SOGIハラとは?具体例と企業の取り組み・防止策を解説

d’s JOURNAL編集部
SOGIハラとは、性的指向や性自認に対するハラスメントのことです。組織内で多様な価値観を受け入れる雰囲気をつくるために、社内研修の実施や相談窓口の設置などを行い、正しい認識を全社に浸透させる取り組みが欠かせません。
本記事では、SOGIハラの基本的な捉え方や具体例、防止策などを解説します。
また、企業向けにハラスメント対策を点検できる全40項目のセルフチェックシートをご用意しています。記事で全体像を押さえた上で、資料をダウンロードし自社の抜け漏れ確認にご活用ください。
SOGI(ソジ・ソギ)とは?
SOGIとは、「Sexual Orientation(性的指向)」「Gender Identity(性自認)」の頭文字を取った略称で、「ソジ」または「ソギ」と読みます。
性的指向とは、恋愛感情や性的な関心の対象となる性のことです。一方、性自認は、自分自身が認識している自らの性を指します。
SOGIは、異性愛・同性愛・無性愛といった性的指向の違いや、性自認の多様性を含む概念であり、特定の属性を持つ人だけを指すものではありません。「全ての人がそれぞれ固有の性的指向および性自認を持っている」という前提に立った、包括的な考え方である点が特徴です。
(参照:e-Gov法令検索『性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律第二条』)
SOGIとLGBTQの違い
LGBTQとは、「性的指向や性自認の多様性の中で少数派に位置付けられる人々」を指す呼称です。
SOGIとLGBTQの大きな違いは、SOGIは地球上のすべての人に関わる概念であり、誰もが持つ性的指向や性自認を指す個人の属性であるのに対して、LGBTQは、SOGIという属性の中で特定の性的指向や性自認を持つ少数派に位置づけられる人々を指します。
これらは個人の性的指向や性自認の多様性を正しく理解し、尊重するための重要な概念であり、ハラスメント防止に取り組む上での基礎となります。
SOGIハラとは?
SOGIハラスメント(以下、SOGIハラ)とは、性的指向や性自認を理由に行われる嫌がらせや差別的行為のことです。
具体的には、SOGIに関するうわさ話や差別的な発言によって特定の個人を傷付ける行為や、本人の希望や意思を尊重しない対応などが挙げられます。また、性的指向や性自認を理由に個人を不当に扱う行為もSOGIハラに該当します。
SOGIハラが問題視されるようになった理由
SOGIハラが問題視されるようになった理由は、社会全体が「性の在り方の多様性」を広く認識しつつあるためです。
これまでは、異性愛や生物学的な性と性自認の一致が当然視される傾向が強く、性的指向や性自認に関する問題は表面化しにくい状況でした。しかし近年「多様な性の在り方を認め、個人の特性を尊重する意識」が浸透したことで、SOGIハラの問題も顕在化するようになったのです。
SOGIは、マジョリティ・マイノリティを問わず、全ての人が生まれながらに持つ性的指向や性自認を指す概念です。そのため本来は周囲の基準に合わせる必要がないにもかかわらず、現実にはこうした考え方が十分に理解されていないことも、SOGIハラが問題化した理由の一つと考えられます。
SOGIハラの具体例
本項では、SOGIハラに該当する行為の具体例を解説します。
【SOGIハラの具体例】
●差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
●いじめ・暴力・無視
●望まない性別での生活の強要
●不当な異動や解雇
●SOGIに関する第三者への無断の公表(アウティング)
差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
SOGIハラの代表例として、性的指向や性自認に対する差別的な言動や嘲笑、また差別的な呼称が挙げられます。具体例は次のとおりです。
【SOGIハラに該当する「差別的な言動や嘲笑、呼称」の例】
●「男同士で仲良くしているとホモだと思われる」「同性愛者には抵抗があると言われる」など、性的指向や性自認を否定・侮辱する
●男性の女装や性的な自己表現を笑いの対象にする
●「ホモ」「レズ」「オカマ」などの差別的な呼称を使用する
たとえ発言者に悪意がなくても、これらの行為は対象者の尊厳や心理的安全を侵害してしまいます。意図せずに当事者を傷付けてしまわないよう、言動には十分に注意してください。
いじめ・暴力・無視
どのような理由であれ、いじめや暴力、無視などの行為は決して認められるものではありません。SOGIに関する偏見や誤解が原因でこうした行為に発展するケースが多く、周囲の人が見て見ぬふりをしてしまうこともあります。
性的指向や性自認を理由とするいじめ・暴力・無視の具体例は、以下をご覧ください。
【SOGIハラに該当する「いじめ・暴力・無視」の例】
●レズビアンであることを理由に嫌がらせをする
●トランスジェンダーであることを理由に同僚を突き飛ばす
●ゲイであることを理由に業務上の情報を意図的に与えず孤立させる
これらの行為は、本人ではなく家族がセクシュアルマイノリティであることを理由に行われるケースも存在します。いずれも個人の性的指向や性自認に基づく不当な扱いであり、SOGIハラとして厳しく対応する必要があるといえます。
望まない性別での生活の強要
本人の性自認を無視して、望まない性別での生活を強いることもSOGIハラに該当します。以下で、具体的な事例を見ていきましょう。
【SOGIハラに該当する「望まない性別での生活の強要」の例】
●性自認が男性である従業員に対し、生物学的性が女性であることを理由に「女性らしくスカートを着用しなさい」と指示する
●性自認が女性である従業員に対し、生物学的性が男性であることを理由に「化粧はせず、男らしく振る舞いなさい」と指示する
●従業員の性自認に応じたトイレや更衣室の利用を認めない
特に男女で制服を分けている場合は、性自認と異なる服装を強制することで、本人に大きなストレスを与えます。また、近年では制服の自由選択制を導入する職場も増えていますが、周囲の目を気にして自身の望む服を選べないというケースも少なくありません。
不当な異動や解雇
性的指向や性自認を理由に個人の地位や所属を制限することも、SOGIハラの具体例の一つに挙げられます。以下のような行為は、当事者に不当な圧力を与え、意思に反して従わせることにつながります。
【SOGIハラに該当する「不当な異動や解雇」の例】
●ゲイであることを理由に、本人が希望しない部署へ異動させる
●トランスジェンダーである従業員を「ほかの従業員が不快に思う」という理由で解雇する
組織の規則を口実に、SOGIを理由とした異動や解雇を強制する行為は控えてください。こうした対応は、当事者の権利を侵害するとともに、組織全体の信頼性を損なう可能性があります。
SOGIに関する第三者への無断の公表(アウティング)
他人の性的指向や性自認を、本人の同意なく第三者に公表する行為は「アウティング」と呼ばれ、SOGIハラに該当します。具体的な事例は、以下のとおりです。
【SOGIハラに該当する「第三者への無断の公表(アウティング)」の例】
●ゲイであることを本人の許可なく、ほかの従業員に話す
●トランスジェンダーである同僚の性自認を、本人の同意なしにSNSに投稿する
SOGIに関する情報は、個人のプライバシーです。本人の意思に反して情報を拡散すると、心理的な深い傷を与えるだけでなく、職場での信頼関係を損なう恐れがあるため、軽率に扱うことは許されません。
SOGIハラに関する法律
SOGIハラに関連する法的枠組みへの理解は、企業が適切な防止策や対応策の整備を行う上で不可欠です。そこで本項では、企業が押さえておきたい法的観点について解説します。
【SOGIハラに関する法律】
●男女雇用機会均等法
●LGBT理解増進法
●改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法とは、職場でのセクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)を防止するための法律です。
同法では、セクハラは以下の2つの類型に分けて定義されています。
【セクハラの2つの類型】
| 対価型セクハラ | 職場で労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇や降格、減給などの不利益を受けること |
|---|---|
| 環境型セクハラ | 性的な言動が行われたことで職場の環境が不快なものとなり、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること |
上記の基準に当てはめると、性的指向や性自認に関する不当な行為であるSOGIハラは、セクハラとして扱われる場合があります。SOGIハラおよびセクハラを未然に防ぐためには、男女雇用機会均等法への理解を深めることが不可欠です。

(引用:厚生労働省『職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)』)
セクシュアルハラスメントの定義や具体例について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(関連記事:セクハラとは?どこからセクハラかの判断基準と裁判例・対策法を解説【チェックシート付】)
LGBT理解増進法
LGBT理解増進法は、性的指向や性自認の多様性に対する社会的理解を促進し、セクシュアルマイノリティが直面しやすい困難を軽減することを目的として制定された法律です。
罰則規定は設けられておらず、国や地方公共団体、企業に対し、セクシュアルマイノリティへの理解促進に向けた取り組みを求める内容となっています。
具体的に公的機関や企業は、職場環境の整備や研修・啓発活動を通じて、性的指向や性自認への理解を深めることが期待されています。こうした取り組みは、SOGIハラを含む差別的な言動を防止するとともに、誰もが安心してはたらき、生活できる環境の形成につながるといえるでしょう。
(参照:e-Gov法令検索『性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律』)
改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)とは、企業に対し、パワーハラスメント(以下、パワハラ)の防止措置を義務付ける法律です。
SOGIハラに該当する行為は、次の3つの要件を全て満たす場合、パワハラとして扱われる可能性もあります。
【パワハラに該当する3つの要件】
1.職務上の地位や人間関係など、優越的な関係性を背景として行われること
2.業務上の必要性や相当性の範囲を逸脱していること
3.その言動により、労働者の就業環境が害されること
職場でのパワハラ防止には、企業による制度面と運用面の整備が欠かせません。具体的には、就業規則でパワハラに関する方針を明確に規定し、従業員への周知・啓発を行うことが挙げられます。
(参照:e-Gov法令検索『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』)
パワーハラスメントに関する企業のコンプライアンス対応や体制整備のポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(関連記事:『パワハラとコンプライアンスの関係性とは?企業が対応すべきポイント』)
SOGIハラが発生した場合のリスク
SOGIハラが発生した場合、企業は法的責任を負うだけでなく、組織風土や従業員の信頼に関わる重大な影響を受ける可能性もあります。
【SOGIハラが発生した場合のリスク】
●人材の流出を招く
●企業イメージが低下する
●労災申請が行われる
●損害賠償へ発展する
ここからは、SOGIハラが発生した際に、企業が直面し得るリスクの具体例を見ていきましょう。
人材の流出を招く
SOGIハラが起こってしまうと、被害を受けた従業員は職場ではたらくことが難しくなり、退職する可能性が高まります。また、ほかの従業員にとっても勤務先が適切な対応を行わなければ、モチベーションが低下する要因となり、新たな離職を招く恐れがあります。
SOGIハラが起こらないように事前の取り組みが大切ですが、万が一起こったときは素早い対応が重要です。被害を受けた従業員へのケアを行いながら、原因を究明し、就業規則にのっとって厳正に処分を行う必要があります。
企業としての姿勢が見えてこなければ、従業員の間で不信感が募ってしまうので、調査・ヒアリングなどの初動対応を迅速に行うことが重要です。
企業イメージが低下する
SOGIハラは人権に関わることなので、重大なコンプライアンス違反だといえます。コンプライアンスとは、直訳すると「法令順守」という意味ですが、企業は単に法令だけを守れば良いというものではありません。
コンプライアンスは法令だけでなく、就業規則や企業倫理・社会規範などを含めた幅広い意味を含んでいます。SOGIハラそのものが、男女雇用機会均等法や改正労働施策総合推進法に抵触する可能性があり、世の中に対する企業イメージも悪化する恐れがあるでしょう。
企業は高い倫理観を持って事業活動を行わなければならないため、いったん不祥事が起こってしまうと、信頼の回復までに相当な時間と労力がかかります。場合によっては、消費者や取引先が離れ、経営に直接的なダメージが及んでしまうこともあるでしょう。
また、SOGIハラは労務に関する問題でもあるため、採用活動にも影響が出ます。求人に応募する転職希望者の数が減少すれば、企業としても人材不足を解消できず、ますます事業活動に支障が出てしまうでしょう。
企業イメージを低下させないためにも、日ごろからSOGIに対する理解を深め、SOGIハラが起こらない企業風土を醸成していくことが大切です。
(参考:『コンプライアンスとは?意味や違反事例、強化する方法を解説』)
労災申請が行われる
先に述べたように、改正労働施策総合推進法によってSOGIハラが起こらないように防止策を講じることは企業の義務となっています。そのため、SOGIハラが起こってしまうと、労災申請につながる可能性もあります。
労働基準監督署に相談することは、従業員の権利であるため、企業側としてどうにかできるものではありません。労災申請が行われれば、労働基準監督署は必要に応じて企業側に対して調査を行います。
通常業務に影響が出てしまう部分もあるため、企業としてSOGIハラに関する防止策を怠ることはマイナスにしかならないでしょう。
損害賠償へ発展する
SOGIハラにより従業員が精神的損害や健康被害を負った場合、企業は行政指導や社名公表に加え、損害賠償請求を受ける可能性があります。
これは、労働契約法第5条の安全配慮義務違反や、民法第715条1項の使用者責任に基づく処罰です。こうした法的責任が発生した場合は、取引先や顧客からの信用失墜を招き、経済的損失につながるリスクも生じます。
(労働者の安全への配慮)
第五条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(引用:e-Gov法令検索『労働契約法第五条』)
(使用者等の責任)
第七百十五条
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
(後略)
(引用:e-Gov法令検索『民法第七百十五条一項』)
SOGIハラを防止するために企業が行う主な対策
前項で解説したSOGIハラによるリスクを踏まえ、企業が実施する主な対策は以下のとおりです。
【SOGIハラを防止するために企業が実施する主な対策】
●就業規則を整備する
●ハラスメント防止に関する研修を実施する
●従業員との面談を定期的に実施する
●ハラスメント相談窓口を設置する
●社内制度を整備する
上記の対策を踏まえ、自社の取り組みに抜け漏れがないか一度整理しておくことが重要です。ハラスメント対策を点検できる全40項目のセルフチェックシートをご用意していますので、下記の資料をダウンロードして現状確認にご活用ください。
就業規則を整備する
就業規則の整備は、SOGIハラを防止するための主な対策の一つです。
就業規則とは、従業員が守る規律や労働条件を明文化するとともに、社内外に企業の行動指針を示す規定です。「SOGIに関する差別行為の禁止」を規定に盛り込むことで、従業員や転職希望者に対し、会社の方針を明確に伝えられます。
また問題発生時の対応の根拠となるだけでなく、日常的な社内意識の醸成にもつながるため、就業規則の整備は、SOGIハラを未然に防止する上で有効な施策といえます。
就業規則を整備する際は、以下の記載例や、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」を参考にすると良いでしょう。
第1条(目的)
この規定は、就業規則第〇条に基づき、社内でのハラスメントを防ぐために従業員が守る事項を定める。
第2条(ハラスメントの定義)
1 パワーハラスメントとは、地位や人間関係などの優位性を背景に、業務上必要な範囲を超えて、精神的・肉体的に苦痛を与える、または職場内の就業環境を悪化させる行為をいう。ただし、客観的に見て、業務上必要なものとして行われる適正な指導や業務指示はパワーハラスメントに該当しない。
2 セクシュアルハラスメントとは、職場での性的指向・性自認に関する言動によって当該従業員の労働条件に関して不利益を与えること、または就業環境を害することをいう。
第3条(禁止行為)
従業員は職場内で、下記の第2項から第〇項に掲げる行為を行ってはならない。
1 パワーハラスメント
1.前条の規定に該当する行為
2.従業員がハラスメントを受けている事実を知りながら、これを黙認する上司や代表者の行為
2 セクシュアルハラスメント
1.前条第2項の規定に該当する行為
2.従業員がハラスメントを受けている事実を知りながら、これを黙認する上司や代表者の行為
(参考:『【無料テンプレート付】就業規則とは?変更&新規制定時に必要な基礎知識』)
ハラスメント防止に関する研修を実施する
SOGIハラを防止するためには、正しい知識の習得と、理解の深化を目的とした研修の実施が欠かせません。その際は、自社内での対応にとどまらず、専門的な知見を持つ外部機関の研修も活用すると良いでしょう。
外部研修を併用することで、より体系的な学習が可能となります。また、ハラスメントが発生しにくい企業風土の形成には、経営層や管理職が主体的に研修へ参加することが重要です。
経営層や管理職自身がSOGIやLGBTQに関する理解を深め、適切な対応方法を身に付ければ、その姿勢が組織全体に浸透し、ハラスメント防止につながります。
従業員との面談を定期的に実施する
SOGIハラの問題は、何より自社の従業員に関することなので、従業員との個別面談を定期的に実施することが大事です。
問題が起こってから対処するのではなく、日ごろから円滑にコミュニケーションが取れる信頼関係を構築しておけば、いざというときに従業員自身も相談しやすくなるでしょう。
従業員が抱えている悩みを把握し、相談に対応することは企業として大事な役割です。
また、面談を通じてそれぞれの従業員がSOGIやハラスメントについて、どれくらい理解できているかを把握できます。
従業員の認識レベルに合わせて、外部での研修内容を決めることをお勧めします。
(参考:『面談とは?目的や種類、成果が出る面談のポイントなどを解説』)
ハラスメント相談窓口を設置する
継続的に防止策に取り組んでも、SOGIハラを完全に防ぐことは容易ではありません。そのため、問題が発生した際に迅速かつ適切に対応できるよう、ハラスメント相談窓口を設置しておくことも大切です。
相談先には、人事部や総務部など、一定の中立性を確保できる部署を選択すると良いでしょう。併せて、相談窓口の担当者向けのマニュアル作成および研修の実施も不可欠です。
社内制度を整備する
社内制度を整備することも、重要なSOGIハラ防止策の一つです。
具体例としては、異性のパートナーを対象としていた健康保険や住宅手当などの福利厚生を、同性のパートナーにも適用できるように拡充することが挙げられます。
これにより、SOGI当事者の多様な家族形態を尊重すると同時に、経済的な支援を提供できるようになります。
SOGIハラが発生した場合の企業の対応手順
SOGIハラが発生した場合、企業には迅速かつ適切な対応が求められます。
【SOGIハラが発生した場合の企業の対応手順】
1.事実関係の調査・ヒアリング
2.被害者のケア
3.加害者に対する処分の検討
4.再発防止策の策定と実施
本項では、事実確認から再発防止策の策定・実施まで、企業が取る一連の対応手順を解説します。
1.事実関係の調査・ヒアリング
SOGIハラに関する相談や通報を受けた際は、速やかに事実関係を確認しましょう。社内の専門担当者や外部の弁護士など、中立性を確保できる立場の者に調査を依頼し、事案の全体像を正確に把握してください。
調査では、まず被害を受けた従業員や当該事案の目撃者に個別でヒアリングを行い、証拠や証言を収集します。加害者とされる従業員へのヒアリングは、証拠の隠滅を防ぐ観点から、客観的な事実確認がある程度進んだ段階で行うことが一般的です。
もしも加害者が合理的な説明や反論を示した場合は、必要に応じて追加の調査を行い、その上でハラスメントの該当性を慎重に判断することが求められます。
2.被害者のケア
事実関係の調査・ヒアリング後は、被害者への心理的なサポートを行います。
産業医との面談や専門家によるカウンセリングを実施するほか、メンターや上長の継続的なフォローにより、被害者の精神的負担の軽減を図ってください。併せて、被害者と加害者が接触することで起こり得る二次被害の防止にも努めなければなりません。
具体的には、配置転換や座席の変更、休暇取得の促進などを検討する必要があります。
3.加害者に対する処分の検討
SOGIハラの事実を確認した場合は、就業規則および懲戒規則に基づき、加害者に対する適切な措置を検討します。
対応内容は事案の性質や影響の程度に応じ、指導や配置転換にとどまることもあれば、懲戒処分に至ることもあります。
懲戒処分を行うためには、就業規則で懲戒の種類と事由を明示し、その内容を従業員にあらかじめ周知しておかなければなりません。また対象となる行為と照らし合わせて、処分が社会通念上相当であることも求められます。
SOGIハラの内容に比して過度に重い処分を行うと、懲戒権の濫用として無効と判断される可能性があるため慎重な判断が必要です。
(参照:e-Gov法令検索『労働契約法第十五条』)
4.再発防止策の策定と実施
事案の収束後は、再発防止策を策定し、その内容を従業員に周知する必要があります。
まずは、当該事案が発生した背景や経緯を振り返り、組織や運用上の課題を整理した上で、原因の解消につながる対策を講じましょう。
具体的な対策としては、就業規則の見直しや懲戒規則の整備・明確化、研修内容の改善、相談窓口の運用体制の強化などが挙げられます。
また、再発防止策の検討にあたっては、経営層や管理職だけでなく、弁護士など外部の専門家の知見を取り入れることも有効です。策定した施策は全従業員に改めて共有し、企業としてSOGIハラの根絶に取り組む姿勢を明確に示してください。
策定後は、各施策が現場で確実に実施されているかを継続的に確認し、状況に応じて改善を重ねることが重要です。
SOGIハラに関するよくある質問
ここまでの内容を踏まえ、以下ではSOGIハラに関する基本的な知識をよくある質問形式でご紹介します。
SOGIハラとは何の略ですか?
SOGIハラとは、「Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)に関するハラスメント」の略称です。
従業員の性的指向や性自認を理由として、差別的な言動や不当な扱いを行う行為を指します。
SOGIハラの例は?
SOGIハラの具体例としては、「差別的な言動や嘲笑」「差別的な呼称」「いじめ」「望まない性別での生活の強要」といった行為が挙げられます。
SOGIハラのアウティングとは何ですか?
アウティングとは、本人の同意なしに性的指向や性自認の情報を第三者に開示する行為を指します。
職場では、従業員が自ら公表していないSOGIの情報を、同僚や上司に無断で伝えることが該当します。
まとめ
SOGIハラとは、性的指向や性自認を理由とする差別・嫌がらせのことです。言動や扱い方によって、個人の心身や職場環境に深刻な影響を及ぼします。
企業は就業規則の整備や研修の実施などを通じて、SOGIハラを未然に防ぐと同時に、発生時に迅速に対応できる体制を構築することが重要です。法令遵守とともに、多様な性を尊重する企業風土を築くことが、組織の信頼と持続的成長につながります。
全ての従業員が安心して働ける環境づくりに向けて、自社の対策状況を一度整理してみましょう。
記事で押さえたポイントを踏まえ、自社の対策状況を客観的に確認することで、具体的な改善点が明確になります。全40項目のハラスメントセルフチェックシートを下記からダウンロードし、部署・組織の点検にお役立てください。
誰もが安心して働ける組織づくりの考え方について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(関連記事:従業員エンゲージメントとは|効果的な取り組みと事例・向上のメリットを解説)
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)
いますぐ自分でチェック!ハラスメント セルフチェックシート
資料をダウンロード
