:1995年にテルモへ入社し、営業からキャリアをスタートしました。その後は国際営業やマーケティングを中心に経験を積み、インドネシアやベトナムなど東南アジアのグループ会社で事業運営に携わってきました。

海外拠点ではたらく中で強く感じたのは、「アソシエイトが生き生きとはたらける組織をつくること」の重要性です。事業の成果も人の成長も、最終的には組織や人の力によって決まる。その実感が、人や組織の仕組みに関心を持つきっかけになりました。

そこで、一度目の海外駐在から帰国した際に、自ら「人事をやらせてもらえませんか」と手を挙げ、当時の国際人事チームのリーダーとして本格的に人事の仕事に携わるようになりました。

その後、ベトナム現地法人で4年間駐在し、シンガポールのアジア地域本社勤務を経て、2023年に帰国して現職に就任しました。現在は、人事部長として、人と組織の成長を通じて事業の成長を支える仕組みづくりに取り組んでいます。


大竹氏:
まさに本庄さんご自身がキャリアオーナーシップを発揮されたわけですね。

実は私も現在は人事本部長を務めていますが、2023年までは事業側のキャリアを歩んできました。最初はテレビ番組の制作会社でキャリアをスタートし、その後、当時ベンチャー企業だったインテリジェンス(現パーソルキャリア)へ転職しました。

リーマンショックを契機に若者のキャリア選択の重要性を強く感じるようになり、2013年に新卒領域の事業を立ち上げました。ベネッセコーポレーションとの合弁会社であるベネッセi-キャリアの設立にも携わり、約8年間事業運営を担ってきました。

本庄氏:お互い、人事一筋ではなく事業の現場を長く経験していますね。

私は事業や海外拠点の運営に携わったことで、「ビジネスのために何が必要か」という視点を自然と持つようになりました。人事は最終的には、事業のために存在するものだと思っています。

大竹氏:同感です。人事が経営に近い立場で戦略を描くには、事業側の状況を理解しなければなりません。私が人事へ呼ばれた背景にも、事業経験を活かしてほしいという経営からの期待がありました。

──2社は事業内容も歴史も大きく異なりますが、「キャリア自律」「キャリアオーナーシップ」を推進しているという点で共通していますね。

大竹氏:パーソルキャリアはベンチャー企業をルーツとするHR企業であり、社員が自らのキャリアを考える文化はもともとありました。ただ、その意識が実際のキャリア形成にどこまで結び付いているのかは見えない部分もあったんです。

キャリアオーナーシップを推進し始めたのは10年ほど前からですが、明確な定義が固まったのは、今の代表になった約4年前のことです。

「会社が選択肢や環境を用意し、その中から何を選ぶかは本人が決める」という考え方のもと、キャリアオーナーシップの浸透を制度面から後押ししてきました。背景には、HR企業として、社員自身が自分のキャリアを選べる存在でありたいという思いがあります。

本庄氏:歩みとしては、テルモはまったく逆かもしれません。

長く典型的なメンバーシップ型人事を運用してきたのですが、事業のグローバル化が進む一方、専門人材が社内で十分に育たず、重要なポジションをキャリア採用で補う状況が続いていました。その背景には、アソシエイト一人ひとりが自分のキャリアや専門性をどのように高めていけばよいのか、必ずしも明確ではなかったという課題もあったと思います。

そんな中、選抜研修に参加した若手・中堅のアソシエイトから「この会社でどうキャリアを描けばいいかわからない」という声が上がったのです。人事としてはもっと前向きな声を想像していただけに、大きな気づきでした。

この問題意識をきっかけに、アソシエイトが自らキャリアをつくり、専門性を高められるよう、ジョブ型人事制度への転換に踏み切ったのです。