採用だけに時間をかけられない!これさえあれば採用業務の時間短縮につながるノウハウ・テンプレートまとめ

d’s JOURNAL編集部

この記事の要点をクリップ! あなたがクリップした一覧
  • 兼任人事が抱える困りごとに多いのは「面接を行うまでの調整業務」
  • 日程調整時は「件名をわかりやすく」「要件を過不足なく」伝えることが重要。面接キャンセル防止のためにリマインドメールも送付する
  • 選考スピードアップの対策として「書類選考時の評価ポイントを最低限に」「役員の面接日程を定例化」「事前に選考会日程を設定」などの工夫が必要

企業の人事・採用担当者は採用にリソースを割きたいと考えるものの、実際には営業や総務、広報など他の業務を担いながら活動する“兼任人事”も多い状況です。

この記事では、日々忙しく働く兼任人事の方へ、採用業務を効率化するためのノウハウをお届けします。

採用で工数がかかる業務とは

人事・採用担当者の業務実態に関して、2021年に実施されたIndeedの調査によると、採用・人事以外の業務に従事している人事・採用担当者は72.4%もいるという結果でした。

出典:「採用担当者の業務実態」に関する調査を実施

人事・採用担当者は、限られた時間で採用の成果も出さなければならない状況。自社では何を効率化し、どこに注力すればいいのでしょうか。まずは採用業務をおさらいします。

採用業務の流れ

ここでは、中途採用業務の基本的な流れを大きく4つに分けて解説します。

①採用計画を立てる
どの部署に、いつまでに、何人、どんな人を、どんな手法で採用するのかといった内容を決定します。併せて、採用にかかる予算についても検討します。自社における過去の採用実績や採用予定部門からのヒアリングを通して、採用人数・採用時期などの具体的な採用目標や経験・スキル・求める人物像などの採用要件を策定していきましょう。

②母集団形成
採用計画を立てたら、募集する職種・ポジションの対象となる人材を集めるフェーズに移ります。自社の最新情報や計画した採用要件をもとに求人票を作成していきましょう。その後、求人広告や人材紹介サービス、ダイレクト・ソーシング、ハローワークなどの採用手法を検討・決定していきます。

③選考
応募が集まると、書類選考を実施し、面接日程の調整や案内、面接官の調整、面接の準備など、応募者や人材紹介サービス担当者、面接官など、社内外の関係者とのコミュニケーションが一気にスタートし、さまざまな業務を同時に行わなければなりません。

④採用決定・入社承諾前後のフォロー
選考を通過した応募者には採用決定の連絡(採用条件通知書の送付)を実施します。場合によっては入社承諾前面談を実施するなどして、入社意向を高めてもらいましょう。その後は、入社承諾後辞退を避けるためにも、事務的な手続きのみならず定期的に面談を行ったり、配属予定部署のメンバーとの接点を持てるようにしたりして、フォローし続けましょう。

兼任人事が抱える課題や困りごと

前述の通り、人事・採用担当者はその他の業務を抱えながら採用活動を行っており、採用業務にリソースを割ける時間が少ない状況です。Indeedによると、採用業務で最も重要な面接に時間をかけられておらず、面接を行うまでの調整業務に時間を取られる兼任人事が多いことがわかりました。

また、採用業務における課題では、「求める人物像と異なる人の応募が多い」「求人に対する応募が増えない」など、応募に関する悩みが多い状況です。

出典:「採用担当者の業務実態」に関する調査を実施

募集時に役立つ業務効率化ノウハウ

採用課題として多くあげられる「募集」。ここでは求人票の書き方、魅力を訴求するうえで押さえておきたいポイントをご紹介します。

求人票に記載すべき内容と記載できない内容

まず、求人票に記載すべき項目と記載できない内容があります。テンプレートを活用して効率的に求人票作成を行いましょう。

▼求人票のテンプレートはコチラ

【求人票に最低限記載すべき項目】
1.労働者の業務内容
2.労働契約の期間
3.就業する場所
4.始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間と休日
5.賃金(賞与などについては別途規定あり)
6.健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用有無など

ハローワークなどを利用せず自社採用サイトや求人情報サービスなどに求人広告を掲載する場合、上記6項目を記載する必要は法律上ありません。しかし、転職希望者にとって有益な情報を提供するためにも最低限この6項目は掲載するのが望ましいです。

【求人票に記載が禁止されている事項(男女雇用機会均等法、改正雇用対策法)】
・性別を限定するような表現
・年齢を限定するような表現(一部、例外あり)
・最低賃金以下の給与

参考記事:【弁護士監修】求人票に最低限必要な項目と記載してはいけない項目

自社の魅力を効果的に訴求する方法

応募を集めるためには、求人票に書かれている情報が重要です。売り手市場が加速し、転職希望者の選択肢が増えているため、転職希望者はより経験を活かせる会社や、より希望条件をかなえてくれる会社へ応募します。そのため、求人票にも自社の魅力を適切に記載する必要があるのです。

ここでは、「人が組織に共感する4つの要素(4P)」に沿って自社の魅力をわかりやすく整理するための、採用戦略に関するフレームワークをご提供します。求める人材に訴求するメッセージ(自社の魅力)を【Philosophy(理念・目的)】【Profession(仕事・事業)】【People(人材・風土)】【Privilege(特権・待遇)】の4つの視点で整理することで、求める人材からの共感や理解を得やすくし、転職希望者の応募を後押ししましょう。

▼採用広報のワークシートはコチラ

日程調整時に役立つ業務効率化ノウハウ

採用業務の中で、面接を行うまでの各種調整業務に多くの工数がかかってしまう現状があります。そこで、書類選考から面接日程の調整フェーズを効率化するためのノウハウ・テンプレートをご紹介します。

選考辞退を減らす日程調整の工夫・ポイント

転職希望者は複数の企業の選考を同時に進めることが当たり前になっており、選考中の辞退も多く発生しがちです。自社に最適な人材を採用するためにも、選考のスピードアップは不可欠。選考スピードは転職希望者の心象にも影響します。たとえば、選考結果を早く伝えることで転職希望者は「高く評価されている」と感じ、入社意向が高まることも。一方、選考スピードが遅いと「他者と比較されている」「吟味されている」と感じて心が離れていってしまう可能性もあるのです。

したがって、面接の日程調整を効率的に進める必要があります。書類選考が通過したタイミングで、できるだけ早く日程調整の連絡をしましょう。その際には、

・メールの件名をわかりやすく記載する
・一回のメールで過不足なく要件を伝える
・面接当日のキャンセルを防止するために、前日にもリマインドメールを送付する

ことが重要です。

■日程調整時に記載すべき内容の参考例
・面接日程 ※候補日時を複数提示、もしくは提示してもらう
・所要時間
・場所 ※オンラインの場合は使用ツール・当日のURL・注意事項を追記
・当日の内容
・持ち物

■日程調整のテンプレート例

【件名:株式会社●● 面接日時調整のご案内】●●様

お世話になっております。株式会社●●の●●です。
この度は、弊社の●●ポジションにご応募いただき、ありがとうございました。

●●様の応募書類を拝見させていただいた結果、
ぜひ次の面接に進んでいただきたいと思っております。

早速ですが、面接の日時を調整させていただきますので、候補日をいくつかご返信いただけますでしょうか。
(実施方法は●●、所要時間は●●を予定しております)

※ご返信の際は下記フォーマットをご利用ください。
=======
ご希望日時
第一希望:●月●日(●) ●時スタート~●時終了
第二希望:●月●日(●) ●時スタート~●時終了
第三希望:●月●日(●) ●時スタート~●時終了
=======

当日は相互理解を深められる機会にできればと考えております。
ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

それではご連絡お待ちしております。

選考スピードアップの対策例

選考を短縮することの重要性は理解しつつも、面接回数を減らせなかったり、社内事情で調整が難しかったりする場合もあると思います。そんな状況でも工夫している事例をご紹介します。

■書類選考に時間をかけてしまう

書類選考通過のボーダーラインを7割以上にする

履歴書や職務経歴書で見えるのは転職希望者のごく一部。採用が厳しい時代に、書類だけでは自社に最適な転職希望者を落としてしまう可能性もあります。書類選考の評価ポイントは必要最低限にし、できるだけ直接会って判断するのが望ましいでしょう。

参考記事:欲しい人材に出会えないのは“書類選考”に問題?すぐ取り入れたいレジュメ確認方法

■役員が多忙で直近日程で調整できない

あらかじめ役員や最終意思決定者の選考日程を確保する

書類選考終了時点でまず役員の日程を押さえ、そこに合わせて逆算しながら一次面接日程を組みます。もしくは期初のタイミングで「毎週○曜日の△〜△時」のように、役員のスケジュールを定例の面接時間として固定するのも一つの方法です。

■転職希望者の選考日程がバラバラで、全員の選考が終わるまで採用決定の判断ができない

あらかじめ選考会の日程を設定する

選考日程をあらかじめ設定し、募集のタイミングで提示することで、その日程で応募者を募る方法です。事前に選考のスケジュールを組むことで、同タイミングで選考を行うことができます。

不採用通知をするときに気を付けるポイント

企業側から応募者に不採用の連絡をする際、断り方を誤るとネガティブな企業イメージを与える可能性があります。伝え方や表現によっては、トラブルに発展するリスクもあるのです。一方で、応募者の心情に配慮して丁寧な対応をすれば、好印象を持ってもらえる可能性が高まり、今後何かのきっかけで接点がある際の好印象を与えることも可能です。

▼不採用通知フォーマットはコチラ

参考記事:お祈り“メール”をお祈り“エール”に変える!ABABAに学ぶ「応募者との縁をつなぎ続ける」不採用通知の届け方【連載 第20回 隣の気になる人事さん】

面接時に役立つ業務効率化ノウハウ

続いて、面接フェーズでの効率化ポイントをお伝えします。

面接での見極めや意向醸成のポイントと面接の質問例

採用を成功させるために非常に重要となる面接。応募者とお話する初めてのタイミングです。応募者が自社にマッチするかを見極めると同時に、自社に興味を持ってもらえるように意向醸成も行うことが大切になります。

面接の基本的な流れやチェック項目は下記の通りです。

 

面接の結果は「どのような質問を用意しておくか」によって決まるといっても過言ではありません。限られた時間のなかで最適な人材を見極めるためにも、あらかじめ目的に合った質問項目の整理が重要です。

▼面接質問例はコチラ

参考記事:面接官の質問55選!本音を引き出すポイントと注意点

面接官の連携・面接の申し送りについて

面接を実施した後は、評価を次の面接官へ連携する必要があります。一次・二次面接、最終面接など、担当面接官によって面接評価のポイントが異なるため、その管理は雑多になりがちです。そこで、評価ポイントなどを一元で管理できるフォーマットシートをご提供します。

▼面接評価の管理表はコチラ

一次・二次と面接が進めば進むほど、転職希望者への理解よりも見極めやアトラクト(自社への魅力付け)が重要となります。面接官と次の面接官をつなぐ面接の申し送りは採用成功のための重要なポイントとなるのです。応募者との数少ない接点を充実させ、採用成功するために面接官との連携や面接の申し送りを仕組み化し、面接のプロセスをより良いものにしていきましょう。

編集後記

転職市場が厳しい中で採用を成功させる。人事の「採用活動の効率化」は非常に重要なテーマになっています。自社の採用活動で特に負担になっているのはどのフェーズなのか、効率化・仕組み化できるのはどこなのか。やることが多いからこそ、「まずはここの効率化に着手する」というポイントを明らかにし、一つずつ課題をクリアしていくことが、兼任人事の負担軽減と採用成功につながっていくでしょう。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、文・編集/野村英之(プレスラボ)