データアナリストのインターンシップに大きな反響。東京ガス人事部が進める、DX人材育成・採用の新たな取り組み

東京ガス株式会社(東京瓦斯株式会社)

人事部 人材開発室
採用チーム チームリーダー 
野田 博和(のだ・ひろかず)

プロフィール
東京ガス株式会社(東京瓦斯株式会社)

人事部 人材開発室
採用チーム
吉原 裕貴(よしはら・ひろき)

プロフィール

首都圏のエネルギーインフラを支える東京ガス株式会社(本社所在地:東京都港区、代表執行役社長 CEO:内田高史)。エネルギー事情を取り巻く目まぐるしい変化を、企業飛躍のチャンスにつなげるために、経営ビジョン「Compass2030」を策定し、さまざまな取り組みを推進している。

また一方で、「フリースタイル採用」などさまざまな採用手法を導入するといった新たな取り組みも積極的に推し進める同社。さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)促進のため、「超実践型」のDX/データアナリスト人材の採用をスタートしているという。

今回は、DX人材の採用に関する具体的な取り組み内容について紹介していこう。また同社の「フリースタイル採用」の手法について詳しく知りたい方は、直下のダウンロードボタンより無料でご覧いただけるので、ぜひ活用してほしい。

DX/データアナリスト採用をスタート。「データ活用」強化の目的とは

エネルギーを取り巻く環境の変化が加速している。

東京ガスは2019年に新たな経営ビジョン「Compass2030」を策定し、不確実な時代を切り開くための備えを積み重ねている。各事業部が経営ビジョンを具体策に落とし込んでおり、人事・採用施策においても新たな取り組みが進んでいる。

1つ注目したいのが「DX人材の採用」だ。新卒採用の現場では、職場受け入れ型の実践型インターンシップ実施をはじめとした、積極的な採用活動をスタートしている。今回は、主にDX人材採用の具体的な施策や、今後の展望についてお話を伺った。

――東京ガスでは2022年からDX/データアナリストの新卒採用をスタートしています。体制を整えた背景について教えてください。

野田博和氏(以下、野田氏):2019年の秋ごろ、東京ガスは「Compass 2030」という経営ビジョンを掲げて、2030年に向けた宣言をしました。具体的に5つのアクションを打ち出しましたが、そのうちの1つが「暮らしやビジネスの課題解決」です。

この課題をクリアするためには、価値共創のためのデジタル基盤の強化と、デジタルマーケティングの高度化が必須です。グループ全体でDX人材の確保と育成が重要となるため、2022年卒業の新卒採用から「DX/データアナリスト採用」の枠を設けました。

また、中途採用では、データ活用に限らずDX人材の採用を拡大させようとしています。

――エネルギーを扱うインフラ企業として、データ活用を強化する目的はなんでしょうか。

野田氏:私たちは、エネルギーを扱う企業として、「都市ガスの調達・供給・小売り」「くらしのサービス」など幅広い事業を行っています。限られたリソースで継続的に利益を上げ、お客さまに価値を提供し続けるためには、データを活用していく必要があると考えました。

東京ガスではそれぞれの事業部がデータを保持しており、これらのデータをどう活かすか、というところに課題を感じています。

――外部人材ではなく、社内でDX人材を育成していくのでしょうか。

野田氏:データの活用方法について外部の方に相談するという手段もありますが、スピード感をもってデータから課題を見いだすためには、データを扱い価値を見出すことができる専門的な人材を社内にも持たなければならないと考えています。他社との協業が必要かどうかも含め、検討していく必要があるでしょう。

いずれにせよ、新規事業を立ち上げたり、暮らしや社会につながるサービスを展開したりする場合、ビッグデータの活用という課題は必ず付いて回ります。遅れをとれば、サービス拡大を妨げるのではという危機感を持っているのです。


デジタルデータの活用で社会的なインフラの「課題解決」を目指す

――データ活用にはいろいろなアプローチがあると思います。データアナリストは、どのような業務を担うのでしょうか。

野田氏:端的に言えば、データを分析し、活用していく業務です。例えば、エネルギー関連の取引データ、設備の稼働データ、お客さまのデータなど、社内には膨大でさまざまな種類のデータがあります。そこからどんな課題や傾向が読み取れるかをひもとき、仮説を構築します。

立てた仮説に基づいて、現在行っているビジネスや施策にどう反映し、改善できるかを検証し、業務効率化も含めて課題解決策を検討します。課題解決が仕事の基軸ですが、その先に新しいビジネスや事業があれば、開拓も手掛ける必要があります。

――これまでもデータの活用を専門に担ってきた部署はありますか?

野田氏:社内には、30年以上前からデータ分析を扱う組織があり、昨今の外部環境の傾向を踏まえて、DX推進強化を施策として掲げています。

以前は、採用された人の中から、適性がありそうな人をデータ分析の部署に配属していましたが、2022年度採用からは、データアナリストに特化した採用枠を設けました。

吉原 裕貴氏(以下、吉原氏):経営会議に使うような資料も、データアナリストが抽出したデータが活用されており、頼りにされているポジションです。


データ活用の「超実践型」インターシップの内容や反響について

――2022年の11月には、新卒向けにデータ活用の職場体験ができるインターンシップを実施されたと伺いました。導入の理由について教えてください。

野田氏:「東京ガス=DX/データアナリスト人材」というイメージがない学生に対し、訴求力あるコンテンツを設ける必要がありました。

事業会社ならではのデータアナリスト、データサイエンティストの魅力を知ってもらうために、インターンシップの導入を決めました。現在は2024年卒業予定のDX/データアナリスト人材の採用活動が進んでいます。他社の新卒採用においても、データサイエンス関係のポストは採用が激化している状況です。

インターンと採用は直結していませんが、インターンを経験していただくことで業務に近い体験ができるので、東京ガスとそこで働く環境の魅力を感じてもらえたらと思っています。

――インターンシップに参加した学生は、具体的にどんな体験をしたのでしょうか。

野田氏:計5日間のうち、初日に東京ガスについての説明をした後、職場メンバーとの顔合わせをしました。「こういうメンバーと、こんな風に働くんだ」というイメージを持ってもらった後、データ分析のテーマが与えられます。

テーマから課題を見いだし、どう仮説をたてて、最終的にどういう施策にアウトプットしていくのか、という一連の流れを体験してもらい、後半には分析の成果をプレゼンテーションしていただきました。

扱うテーマは、例えば「エネルギー価格の推移予測」「既存設備の故障予測」「顧客に寄り添ったマーケティング」など、多岐にわたります。

――難しそうですが、楽しそうでもありますね。学生の属性は、どのような感じでしょうか。

野田氏:学部でデータサイエンスを学んでいる人もいれば、研究手段としてデータ分析をしている人もいて、さまざまな学部から集まってきています。文理問わず募集しており、応募者もバラエティに富んでいます。

――「職場受け入れ型」のインターンシップとのことですが、どのような部署が受け入れているのでしょうか。

野田氏:直近では、データ活用をメインで行う組織「データ活用統括グループ」です。他にも技術研究所のAIアルゴリズム活用の部署電力取引(市場取引)のデータ活用の部署などが受け入れています。技術研究所は、新たな技術を開発する上で、AIの情報を分析・活用する機会がある部署です。

吉原氏:設備の点検などではドローンを使い、データを用いて分析をすることもあり、プログラミング的な業務もあります。

――インターンシップに参加した学生からは、どのような反響がありましたか?

野田氏:以下のような反響がありましたので、一部ご紹介します。

インターン生Aさん:「思っていたよりたくさんの人と話し合えます。部署の人にお話が聞けるのは嬉しかったです。扱うデータもリアルで、求めていた以上のものでした」

インターン生Bさん:「大学の授業で扱う以上のデータ量でした。仕事では他部署の方と協力することがあると思いますが、その時間も設けていただきました。難しさも感じますが、貴重な体験となりました」

インターン生Cさん:「現在進行中のプロジェクトの一部を体験させてもらいました。答えがある分析ではありませんが、意思決定のプロセスなど、分析だけでなく、グループで仕事を回す方法を学べました。さらに自分の意見を聞き、良い部分を取り入れてくれますし、違う部分は指摘もしてくれる環境でした」

――データと向き合い、協力して分析をする作業が楽しかったという声がありますね。

野田氏:取り扱っているデータは実データではありませんが、リアルに近いモデルデータです。インターン生はそれを用いて考えていくので、実際の仕事や職場の雰囲気を体験していただけていると思います。

吉原氏:インターンシップのプログラムは担当の部署がつくっており、実業務にかなり近い内容になっていますね。

――インターンシップの募集の条件は?

野田氏:1つめの条件は、ビジネスにおけるデータ活用に興味と意欲があることです。統計学や機械学習、数理最適化の知識・経験はマストではありませんが、強みとして活かせることもあります。

学生には所定のエントリーシートを提出してもらい、受け入れ部署による面接を経て、インターンシップに参加してもらいます。

――コロナ禍では学生との交流が制限されていたと思いますが、直近のインターンシップの応募状況はいかがでしたか。

野田氏:コロナ禍で学生とのコミュニケーションの機会が制限されていたので、こうした取り組みは久しぶりでした。今年度のインターンは3つのコースを設けたのですが、各枠に対して全国から、倍率が10倍を超すほどの応募がありました。

DX人材については2022年4月に1期生が入社しまして、早速、活躍していると部の担当者から聞いており、手ごたえを感じています。

――インターンシップの内容はこれからアップデートされるのでしょうか。

野田氏:DXインターンシップは、22年度からスタートした初めての取り組みです。受け入れ部署がどのような評価をしているかも丁寧にヒアリングしつつ、次回以降につなげていきたいと思います。

吉原氏:学生が参加しやすいタイミングについても、考えなければいけないと考えています。


DX人材採用の先にある、東京ガスが見ている景色とは

――東京ガスは、デジタルの活用を進めており、その一環としてDX人材の採用があると思います。DXの先にどのような未来を描いているのでしょうか。

吉原氏:特定の人だけがDXに携わるのではなく、DX推進を通じて、東京ガスグループ全社員が新しい価値を生み出すことにつながっていく未来を描いています。

最近の一例として、英国オクトパスエナジー社との提携があります。デジタル技術を通じてお客さま一人一人の幅広いニーズに合わせ、「新たな顧客体験」の提供を目指しています。

デジタル技術によって、エネルギー業界はガラッと変わる可能性があります。変化を待つのではなく、一歩先を見据えて自分たちの世界をさらに高めていくこと。常にアンテナを張り続けて、新しいことにトライすることが大切だと思います。

――現在は各企業がDX人材を欲しており、競争が高まっている状態だと思います。

吉原氏:確かに、DX人材の獲得について競争が激しくなっています。スキルと知識があり、かつビジネスを理解している人となると採用のハードルはますます上がります。「どうぞ来てください」という待ちの姿勢では、採用は困難でしょう。新卒採用の取り組みを強化しながら、中途採用については「リファラル採用」などを駆使し、ネットワークを広げていく必要があります。

東京ガスの仕事は、伝わりやすい分野と、そうではない分野があります。「DX」は、仕事内容が伝わりにくい職種だと思いますので、自分たちの職場を発信するための広報活動も行っていきたいと思います。

野田氏:データに強い人が多く集まる土俵に上がり、DXに注力していることをアピールするといった積極的な働きかけが必要だと考えています。

――今後の採用活動の展望をお聞かせください。

吉原氏:現在は2024年卒の採用活動と中途採用者枠の強化を両輪で進めています。当社は事業会社となり、グループカンパニーごとに求める人材が変わってきているので、現場で必要となる人材を確保するために、採用のアップデートが必要です。

強くしたい事業があるなら、そのためにはどんな人材が必要かを正確に把握し、メリハリをもって採用活動を行っていきたいと思います。

【取材後記】

そこにあって当たり前の生活の重要性は、社会で「何か」が起こったときに実感する。現在、エネルギー業界に変化の波が押し寄せているが、生活者への影響を最小限にとどめるため、東京ガスは企業努力を続けている。今後、データ活用を通じて、さまざまな課題解決を目指す。
東京ガスで実施された、職場受け入れ型のインターンシップは、学生がデータ活用を通じて課題解決を試みるものだという。参加者は、自分のスキルがどのような場面で活かされるのか、具体的なイメージにつながったのではないだろうか。

企画・編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション

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