スカウト返信率69%の実例から学ぶ!“知られていない”企業が採用広報で勝つ方法
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採用広報の出発点は、自社は知られていないと認識することから。潜在層に向けた「役立つ発信」で知名度の低さを克服できる
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情報発信の基盤は採用サイト。さらに「自社が無理なく続けられるチャネル」を選び、目的別に活用することが成果につながる
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情報発信は社員の自主性だけに頼ると続かない。社長がコミットして「編集長」を任命し、専任で取り組める発信体制づくりを
大企業や有名スタートアップと比べて知名度が低く、自社の魅力を転職希望者に伝える機会が限られている中堅・中小企業は、人材の採用で不利になりがちです。継続的に母集団を形成するには、「どんな会社なのか」「何を大切にしているのか」といった自社の独自性や魅力を、自らの言葉で発信していくことが欠かせません。
とは言え採用広報にかけられる予算や人的リソースが限られるのも事実。採用サイトやオウンドメディア、動画・音声コンテンツ。数ある手段のなかから、自社に最適なスタイルを選ぶにはどうすればいいのでしょうか。「ベイジの日報」をはじめとしたユニークな情報発信を続ける株式会社ベイジ代表取締役・枌谷力氏に、採用課題に応じた情報発信の考え方や、チャネルの使い分け、継続のコツなどを聞きました。
「スカウト返信率69%」につながったベイジの情報発信
──多くの企業が自社の情報を発信していますが、企業が発信する情報は転職希望者の意思決定にどれくらい影響するのでしょうか。
枌谷氏:調査によっても異なりますが、中途入社者に「エントリーした企業について、その企業を前から知っていたか」を尋ねると、「もともと知っていた」と答える人は平均すると20~30%程度です。
大企業や有名スタートアップとは違い、中堅・中小企業の多くはそもそも「自社が知られていない」という現実を認識することが出発点ではないでしょうか。転職希望者に知ってもらうための情報発信がなければ、スカウトを送っても反応がないのが当たり前。しかし、自社を知ってもらうことで大きな差が生まれます。
──ベイジでは「ベイジの図書館」「ベイジの日報」のほかにもSNSやYouTubeなどさまざまなチャネルで情報発信していますが、採用活動にプラスとなっていますか?
枌谷氏:はい。当社が活用しているダイレクト・リクルーティングサービスでは、一般的なスカウト返信率は20~30%とのことですが、当社は69%と大きな成果を上げています。
転職希望者からは「以前からベイジを知っていた」「ベイジからスカウトをもらえると思わなかった」といった反応をいただくことも多いんですよ。これは情報発信をコツコツと積み重ねてきたからこそだと思います。
知名度が低いという大きな弱点も、自社の発信次第で克服できる時代になったと言えるのではないでしょうか。

「転職希望者に役立つ情報」を届けて自社を知ってもらう
──情報発信に力を入れたいと考える一方で、「何を伝えればいいのかわからない」と悩む企業も多いようです。
枌谷氏:転職潜在層に向けていきなり自社の魅力や強みをアピールしても響きません。
私がおすすめしたいのは、「あなたの仕事やキャリアに役立つ情報」を発信することです。最近のトレンドでいえば、自社の事業内容からつながる「生成AI活用術」や「マネジメント術」などを発信すれば興味を持ってもらいやすいのではないでしょうか。当社の場合も、「提案書のつくり方」などの実用的なコンテンツがよく読まれています。
──「役立つ情報」をきっかけに、まずは自社を知ってもらうということですね。刺さりやすい情報は職種や年代などによって変わるのでしょうか。
枌谷氏:変わると思います。
それを考える前提として、まずは「自社がどんな人を求めているのか」の解像度を高めることが大切でしょう。たとえば「Webディレクターとして初めての転職を考えている20代後半の人」を求める人物像にするなら、キャリアへの不安に応える情報が刺さるかもしれません。
具体的には「時代に左右されにくいポータブルスキルとは?」「40代で活躍している人は20代のときに何をしていたのか?」といった内容を伝えるコンテンツです。求める人物像を明確にすれば、発信すべきテーマも自然と見えてくるはずです。
あれもこれも手を出すのではなく、得意領域で「とにかく続ける」ことが大事
──採用サイトやオウンドメディア、SNSなど、現在ではさまざまなチャネルがあります。採用課題に対して、どのようにチャネルを使い分ければいいのでしょうか。
枌谷氏:まずは、どこから手を付けるかを考えましょう。採用をひとつのゴールとするなら、プロセスは母集団形成・面談・面接といった形で進んでいきます。採用戦略としては、後工程からしっかり整えていくべきだと思います。後ろの工程に穴があると、母集団形成などの前工程でどれだけ努力しても、結果としては実りにくくなってしまいます。
その意味では、情報発信の中心になるのは採用サイトだと考えています。母集団形成には広告やスカウト、エージェントなどさまざまな経路がありますが、いずれの場合も転職希望者は採用サイトをチェックするため、まずここを整えるべきです。
そこから先のオウンドメディアやSNSは、目的を決めて使うことが重要です。SNSでいえば、Xは自社を知らない人に向けた認知拡大策として有効であり、Facebookはすでに自社と接点がある人との関係維持に向いています。あれもこれも手を出すのではなく、課題に応じて使い分けることをおすすめしたいです。
最近では動画を活用する企業も増えていますね。当社も今はYouTubeに力を入れています。ただ、動画コンテンツも目的に応じて取り入れるべきだと思います。動画の強みは、テキストだけでは伝えきれない会社の雰囲気や人間関係を、社員の表情や声の温度感、現場の空気感などを通して届けられること。採用プロセスのなかで、そうした情報を伝えるべきポイントを決め、効果的に活用してみてはいかがでしょうか。

──複数のチャネルを併用したほうが、やはり効果的なのでしょうか?
枌谷氏:ひとつのチャネルだけではリーチが偏るので、なるべく面を広く取るのが理想ではあります。
ただ、中堅・中小企業だと人的リソースにも予算にも限界がありますよね。闇雲にチャネルを増やしていくのではなく、自社が無理なく取り組み続けられるチャネルを選ぶべきだと思います。たとえば話すのが得意ならYouTubeやポッドキャスト、文章を書くのが得意ならブログなどです。
重要なのは、とにかく「続ける」ことだと思っています。こうした取り組みは1~2年ではすぐに結果が出ないかもしれませんが、自分たちが楽しみながら続ければ、確実に採用活動にプラスとなりますから。
社員頼みだけでは続かない。「編集長」を置いて情報発信の体制を整える
──取り組みを始めるにあたって、「本当に続けられるだろうか」と不安を覚える企業も多いかもしれませんね。
枌谷氏:私もよくそうした相談を受けます。取り組みを継続していくためには、誰に任せるのが適切なのかと悩む企業も多い印象です。
現実的には、向いていない人が担当しても成果は出ません。社内に発信が得意な人がいれば、広報や採用の文脈で協力してもらうと良いでしょう。
誰もやれないなら、最終的には社長がやるべきです。特に中小企業では社長のイメージが強く、社長の魅力が入社の決め手となることも多いでしょう。
とは言え、社長自身がすべての作業を担う必要はありません。たとえば文章なら、外注してゴーストライターにお任せすれば、社長は「思いの丈を喋る時間」を定期的に取るだけでコンテンツをつくることができます。
──情報発信を継続的に運用していくためのコツを教えてください。
枌谷氏:社員の自発性だけに頼っていると続かないかもしれません。「編集部」の体制を整え、できれば責任者として専任の「編集長」を置くべきだと思います。
当社でも今は専任担当者を置いています。以前は私自身が編集長的な動きを取っていたのですが、現在は担当の社員が日々業務の一環で書いている日報のなかから外部で出せそうなものを選んで編集したり、動画撮影のディレクションをしたりと、情報発信における重要な役割を担ってもらっているんです。
経営層が編集長でなくても構いませんが、トップがコミットしている姿勢を見せないと社員は動きません。できれば専任担当を置くべきです。
この体制づくりに社長がコミットしている姿勢を見せれば、社員も協力してくれるはず。情報発信の体制が整っていけば、採用だけでなく、コーポレート広報全体を強化することにもつながるのではないでしょうか。

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【取材後記】
枌谷さんは、他社の取り組みに「もったいない」と感じる例として、「自社目線だけの発信になっている」ケースを挙げていました。当社にはこんな強みがある、こんなふうに社会へ貢献したい……。採用広報ではともすればそうしたメッセージを発信しがちですが、自社をまだ知らない転職希望者には、あまり響かない内容かもしれません。自社の強みを活かして、まずは誰かの役に立ちそうな“Tips”を届ける。そんな姿勢が、結果的に採用成功へとつながるのだと学びました。
企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也
自社の魅力を効果的に整理するのに役立つ採用広報の『4P』ワークシート
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