1on1ミーティングとは|目的や得られる効果と導入・実施方法を解説

d’s JOURNAL編集部

部下の成長促進や部下と上司の信頼関係の構築などを目的に実施される「1on1ミーティング」。1on1を適切に実施することで、モチベーションやエンゲージメントの向上、課題解決などの効果が期待できます。1on1のネタ(話すこと)や失敗しないためのコツなどを知りたい方も多いのではないでしょうか。

この記事では、1on1の目的や得られる効果、導入・実施方法などについて解説します。1on1を効果的に実施するためのお役立ち資料もダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

1on1ミーティングとは

「1on1(ワンオンワン)」とは、上司と部下が定期的に行う1対1の面談のことです。まずは、1on1の目的や評価面談との違い、日本で広まった背景について確認していきましょう。

1on1が日本で広まった背景

1on1はもともと、アメリカのシリコンバレーで企業文化として根付いていたものです。日本では、2012年にヤフー株式会社が導入したことをきっかけに注目を集めるようになってきました。

ヤフー株式会社は1on1を導入した際、「社員一人一人の才能と熱を解き放とう」という目標を掲げました。この目標は、1on1が日本で広まった以下の背景と深く関係しています。

背景①:不確実性の高い「VUCA」の時代への対応

現代はあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難な状態が続く「VUCAの時代」と呼ばれています。この「変動性」「不確実性」「複雑性」「あいまい性」が増している時代の中で企業が成長するためには、「人材マネジメントの刷新」や「ステークホルダーへの積極的な発信と対話」が必要です。

マネジメントの在り方を見直し、対話を効果的に進めるためには、上司と部下の信頼関係や相互理解が不可欠なため、対等かつ頻度の高い1on1が重要視されるようになりました。

(参考:『【3分でわかる】VUCAの時代で何が変わる?取り残されないための4つのスキルとは』)

背景②:社内の人材を流出させないために

近年、少子高齢化による労働人口の減少や、終身雇用の崩壊による転職活動の活発化が進んでいます。そうした状況の中、「専門性の高い優秀な人材に、いかに長く自社で働き続けてもらうか」は多くの企業にとっての共通課題と言えるでしょう。

そのため、女性の活躍といったダイバーシティーを推進・受容する動きや、テレワークといった働き方の多様化などが、働き方改革の一環として進められています。

多様な働き方や価値観に対応するため、上司は部下の状況を把握し、一人一人が自律的に行動できるようサポートする必要があります。そのための手段の一つとして、1on1が日本でも広がり始めたと言えます。

1on1と評価面談との違い

評価面談は、1on1と同様に「上司と部下が1対1で話す機会」として知られています。しかし、1on1と評価面談では実施目的と対話の方法、頻度が異なります。評価面談では部下の人事評価を決定・通知することを目的としている一方、1on1では部下の能力を高めたり引き出したりすることを目的としています。目的が違うため、対話の方法も評価面談は「上司から部下へ」話すことが多いのに対し、1on1は「上司と部下が対等に」話すことが多いという違いがあります。

また、評価面談は主に期末など人事評価のタイミングでのみ行うのに対し、1on1は「週に1回」「隔週に1回」など短いサイクル(長くても月1回)で行うという点も異なります。

1on1ミーティングの4つの目的

1on1ミーティングは目的に沿って実施することが重要です。主な目的としては、次の4つが挙げられます。

<1on1の目的>
・部下の成長を支援する
・中長期的なキャリア形成について話し合う
・心身の悩みを把握する
・部下と上司の信頼関係を構築する

目的ごとに、1on1を実施する際のコツを紹介します。

1on1ミーティング

部下の成長を支援する

1on1を実施する目的の一つは、部下の成長をサポートすることにあります。そのために、上司は部下の話を最後まで傾聴し、業務中では話しにくいような部下の悩み・不満にも寄り添う姿勢を示しましょう。悩みや不満を知ることは、部下の課題を発見しやすくするとともに、適切なマネジメントを行うヒントにもなります。

一方、部下は上司からのフィードバックによって業務を通じた経験を振り返ることができ、取り組むべき課題を明確にできます。1on1を繰り返し実施することで自身を振り返る習慣が身につき、経験学習のサイクルも得られるため、成長促進が期待できるでしょう。

中長期的なキャリア形成について話し合う

1on1は、現在抱えている仕事に関する話だけではなく、中長期的なキャリア形成について話し合うことも、目的としています。中長期的なキャリアについて考える機会を設けることで、部下自身が自分の適性や可能性に気づくきっかけにもなります。

上司は、1on1で把握した「部下の思い描くビジョン」に合わせたマネジメントを行い、部下のモチベーション維持を図りましょう。

心身の悩みを把握する

目標設定面談や評価面談とは異なり、1on1では部下のプライベートな悩みにも寄り添うことができます。基本的に部下の話に耳を傾けることを重視するため、部下が話したがらないことまで無理に聞く必要はありませんが、部下が何か悩みを口にしたときはしっかりと最後まで話を聞くことが大切です。

このように1on1で部下の心身の悩みを把握することは、想定外の休職・離職を防ぐためにも重要と言えるでしょう。

部下と上司の信頼関係を構築する

1on1は、上司と部下の信頼関係を構築することも目的としています。信頼関係を築く上で重要なのが相互理解です。上司は、部下が仕事やプライベートでどのようなことを考え、悩んでいるのかを1on1を通じて把握しましょう。また部下にとっても、1on1は上司の人柄や考え方、仕事の進め方などをより深く理解できる機会となります。

1on1や日頃のコミュニケーションを重ねて相互理解を深め、信頼関係を築いていくことで、業務がより円滑に進むようになるでしょう。なお、上司が積極的に自己開示することで部下も心を開きやすくなるため、1on1の冒頭にアイスブレイクの時間を設け、互いの緊張をほぐすことをおすすめします。

1on1ミーティングで得られる5つの効果

1on1を行うことで、さまざまな効果が期待できます。

1on1で得られる5つの効果

①:部下自身の成長が促される ~経験学習のサイクル~

1on1では、部下が上司に定期的に状況報告を行います。その過程で、自分の目標を立てて行動に移し、結果を振り返った上で次の目標と行動を決定する「経験学習」のサイクルが機能するため、部下自身の成長が促されるでしょう。

メンバーが成長することで、イノベーションの創出やチームパフォーマンスの向上も期待できます。

②:信頼関係構築につながる ~コミュニケーション・人間関係の改善~

1on1を導入することにより、上司と部下のコミュニケーション機会が増加します。部下が現状報告を行い、上司がフィードバックを行うことで、「多忙なあまり上司・部下間で話をする機会が少ない」「世代間のギャップがあり、うまくコミュニケーションが取れない」といった課題を解消でき、信頼関係構築につながるでしょう。

また、上司と部下が定期的に対話できるようになるため、「すぐに相談できるので業務上のトラブルが減る」「意見の食い違いが減り一致団結できる」など、人間関係改善の効果も期待できます。

③:業務の状態や量など現場・部下・メンバーの状況把握 ~企業全体の問題解決~

1on1を定期的に行うことで、上司は業務の進捗状況や業務量などを把握しやすくなります。個々のメンバーが抱える課題はチームや企業全体の問題にも関わるため、個々の状況を理解することで、企業全体の問題解決の糸口が見つかるかもしれません。

また、現場や部下の課題を認識し、共に解決策を考えることは上司にとっての経験学習になるため、上司自身の成長にもつながるでしょう。

④:キャリア開発を支援できる  ~中長期的なキャリアや適切な人材配置~

1on1は、メンバーが中長期的なスパンで自身のキャリアを考えるきっかけにもなります。1on1を行うことで、部下の強みが明確になり、「どういったキャリアが適しているか」「どういった役職・職種での活躍が期待できるか」のヒントを伝えることができます。

それにより、部下の中長期的なキャリア開発を支援することができるだけでなく、適切な人材配置にもつながります。

(参照:『キャリア開発が企業にとって必要な3つの理由と、その手法・取り組み事例について』)

⑤:定着率の改善につながる ~モチベーションや愛社精神の向上~

以上の4つの効果により、部下は「この上司と一緒に仕事を続けたい」「この会社で自分のキャリアを築きたい」と考えるようになるでしょう。

1on1には、一人一人の仕事へのモチベーションや企業への愛社精神を向上させる効果が期待できます。また、それらが向上することは定着率の改善にもつながるでしょう。

1on1ミーティングで話すこと(ネタ選定)

1on1ミーティングでは限られた時間を有効に活用するために、事前にいくつかのテーマを用意しておくことが重要です。1on1ミーティングで取り扱うテーマとしては、「体調やメンタルの状態」「モチベーション」「将来のキャリア」「業務や組織の課題」「目標設定と自己評価」「企業の戦略・方針の共有」「プライベート」の7つが挙げられます。

7つのテーマのうち、どのテーマを選ぶのかは、1on1の主役である部下に決めてもらうのも有効な方法です。しかし、1on1の場で唐突に「好きなことを話して」と伝えても、部下は「何を話したらよいのだろう」「急に言われても、話すことがない」と困惑してしまうでしょう。

そのため、事前にアジェンダを部下に共有し、それを基に話したいことを考えてきてもらい、1on1の場では上司は部下から話を引き出すようにすることをおすすめします。

1on1の7つのテーマについては、下記の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

(参考:『【具体例あり】1on1で話すことの考え方や目的に沿ったテーマ例を解説』)

1on1ミーティングの注意事項

上司のスキルによって、成果が左右される

1on1は上司のコミュニケーションスキルによって成果が左右されるため、成果を得るには上司のマネジメントスキルを高めることが重要です。1on1では、仕事だけでなくプライベートに関する話もテーマとなることが想定されますが、上司としては、いかなるテーマであっても「態度」や「聴き方」に注意しましょう。

なぜなら、上司が部下を評価するような態度を見せたり、話を最後まで聴かずに意見したりすると、部下は考えていることや悩みなどを素直に話せなくなってしまうためです。

まずは、部下の話を最後までしっかり聴き、その上で、部下の気づき・発想の転換を促すような質問をします。「傾聴→質問→傾聴」が終わった後に、はじめて上司から部下にアドバイスするという流れを意識するとよいでしょう。

業務の負担が増加してしまう

1on1は一人実施するだけでも、スケジュール設定や事前準備、フィードバックなどの工数がかかります。1on1の対象となる部下の人数が多ければ多いほど、上司の業務負担が増加してしまう点に注意が必要です。

同様に、部下側も業務中に時間を割いて1on1に参加するため、有益な時間でないと「時間が無駄になった」「1on1をするくらいなら、業務を進めたかった」というように不満を抱いてしまうこともあるでしょう。

上司の負担を軽減するために、「1on1で話した内容の記録」や「部下の成長の振り返り」ができるシートの活用をおすすめします。

継続的な実施が必要になる

1on1は定期的に実施し、長く続けることでようやく「成果があった」と実感できる取り組みと考えられています。成果が出るまで継続的に実施していく必要がある点を上司・部下とも事前に理解しておかなければ、不満の声があがりやすいでしょう。

なお、1on1を継続的に実施するにあたり、予定通りの日程で開催できないケースが増えることも考えられます。そうした場合、一方的にキャンセルするのではなく、予定を部下と再調整して実施することが重要です。部下との信頼関係を崩さないよう、「部下のために時間を割くのも上司の務め」であると認識していることを、きちんと態度で示しましょう。

1on1ミーティングの導入に必要な準備

1on1の実施効果を得るためには、事前の準備がとても大切になります。次の5つのポイントをチェックしておきましょう。


それぞれの点について、さらに詳しく解説します。

①導入目的を明確にする

1on1の効果を高めるには、会社としてなぜ導入するのかの目的を明確化する必要があります。実施する前に、経営層や人事担当者が自社の課題を把握した上で、課題解決のために1on1が有効な手段となることを認識しておくのが大切です。

そして、全体ミーティングや研修会などの場を通じて、1on1を実施する目的やスケジュールなどを共有していきましょう。従業員の理解と協力を得ることによって、1on1が形骸化することを防げるはずです。

②日頃のコミュニケーションを大事にする

1on1を実施したからといって、いきなり目立った成果を得られるわけではありません。1on1をより効果的に実施していくためには、日頃から部下とコミュニケーションを図り、信頼関係を築いておくように努めておく必要があります。

何か特別なことをするというより、部下の意見を大切にしたり、約束を守ったりするといった基本的な部分に意識を向けてみましょう。信頼関係はすぐに築けるものではないため、時間をかけて醸成していくことが大事です。

普段なかなか話すことができないテーマこそ、1on1を通じてお互いの認識を深めるようにしてみましょう。

③担当者の研修を行う

1on1を実りあるものとするには、実施を担当する上司のスキルアップを図っておく必要があります。部下の話を聞き出すスキルやアドバイスを行う能力に欠けていると、1on1が形骸化する恐れがあるので注意しておきましょう。

特にコーチングスキルとフィードバックに関するスキルは、重点的に磨いておきたいものです。コーチングスキルが高くなれば、部下に対して適切な質問を投げかけられます。また、部下の能力を向上させるにはフィードバックスキルも磨いておく必要があります。

会社として、管理職向けの研修を実施したり、フォローアップの体制を構築したりすることで、スムーズに1on1が行える環境を整えることが大切です。

④具体的なテーマシートを作成する

部下の話に耳を傾け、一緒に課題について考えるのが1on1ではありますが、上司のなかにはそうしたスキルが不足している人もいるでしょう。研修会などを通じて能力を高めることは大事ですが、実際に身につくまでには時間がかかるものです。

そのため、あらかじめテーマシートを作成しておくことで、1on1に不慣れな上司であっても、適切な形でミーティングを行うことができます。テーマシートに盛り込んでおきたい項目の一例は次のとおりです。

<テーマシートに盛り込んでおきたい項目>
・目標への達成度
・部下から上司に対する要望
・上司から部下へのフィードバック
・部下の健康状態
・やりがいを感じる業務、キャリアに対する考え方

上記はあくまで一例ですが、これらの項目を盛り込んだテーマシートを作成しておくことで、1on1の質を高められます。1回ごとの時間は限られているので、ある程度テーマを絞り込んでおくことも大事です。

また、テーマシートを作成しておくことで、次回の1on1を行うときの参考資料として役立つでしょう。記録の蓄積によって、部下の成長や変化に対して早めに気づけるようになります。

⑤スケジュールを決める

1on1は継続的に取り組むことによって、次第に効果を発揮していきます。そのため、事前にスケジュールを決めておくことで、年間を通じて継続した取り組みとなっていくでしょう。

具体的な日程については柔軟に対応すべきですが、週1回ペースで行うのか、月1回ペースで行うのかといった大まかなスケジュールは事前に組んでおいたほうが無難です。定期的な1on1の実施によって、部下は自分の振り返りを習慣化でき、会社としても従業員の状況を適切に把握できます。

また、一人の上司で複数の部下を抱えている場合は業務量を調整したり、管理ツールを導入したりして負担の軽減を行うことも大切です。継続的に1on1が実施できる仕組みをソフト面とハード面の両方から組み立てていきましょう。

1on1ミーティングで活用できるシート

1on1ミーティングを意味のあるものにするためには、部下と話をした内容や成長などを振り返れるよう、記録を残しておくことも大切です。

d’s JOURNALでは、1on1で活用できるシートと、キャリア開発を促す1on1のポイントについてまとめたシートをご用意しました。下記より無料ダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

1on1ミーティングの成功事例|導入企業と取り組み内容

1on1の導入に成功している企業は、どのような工夫をしているのでしょうか。企業の成功事例を3つご紹介します。

事例①:ヤフー株式会社 ~「才能や情熱を解き放とう」を目標に~

インターネット関係の事業を幅広く手掛けるヤフー株式会社では、「社員一人一人の才能や情熱を解き放とう」という目標の下、2012年に1on1を導入しました。部下の抱える課題を明確にし、目標達成に向けてその課題をどう乗り越えていくのかの気付きを与える時間として、1on1が活用されています。現在では、「自らつくる自律的なキャリア形成」の一環として、1on1が定着しているようです。

(参照:『ヤフーにおける人事戦略とは。人財開発企業に向けた取り組み【セミナーレポート】』)

事例②:HENNGE株式会社  ~外国籍の社員も1on1を積極的に実施~

HENNGE株式会社(旧:株式会社HDE)は、積極的に海外人材を受け入れている企業の一つ。彼ら彼女らに長く定着してもらうために、海外ではなじみのない労務制度などをはじめとしたギャップなどへのフォローアップを目的に、1on1を実施しています。不安や悩みを可視化することで他社員にも適用することができ、良い循環となっているようです。

(参照:『世界中から3000応募!日本の中小企業が見出したエンジニア採用の「ブルーオーシャン」』)

事例③:パーソルキャリア株式会社 ~キャリア形成と多様な働き方をサポート~

パーソルキャリア株式会社では、定期的に上司と部下が面談を行っています。1on1で話した内容を基に、さまざまなキャリアに挑戦したり、多様な働き方を見つけたりできる仕組みがあります。そのため、社員一人一人がやりがいを感じながら仕事に取り組んでいます。

(参照:『「受け身型 IT部門」からの脱却。エンゲージメントが高い自律型組織のつくり方』)

まとめ

部下の話に耳を傾け、部下が日頃抱えている悩みや課題を把握するために行う1on1ミーティングは、上司・部下の信頼関係のもとで成立します。相互理解を深め、信頼関係を構築するために、普段からコミュニケーションを取り、話しやすい環境を整えることから始めましょう。

より効果を高めるためには、「何のために1on1を実施しているのか」1on1の実施目的を見失わないようにすることが重要です。

今回の記事では、1on1の導入に必要な準備や注意点、企業の取り組み事例なども紹介しました。これらを参考に1on1を実施し、部下の成長促進や信頼関係の構築、キャリア開発の支援などにつなげてみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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