急拡大するリユース・リサイクルビジネス大手の「いーふらん」。今期本格的に海外進出も開始。人財採用と活用、企業に必要な成長要素とは
大手リサイクル企業、株式会社いーふらん(本社:神奈川県横浜市、代表取締役会長:渡辺 喜久男)。国内のみならず、海外市場への参入にも積極的で、成長を続ける新進気鋭の組織だ。
新卒入社後1年でマネージャーに就く人財も輩出するという同社では、どのような人財採用や育成がなされているのだろうか。人事戦略や採用手法、育成スタイルなどについて、同社の代表取締役社長 鹿村大志氏にお話を伺い、その理解を深めていこう。
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創業から20年。右肩上がりの成長を見せる「いーふらん」とは
2000年創業の株式会社いーふらんは、この20年強で800名以上(2023年4月時点)の従業員を擁するほどの組織となった。ブランド品・貴金属・骨董品等の買い取りおよび販売を行う「おたからや」を運営・展開し、海外市場へも積極的に参入している。
その裏には徹底した組織組成の取り組みがあり、例えば社内制度の見直しやマニュアル整備、業界でも屈指の高額報酬制度などがある。
古物を売買・交換して再利用を促すリユース・リサイクル業界は、3R(リユース・リデュ―ス・リサイクル)という観点からも、「SDGs」が叫ばれるこの時代にマッチした産業だ。顧客のニーズは「不用品処分」と「資産価値がある高価なものを売る」という2つの側面がある。フリマアプリなども台頭しているが、いーふらんが手掛けるのは後者の「高価売買」であり、フリマアプリ業界とは一線を画している。
いーふらんで社長を務める鹿村大志氏に、成長の裏にある事業戦略や、「人」を重視する人事制度の考え方などについて聞いた。
時代の流れを見極め、チャレンジを続けるいーふらん
――まずはいーふらんの創業から現在の事業内容などについて、お話を伺えますか。
鹿村 大志氏(以下、鹿村氏):株式会社いーふらんは、もともと「株式会社おたからや」という名前でスタートしました。「おたからや」は今も買い取り専門店として運営しており、直営店141店舗、フランチャイズの加盟店1000店舗を超える大所帯となりました。売上規模は2022年度で480億円強でしたが、2023年度は700億円ほどを見込んでいます。
――海外市場へも積極的に参入されています。国内の市場規模は2兆円と言われ、今後は2倍にもなるといわれるリユース業界ですが、海外市場はどうなのでしょうか。
鹿村氏:はい、私たちは海外にオークションを持っているのが強みです。今年度はアメリカ・ラスベガスへの進出を果たしました。今後はほぼ毎月、海外の時計・宝飾フェアなどに出展する予定です。海外展開をすることで販路を拡大させ、当社の買取事業全体を活性化させたいと考えています。
海外へのさらなる事業拡大や新規店舗オープンなどを通じ、「海外事業に携わりたい」という社員に新しい活躍の場を提供できるのもうれしいですね。海外で仕事をしてみたいという方がいれば、ぜひ、いーふらんで活躍していただきたいものです。
買い取りした商品は、もちろん国内でも再流通するのですが、ビジネスとしては海外向けのオークション販売が最も相場が良いのです。例えば、同じブランドをアメリカ向けに出品すると、日本国内での売価に比べて1.3倍~1.4倍の価格がつきます。私たちが扱う定価700万~800万円時計は、ときに3,000万円の値がつくこともあります。
日本人は物を丁寧に扱うため付加価値があると言われるぐらいで、日本のリユース品は世界でも人気があるのです。
そうして世界を見てみると、いわゆる「富裕層」と呼ばれる人たちが増えてきていることも私たちのビジネス拡大を後押ししています。例えば、船(クルーザー)の売上を見てみると、2021年~2022年が過去最高の数字と聞いています。
海外に良い販路を持っているということは、そうでない会社と比べて価格的に競争力があると言えます。物を売りたい日本のお客さまにより良い価格をご提示できることから、現在の円安を追い風にして、これからも海外への事業拡大に向けて社を挙げますます力を注いでいく所存です。
――新型コロナウイルスによる影響はなかったのでしょうか。
鹿村氏:はい。幸いなことに、良くも悪くも影響はそれほどありませんでした。ほかのリサイクル業では、新型コロナウイルスの影響で需要が急に伸びた、というところもあるようですが、当社の場合、お付き合いしているお客さまの多くが富裕層ということもあり、「生活のために物を売って現金化する」という需要がそれほど多くありません。
富裕層の方々にとって「物」は「資産」です。シンプルに、資産として物を保有し続けるのか、相場が上がったタイミングで現金化するのかというのが基準ですので、新型コロナウイルスでそのニーズが大きく揺れ動くということはありませんでした。
ただし、近年の円安は私たちの事業にとって追い風となっています。特に100万円、200万円といった高単価の時計などは、為替が1円動くだけで価格が大きく変わり、売上高にも影響していきますから。
新卒1年目でマネージャーになる人も。事業の成長を加速させるいーふらんの人事制度
――成長産業であるリユース・リサイクル業界においては競合他社も多いと思います。いーふらんならではの人財採用の秘訣、その差別化ポイントなどについて教えてください。
鹿村氏:事業の成長を加速するためには、ビジネスの志向性が高い方が不可欠です。しかし、当社は上場していないため、ほかの面で魅力を打ち出す必要がありました。そこで高い給与水準をアピールポイントとし、頑張った分だけそれに見合った高額な報酬を手にすることができるようにしたのです。
事業を積極的に進めていくためにも、ビジネスマインドの強い人財や会社を大きくしていきたいという意欲が強い方を採用しています。
――「おたからや」のスタッフの方は、接客レベルが高いと聞きます。入社後はどのような研修があるのでしょうか。
鹿村氏:入社後は座学研修が1週間ありますが、もちろんそれだけですべてを網羅できるわけではありません。その後は現場で先輩社員の元で、仕事を覚えていただきます。当社の仕事は技術職ですので、研修以外でも、日頃から自分で勉強する姿勢も大切です。
――研修以外での勉強、というと?
鹿村氏:当社のお客さまは富裕層の方が中心となります。普段はデパートや高級店でお買い物をされている方々が少なくありません。そうした方が店舗に来られるわけですから、デパートと遜色ない接客レベルを体得する必要があります。
デパートで売っているような高級時計に直接触れてみたり、自分自身がデパートの接客を受けてみたりという経験は、仕事にも大いに役立ちます。普段からそのような意識で過ごしている人はお客さまに喜んでいただける接客ができるようになりますし、結果的に営業成果にも表れてきます。
その他で言えば、私たちは全員服装と身だしなみには多大なこだわりがあります。高価な品物を取り扱うわけですから、ご提案するスタッフの身なりがひどいと信頼にも影響してきます。ですから互いに服装チェックなどを実施しています。見た目の印象は接客業で最も重要なポイントですからね。
――時計やバッグなどの価値を見極めるのは相当の知識が必要になりそうです。
鹿村氏:従業員の知識に頼ることなく、常に一定した査定ができるように、社内では「ホットライン」という仕組みをつくっています。「ホットライン」に査定したい商品の画像を送ると、その商品が本物か偽物か、相場はいくらかという情報が共有されるというものです。
これによってお客さまに確かでいて適切なご提案ができるのですが、この仕組みに頼ってばかりの従業員は、正直なところあまり成長しないという現実もあります。
システムに頼らず、自分で覚えて「目利き力」を高めていこうという意識がある人はお客さまが付きますので、店舗の売上にも貢献していきます。そうするとすぐにマネージャー職に就いて部下を持ち、店舗全体を見て組織を束ねていけるようになります。
実際に、2022年の新卒入社の従業員で、同年12月にマネージャーになったという人もいます。このように、当社では年齢に関係なくチャンスをつかめるという点も、働くモチベーションになっています。
「小さなリーダーをたくさんつくる」、人財教育で誰もが活躍できる組織へ
――通常、店舗オペレーションは組織が大きくなるにつれて粗が出てくることが多いと思いますが、いーふらんではどのように管理されているのでしょうか。
鹿村氏:大きく分けて2つあります。1つはしっかりとしたマニュアルづくりです。
個々の従業員が高い意識を持って仕事に取り組むことはもちろん重要ですが、そこを会社が従業員に任せきりにするのはよくありません。どのお客さまにも高いレベルで接客し、従業員全員が成長しながら成果を出せるように、細かくマニュアルをつくり上げています。
内容としては、営業や接客、マーケティング、経営の基礎的な考え方が網羅されているもので、営業的な数値結果を残すためのマニュアルというわけではなく、ビジネス全般の汎用性のある内容です。成果が伸び悩んでいる人の話をよく聞いてみると、マニュアルから外れているということがよくあります。そこでこうしたマニュアルが教本として生きてくるのです。
もう1つは組織の見直しです。当社では組織を大きくしすぎずに、「小さなリーダーをたくさんつくる」、という方針を取っています。もしその人に任せた仕事が、当初の想定より多岐にわたっていることが判明すれば、仕事を細分化したり、組織を考え直したりということをしています。
――かなり細かく運用されているのですね。
鹿村氏:はい、当社は数字にうるさい会社だとは思います(笑)。例えば、自分の成約率を聞かれてぱっと言えるぐらいでないといけません。
私自身が過去にWeb広告運用などを手掛けていたこともあり、お客さま一人当たりの集客コスト(CPA)の計算や、課題の洗い出し、改善策の立案などは得意としている分野です。
接客などは数字に表れにくいこともありますが、「経営」という観点でいえば、強みや弱みを数値で把握することが重要で、従業員にはそういうことも理解してもらえるようにマニュアルをつくっているのです。
――昨今は人財の定着やオンボーディングという点が話題になっていますが、従業員が長く活躍するためにはどのようなことが重要だとお考えでしょうか。
鹿村氏:「いい会社」の条件は3つあると思っています。給与水準が高いこと、キャッシュフローが良く経営が安定していること、そして自己実現ができること、です。
いーふらんにおける「自己実現」とは、組織の責任者を任されたり、会社の中で新しく組織や事業を創り出したりと、新しい価値を提供できるかどうかということを意味します。
たとえ仕事内容が変わらない場合でも、商品を専門的に勉強したりするなど、常に視点を高くもって取り組んでもらえるように働きかけています。
仲間意識が強いという、いーふらんの社風について
――意欲の高い人が集まっている社内の様子が目に浮かびますが、いーふらんの社風はどんな感じでしょうか。
鹿村氏:世間ではオンとオフを分けるという考え方もありますが、当社では仕事でもプライベートでも、「仲間と楽しく過ごす」という風土があります。みんなでスノーボードやゴルフ、クルージングに行ったりということはもちろん、同じ趣味を持っている人同士で遊んだりもしているようです。ゴルフ部やゲーム部など、公式な部活動もあります。
こうした活動を通じて、それぞれの人となりを理解できることも多く、コミュニケーションの質が高まっているように感じます。
――「人的資本経営」などと言われるように、それぞれの価値を最大限に高めるためにもコミュニケーションは欠かせない要素だと思います。一方で組織としてのチームワークについてはどのような取り組みがあるでしょうか。
鹿村氏:先ほどもお話しましたが、いーふらんでは「小さいリーダーをたくさんつくる」ということを明確な方針として掲げています。一人のマネージャーに沢山の部下をつけるのではなく、たくさんのマネージャーを擁立し、小さくも強い組織をつくっています。
従業員がマネージャーになれるチャンスも増えますし、各組織が小さい分、チームワークもつくりやすいと言えるでしょう。
一般的には、組織を大きくしたほうが統制はしやすくなります。しかし当社ではしっかりしたマニュアルを持つことで、全員が同じことをできるようにしているのです。
世間では「上司によって言うことが違う」という声を聞くことがあると思いますが、これは一番良くないことだと思っています。人によって言動が違うとなると、付いていく部下は不安になり、組織運営にも悪影響を与えてしまうからです。
――人財戦略について課題があればお聞かせください。
鹿村氏:従業員一人一人の見極めを、マネージャー陣がもっとうまくできるようになる必要があるということでしょうか。例えば「もっと教わりたい」と言っている部下がいるのに対応が遅れたり、「今が精いっぱいで、これ以上は無理だ」という人へ期待をかけ過ぎないように、相手を見極める能力というのはまだまだ改善の余地があると思います。
あとは接客力を身に着ける教育を常にアップデートしていくということです。
2030年を見据えた、リユース業界・いーふらんの中長期計画
――2030年までに達成したい中期目標などがあれば教えてください。
鹿村氏:「売上1兆円」を達成したいと奮闘しており、来期で1000億円はクリアできそうです。
2030年というと、そう遠い将来ではありません。買い取り事業はもちろんのこと、単価の高い不動産事業も軸の1つとし、成長を加速していきたいと頑張っています。そして海外展開も視野に入れています。最近はアメリカを中心に「越境EC」が成果を見せ始めています。
私たちの見据える市場は20兆円、30兆円レベルであり、ほかの業界と比較しても大きい市場だと思います。金(ゴールド)などは、世界中から集めてきても「オリンピックの公式プール(50m)一杯半分」しか残っていないと言われていて、今後はより一層価値が上がると予想されます。
――フリマアプリなど、競合も増えてきていますね。
鹿村氏:昨今、普及しているフリマアプリは一見競合のように見られますが、実際には明確にターゲットが違いますので、競合していないという認識です。逆に、フリマアプリの企業様がリユース業界のすそ野を広げてくれたと感謝しています。
例えば100万円の高価な時計を売るなら、正しく査定してくれる人がいるところで売りたいと思う人が多いでしょう。「有人店舗」の需要は、今後も続くと考えています。
――買い取りや販売以外の事業も展開されています。現在も新しい分野への進出準備が進んでいるのでしょうか。
鹿村氏:はい、今はリフォームや建築などの事業を行う会社とパートナーシップを組み、不動産分野での新規事業を検討しています。不動産事業は「買い取り」「高単価」、かつ私たちが主顧客とする層との相性も良いという観点で既存事業と共通項がありますから、買い取り事業に付随する新規事業、と捉えています。
また、買い取り事業をしていると、高齢のお客さまとのお付き合いが多くなり、フィットネスやゴルフといったビジネスにも親和性があると考えました。市場規模としてはそれほど大きくないのですが、お客さまのニーズにお応えしたいということで新たにフィットネスやゴルフ関連の事業化もスタートさせています。
安定した資金力を生かしながら、倍速で会社を成長させていきたいと考えています。
――ありがとうございます。最後にひとつ、いーふらんにとって「人」というのはどういう存在でしょうか。
鹿村氏:武田信玄の「人は石垣」じゃないですが、従業員がいなければ売上ひとつ作れません。本当に、人は宝だと思います。
その宝を預かっているのですから、きちんと磨き上げてきれいな宝飾にして世の中の人に見ていただき、大切に取り扱う使命が会社にはあると思います。従業員、会社ともに成長していけるのが理想ですね。
――さすが「おたからや」さんですね!
鹿村氏:ありがとうございます!人財に対する理想は高いと思いますが、その分待遇やチャンスも用意しています。年齢も関係ありません。チャレンジしたい人はぜひ、私たちの仲間になっていただきたいと思います。
【取材後記】
評価が報酬や昇格に反映されることは、従業員のモチベーションアップに直結するが、「なかなかポジションが空かない」という課題を持つ企業も多い。そんな中、いーふらんのように「小さなリーダー」によって成り立つ組織なら、昇格してリーダーになる可能性も高まる。また、しっかり整備されたマニュアルを活用すれば、若手リーダーでも組織統制がやりやすい。形骸化しがちな人事制度がきちんと運用され、従業員のモチベーションや会社の発展につながるという好例だ。
人的資本経営が叫ばれ、個々への対応が重視される時代であるが、適切なマニュアルがあるからこそ社内の認識やビジョンが均質になり、従業員が安心して働けるのだという側面も忘れてはならないだろう。
企画・編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション
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