チームビルディングとは?目的や具体的なやり方、手法例を解説

d's JOURNAL
編集部
企業や組織が力強い競争力を発揮するためには、単に人材を採用するだけでなく、それぞれの個性やスキルを最大限に発揮させることが重要です。特に、目まぐるしく変化するビジネス環境にあっては、状況の変化に応じてポテンシャルを発揮できる柔軟な組織づくりが求められます。
そこで重要となる要素が、組織開発の手法として知られる「チームビルディング」の考え方です。この記事では、チームビルディングの考え方や重要性、具体的な取り組み方について詳しく解説します。
組織づくりや人材育成を進めるうえで役立つ「人事・マネージャー向け 育成まわりの人気資料6選」を、下記から無料でダウンロードしてご活用ください。
チームビルディングとは

チームビルディングとは、組織の目標を達成するために、チーム内で個々の能力を最大限に発揮するための環境整備や取り組みのことです。この取り組みを通して個々の力を引き出せれば、チーム全体のパフォーマンスの向上につながるため、近年多くの企業で導入されています。
チームビルディングへの理解を深めるにあたって、まずは「そもそもチームとは何か」「チームワークと何が違うのか」を把握しておきましょう。
●「チーム」の定義
●チームワークとの違い
以下でそれぞれ解説します。
「チーム」の定義
そもそも、チームビルディングが目指す「チーム」とは、具体的にどのような集まりのことを指しているのでしょうか。チームビルディングでは、共通の目的や目標を達成するために、メンバーそれぞれが自らの役割を認識した上で協力関係を築いている状態を示します。
一般的な集団を意味する「グループ」と比べると、「共通目的を持っている」「自身の役割を認識している」という点が大きな違いです。チームの形成に成功すれば、それぞれが自身の能力を存分に発揮し、組織全体として高い生産性を発揮するようになります。
チームワークとの違い
チームビルディングと並んで用いられやすい言葉に、「チームワーク」が挙げられます。チームワークとは、集団に属するメンバーがチームの目標を達成するために行う共同作業のことです。
メンバーが同じ目標に向かって連携するという点では、チームビルディングと共通するポイントも多いといえます。ただし、チームワークはメンバーそれぞれの弱点を補填しながら、特定の課題を乗り越えることに主眼を置いた考え方です。
そのため、チームワークは短期的な課題に対して用いられることが一般的です。また、課題の解決が重要視されるため、個人の能力の発揮や成長にはあまり視点が向けられません。
一方、チームビルディングは個人の能力を引き出し、「企業に付加価値をもたらすこと」を目的としています。従業員の育成や成長といった点にも力が入れられ、ある程度の中長期的な視点で取り組むことが特徴です。
チームビルディングの目的
本項では、企業がチームビルディングを進める目的をご紹介します。
●ビジョンの浸透
●適切な人材配置
●心理的安全性の確保
●モチベーションの向上
●リーダーの育成
●チームの協力関係の強化
●パフォーマンスの向上
ビジョンの浸透
チームビルディングの目的の一つは、従業員に対するビジョンの浸透にあります。チームビルディングは一からチームを構築していく取り組みであるため、新規プロジェクトの立ち上げ時に導入されるケースがほとんどです。
チームビルディングの考え方に基づいてチームづくりを行うことで、自然な形で企業のビジョンが浸透していき、理解を得やすくなります。チーム形成の早い段階でビジョンが共有されることで、チーム内の一体感が高まり、メンバーそれぞれに適切なマインドセットが形成されていくでしょう。
そして、ビジョンに基づいた行動が結果につながれば、その効果や重要性をさらに深く理解してもらえるようになります。
適切な人材配置
チームビルディングの過程では、メンバー同士のフラットなコミュニケーションが重要視されます。お互いを知ることが前提とされるため、仕事に関するテーマはもちろん、個性や価値観に対する理解も深まっていくのです。
そして、メンバー間のコミュニケーションが充実していくことで、それぞれに対する理解が深まり、適切な人材配置が行えるようになることが大きなメリットです。
心理的安全性の確保
フラットなコミュニケーションに重点が置かれると、組織内には自然と率直な意見交換ができる安心感が醸成されます。その結果、自分の意見を安心して主張できる「心理的安全性」が築かれていくことも大きな効果です。
心理的安全性が確保されている組織では、会議などの場でも意見やアイデアが生まれやすくなり、メンバーの個性がより反映されるようになります。また、ちょっとした気付きや不安も口に出しやすくなるため、問題が大きくなる前に芽を摘み取ることもできます。
このように、組織のパフォーマンスや従業員の能力を最大限に発揮するためには、欠かせない土台といえるでしょう。
モチベーションの向上
チームビルディングの大きな目的は、従業員それぞれのモチベーションの向上にあります。チームビルディングはメンバーそれぞれの役割を自覚してもらう取り組みでもあり、「各メンバーがどうすれば全体に貢献できるか」をじっくりと見つめられることが特徴です。
その中では、周りとの関わりによってメンバーが自分でも気付いていない特性を発見したり、周囲からどのように必要とされているかを知ったりするきっかけも生まれます。こうしたやりとりの中で、それぞれが自身の役割を強く自覚できるため、自然と仕事に対するモチベーションが向上していくのです。
リーダーの育成
新たなリーダーの育成も、チームビルディングの重要な狙いの一つです。チームビルディングの過程では、リーダーが大切な役割を果たします。
機能的なチームを形成するためには、リーダーがメンバーとのコミュニケーションやモチベーションの管理、ビジョンの浸透などを多角的に進めていく必要があります。そのため、一連のプロセスの中で、組織運営の在り方や人望の築き方などを幅広く学んでいくことができるのです。
チームの協力関係の強化
メンバー同士の協力関係を強化することも、チームビルディングを行う目的の一つとして挙げられます。
チームを構成するメンバーは、それぞれ多様な考えを持っています。メンバー同士の協力関係が希薄だと、プロジェクトを進める際に十分なコミュニケーションが取れず、考え方の違いによって衝突してしまうかもしれません。
チームビルディングを通してメンバー間のコミュニケーションを促進することで、こうした事態を未然に防げます。
パフォーマンスの向上
チームビルディングには、チーム全体のパフォーマンスを最大限に引き出す狙いもあります。
前述の通り、チームビルディングには心理的安全性の確保やモチベーションの向上といった効果が見込めます。チーム内の交流を促進し、メンバー同士が同じ目標の達成に向けて協力するようになれば、全体としてのパフォーマンスもおのずと上がっていくはずです。
「個々の成長を促してチーム力を高めたい」とお考えの人事・採用担当者には、チームビルディングの導入をお勧めします。
チームビルディングを推進して得られる6つのメリット
ここでは、企業がチームビルディングを導入することで得られる6つのメリットをご紹介します。
1.メンバーの主体性を醸成できる
2.ダイバーシティ・インクルージョンの基礎を構築できる
3.チームの創造性が高まる
4.コミュニケーションが活発になる
5.個人の強みを最大限に引き出せる
6.離職率の低下につながる
1.メンバーの主体性を醸成できる
主体的に動くメンバーを育成できる点は、チームビルディングによって得られるメリットの一つです。
チームビルディングを行ってメンバー間の協力関係が強まることで、コミュニケーションが活発になり、業務上の情報共有が促進されます。その結果、現状の課題や自身の役割が明確化されるため、「今自分はどのような行動を取れば良いのか」と自発的に考えて仕事に向き合うメンバーが増えるでしょう。
2.ダイバーシティ・インクルージョンの基礎を構築できる
チームビルディングの導入は、ダイバーシティ・インクルージョンの構築につながる可能性があります。
ダイバーシティ・インクルージョンとは、「メンバーの多様性を受け入れて一人ひとりに平等な機会を与えれば、組織の一体感を高められる」という考え方のことです。チーム全体にこの考え方が広まることで、お互いを認め合う雰囲気が生まれ、メンバー全員が個性を活かしてはたらけるようになります。その結果、個々のパフォーマンスが上がることに加え、チーム全体の結束力も向上するわけです。
「個々の能力を引き出してチーム力を底上げする」という点が共通しているチームビルディングは、ダイバーシティ・インクルージョンを構築する第一歩といえます。
(参考:『ダイバーシティーとは何をすること?意味と推進方法-企業の取り組み事例を交えて解説-』)
3.チームの創造性が高まる
チームビルディングは、チーム内でイノベーションを起こすきっかけにもなります。
チームビルディングを進めることで、メンバーの心理的安全性が高まり、積極的な発言や行動が促進されます。結果として、メンバー同士で刺激を受け合って革新的なアイデアが生まれる可能性も高まるため、創造力のあるチームを目指すことができます。
こうしたメリットを享受できるように、メンバー同士がフラットにコミュニケーションを図れる環境を整えましょう。
4.コミュニケーションが活発になる
メンバー間のコミュニケーションが促進されることも、チームビルディングを進めるメリットとして挙げられます。
コミュニケーションが活発なチームは、生産性が高い傾向にあります。日々のコミュニケーションを通じて、メンバーがお互いの考え方や得意なはたらき方を理解していれば、作業を効率良く進められるためです。
具体的な取り組みは本記事の後半でお伝えしますが、チームの創造性の向上にもつなげられるよう、さまざまな手法でメンバー同士の交流を促すことが大切です。
5.個人の強みを最大限に引き出せる
チームビルディングには、メンバーの強みを引き出せるというメリットもあります。
チームビルディングによってチーム内のコミュニケーションを促すと、メンバーは自身の強みや役割を再確認する機会を得られます。そうして「自分の強みを活かすにはどのような行動を取れば良いのか」と考えて仕事に励むようになれば、パフォーマンスが向上するでしょう。
また企業側は、各メンバーの強みを理解し、それを存分に発揮できる業務を割り当てることで、チーム全体の生産性をより向上させることができます。
6.離職率の低下につながる
チームビルディングは、離職抑止の取り組みとしても有用だといえるでしょう。
繰り返しになりますが、チームビルディングにはメンバーに自身の役割を自覚させ、モチベーションを高める狙いがあります。そうしてメンバーが前向きな気持ちで仕事に取り組むようになれば、従業員エンゲージメントが高まるため、離職率の低下が見込めます。
チームビルディングの5つのプロセス

チームビルディングを円滑に進めるためには、チームの成長段階に応じて適切なアプローチを重ねていく必要があります。そこで意識したいフレームワークが、チームビルディングの代表的な手法として知られる「タックマンモデル」です。
タックマンモデルとは、心理学者であるブルース・W・タックマンが1965年に提唱したチームの段階を示すモデルであり、チームを5つの成長段階に分けて捉える点が特徴です。
1.形成期
2.混乱期
3.統一期
4.機能期
5.散会期
ここでは、各プロセスの特徴や課題、その対策について解説します。
1.形成期
「形成期」は新たなプロジェクトが立ち上がったタイミングなど、チームが形成されたばかりの初期段階を指します。この段階では、まだチームメンバーがお互いのことを知らないため、コミュニケーションへの不安やぎこちなさが生じてしまう点が課題です。
それぞれの役割も見えていないため、リーダー以外のメンバーは自身がどのような振る舞いを求められているのかを把握することも難しいといえます。そのため、何か問題が起きたとしても、積極的な行動を起こしにくく「誰かが何とかするだろう」といった態度を取ってしまうことがあるわけです。
形成期では、リーダーが率先して対話の機会をつくり、コミュニケーションの活性化を図ることが重要となります。相互理解を深めるために、飲み会や交流会を開催して雑談の機会を設けたり、チームとしての目標を浸透させたりすることも効果的です。
2.混乱期
「混乱期」とは、お互いのことを少しずつ知る中で、それぞれの考え方の違いが表に出始める時期です。意見の衝突や対立などが起こりやすいタイミングでもあり、チーム内に摩擦が生まれやすくなってしまうことが課題となります。
一方で、相互に相手の意見を受容できるほどの信頼関係は築かれておらず、議論をしても平行線をたどってしまう場合もあります。そのため、この段階ではチームとしての高いパフォーマンスはあまり期待できません。
ただし、チームとして成熟していくためには、避けては通れない重要な時期でもあるとされています。混乱期を通じてお互いへの理解をさらに深め、胸襟を開いて話し合える関係が築かれると、円滑にその後のプロセスへと進むことができます。
そのため、この時期は単に雑談の場を設けるのではなく、コミュニケーションの質にこだわることが大切です。お互いの納得がいくまで話をしてもらうために、リーダーはバランスを取りながら関係を調整していく必要があります。
個々のメンバーに意見や価値観をヒアリングし、必要に応じて個別にアドバイスをしたり、必要な相手と話せる機会を設けたりすることで、チームがまとまるでしょう。
3.統一期
混乱期を乗り越えると、メンバーの相互理解が進み、チームがまとまる「統一期」を迎えます。この時期になると、メンバー全員がチームの目標や自身の役割を前向きに捉え、積極的にほかのメンバーとの協力関係を築けるようになります。
多少の意見の食い違いがあっても、相手の考えを受容しながら自分の意見を主張できるため、前向きな議論になることが増えるはずです。統一期では、メンバー全員が誤った方向に進まないために、リーダーが正しい道筋を示し続けることが大切です。
また、安定を乗り越えて次のステップに進むためにも、実務での成功体験を重ねて自信を醸成することが重要となります。
4.機能期
「機能期」はチームの成熟期ともいえるステップであり、最もチームとしてのパフォーマンスが高くなります。メンバーそれぞれが自分の役割を自覚し、自発的な行動を起こし始めるため、次々と優れた成果を残せるようになっていくのです。
また、チーム全体として自信やモチベーションも最高潮に達するため、「難易度の高い目標にも積極的にチャレンジしていこう」という気概が生まれていきます。この段階では、高いパフォーマンスをできるだけ長く持続させることが課題となります。
そのため、リーダーはあまり細かい指示出しやアドバイスをするよりも、メンバーのメンタルケアや自立を助けるサポートに回ることが適切です。例えば、モチベーションが空回りして過剰労働に陥りそうなメンバーがいれば、丁寧に話を聞いて休みを取らせるなどの立ち回りが求められます。
5.散会期
「散会期」とは、目標の達成やプロジェクトの終了などでチームが役割を終える時期のことです。どれだけ優れたチームでも、永続的に同じメンバーで活動を続けることはありません。
プロジェクトの期限を迎えたり、求められた成果を上げたりすれば、やがては解散となります。しかし、散会期は決してネガティブなプロセスではありません。
各メンバーにとっては、これまでに培ってきたスキルや経験を振り返り、新たな場で活かしていくための出発点でもあります。そのため、リーダーには特に何かを助言するというよりも、全員が気持ち良くチーム活動を締めくくれるような雰囲気をつくることが求められます。
必要に応じて活動のフィードバックをするなど、各メンバーのさらなる成長につながる機会を設けると良いでしょう。これまで見てきたように、チームビルディングを5つのプロセスで考えていくと、リーダーに求められる役割や立ち回りを客観的に判断できるようになります。
中でも混乱期を適切に乗り越え、機能期をできるだけ長く持続することがチームとしてのパフォーマンスを高める重要なポイントといえるでしょう。
離職率を下げる方法について知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『離職防止の効果的な13の対策|離職率を下げた企業の成功事例も解説』)
チームビルディングの効果を高めるための4つのポイント
チームビルディングの効果は、ただ導入するだけで得られるわけではありません。以下の4つのポイントを意識して、チームビルディングを成功に導きましょう。
1.チーム編成に気を配る
2.明確なチーム目標を設定する
3.メンバーの役割を明確化する
4.多様な価値観を容認する
1.チーム編成に気を配る
チーム編成はチームとしての価値を左右する重要なポイントです。ただ単に必要な人数を確保するだけでは、チームビルディングを実践しても十分な成果は生まれません。
チームとして有効に機能するためには、一人ひとりの能力やメンバー同士の人間関係を考えた上でのチーム編成を行うことが重要です。例えば、事務能力に優れたメンバーに偏っていたり、反対にアイデアマンばかりが集まったりすれば、1つのチームとして十分な機能を発揮することは難しくなります。
一定期間活動すれば、チーム力は自然と養われていく部分もありますが、混乱期からなかなか抜け出せない場合はそもそも編成に問題が隠されている可能性もあるでしょう。その場合は、メンバーの入れ替えを検討することも大切です。
2.明確なチーム目標を設定する
メンバーそれぞれがモチベーションを維持しながら仕事を進めるためには、チームとしての明確な目標設定が欠かせません。そのため、最初期のリーダーの役割は、チームの目標を具体的に設定し、すべてのメンバーに浸透させていくことにあるともいえます。
その上で、チームとしての活動が始まってからは、状況に応じて目標の軽微な修正を重ねていくことも重要です。
3.メンバーの役割を明確化する
メンバーがそれぞれの能力を存分に発揮するためには、自身の役割を明確に認識していることが前提条件となります。チーム内での自分の立ち位置や求められる動きを理解しているほうが、安心して力を発揮しやすくなるのです。
特に、経験や能力の異なるメンバーが集まってくるチームでは、一人ひとりの役割を明確化することが余計に重要となります。形成期や混乱期の段階では、まだそれぞれが自分の役割を認識しにくいため、必要に応じてリーダーが方向性を示すことも良いでしょう。
4.多様な価値観を容認する
チームビルディングの目的の一つである「心理的安全性の構築」は、多様な価値観が容認される雰囲気をつくるところからスタートします。新規で立ち上げたチームには、多様な価値観を持つメンバーが集まります。
形成期の段階では、お互いが相手のことをよく知らないため、踏み込んだ話ができないと感じられてしまう場合が多いものです。リーダーはファシリテーターとしての役割を担い、何でも話せる風通しの良いチームをつくっていく必要があります。
それには、多様な価値観を否定せずに尊重する柔軟な姿勢がとても重要なポイントとなります。チームの活動が円滑に進むよう、リーダーは各自の考えにしっかりと耳を傾け、まずは自分自身がメンバーの本音を引き出せるような信頼関係を築くことが大切です。
組織づくりや人材育成を進めるうえで役立つ「人事・マネージャー向け 育成まわりの人気資料6選」を、下記から無料でダウンロードしてご活用ください。
チームビルディングのための6つの手法
続いて、チームビルディングを進める具体的な6つの手法をご紹介します。
1.緊張をほぐすための「ゲーム」
2.団結を強めるための「アクティビティ」
3.相互理解を深めるための「イベント」
4.主体性を引き出すための「ワークショップ」
5.メンバーとの信頼関係を築くための「1on1」
6.コミュニケーションの機会をつくるための「オンラインワークショップ」
1.緊張をほぐすための「ゲーム」
形成期にあるチームは、まだお互いへの理解が進んでおらず、チーム内にぎこちなさや緊張感が漂ってしまうものです。次のステップに進むためには、できるだけ早く緊張を解くことが重要であり、そうした場面で効果的な取り組みが「ゲーム」です。
メンバー全員で気軽に取り組めるゲームは、楽しみながら友好関係を深めるときに有効な施策といえます。ゲームに勝つためには、メンバーの個性や役割分担をしっかりと把握する必要があるため、お互いへの理解が自然と進んでいくでしょう。
また、時間配分や相手チームの動向なども意識する必要があるため、戦略的な思考を養うことにもつながります。
遊びを通じてチームビルディングを進められるゲームの例
形成期で取り入れやすく、チームビルディングに効果的なゲーム例を以下の一覧表にまとめています。目的や場面にあわせて選定してください。
【チームビルディングに効果的なゲームの例】
| ゲーム名 | どのようなゲームか | チームビルディングの効果 |
|---|---|---|
| 脱出ゲーム | チームで謎解きを行い、制限時間内に会場から脱出を目指す | 情報共有と密なコミュニケーションを促し、連携力を高める |
| マシュマロチャレンジ | マシュマロなどを用いて自立するタワーをつくり、高さを競う | 役割分担と試行錯誤を通じて、意思決定力と協働姿勢を養う |
| 十人十色ゲーム | 身近なお題の回答者の答えを三択で予想し、得点を競う | 相手の立場や認識の違いを理解し、相互理解を促進する |
| アセンブリーゲーム | 配布されたピースを受け渡しながら、全員で同じ形を無言で完成させる | 非言語下での協力と洞察力を求め、協調性の重要性を体感させる |
| コンセンサスゲーム | 架空の状況で話し合いにより合意形成し、課題を解決する | 自分の意見を述べる力と、他者の意見を受け入れる力を強化する |
| NASAゲーム | 宇宙船トラブル設定で15アイテムの優先順位を決め、模範解答に近さを競う | 積極的な意見交換を通じて合意形成力を高め、チームの一体感を醸成する |
2.団結を強めるための「アクティビティ」
チームとしての成果を上げるためには、メンバーが共通の目標に向かって一致団結することが不可欠です。一丸になって行動してもらいたいときには、スポーツやダンスのようにチーム全員で身体を動かす「アクティビティ」が有効です。
アクション要素がある遊びは、あれこれと必要以上に思考を巡らせることがなくなるため、メンバー間の率直なコミュニケーションを促すきっかけになります。関係性をフラットにしやすく、信頼関係や団結を深めたいときに適した取り組みといえるでしょう。
3.相互理解を深めるための「イベント」
社外イベントは、メンバーの相互理解を深めたいときに絶好の機会となります。メンバーのありのままの姿を知りたいときには、バーベキューや社員旅行といった「イベント」を開催することも一つの方法です。
仕事以外の場面でも親睦を深め、相互理解や関係性の強化を促すことが、より良いチームづくりにつながります。仕事を離れたプライベートの一面も知っていると、相手の価値観や個性がより深く理解できるようになるため、コミュニケーションを図る上で大いに役立つでしょう。
4.主体性を引き出すための「ワークショップ」
「ワークショップ」とは、参加者の主体性を重視した体験型の講座やグループ学習のことです。メンバーに主体的に行動してもらいたいときには、ワークショップを実施して、自主的な共同作業を促すことも効果的です。
ワークショップで具体的な成果を上げるためには、メンバー間での議論や試行錯誤が必須であり、良好な協力関係を築かなければ目標を達成することができません。そのため、最終的に成果を出すという経験を共有する中で、チームとしての実力が磨かれていきます。
5.メンバーとの信頼関係を築くための「1on1」
形成期や混乱期では、メンバーのみでお互いへの理解を深めようとしても、なかなか距離が縮まらない場合があります。そこで、リーダーがある程度の主導権を握り、自ら各メンバーとの信頼関係を築いていくことも重要です。
リーダーがそれぞれの個性や強みを把握していれば、チームが混乱期を迎えたタイミングでも、道を踏み外すことなく適切なアドバイスが行えます。また、メンバーも「リーダーには自分を理解してもらえている」という安心感があれば、自信を持って周囲との接点を築けるようになるでしょう。
リーダーとメンバーの信頼関係を深めるためには、定期的な「1on1」が効果的です。1対1のコミュニケーションであれば、周りの目を気にする必要がないため、本音を引き出しやすくなります。
また、1on1によって吸い上げた意見を全体に波及させていけば、自分の考えがチームを向上させていく実感が得られ、積極性や貢献意欲を引き出せるようにもなるでしょう。
(参考:『1on1ミーティングとは|目的や得られる効果と導入・実施方法を解説』)
6.コミュニケーションの機会をつくるための「オンラインワークショップ」
ワークショップをオンラインで実施すれば、同じ場所に集まることが難しいメンバー同士のコミュニケーションも促進できます。
ただしオンラインワークショップには、タイムラグが生じる、また対面と比べて相手の反応が見えにくいなどのデメリットもあります。従って実施する際には、相互理解を十分に深められる時間を確保した上で、全員がコミュニケーションを円滑に図れるように場を回し、デメリットを補うことが大切です。
遊びを通じてチームビルディングを進められるゲームの例
ここでは、形成期のチームビルディングで特に有効なゲームをご紹介します。
●脱出ゲーム
●マシュマロチャレンジ
●十人十色ゲーム
●アセンブリーゲーム
●コンセンサスゲーム
●NASAゲーム
チームビルディングの手法を選択する際に役立ててください。
脱出ゲーム
脱出ゲームとは、チーム全員で謎解きをしながら、制限時間内に会場から脱出するゲームです。謎を解くためには、メンバー同士の情報共有や密なコミュニケーションが求められるため、チームビルディングに効果的といえるでしょう。
謎を書いた紙や部屋から脱出するための鍵などを用意して、手づくりで企画することも可能ですが、法人向けに提供されている脱出ゲームを利用することも一つの方法です。大規模な社内イベントを行う場合など、クオリティを重視する場合はこうしたサービスをチェックしておくと良いでしょう。
マシュマロチャレンジ
マシュマロチャレンジとは、マシュマロやそのほかのアイテムを使って自立可能なタワーをつくり、制限時間内で一番高く積み上げられたチームが勝ちというゲームのことです。ゲームに必要なアイテムは、マシュマロと乾燥パスタ、マスキングテープ、ひもだけであり、ルールもシンプルなため手軽に試せることが利点です。
簡単なゲームですが、高いタワーをつくるためには役割分担や試行錯誤しながら方向性を定めていく必要があります。そのため、周囲の動きに気を配ったり、自身の役割を瞬時に探したりするなど、チームメンバーとしての能力を高めることに役立ちます。
十人十色ゲーム
十人十色ゲームとは、食の好みなど身近なお題に対する回答者の答えを三択から予想し、正解ならポイントを獲得できるというコミュニケーション型のゲームです。参加者はいくつかのグループに分かれ、出題と回答を何回か繰り返した最終得点を競い、最もポイントの高いチームが勝利となります。
用意するものはお題と三択の選択肢のみのため、特別な準備は必要なく、簡単に実施できることが利点です。相手がどのような立場や視点から物事を認識しているのかを意識することができ、チームビルディングに欠かせないメンバー間の相互理解が促されます。
アセンブリーゲーム
アセンブリーゲームは、各メンバーが配られたさまざまな形のピースを組み合わせていき、全員で同じ形のものをつくるゲームです。メンバー間でのピースの受け渡しが可能で、ほかの参加者が欲しているパーツを予想しながら作業を進めていきます。
ただし、ゲーム中は発声やジェスチャーが禁じられています。そのため洞察力や協調性を発揮しなければ、このゲームはクリアできません。アセンブリーゲームをチームビルディングの一環として取り入れることで、メンバーに協力の重要性や自身の行動がチームに与える影響などを学んでもらえます。
コンセンサスゲーム
チーム内で話し合って合意形成を図り、協力しながら一つの目標に向かって作業を進めるゲームを、コンセンサスゲームといいます。架空のシチュエーションに対してメンバー同士が意見を出し合い、限られた時間の中で課題を解決していきます。
コンセンサスゲームによって養われる主な能力は、「自分の意見を述べる力」と「相手の意見を受け入れる力」です。これらの能力は、社内会議をはじめとする意見交換の場で活かされるため、ゲームを通じてメンバーに身に付けさせることは企業にとって大変有意義です。
NASAゲーム
NASAゲームは、参加者をいくつかのグループに分けて行うコンセンサスゲームの一種です。
このゲームは、参加者が「宇宙船の故障によって月面着陸に失敗した宇宙飛行士」という設定で進められます。船内にある15個のアイテムを生存に必要な順番に並べ替え、NASAが公開している模範解答に最も近かったグループの勝利となります。グループとしての回答を出すには積極的な意見交換が求められるため、合意形成の力が養われる上に、チームの仲も深まるでしょう。
チームビルディングを成功させるための注意点
チームビルディングを進めるにあたって注意したいことをお伝えします。
●適切なチーム編成を行う
●達成可能な目標を設定する
●メンバーごとの役割は全員で決める
●「仲良くなる」だけで終わらせないよう工夫する
●メンバー全員が気持ち良く参加できるよう配慮する
取り組みの効果を最大化させるためにも、実施する前に確認してください。
適切なチーム編成を行う
チームビルディングでは、メンバーの適性を踏まえてチームを編成することが重要です。メンバーが自身の強みを発揮できない業務を任せたり、グループワークが苦手なメンバーのみでチームを組んだりすると、かえってパフォーマンスが落ちてしまうためです。逆に、人事評価シートの内容や日々のはたらき方を見てメンバーへの理解を深め、柔軟な視点でチームを編成できれば、チームビルディングの効果を最大化できます。
達成可能な目標を設定する
無理な目標設定を行わないことも、チームビルディングを進める上で注意したいポイントです。
例えばコミュニケーション不足が課題のチームに対して、いきなり完璧な連携を求めても失敗に終わってしまうでしょう。目標を達成できなかったことでメンバーの気持ちが落ち込み、むしろパフォーマンスが下がる可能性も考えられます。
こうした事態を防ぐには、小さな目標を一つずつクリアさせていき、成功体験を積ませることが大切です。
メンバーごとの役割は全員で決める
チームビルディングを進めるにあたって、メンバーの役割をリーダーが一方的に決めることは避けましょう。メンバーの意見を取り入れずに役割を決めると、その判断に納得できないメンバーのモチベーションが下がり、チーム全体の生産性も落ちてしまうかもしれません。
「なぜこの役割を任せたいのか」「実務でどのような行動を期待しているのか」などを伝え、全員が納得した上で最終判断を下すことで、このようなリスクを軽減できます。
「仲良くなる」だけで終わらせないよう工夫する
チームビルディングは、メンバー同士の仲を深めるだけでは不十分です。メンバー間の協力関係を強化しつつ個々のパフォーマンスを引き出して、組織にしっかりと貢献してもらうことが非常に重要です。イベントやワークショップ、1on1などを通じてメンバー同士の理解を深めて、チーム全体で成果を挙げられる体制を整える必要があります。
メンバー全員が気持ち良く参加できるよう配慮する
メンバー全員が、チームビルディングに積極的に参加できるようにするための配慮も欠かせません。チームにうまくなじめていないメンバーがいては、心理的安全性の確保やコミュニケーションの促進がかなわないため、チームビルディングが失敗に終わってしまいます。
実際の取り組みでは、チーム一人ひとりの行動に目を向けて困っているメンバーに声を掛け、必要に応じてフォローすると良いでしょう。もし適切なフォローの仕方がわからない場合は、外部の業者にサポートを依頼することも一つの方法です。
チームビルディングに適したタイミング
多くの企業がどのようなタイミングでチームビルディングを行っているのかを紹介します。
●入社承諾者への研修
●新入社員への研修
●新任管理職への研修
●プロジェクトのキックオフ
入社承諾者への研修
チームビルディングは、入社承諾者向けの研修で、当人たちの不安を和らげるために活用されるケースが多くあります。
入社承諾者にとって就職先を決めることは、これからの人生を左右する非常に大きなイベントです。「ほかの社員と協力しながら、はたらいていけるだろうか…」と、不安を抱くことも少なくありません。
チームビルディングを入社承諾者への研修時に行い、企業の雰囲気をうまく伝えられれば、こうした懸念を払しょくできるため、入社承諾辞退率の低下にもつながる可能性があります。
新入社員への研修
新入社員向けの研修時にも、チームビルディングが行われることがあります。
新入社員の中には、慣れない環境で新たな仲間とともにはたらくことに対し、不安を覚えている方も少なからずいるはずです。チームビルディングを通して新入社員同士のコミュニケーションを促進すれば、仲間意識が生まれて環境への順応が早まり、実務を円滑に進められるようになるでしょう。
このように、新入社員への研修時にチームビルディングを行うことは非常に効果的だといえます。
新任管理職への研修
チームビルディングは、新任管理職の育成にも役立ちます。
チームビルディングを主体的に進める人物は、企業の管理職です。新任管理職が、将来的にチームビルディングを通して組織をつくり上げていくには、取り組みに関する知識やノウハウを実践的に学んでおく必要があります。研修の中でそうした学びの機会を提供することで、チームをまとめるリーダーとしてのスキルを磨けるでしょう。
プロジェクトのキックオフ
新たなプロジェクトを立ち上げる際にも、チームビルディングは非常に有用です。
プロジェクトのキックオフでは、アサインされたメンバー同士が初めて顔を合わせることとなります。このタイミングでチームビルディングを実施すれば、メンバー間での相互理解を深めて協力関係を強化できるため、プロジェクトを成功に導けるはずです。
まとめ
チームビルディングは、メンバーの個性や能力を最大限に活かし、組織全体の成果につなげるための戦略的な取り組みです。そのため、短期的な成果だけでなく、若いメンバーの才能開花や新たなリーダーの育成といった長期的な価値をもたらすことが大きなメリットです。
チームビルディングに取り組む上では、組織の発展段階に応じて、最適なリーダーシップを発揮していく必要があります。タックマンモデルやさまざまな手法を理解し、自社や組織に合った戦略を立て、高いパフォーマンスを発揮できるチームづくりを目指しましょう。
組織づくりや人材育成を進めるうえで役立つ「人事・マネージャー向け 育成まわりの人気資料6選」を、下記から無料でダウンロードしてご活用ください。
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)
人事・マネージャーなら知っておきたい、育成まわりの人気資料6選 <1on1からキャリアアンカーまで>
資料をダウンロード
