社員は本当に学ばない!?エーザイが推進するDXの裏に「学び方」の改革あり【セミナーレポート付】

d’s JOURNAL編集部

リモートワークの浸透により組織の在り方や働き方の概念が変わり、社員の自己管理能力の向上や、自律的なスキルアップが今まで以上に求められる社会となりました。

また、不安定な社会情勢を受けて、特に若手社員を中心にキャリア形成への危機感や、自らのスキルアップのための育成ツールの導入を会社に求める声が上がっているという話もよく聞かれるようになっています。

このような環境変化を受け、社員を手取り足取り教えて育てるスタイルから、自律型の学習法へ育成方針をシフトする企業が増えつつあります。その半面、「それでは具体的にどのようなアクションを起こせばいいのか」という課題を抱える企業もまた少なくない現状となり、「社員の学び」についてさまざまな議論が飛び交うようになりました。

ベネッセi-キャリアでは、こうした課題に応えるため、社内における学び方改革を実践している製薬大手のエーザイ株式会社(本社:東京都文京区、代表執行役CEO:内藤晴夫)より上村敏之氏(以下、上村氏)を招き、「学び方改革に向けて~全員が学び続ける風土の醸成~」というテーマの下にセミナーを開催しました。

本コラムでは、同セミナーの内容をまとめた概要をお伝えします。また本稿内では、セミナーの詳細な内容をまとめたセミナーレポートもダウンロードできます。今後、自律的に学ぶ人材の育成を推進したいと考えている人材育成・研修担当者の方には、必見の内容となっています。ぜひご活用ください。

幅広い業界との協業に対応するため、DXの推進は不可欠

エーザイは、「いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマンヘルスケア企業」を目指し、医薬品の研究開発・製造・販売および輸出入といった事業を展開しています。

さらに同社では、多様化するヘルスケアのニーズを充足するために、医療業界に限らず、他産業や団体との協業を積極的に検討するフェーズに入っていると、上村氏は語ります。

「これまで培ってきた創薬技術などの『Eisai Universal Platform(EUP)』(※)を幹として、たとえば保険産業との協業により保険商品を開発したり、食品産業との協業により食品の観点から疾病予防の可能性を検討するといったように、従来のビジネスの在り方を変化させることで、より多くの方々に貢献できると考えています。そのために当社では、その手法の一つとしてDX推進が不可欠と考えています」(上村氏)

それでは、同社が推進するDXとは一体どのようなものなのでしょうか。

(※)「Eisai Universal Platform」…エーザイが培った「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)理念」と、他産業や自治体とのパートナリングで構築される同社独自のエコシステム

DX推進の主役は、人事部ではない!?

エーザイの本社人財開発本部において、人材育成を担当する上村氏。実際にDXを推進するにあたり、次のような想いを抱えていました。

「これまでにDX関連のソリューションと知見をお持ちの企業から、当社人事部宛てにさまざまなご提案をいただいたのですが、そもそもDX推進の主役が人事部でよいのか、という悩みがありました。人事部主導では社員が受け身になってしまい、結果としてナンセンスな取り組みになってしまうのでは、と考えたためです」(上村氏)

そこで上村氏は、社員の一人一人がDX推進の主役となるようなアプローチができないか、検討を始めました。その上で、次のような要素が必要になると考えました。

■ 社員の共感「〜したい/したくない」という思い
■ 自律・責任・自ら学ぶ意識
■ 職場実践・他社や組織で学び合う風土

「社員の共感」とは、目指す方向性(多様化するヘルスケアニーズへの対応)や、取り組み(DXの推進)の必要性を理解し、心から実感している状態を指します。

また「自律・責任・自ら学ぶ意識」とは、社員それぞれが配属された環境でなすべきことを認識し、その実現のために必要な情報を自ら率先して吸収していくことを意味します。

そして「職場実践・他社や組織で学び合う風土」は、学んだ内容を職場で実践しつつ、組織を超えてお互いに学び合うことで、自己・周囲・組織それぞれが成長していけるような環境を想定したのです。

このように上村氏は、DX推進には社員一人一人の「学びの姿勢」に着目して、上記のような必要な要素を言語化していったのです。

「学び方改革」と称して、育成体制を変更

DX実現のためには、社員が「自律的に学ぶ」土壌が不可欠だと考えた上村氏。そこでエーザイの育成体制を機会提供型へと変更し、「学び方改革」と称して発信し始めました。その基盤となったのは、次の3つのポイントです。

「学び方改革」3つのポイント
・指名型研修は必要最低限に
・個々人の強みや課題、興味関心、将来のビジョンを尊重
・社員と会社の関係性を変える(対等な関わり)

上村氏はこの3つのポイントを、このように解説します。

「従来は階層や年齢層ごとに指名型の研修を実施していましたが、前ページで挙げた『自ら学ぶ意識』となじまないことから、必要最低限の実施に留めることにしました。

さらに、強みや課題、興味・関心、将来のビジョンは社員それぞれに異なります。そこで、それぞれの個性を企業として尊重することで、自律的な学習を促せるのでは、と考えたのです。

一方で、当然会社の方針を無視するわけにはいきません。社の方針ははっきりと示しつつも、社員に押し付けることなく対等な関係性で擦り合わせを行うことが必要だと考えています」(上村氏)

この3つのポイントを押さえつつ、同社は育成体制を変革していき、今回のDXを推進するための「学び方改革」を進めていったのでした。

まとめ【資料ダウンロード】

人事部主導のDXではなく、社員一人一人が自ら学ぶ姿勢を持って進めていく―。これこそがエーザイのDX推進のポイントであり、機会提供型の育成を実践する「学び方改革」の概要です。

その後同社では、社員を階層別に分類した上で、各階層に必須研修と選択研修のプログラムを用意し、募集を開始しました。

DX推進のために最適なプログラムを用意したとしても、職場で実践し、学びを継続することができなければ人材育成で成果を出すことは難しいでしょう。

その点、同社の「学び方改革」に参加する社員は参加前に何を学びたいかを自ら設定して提出し、プログラム参加後に大小問わずさまざまなアクションを起こしているようです。行動して気づくことも多く、とても重要な学びの機会です。さて、同社の改革の成果はどうなったのか…。

続きは、本コラム内からダウンロードできるセミナーレポート「社員が自ら学び続ける環境に劇的改善!学び方改革」で詳しく解説しています。こちらの資料をぜひご覧ください。

文/鈴政武尊、編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部

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