ダイバーシティーとは何をすること?意味と推進方法-企業の取り組み事例を交えて解説-

d’s JOURNAL編集部
ダイバーシティーとは「多様性」
ダイバーシティーの推進は、結果的に「労働力不足解消」につながる
ダイバーシティーを推進するためには、人事制度の改善が大きな肝に
ダイバーシティーに対する取り組み事例4つ
政府もダイバーシティー推進を支援。活用できる助成金

「多様性」を意味する言葉である「ダイバーシティー」。組織において、国籍や性別、年齢などの違いを受け入れ、それぞれの多様な価値観や発想を活かすことを意味しています。近年の少子高齢化により労働力人口の不足が見込まれることから、企業ではダイバーシティーに対する意識が高まっています。今回の記事では、ダイバーシティーの意味や推進方法、推進することで得られるメリットについて、事例を交えてわかりやすく解説していきます。

ダイバーシティーとは「多様性」

「多様性」を意味する「ダイバーシティー(diversity)」。ビジネスシーンにおいては「多様な人材を活かす戦略」を指します。「性別」「国籍」「年齢」「障害の有無」など、多様な属性や個人の価値観・発想を取り入れることで、生産性の向上や企業の成長、個人の幸せを同時に目指す考え方です。

ダイバーシティーの分類

ダイバーシティーには「表層的ダイバーシティー」と「深層的ダイバーシティー」の2種類があります。表層的ダイバーシティーとは、「自分の意思で変えることができない生まれつきのもの」や「自分の意思で変えることが困難な属性」を指します。例えば「年齢」「人種・民族」「出身地」「国籍」「身体的特徴」といったものです。一方、深層的ダイバーシティーとは、表面的には同じに見えるが内面的には大きな違いがあり、それが問題を複雑にする側面を持ったものを指します。「宗教」「職務経験」「収入」「働き方」「コミュニケーションスタイル」などが該当します。

●ダイバーシティーの種類・分類

ダイバーシティーの分類

ダイバーシティーが重視される理由

「ダイバーシティー」という言葉は、1960~1970年代にアメリカで誕生しました。当時アメリカでは、あらゆる差別をなくして雇用の均等化を義務付けるための「公民権法」が設立され、多様性を認める動きが広がっていました。もともとダイバーシティーは「差別廃止」のための「リスクマネジメント」として捉えられていましたが、1980年代には「企業の社会的責任」として徐々に浸透していきます。1990年代からはグローバル化が一気に進み、新サービスや新商品を提供していくための「多様な価値観」や「個性」が求められるようになりました。そして現在は、ビジネスチャンスを拡大するための「企業戦略」の一つとしても重視されています。

ダイバーシティーの推進は、結果的に「労働力不足解消」につながる

ダイバーシティーを推進することで、外国人材や障害者、高齢者、女性など、さまざまな特性やバックグラウンドを持つ人材の活躍の場が広がります。少子高齢化が進む日本では、労働力を確保するためにも、ダイバーシティーの推進が必要不可欠です。
また、企業に多様な人材が集まり、多様な価値観を認め合う風土が醸成されることで、より強い組織をつくることができるでしょう。さまざまな人材に配慮した働きやすい環境があれば、従業員の定着も期待できます。

ダイバーシティーを推進するためには、人事制度の改善が大きな肝に

ダイバーシティーを推進させるためには、人事制度の整備や改善が欠かせません。ここでは、ダイバーシティーの推進につながる制度をご紹介します。

制度①:産休・育休制度

女性活躍の具体的な取り組みとして挙げられるのが「産休・育休制度」です。「産休」とは、出産予定の従業員が、予定日の6週間前と産後に8週間取得する「産前・産後休業」のことで、雇用形態に関係なく取得できると法律で定められています。対象の従業員には、企業が加入している健康保険から「出産手当金」が支給されるほか、社会保険料が全額免除となります。どちらも、産休に入るタイミングで企業が申請を行いましょう。
一方、「育休」とは1年間の育児休業のことです。従業員が育児休業の取得を希望した場合、企業は必ず付与しなければいけません。1歳未満の子どもを持つ従業員は男女共に対象となりますが、「同一事業主に引き続き1年以上雇用されている」「子どもの1歳の誕生日以降も、引き続き雇用されることが見込まれる」などの条件を満たす必要があります。また、育休を取得する従業員への経済的支援としては「育児休業給付」があり、産休と同様に社会保険料も全額免除となるため、必ず申請を行いましょう。
(参考:厚生労働省『あなたも取れる!産休&育休』)
(参考:『【弁護士監修】育児休業の取得条件・期間・給付金など、人事が対応すべき申請6つ』)

制度②:短時間勤務制度

育児や家族の介護を行う労働者の「仕事と家庭との両立」を目的とした制度に「短時間勤務制度」があります。「改正育児・介護休業法」により、3歳未満の子どもを持つ労働者や要介護の家族を持つ労働者について、短時間勤務などの措置を講じることが企業に義務付けられています。近年では、労働力不足への課題感から、短時間勤務の労働者も貴重な戦力として考える企業も増えてきました。従業員がライフステージや家族の状況に合わせて、柔軟で多様な働き方を選択できる制度として有効です。
(参考:『【弁護士監修】短時間勤務制度を育児や介護、通院等で正しく運用するための基礎知識』『ワーママの活躍に必要なのは、特別扱いじゃない。働き方ではなく生き方を尊重しよう』)

制度③:リモートワーク制度

時代の変化とともに急速に導入が進められているのが「リモートワーク(テレワーク)」です。特に、最近は「在宅勤務」を導入する企業が増えています。リモートワークの導入にあたっては、「会社への帰属意識の低下」「コミュニケーション量の不足」など、懸念される点もありますが、チャットツールやクラウドサービスを利用することで、他の従業員とコミュニケーションを取りながら業務を行うことができます。一方で「通勤時間・交通費の削減」「オフィスコストの削減」「労働生産性の向上」「ワークライフバランスの充実」といったメリットもあります。コミュニケーションやセキュリティの強化など、十分な対策を行った上で導入を進めるとよいでしょう。
(参考:厚生労働省『テレワークモデル就業規則~作成の手引き~』)
(参考:『【弁護士監修】在宅勤務の導入方法と押さえておきたい4つのポイント◆導入シート付』)

制度④:定年延長制度

少子高齢化に伴う労働人口の減少が社会問題化している中、65歳までの雇用確保義務化(全企業適用は2025年から)や、「70歳まで働き続けられる環境の確保」を政府が検討し始めるなど、「定年延長」への動きが進んでいます。意欲ある高齢者に活躍してもらうために「定年の延長」や「再雇用・勤務延長制度の導入」「定年の廃止」といった雇用による対応のほか、「他企業への就職の支援」や「個人の起業支援」といった雇用以外の対策も検討しましょう。
(参考:『定年延長70歳の時代、企業はどう対応するか。退職金や給与、役職定年…検討事項は多数』)

制度⑤:障害者雇用率制度

「障害者雇用促進法」では、一定数以上の労働者を雇用している企業に法定雇用率の達成を義務付けています。現在民間企業における法定雇用率は2.2%で、「45.5人以上雇用している企業は1人以上を雇用」する必要があります。なお、2021年には法定雇用率が2.3%となる予定です。
障害者雇用を促進することは「全ての人々が働きやすい環境の整備」や「多様な発想が生まれやすい風土づくり」にもつながります。障害の特性に対してどのような配慮が必要なのかを知り、活躍できる環境を提供しましょう。
(参考:『【社労士監修】法定雇用率とは障害者の雇用率。計算式や罰則、企業の対応は?』『【最新版】障害者雇用促進法の2020年改正を図解!企業がとるべき対応とは?』)

ダイバーシティーに対する取り組み事例4つ

ダイバーシティーを積極的に推進している企業では、どのような対策を行っているのでしょうか。4つの事例をご紹介します。

三起商行株式会社 ~独自の人事制度で女性の活躍と外国籍メンバーとの協業を実行~

子供服の企画・製造・販売を中心とした事業を営むミキハウスグループでは、従業員全員の力を最大限に活かし、ダイバーシティーを推進するために独自の人事制度に取り組んでいます。その一つとして、子育て経験者の積極的な活用と雇用を行い、子育て経験を大切な「キャリア」と捉え、活躍を支援しています。また、海外戦略を進めるためには外国籍スタッフの存在が不可欠だとし、外国籍メンバーとのチームワークを強める対策として、「海外からの顧客が多い店舗に外国籍スタッフを配置すること」「日本人スタッフとの不公平が発生しないように考慮した人事評価制度を設計すること」などに取り組んでいます。
(参考:『ミキハウス、オリエンタルランドが取り組む「ダイバーシティ×採用」最前線』)

HILLTOP株式会社 ~社員の提案を基に「短時間勤務」「テレワーク」を制度化~

ものづくりメーカーのHILLTOP株式会社は、「社員提案」による働き方改革を積極的に実施し、事業の生産性を向上させたことにより注目を集めています。同社は全社員の40%を女性が占めており、社員による提案を基に「短時間勤務」「テレワーク」「子連れ出勤OK」などが制度化されました。実際に制度を活用する社員も多く、働きやすい職場づくりが現在進行形で進んでいます。
(参考:『年間3000人が視察!NASAも認める快進撃の秘訣は「社員提案の働き方改革」』)

株式会社クレオフーガ ~従業員が無理し過ぎずに働くことができる「リモートワーク」を採用~

ストックミュージックサービスなどの開発運営を行う株式会社クレオフーガでは、リモートワークを導入しています。リモートワークを認めることで、体調が優れないときは出社せず在宅勤務にするなど、従業員全員が無理し過ぎずに働けるようになったようです。コミュニケーション不足の対策として、週1回の全社テレビ会議や日報などの定例的な報告に加えて、チャットでのコミュニケーションをこまめに取るよう工夫しています。
(参考:『社内コミュニケーションは質と量。岡山と東京を結ぶ、リモートワークへのスタンスとは』)

サントリーホールディングス株式会社 ~高齢者の一層の活躍を図る「65歳定年制」~

飲料品などを製造・販売するサントリーグループでは、ダイバーシティー経営の一環として、2013年4月に「65歳定年制」を導入しました。高齢者のさらなる活躍を期待し、60歳以降の就労希望に応える形で実現されました。60歳以前の人事制度は変更せず、60歳以降は新たな人事制度が適用となるようです。
(参考:『定年延長70歳の時代、企業はどう対応するか。退職金や給与、役職定年…検討事項は多数』)

政府もダイバーシティー推進を支援。活用できる助成金

働き方改革を実現する上で重要な「ダイバーシティー」の推進は、政府の重要政策の一つに位置付けられており、積極的に支援しています。推進にあたって、利用できる助成金をご紹介します。

助成金①:働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

テレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部が補助されます。支給対象となるのは、「テレワーク用通信機器の導入・運用(パソコン、タブレット、スマートフォンは対象外)」「保守サポートの導入」「クラウドサービスの導入」などです。支給額は、支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部が、目標達成状況に応じて支給されます。
(参考:厚生労働省『働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)』)

助成金②:障害者雇用促進法における「事業主に対する給付金制度」

「障害者雇用促進法」の一部改正により、2020年4月から民間企業への給付金制度が創設されました。障害者を週20時間未満雇用する事業主に対して、特別給付金が支給されます。短時間労働の障害者を積極的に雇用することを目的にしており、企業では障害者を雇用するために必要となる、設備投資などの経済的負担を軽減することができます。
(参考:『【社労士監修】法定雇用率とは障害者の雇用率。計算式や罰則、企業の対応は?』『【最新版】障害者雇用促進法の2020年改正を図解!企業がとるべき対応とは?』)

助成金③:両立支援等助成金

仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主を対象に、助成金が支給されます。「両立支援等助成金」には、女性の活躍推進を支援するための「女性活躍加速化コース」、介護休業の取得を支援する「介護離職防止支援コース」、職場復帰後の支援となる「育児休業等支援コース」、男性の育児休業取得を後押しする企業を対象とした「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」があります。
(参考:厚生労働省『両立支援等助成金』)

まとめ

ダイバーシティーは、「多様な人材が一緒に働くことで組織を活性化させる」という考え方です。日本でもダイバーシティーは徐々に浸透しており、「女性の活躍推進対策」「シニア層が長く働き続けられる環境づくり」「障害者の雇用強化」などに積極的に取り組む企業が増えています。人手不足解消における有効な打ち手とも言われる、ダイバーシティーの推進。今回の記事を参考に、自社に合ったダイバーシティーの在り方を検討し、推進してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、企画/d’s JOURNAL編集部)