福利厚生は従業員定着につながるのか?20代・30代が本当に求める制度を調査

d's JOURNAL編集部
勤務先にはどのような福利厚生がある?
実際に利用したことのある福利厚生は?
従業員満足度の高い福利厚生は?
従業員満足度があまり高くない福利厚生とは?
あると嬉しい福利厚生は?

転職希望者が転職先を選ぶ際に重視するポイントとして「福利厚生」があります。「福利厚生が充実している=働きやすい」と捉える人も多いため、制度を整えることで「優秀な人材の確保につなげたい」「従業員の満足度・定着率を高めたい」と考える企業も多いのではないでしょうか。福利厚生を導入・見直す際には、「従業員の満足度を高める福利厚生とは何か」「どのような制度に不満や不公平を感じているのか」を知ることが大切です。

そこでd’s JOURNAL編集部では、20代・30代の会社員278名にアンケートを実施。福利厚生の利用状況や満足度、あるとうれしい制度など、福利厚生についての社員の本音を探りました。

※構成比の合計は、四捨五入の関係で100%にならない場合があります。

勤務先にはどのような福利厚生がある?

企業のイメージアップや従業員満足度を向上させる手段として、福利厚生の充実に力を入れている企業が増えています。実際に企業ではどのような福利厚生を導入しているのでしょうか。

「勤め先の福利厚生」について聞いたところ、最も多く挙がったのが「通勤手当支給」で84.5%でした。続いて「育児・介護休暇制度」50.4%、「慶弔・災害見舞金」43.2%、「出産お祝い金」38.8%、「特別休暇制度」34.2%が上位となっています。

勤め先にある福利厚生は?

グラフからは、従業員の経済的な負担を軽減する「通勤手当」や「住宅補助」、「慶弔・災害見舞金」のほか、ワーク・ライフ・バランスを重視した「育児・介護休暇制度」や「特別休暇」を導入している企業が多いことがわかります。一方で、「自社の福利厚生に何があるかわからない」「福利厚生がない」と、福利厚生が整っていなかったり、周知されていない企業も一部にはあるようです。

実際に利用したことのある福利厚生は?

最も多く導入されている福利厚生は「通勤手当支給」でしたが、実際にはどの福利厚生がよく利用されているのでしょうか。

「利用したことのある福利厚生」について聞いたところ、「通勤手当支給」が79.5%と、最も多い結果となりました。続いて「住宅手当・家賃補助」26.3%、「社員食堂(食事補助)」21.6%、「医療・保険(保険加入補助など)」18.7%、「特別休暇制度」17.3%が上位となっています。

利用したことがある福利厚生制度は?

「通勤手当」や「住宅・家賃補助」「食事補助」などは、一度申請すれば毎月支給されるため、自然と利用者が多くなっていると言えます。また、社員食堂は導入状況としてはまだ低いものの、よく活用されていると言えるでしょう。他にも、エンゲージメントやモチベーションの向上を目的に「特別休暇」や「社員旅行・レクリエーション」を利用する人も一定数いることがわかります。一方で、「社宅・独身寮の提供」や「育児・介護休暇」は、制度はあるものの利用率が低い現状にあります。また「制度はあるが利用していない」という声もありました。

従業員満足度の高い福利厚生は?

企業が導入している福利厚生と、実際に利用されている制度には、違いがあることがわかりました。それでは、利用されている福利厚生のうち、どのような制度の満足度が高いのでしょうか。

「福利厚生の満足度」について聞いたところ、「慶弔・災害見舞金」が81.0%で最も高くなっています。次いで「育児・介護休暇制度」が77.8%、「出産お祝い金」が77.5%、「医療・保険(保険加入補助など)」が77.4%、「特別休暇制度」が77.3%と、僅差で続いています。

満足度の高い福利厚生

満足度の高い上位3つの制度について、その理由も含めてご紹介します。

満足度1位「慶弔・災害見舞金」

慶弔・災害見舞金は、「満足している」「どちらかというと満足している」を合わせると、81%という高い数値となりました。冠婚葬祭や災害は、予期せずに発生することも多く、思わぬ出費が経済的な負担となり得るため、満足度が高くなったと考えられます。

満足度1位「慶弔・災害見舞金」

満足と答えた理由について聞いてみると、「従業員に対して優しい会社だと感じる」「突然の出費を埋められるので助かる」という声が挙がりました。また、「慶弔を個人で出す際に、金額を悩まずに済む」と、同僚との関係性についてのポジティブな意見もありました。

満足度1位「慶弔・災害見舞金」の理由

満足度2位「育児・介護休暇制度」

続いて満足度が高かったのは、「育児・介護休暇制度」です。「満足している」「どちらかというと満足している」を合わせて、77.8%という結果になりました。育児や介護などの生活面を支える福利厚生は、ワーク・ライフ・バランスの推進や少子高齢化対策といった社会的視点からも注目されています。

満足度2位「育児・介護休暇制度」

満足度が高い理由として、「会社を退職しないで済む」「女性が働き続けやすくなる」「復帰がしやすい」など、ライフスタイルの変化があっても仕事を継続しやすいという意見が挙がっています。出産や育児、介護による離職を防ぎ、定着率の向上につながると言えるでしょう。一方で、「男性は取得しづらい・取得実績がない」という回答も見られ、取得のしやすさについては男女によって異なる企業もあるようです。

満足度2位「育児・介護休暇制度」

(参考: 『【弁護士監修】育児休業の取得条件・期間・給付金など、人事が対応すべき申請6つ』)

満足度3位「出産お祝い金」

「出産お祝い金」は、「満足している」「どちらかというと満足している」を合わせて77.5%となり、3番目に高い結果になりました。出産は大きな出費となるため、経済的な補填になるということから、満足度が高くなると考えられます。

満足度3位「出産お祝い金」

理由について聞いてみると、「従業員に対して優しい会社」「産後はお金がかかるので助かる」という回答が大半を占めており、従業員に歓迎されている制度だと言えます。また、「慶弔・災害見舞金」と同様、「福利厚生として出るため、個人的に贈る手間がなくなる」といった意見もありました。

満足度3位「出産お祝い金」の理由

従業員満足度があまり高くない福利厚生とは?

ここまで満足度の高い福利厚生を見てきましたが、それに対して満足度が低い福利厚生にはどのようなものがあるのでしょうか。満足度が低い3つの制度を、それぞれの理由も併せてご紹介します。

満足度が低い福利厚生1位「社員旅行・レクリエーション」

アンケートで最も満足度が低かった福利厚生は「社員旅行・レクリエーション」です。アンケートでは、「満足していない」が18.0%、「どちらかというと満足していない」が22.0%で、合わせて40.0%となっています。

満足度が低い福利厚生1位「社員旅行・レクリエーション」

「会社が全額費用を負担してくれる」「気分転換になる」などの満足している理由が挙げられている一方で、「休日返上で参加しなければならない」「休日まで職場の人と会うのは避けたい」といった、休日も会社に時間を取られることへの不満があるようです。また、「行ってもあまり楽しめない」「幹事に負荷がかかる」といった回答も見られました。20代・30代の中には、「仕事とプライベートをしっかり分けたい」と考える人が増えていることも背景にあると推測できます。

満足度が低い福利厚生1位「社員旅行・レクリエーション」の理由

満足度が低い福利厚生2位「住宅手当・家賃補助」

2番目に満足度が低い結果となったのが、「住宅手当・家賃補助」です。アンケートでは、「満足していない」「どちらかというと満足していない」を合わせて38.8%となりました。住宅手当は、家族の人数に合わせて一定額を支給する、限度額を設けて賃料の一部を支給するなど、企業によって内容は異なります。厚生労働省の『平成27年就労条件総合調査結果の概況』によると住宅手当として支払われた金額の平均は17,000円という結果になっています。

満足度が低い福利厚生2位「住宅手当・家賃補助」

住宅手当・家賃補助については「経済的に助かる」という回答が多く挙がっているものの、一方で「該当する条件に縛りがある」「金額に上限がある」「持ち家の場合、手当・補助がない」といった不公平感もあるようです。条件の違いなどで支給の有無が決められたり、支給される金額に差が生じたりすることが、満足度を下げている理由になっていると考えられます。

満足度が低い福利厚生2位「住宅手当・家賃補助」の理由

満足度が低い福利厚生3位「家族手当」

3番目に満足度が低いのは「家族手当」です。「満足していない」「どちらかというと満足していない」を合わせ、62.1%という結果になりました。

満足度が低い福利厚生3位「家族手当」

家族手当については「扶養家族が多いとお金がかかるので助かる」と評価する従業員がいる一方で、「独身の場合もらえないため不平等」といった声も挙がっています。家族の在り方が多様化している現在においては、「家族手当」をどのように捉えるのかを見直す必要もあるでしょう。

満足度が低い福利厚生3位「家族手当」の理由

(参考: 『【社労士監修】家族手当の支給条件・相場。廃止が進む理由と時代に合う新たな手当とは』)

あると嬉しい福利厚生は?

企業が提供する福利厚生と、従業員が求める福利厚生には違いがあるのでしょうか。「あるとうれしい福利厚生」について聞いてみると、上位は「住宅手当・家賃補助」「通勤手当支給」「特別休暇制度」という結果になりました。

あると嬉しい福利厚生

「あるとうれしい福利厚生」について、それぞれ選んだ理由を見ていきましょう。

あるとうれしい福利厚生①: 住宅手当・家賃補助

最も高い結果となったのは「住宅手当・家賃補助」でした。家賃は固定費の中でも大きな割合を占めるため、住宅手当や家賃補助があると経済的な負担が軽減されることが、理由として考えられるでしょう。

<住宅手当・家賃補助があるとうれしい理由(一部抜粋)>
●家賃は月々の固定費の大半を占めているため、経済的に助かる【商社/企画・管理/34歳女性】
●手当や補助の分だけ家賃を上げて、通勤時間のかからない職場の近くに住みたいため【印刷/クリエイター・クリエイティブ職/26歳女性】
●手取りの金額が増えるため【金融/事務・アシスタント/35歳女性】

また、働き方改革によって在宅勤務やリモートワークが増える中、「家賃だけではなく、光熱費やネット料金なども補助してほしい」という回答もありました。

あるとうれしい福利厚生②: 通勤手当支給

「通勤手当支給」は、最も多く利用されている福利厚生として選ばれましたが、「あるとうれしい福利厚生」としても2番目にランクインしました。「通勤手当」は導入している企業も多く、「あるのが当然」と受け取る場合もありますが、やはり「経済的に助かる」という意見が多く挙がっています。

<通勤手当支給があるとうれしい理由(一部抜粋)>
●住む場所の選択肢が広がるため【メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他/技術職(機械・電気)/35歳男性】
●車のガソリン代の負担軽減になるため【メーカー(機械・電気)/技術職・専門職(建設・建築・不動産・プラント・工場)/26歳男性】
●遠方に住んでいても金銭的な負担がなく通勤できるため【人材サービス・アウトソーシング・コールセンター/企画・管理/26歳男性】

中には、「通勤手当支給がない会社には就職したくない」「自腹で通勤したくない」という声も見られました。主に遠距離での通勤で導入されていましたが、近年は通勤距離による差を減らすため「近距離通勤手当」を導入している企業も増えています。

あるとうれしい福利厚生③: 特別休暇制度

ワーク・ライフ・バランスを保ち、仕事のモチベーションを向上させる目的で、「特別休暇制度」を希望する声が多く挙がっています。制度化された休みがあることで、仕事の疲れをリフレッシュできると考える人が多いと言えるでしょう。

<特別休暇制度があるとうれしい理由(一部抜粋)>
●有給以外に休める日があれば気持ちに余裕ができる【コンサルティング・専門事務所・監査法人・税理士法人・リサーチ/アナリスト/38歳女性】
●カレンダーとずらして休みを取りたいため【医薬品・医療機器・ライフサイエンス・医療系サービス/技術職(化学・素材・化粧品・トイレタリー)/32歳女性】
●プライベートが充実することで働く意欲が増すため【教育/事務・アシスタント/28歳女性】
●まとまった休みは制度化しないと取りづらいため【メーカー(機械・電気)/企画・管理/28歳女性】

他には「自分も休みたいし、同僚にも休んでほしい」「働き過ぎ」といった意見もあり、休みを取りにくい職場環境への対策としても期待されているようです。

(参考: 『特別休暇の定め方―どんな条件で何日取得可能?就業規則は?|申請書フォーマット付』『長時間労働の目安は月平均80時間超の時間外労働。すぐ導入できる対策アイデア9選』)

「こんな福利厚生があったらいいな」と期待する制度

労働環境の多様化に合わせて、ユニークな福利厚生を導入する企業も増えています。従業員が本当に期待している制度とはどういうものでしょうか。「アンケートでの選択肢以外であるとうれしい」と思う福利厚生について聞いたところ、次のような回答が挙げられました。

<アンケートでの選択肢以外であるとうれしい福利厚生(一部抜粋)>
●資格手当【休職中/34歳男性】
●現状紙書籍のみなので、電子書籍の購入費を出してほしい【印刷/クリエイター・クリエイティブ職/26歳女性】
●妊活のための休業【メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)/企画・管理/31歳女性】
●リモートワーク環境整備費。リモートワークが多いので、作業環境を整えるための補助があるとうれしい【インターネット・広告・メディア/技術職(SE・インフラエンジニア・Webエンジニア)/34歳男性】

それ以外にも「トレーニングジムの併設」や「スポーツジムの利用補助」など、従業員の健康支援を目的としたものや、「旅行の割引」「レジャー施設の優待利用」など、プライベートを充実させるための制度を希望する声がありました。福利厚生を新しく導入する場合や、内容を見直す場合は、従業員のニーズを吸い上げ、希望に合うものを導入していくとよいでしょう。
(参考: 『リカレント教育とはいつどんなことを学ぶもの?企業が導入するメリットと取り組み事例』)

【まとめ】

社員の「経済的な負担を軽減する」「モチベーションを向上させる」という目的で導入されている福利厚生ですが、企業が導入している制度と、実際に利用されている制度には若干の違いがあることがわかりました。また、福利厚生による満足度の高さは「従業員に対して優しい企業」「働きやすく感じる」という評価となり、従業員の定着率の向上にもつながっていくでしょう。今回の記事を参考に、満足度の低い福利厚生の見直しや、従業員が求めている制度の導入について検討してみてはいかがでしょうか。

(参考:『福利厚生はコレがおすすめ~福利厚生の種類や導入方法など知っておきたい基本事項~』)

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、企画/d’s JOURNAL編集部 齋藤 裕美子)