1on1ミーティングとは|目的や得られる効果と導入・実施方法を解説


d’s JOURNAL編集部
部下の成長促進や部下と上司の信頼関係の構築などを目的に実施される「1on1ミーティング」。1on1を適切に実施することで、モチベーションやエンゲージメントの向上、課題解決などの効果が期待できます。1on1のネタ(話すこと)や失敗しないためのコツなどを知りたい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、1on1の目的や得られる効果、導入・実施方法などについて解説します。1on1を効果的に実施するためのお役立ち資料もダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、上司と部下が週に1回、または月に1回といったペースで、定期的に行う1対1の面談のことです。
もともとはアメリカのシリコンバレーの企業に根付いていたものですが、2012年にヤフー株式会社が導入したことをきっかけに、日本でも注目を集めるようになりました。
詳しくは後述しますが、1on1ミーティングを実施する狙いは、部下の自主性を育み、能力やモチベーションを向上させることにあります。
上司は、ミーティングを通して部下の業務やキャリアに関する悩みなどを聞き、それを基にフィードバックを行うことで、部下の成長をサポートします。
1on1ミーティングの重要性が高くなっている理由
1on1ミーティングが現在、日本の企業から重要視されているのはなぜでしょうか?
その理由には3つの背景があります。
背景①不確実性の高い「VUCA」(ブーカ)の時代に対応するため
現代は技術の進歩やグローバル化といったさまざまな要因により、企業を取り巻く環境が変化し、予測が難しい状態を意味する「VUCA」の時代であるといわれています。
VUCAは、もともとアメリカで軍事用語として使われていた言葉で、以下の頭文字を取ってつなげたものです。
VUCAの意味
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(あいまい性)
これらの要因により、未来予測が難しい昨今においては、従来の経験則では対応できない出来事が増えています。
そうした中では、各企業においても、個々の従業員が主体性や創造性を高め、自ら行動できるようにならなければなりません。
そこで注目されるようになったのが、1on1ミーティングです。
1on1ミーティングの実施により、部下が上司に対して積極的に意見や本音を伝えられる環境が整い、VUCAの時代にも臆することなく対応できるメンタルが培われるのです。
(参考:VUCAとは?基本的な捉え方と求められるスキルを紹介)
背景②:社内の人材を流出させないために
近年、少子高齢化による労働人口の減少や、終身雇用の崩壊による転職活動の活発化が進んでいます。そうした状況の中、「専門性の高い優秀な人材に、いかに長く自社で働き続けてもらうか」は多くの企業にとっての共通課題と言えるでしょう。
そのため、女性の活躍といったダイバーシティーを推進・受容する動きや、テレワークといった働き方の多様化などが、働き方改革の一環として進められています。
多様な働き方や価値観に対応するため、上司は部下の状況を把握し、一人一人が自律的に行動できるようサポートする必要があります。そのための手段の一つとして、1on1が日本でも広がり始めたと言えます。
背景③多様な働き方に応じた育成をするため
働き方の多様化に対応して人材育成を行っていくためにも、1on1ミーティングの実施が欠かせません。
先述の通り、働き方改革や新型コロナウイルスの拡大といった出来事を受けて、テレワークや副業など、多様な働き方を認める流れが進んでいます。
その一方で、オフィス内での会話や退勤後の食事会のように、社内の日常的なコミュニケーションは減少しているのが現状です。
こうしたコミュニケーションの機会は、上司が部下の些細な変化に気づき、適切なアドバイスを行うという、マネジメントの一環としての役割もありました。
ところが、働き方の多様化につれて、上司と部下が直接対話する機会が減り、部下の成長を促したり、信頼関係を構築したりといったことも難しくなっています。
1on1ミーティングは、こうした近年の職場環境の変化に対応して、柔軟にコミュニケーションが取れる新たな場として設けられたものです。
部下が上司と面と向かい、本音や仕事上の悩みを打ち明けられる場を職務的に設けることで、上司は状況を把握し、部下の成長促進と離職防止につなげることができるのです。
1on1ミーティングと評価面談との違い
1on1ミーティングと同様に、上司と部下が1対1で話す機会として「評価面談」がありますが、その目的は似て異なるものです。
2つの違いを、以下の表にまとめました。
1on1ミーティングと評価面談の違い
1on1ミーティング | 評価面談 | |
---|---|---|
実施目的 | 部下の能力・モチベーションの向上 | 部下の人事評価の一環 |
対話の方法 | 上司と部下が対等に話す | 上司から部下へ一方的に話す |
頻度 | 週1回~月1回程度 | 人事面談のタイミングに応じて |
このように、1on1ミーティングは、週に1回や月に1回など、短期的なサイクルを繰り返すことで質の高い対話と人材の育成につなげることを目的としています。
一方で、評価面談は人事評価の際に、部下の評価を決定するために設けられた場です。
実施の狙いが異なるので、対話の方法にも上記のような違いが出てきます。
1on1ミーティングの4つの目的
1on1ミーティングは目的に沿って実施することが重要です。主な目的としては、次の4つが挙げられます。
<1on1の目的>
・部下の成長を支援する
・中長期的なキャリア形成について話し合う
・心身の悩みを把握する
・部下と上司の信頼関係を構築する
目的ごとに、1on1を実施する際のコツを紹介します。

部下の成長を支援する
1on1を実施する目的の一つは、部下の成長をサポートすることにあります。そのために、上司は部下の話を最後まで傾聴し、業務中では話しにくいような部下の悩み・不満にも寄り添う姿勢を示しましょう。悩みや不満を知ることは、部下の課題を発見しやすくするとともに、適切なマネジメントを行うヒントにもなります。
一方、部下は上司からのフィードバックによって業務を通じた経験を振り返ることができ、取り組むべき課題を明確にできます。1on1を繰り返し実施することで自身を振り返る習慣が身につき、経験学習のサイクルも得られるため、成長促進が期待できるでしょう。
中長期的なキャリア形成について話し合う
1on1は、現在抱えている仕事に関する話だけではなく、中長期的なキャリア形成について話し合うことも、目的としています。中長期的なキャリアについて考える機会を設けることで、部下自身が自分の適性や可能性に気づくきっかけにもなります。
上司は、1on1で把握した「部下の思い描くビジョン」に合わせたマネジメントを行い、部下のモチベーション維持を図りましょう。
心身の悩みを把握する
目標設定面談や評価面談とは異なり、1on1では部下のプライベートな悩みにも寄り添うことができます。基本的に部下の話に耳を傾けることを重視するため、部下が話したがらないことまで無理に聞く必要はありませんが、部下が何か悩みを口にしたときはしっかりと最後まで話を聞くことが大切です。
このように1on1で部下の心身の悩みを把握することは、想定外の休職・離職を防ぐためにも重要と言えるでしょう。
部下と上司の信頼関係を構築する
1on1は、上司と部下の信頼関係を構築することも目的としています。信頼関係を築く上で重要なのが相互理解です。上司は、部下が仕事やプライベートでどのようなことを考え、悩んでいるのかを1on1を通じて把握しましょう。また部下にとっても、1on1は上司の人柄や考え方、仕事の進め方などをより深く理解できる機会となります。
1on1や日頃のコミュニケーションを重ねて相互理解を深め、信頼関係を築いていくことで、業務がより円滑に進むようになるでしょう。なお、上司が積極的に自己開示することで部下も心を開きやすくなるため、1on1の冒頭にアイスブレイクの時間を設け、互いの緊張をほぐすことをおすすめします。
1on1ミーティングで得られる5つの効果
1on1を行うことで、さまざまな効果が期待できます。

①:部下自身の成長が促される ~経験学習のサイクル~
1on1では、部下が上司に定期的に状況報告を行います。その過程で、自分の目標を立てて行動に移し、結果を振り返った上で次の目標と行動を決定する「経験学習」のサイクルが機能するため、部下自身の成長が促されるでしょう。
メンバーが成長することで、イノベーションの創出やチームパフォーマンスの向上も期待できます。
②:信頼関係構築につながる ~コミュニケーション・人間関係の改善~
1on1を導入することにより、上司と部下のコミュニケーション機会が増加します。部下が現状報告を行い、上司がフィードバックを行うことで、「多忙なあまり上司・部下間で話をする機会が少ない」「世代間のギャップがあり、うまくコミュニケーションが取れない」といった課題を解消でき、信頼関係構築につながるでしょう。
また、上司と部下が定期的に対話できるようになるため、「すぐに相談できるので業務上のトラブルが減る」「意見の食い違いが減り一致団結できる」など、人間関係改善の効果も期待できます。
③:業務の状態や量など現場・部下・メンバーの状況把握 ~企業全体の問題解決~
1on1を定期的に行うことで、上司は業務の進捗状況や業務量などを把握しやすくなります。個々のメンバーが抱える課題はチームや企業全体の問題にも関わるため、個々の状況を理解することで、企業全体の問題解決の糸口が見つかるかもしれません。
また、現場や部下の課題を認識し、共に解決策を考えることは上司にとっての経験学習になるため、上司自身の成長にもつながるでしょう。
④:キャリア開発を支援できる ~中長期的なキャリアや適切な人材配置~
1on1は、メンバーが中長期的なスパンで自身のキャリアを考えるきっかけにもなります。1on1を行うことで、部下の強みが明確になり、「どういったキャリアが適しているか」「どういった役職・職種での活躍が期待できるか」のヒントを伝えることができます。
それにより、部下の中長期的なキャリア開発を支援することができるだけでなく、適切な人材配置にもつながります。
(参照:『キャリア開発が企業にとって必要な3つの理由と、その手法・取り組み事例について』)
⑤:定着率の改善につながる ~モチベーションや愛社精神の向上~
以上の4つの効果により、部下は「この上司と一緒に仕事を続けたい」「この会社で自分のキャリアを築きたい」と考えるようになるでしょう。
1on1には、一人一人の仕事へのモチベーションや企業への愛社精神を向上させる効果が期待できます。また、それらが向上することは定着率の改善にもつながるでしょう。
1on1ミーティングのデメリット
さまざまな効果を有する1on1ミーティングですが、良い面ばかりではありません。
適切に実施できなければ、かえって組織に不利益を与えてしまうおそれがあります。
たとえば、上司が部下に一方的に意見を押しつけたり、上司だけが話しつづけたりすると、部下が不信感を抱く、あるいは自主性を放棄してしまう原因となります。
また、そもそも上司と部下の相性が悪い場合には、1on1ミーティングが有意義な時間にならないのはもちろん、双方の業務へのモチベーション低下につながりかねません。
こうした事態に陥らないためには、次項から説明するように、徹底的な事前準備のもとマニュアルに沿って1on1ミーティングを実施することが重要です。
(参考:上司たちの「聴いてもらう経験」で1on1や組織開発がうまくいく⁉エール・篠田真貴子が伝える“聴く力”の伸ばし方【連載 第16回 隣の気になる人事さん】)
1on1ミーティングの導入に必要な準備
1on1の実施効果を得るためには、事前の準備がとても大切になります。次の5つのポイントをチェックしておきましょう。

それぞれの点について、さらに詳しく解説します。
①導入目的を明確にする
1on1の効果を高めるには、会社としてなぜ導入するのかの目的を明確化する必要があります。実施する前に、経営層や人事担当者が自社の課題を把握した上で、課題解決のために1on1が有効な手段となることを認識しておくのが大切です。
そして、全体ミーティングや研修会などの場を通じて、1on1を実施する目的やスケジュールなどを共有していきましょう。従業員の理解と協力を得ることによって、1on1が形骸化することを防げるはずです。
②日頃のコミュニケーションを大事にする
1on1を実施したからといって、いきなり目立った成果を得られるわけではありません。1on1をより効果的に実施していくためには、日頃から部下とコミュニケーションを図り、信頼関係を築いておくように努めておく必要があります。
何か特別なことをするというより、部下の意見を大切にしたり、約束を守ったりするといった基本的な部分に意識を向けてみましょう。信頼関係はすぐに築けるものではないため、時間をかけて醸成していくことが大事です。
普段なかなか話すことができないテーマこそ、1on1を通じてお互いの認識を深めるようにしてみましょう。
③担当者の研修を行う
1on1を実りあるものとするには、実施を担当する上司のスキルアップを図っておく必要があります。部下の話を聞き出すスキルやアドバイスを行う能力に欠けていると、1on1が形骸化する恐れがあるので注意しておきましょう。
特にコーチングスキルとフィードバックに関するスキルは、重点的に磨いておきたいものです。コーチングスキルが高くなれば、部下に対して適切な質問を投げかけられます。また、部下の能力を向上させるにはフィードバックスキルも磨いておく必要があります。
会社として、管理職向けの研修を実施したり、フォローアップの体制を構築したりすることで、スムーズに1on1が行える環境を整えることが大切です。
④具体的なテーマシートを作成する
部下の話に耳を傾け、一緒に課題について考えるのが1on1ではありますが、上司のなかにはそうしたスキルが不足している人もいるでしょう。研修会などを通じて能力を高めることは大事ですが、実際に身につくまでには時間がかかるものです。
そのため、あらかじめテーマシートを作成しておくことで、1on1に不慣れな上司であっても、適切な形でミーティングを行うことができます。テーマシートに盛り込んでおきたい項目の一例は次のとおりです。
<テーマシートに盛り込んでおきたい項目>
・目標への達成度
・部下から上司に対する要望
・上司から部下へのフィードバック
・部下の健康状態
・やりがいを感じる業務、キャリアに対する考え方
上記はあくまで一例ですが、これらの項目を盛り込んだテーマシートを作成しておくことで、1on1の質を高められます。1回ごとの時間は限られているので、ある程度テーマを絞り込んでおくことも大事です。
また、テーマシートを作成しておくことで、次回の1on1を行うときの参考資料として役立つでしょう。記録の蓄積によって、部下の成長や変化に対して早めに気づけるようになります。
⑤スケジュールを決める
1on1は継続的に取り組むことによって、次第に効果を発揮していきます。そのため、事前にスケジュールを決めておくことで、年間を通じて継続した取り組みとなっていくでしょう。
具体的な日程については柔軟に対応すべきですが、週1回ペースで行うのか、月1回ペースで行うのかといった大まかなスケジュールは事前に組んでおいたほうが無難です。定期的な1on1の実施によって、部下は自分の振り返りを習慣化でき、会社としても従業員の状況を適切に把握できます。
また、一人の上司で複数の部下を抱えている場合は業務量を調整したり、管理ツールを導入したりして負担の軽減を行うことも大切です。継続的に1on1が実施できる仕組みをソフト面とハード面の両方から組み立てていきましょう。
1on1ミーティングのやり方と流れ
1on1ミーティングの事前準備の内容を確認してきたところで、いよいよ実際に実施する際のやり方と流れをみていきましょう。
1on1ミーティングの流れ
目的を伝える
スケジュールと頻度を伝える
話すテーマを考える
実施と記録をする
詳細を順に解説します。
目的を伝える
まずは準備段階で明確化した、1on1ミーティングの目的を従業員に伝えます。
目的は、ただ設定するだけでなく共有することが大切です。
もし、1on1ミーティングを実施する旨だけを伝えた場合では、従業員は何のために設けられた時間なのか理解できません。
それでは、雑談だけで終わってしまったり、上司ばかりが話す時間になったりと、1on1ミーティングの利点を最大限に享受できなくなってしまいます。
ですからこの段階で、「企業として何を課題に感じているのか」というところはもちろん、「1on1ミーティングで個々の従業員に求めること」をきちんと伝えましょう。
なお、1on1ミーティングの目的を一度周知するだけでは、理解が及ばない、あるいは時間が経つにつれて忘れてしまうといった従業員もいることが考えられます。
そのため、1on1ミーティングの目的は、従業員が理解するまで何度でも説明することが大切です。
スケジュールと頻度を伝える
目的をひと通り説明し終えたら、次は1on1ミーティングを実施する上司と部下にスケジュールや頻度を決めてもらいます。
スケジュールとしては、上司だけの都合で決めずに、お互いが無理のない日時を設定するよう調整を促します。
頻度は、上司が部下の変化に気づけるよう、週1回~月1回を目安に、短いサイクルで開催するよう指示してください。
また、1on1ミーティングが互いの業務の支障とならないよう、1回の所要時間は30分程度と短めに設定するよう上司に伝えましょう。
話すテーマを考える
実際に1on1ミーティングが始まる前には、上司側が先導できるように話すテーマをあらかじめ考えておきたいところです。
前項で説明したように、テーマシートを作成しておくことも重要ですが、1on1ミーティングでは部下が主体的に話をするように仕向けなければなりません。
そのため上司としては、部下が話しやすい雰囲気を作れるような話題も考えておく必要があります。
これに効果的な話題として挙げられるのが、「部下の業務で良かったところ」です。
「○○のあの対応はすごくよかったね」といったフィードバックを行った後に、自然な流れで「最近の仕事はどう?」と仕事に関して切り出しやすい雰囲気を作れます。
1on1ミーティングに向けて、日ごろの部下の仕事ぶりを観察しておくとよいでしょう。
実施と記録をする
事前に整理してきた話す内容を基に、1on1ミーティングを実施します。
上司は、以下のポイントを意識して、話を聞く側に徹することが肝要です。
1on1ミーティングで上司が話を聞く際に意識するポイント
質問を投げかけて部下の話を聞き出す
目を見て話を聞き、適度に相槌も打つ
答えはなるべく部下によって考えさせる
良いポイントを探して褒める
なるべく否定せずに部下の考えを尊重する
こうした姿勢で1on1ミーティングに臨むと、部下に「上司が熱心に話を聞いてくれる」と感じてもらえて、本音を引き出せる可能性が高まります。
また、部下から聞いた話はいつでも振り返られるよう、メモを取って記録するように心がけましょう。
メモを取ることで、部下の悩みや課題の状況・変化を円滑に管理できるようになります。
1on1ミーティングで話すこと(ネタ選定)
1on1ミーティングでは限られた時間を有効に活用するために、事前にいくつかのテーマを用意しておくことが重要です。1on1ミーティングで取り扱うテーマとしては、「体調やメンタルの状態」「モチベーション」「将来のキャリア」「業務や組織の課題」「目標設定と自己評価」「企業の戦略・方針の共有」「プライベート」の7つが挙げられます。
7つのテーマのうち、どのテーマを選ぶのかは、1on1の主役である部下に決めてもらうのも有効な方法です。しかし、1on1の場で唐突に「好きなことを話して」と伝えても、部下は「何を話したらよいのだろう」「急に言われても、話すことがない」と困惑してしまうでしょう。
そのため、事前にアジェンダを部下に共有し、それを基に話したいことを考えてきてもらい、1on1の場では上司は部下から話を引き出すようにすることをおすすめします。
1on1の7つのテーマについては、下記の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
(参考:『【具体例あり】1on1で話すことの考え方や目的に沿ったテーマ例を解説』)
1on1ミーティングの効果を高めるための注意事項
1on1ミーティングを実施するからには、そこで得られる効果を最大化したいものです。
そのためには、どのような点に気をつけなければならないのでしょうか?
以下では、1on1ミーティングの効果を高めるために注意すべき5つのポイントを紹介します。
上司のスキルによって、成果が左右される
1on1は上司のコミュニケーションスキルによって成果が左右されるため、成果を得るには上司のマネジメントスキルを高めることが重要です。1on1では、仕事だけでなくプライベートに関する話もテーマとなることが想定されますが、上司としては、いかなるテーマであっても「態度」や「聴き方」に注意しましょう。
なぜなら、上司が部下を評価するような態度を見せたり、話を最後まで聴かずに意見したりすると、部下は考えていることや悩みなどを素直に話せなくなってしまうためです。
まずは、部下の話を最後までしっかり聴き、その上で、部下の気づき・発想の転換を促すような質問をします。「傾聴→質問→傾聴」が終わった後に、はじめて上司から部下にアドバイスするという流れを意識するとよいでしょう。
業務の負担が増加してしまう
1on1は一人実施するだけでも、スケジュール設定や事前準備、フィードバックなどの工数がかかります。1on1の対象となる部下の人数が多ければ多いほど、上司の業務負担が増加してしまう点に注意が必要です。
同様に、部下側も業務中に時間を割いて1on1に参加するため、有益な時間でないと「時間が無駄になった」「1on1をするくらいなら、業務を進めたかった」というように不満を抱いてしまうこともあるでしょう。
上司の負担を軽減するために、「1on1で話した内容の記録」や「部下の成長の振り返り」ができるシートの活用をおすすめします。
継続的な実施が必要になる
1on1は定期的に実施し、長く続けることでようやく「成果があった」と実感できる取り組みと考えられています。成果が出るまで継続的に実施していく必要がある点を上司・部下とも事前に理解しておかなければ、不満の声があがりやすいでしょう。
なお、1on1を継続的に実施するにあたり、予定通りの日程で開催できないケースが増えることも考えられます。そうした場合、一方的にキャンセルするのではなく、予定を部下と再調整して実施することが重要です。部下との信頼関係を崩さないよう、「部下のために時間を割くのも上司の務め」であると認識していることを、きちんと態度で示しましょう。
解決策などは極力教えない
1on1ミーティングにおいて、部下に何かを教えるという行為は極力避けたいところです。
繰り返しになりますが、1on1ミーティングを行う目的の一つは部下の自発的な解決力を養うことにあります。
この際の上司の仕事は、話を聞きながら内容を深く掘り下げて、部下の自主的な行動や気づきを促すことです。
部下に簡単に解決策を教えると、部下の中で「困ったときは上司がなんとかしてくれる」という意識が芽生えてしまいます。
そうならないために、上司は1on1ミーティングにおいては聞き役に徹して、何かを一方的に教えるということはあってはなりません。
ただし、部下が問題に直面し、対応に苦慮しているときは、上司から助け舟を出すのが望ましいでしょう。
このような場合には、適切なアドバイスによって、部下に問題解決の糸口を示してあげることが最優先です。
適切なフィードバックを行う
1on1ミーティングでフィードバックを行う際に、部下の欠点を咎めるようなことはしてはなりません。
1on1ミーティングで成果を出すためには、部下が本音で話してくれることが大切です。
もしこの場で、部下に対して「君はこういうところがダメだ」と欠点を咎めるような言い方をすると、委縮して、素直に悩みや展望を話してくれなくなってしまいます。
したがって、1on1ミーティングにおいては、改善点を伝えていくことよりも、部下に寄り添いサポートする姿勢が求められます。
この大前提を踏まえたうえで、部下のモチベーションを向上させられるようなフィードバックを行いましょう。
1on1ミーティングで活用できるシート
1on1ミーティングを意味のあるものにするためには、部下と話をした内容や成長などを振り返れるよう、記録を残しておくことも大切です。
d’s JOURNALでは、1on1で活用できるシートと、キャリア開発を促す1on1のポイントについてまとめたシートをご用意しました。下記より無料ダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
1on1ミーティングの成功事例|導入企業と取り組み内容
1on1の導入に成功している企業は、どのような工夫をしているのでしょうか。企業の成功事例を3つご紹介します。
事例①:ヤフー株式会社 ~「才能や情熱を解き放とう」を目標に~
インターネット関係の事業を幅広く手掛けるヤフー株式会社では、「社員一人一人の才能や情熱を解き放とう」という目標の下、2012年に1on1を導入しました。部下の抱える課題を明確にし、目標達成に向けてその課題をどう乗り越えていくのかの気付きを与える時間として、1on1が活用されています。現在では、「自らつくる自律的なキャリア形成」の一環として、1on1が定着しているようです。
(参照:『ヤフーにおける人事戦略とは。人財開発企業に向けた取り組み【セミナーレポート】』)
事例②:HENNGE株式会社 ~外国籍の社員も1on1を積極的に実施~
HENNGE株式会社(旧:株式会社HDE)は、積極的に海外人材を受け入れている企業の一つ。彼ら彼女らに長く定着してもらうために、海外ではなじみのない労務制度などをはじめとしたギャップなどへのフォローアップを目的に、1on1を実施しています。不安や悩みを可視化することで他社員にも適用することができ、良い循環となっているようです。
(参照:『世界中から3000応募!日本の中小企業が見出したエンジニア採用の「ブルーオーシャン」』)
事例③:パーソルキャリア株式会社 ~キャリア形成と多様な働き方をサポート~
パーソルキャリア株式会社では、定期的に上司と部下が面談を行っています。1on1で話した内容を基に、さまざまなキャリアに挑戦したり、多様な働き方を見つけたりできる仕組みがあります。そのため、社員一人一人がやりがいを感じながら仕事に取り組んでいます。
(参照:『「受け身型 IT部門」からの脱却。エンゲージメントが高い自律型組織のつくり方』)
まとめ
部下の話に耳を傾け、部下が日頃抱えている悩みや課題を把握するために行う1on1ミーティングは、上司・部下の信頼関係のもとで成立します。相互理解を深め、信頼関係を構築するために、普段からコミュニケーションを取り、話しやすい環境を整えることから始めましょう。
より効果を高めるためには、「何のために1on1を実施しているのか」1on1の実施目的を見失わないようにすることが重要です。
今回の記事では、1on1の導入に必要な準備や注意点、企業の取り組み事例なども紹介しました。これらを参考に1on1を実施し、部下の成長促進や信頼関係の構築、キャリア開発の支援などにつなげてみてはいかがでしょうか。
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)
部下との1on1ミーティングでより効果発揮するための「1on1シート」無料テンプレート
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