さとり世代とは|年齢や価値観の特徴とゆとり世代との違いを解説


d’s JOURNAL編集部
日本で1987年~2004年に生まれた世代を「さとり世代」といいます。
人事・採用担当者としては、「ゆとり世代とはどのような違いがあるのかを知りたい」「さとり世代の特徴や仕事観を把握して採用に活かしたい」などと考えることも多いのではないでしょうか。
この記事では、さとり世代の特徴や仕事観、採用する際のポイントなどを詳しくご紹介していきます。
さとり世代とは
さとり世代とは、特定の時期に日本で生まれた世代を指す言葉です。さとり世代は生まれ育った時代背景から、現実的で物欲や出世欲をあまり持たず、安定性を重視する傾向があります。
その様子が「悟り」を開いているように見えることから、インターネットの匿名掲示板を中心に「さとり世代」という呼称が広まりました。
まずは、さとり世代の年齢や生まれた年、さとり世代と呼ばれることになった背景を見ていきましょう。
さとり世代の年齢・生まれた年
さとり世代は、1987年~2004年に生まれ、2023年に19歳~36歳を迎える年齢です。
アメリカの世代分類では、1981年~1996年に生まれた「Y(ミレニアル)世代」、または1997年~2012年に生まれた「Z世代」のいずれかに該当します。
(参考:『ミレニアル世代とは|Z世代との違いや価値観や仕事観など特徴を解説』『Z世代の特徴とは|ミレニアル世代との違いや働き方や価値観をわかりやすく解説』)
さとり世代が生まれた背景
「さとり世代」という言葉が誕生した背景には、幼少期から学生時代にかけての社会的な出来事が大きく影響していると考えられています。1991年にはバブル崩壊、2008年にはリーマンショックが起こったため、さとり世代は企業の破綻や失業者の増加など、経済が低迷した時代に育ちました。
また、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災の他、台風災害などさまざまな自然災害も経験。インパクトのある出来事と不安定な経済状態が続き、厳しい現実を目の当たりにしてきたことから、お金やモノの所有よりも、穏やかで安定した生活を求めるようになったとされています。
さとり世代とゆとり世代の違い
世代の区切り年には諸説ありますが、「ゆとり世代」は1981年から1996年に生まれた世代のことです。2002年度施行の学習指導要領で、学習量が削減されたいわゆる「ゆとり教育」を受けた世代だといわれています。
さとり世代とゆとり世代は年代が被る部分もありますが、さとり世代は、ゆとり教育が見直され始めた時期に生まれ、学習量の増加や前倒しを行う「脱ゆとり教育」を経験してきた世代と定義されることが一般的です。
そのため、両世代では考え方や価値観が若干異なります。ゆとり世代は、受けてきた教育内容から「競争意識が低く、周囲と同じことを好む」傾向があるといわれています。
一方、ゆとり世代を見て育ったさとり世代は、「他人に左右されず、自分で選択する」という傾向が強いとされており、ゆとり世代に比べて合理的といわれることが多いようです。
さとり世代の5つの特徴
さとり世代の全体的な特徴として、以下の5つの点が挙げられます。
デジタルネイティブ
さとり世代はITやデジタルとの親和性が高いことから、「デジタルネイティブ」と呼ばれています。さとり世代が生まれた頃、日本ではデジタル技術やインターネットが普及、確立していました。
幼い頃からパソコンや携帯電話、スマートフォンなどのデジタル機器に触れる機会が多く、インターネットを介してあらゆる情報を取り入れながら成長しています。そのため、日常生活でも仕事でもデジタル技術の扱いに長けている傾向が強いです。
他人との衝突を避ける
他者との衝突を避ける傾向にあるのも、さとり世代の特徴です。さとり世代は競争を意識する教育をあまり受けていないため、「人と競って優位に立つ」ことにさほど魅力を感じません。
また、情報社会の中でさまざまな価値観に触れているため、多様性を受け入れる傾向が強いです。穏やかで安定した生活のために良好な人間関係を保つことを好むので、人当たりが良いとされています。
叱責や意見の押しつけをするのもされるのも苦手なため、周囲の人と適度な距離感を保っていることが多いでしょう。
コストパフォーマンス重視
不景気を経験したさとり世代は、過度な浪費を抑え、現実的な行動を取ることが多いとされています。
そのため、高級ブランドの服や装飾品、高級車などを所有することで自分のステータスを上げようとする意識は薄く、コストパフォーマンスを重視する傾向にあります。
インターネットとの親和性が高いため、通販サイトの口コミやSNSのレビューなどから、安くて実用性のある商品やサービスの情報を集めることも得意です。また、不要になったものはフリマアプリで売るなど、合理的な面も持ち合わせています。
情熱よりも現実主義
さとり世代は、社会全体を揺るがす大きな出来事を経験し、経済が低迷する中で育ちました。厳しい現実に直面しながら成長したため、大きな夢や実現困難な目標をあまり持たない、堅実で現実主義な人が多いといわれています。
そのため、努力に対する見返りや結果が期待できることに対しては真剣に取り組みますが、挑戦しても結果がわからない物事には消極的になる可能性があるでしょう。
インドア派が多い
デジタルネイティブであるさとり世代には、インドア派が多いともいわれています。その理由は、インターネットが普及した時代に育ち、数多くのおもちゃやゲーム機など、多種多様な室内娯楽に触れてきたからです。
Webサービスを利用し、家にいながら買い物や映画鑑賞、ゲームなどのあらゆる娯楽を楽しむことができます。アプリゲームやSNSを通じて他者とコミュニケーションも取れるため、「わざわざ外出をする必要がない」「家の中でも充実感を味わえる」と考える傾向にあります。
室内娯楽の大半が「自分のペースで気軽に楽しめる」という点も、個人主義的なさとり世代に合っていると言えるでしょう。
さとり世代の仕事観
さとり世代の特徴を押さえたところで、ここからは、さとり世代の仕事観を解説します。
効率重視のため処理速度が速い
IT環境が確立した時代に育ったさとり世代は、デジタル機器の扱いやインターネットでの情報収集に慣れているため、仕事においても効率を重視すると考えられます。
情報の処理能力や吸収力が高く、従来の方法にとらわれずにスマートに仕事をこなす傾向が高いでしょう。そのため、デスクワークなどの事務仕事に向いているともいわれています。
企業への帰属意識は低い
さとり世代は不安定な経済社会に育っているため「終身雇用」を前提としていません。インターネットやSNSを通じて多様な考え方に触れているので、「自分は自分」と考える人も多いでしょう。それらの理由から、企業への帰属意識は低い傾向にあります。
また、「企業の人間として、会社のために仕事をする」というより、「個人として、経験やスキルアップのために働く」という価値観を持つ人も多いです。自分の成長につながったり経験を活かせたりする企業が見つかれば、転職をする可能性も大いに考えられるでしょう。
慎重で指示には忠実
他者との衝突を避ける傾向にあるさとり世代は、仕事の指示を素直に受け止め、実直に作業に取り組めるといわれています。与えられた業務をしっかりと遂行することが多いでしょう。
一方で、「自分の判断で作業をして叱られるリスクを避けたい」「確実に仕事をこなしたい」と考え、慎重に思考することもあり、責任の大きな仕事は苦手です。
そのため、指示待ち人間になったり、指示された以上のことには取り組まなかったりする可能性もあります。
さとり世代との関わり方のコツ
さとり世代と関わる際のポイントとして、「合理的な指導と具体的な指示をする」ことと「プライベートに深入りしない」ことが挙げられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
合理的な指導と具体的な指示
「効率的に業務を進めたい」「失敗をして責められたくない」と考えるさとり世代は、「とりあえずやってみよう」といった感覚的な教育やあいまいな指示、非合理的な根性論などを嫌がる傾向が高いです。
そのため、さとり世代にスムーズに業務を遂行してもらうためには、合理的な指導と具体的な指示が有効です。マニュアルや指示書などを用意し、視覚的にもわかりやすく指導・指示するとよいでしょう。
なお指導をする際には、命令や強制ではなく「提案」を心がけ、理由や意味を論理的に伝えることが大切です。そうすることで、任された業務に対する納得感が高まり、行動につながりやすくなるでしょう。
プライベートに深入りしない
さとり世代はワークライフバランスを重視し、仕事とプライベートをしっかり区別したいと考える傾向にあります。業務外の飲み会や集まりを好まず、家に帰ってプライベートの時間を充実させたいと考える人も多いでしょう。
過度に干渉すると業務のモチベーションが下がってしまう可能性もあるため、プライベートには深入りせず、あくまで仕事上の関係として適度な距離を保つことを意識しましょう。
さとり世代を採用する際のポイント
さとり世代の人材を獲得するためには、どのような施策が効果的なのでしょうか。さとり世代を採用する際のポイントをご紹介します。
働き方の多様性をアピールする
さとり世代はプライベートの充実を重視するため、ワークライフバランスを整えやすい施策が有効です。在宅勤務制度やフレックスタイム制度を導入したり、有給休暇や特別休暇、福利厚生などを整えたりして、多様な働き方や魅力ある環境をアピールするとよいでしょう。
さとり世代には自分のスキルアップに意欲的な人も多いため、研修や資格支援制度を整えることも効果的です。
(参考:『「テレワーク」とは。働き方改革に向けて知っておきたいメリット・デメリットや実態』『フレックスタイム制を簡単解説!調査に基づく84社の実態も紹介』『【弁護士監修】短時間勤務制度を育児や介護、通院等で正しく運用するための基礎知識』『特別休暇の定め方―どんな条件で何日取得可能?就業規則は?|申請書フォーマット付』)
インターネット上での情報発信
デジタルネイティブと呼ばれるさとり世代は、日常的にパソコンやスマートフォンなどを活用し、インターネット上で情報収集を行っています。
そのため、採用広報では、企業のホームページやSNSなどを利用して自社の情報を発信するとよいでしょう。SNS上で求職者とコミュニケーションが取れる、「ソーシャルリクルーティング」もおすすめです。
また、さとり世代は安定性を求めるが故に「職場選びに失敗をしたくない」と考える傾向が強いため、不安を払拭することが重要です。情報発信の際には「実際に働く社員の声」や「写真・動画」を掲載し、働く環境をさとり世代がイメージできるようにするとよいでしょう。
(参考:『採用広報とは|注目される背景と4つの手法・成功事例を解説』『採用手法一覧と各手法を解説|選び方のコツや最新のトレンドも紹介』)
まとめ
さとり世代には、育った時代の影響から、「デジタルネイティブである」「プライベートの充実を好む」「効率を重視する」といった傾向があるようです。
採用の際には、さとり世代の特徴や仕事観を把握した上で、多様な働き方をアピールしたり、情報の発信方法を工夫したりする必要があります。
また、仕事で関わる際には合理的な指示を行ったり、プライベートに深入りしないよう意識したりすることで、さとり世代と良好な関係を築けるでしょう。
(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)
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