【求人票の添削例あり】差別化が難しい「経理職のハイクラス人材募集」で届けるべき情報とは

パーソルキャリア株式会社

加藤祐樹(かとう・ゆうき)

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宮崎真佐樹(みやざき・まさき)

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  • 企業が経理・会計分野で対応すべき問題が多様化し、経理職のハイクラス人材のニーズは増加の一途
  • 業務内容で差がつきにくい経理職では、どうやって求人票を差別化するかが課題に
  • 経理職のハイクラス人材は、自分にマッチしていそうだと確信して初めて応募に動く転職希望者が多く、職場のメンバー構成や社風・カルチャーに関する情報も気にしている

企業を取り巻く経営環境の変化や経理部門のDX推進などを背景として、経理(財務・会計)職のハイクラス人材を求める求人が急増しています。職種の性質上、業務内容が近しい求人票が多く存在する経理職では、処遇条件や知名度が応募獲得に影響を及ぼしやすい傾向も。いかにして自社の魅力を訴求するべきか、悩んでいる人事・採用担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、経理職の豊富な転職支援実績を持つ2人のキャリアアドバイザーを迎え、「よくある求人票例」を添削してもらいながら訴求ポイントを研究。ハイクラス人材の転職希望者が持つ志向性を踏まえ、母集団形成のコツを語ってもらいました。

経理職は他職種と違って「差別化しづらい」

——経理職のハイクラス人材について、転職市場はどのような状況にあるのでしょうか。

宮崎氏:足元の市場概況としては、前月比で常に120〜130%のペースで募集件数が伸び続けています。コロナ禍で活用された各種助成金制度の終了や昨今の物価高、あるいは経理DXの推進に向けたシステム導入など、経理・会計分野で企業が対応しなければならないテーマは多岐にわたります。そのため企業規模にかかわらず、ハイクラス人材の即戦力を求めるところが多いですね。

——転職希望者の動きはいかがですか?

宮崎氏:コロナ禍では業績不振になった企業から他社へ動く人が増えました。対面接触から非対面へと働き方が変わる中で、リモート勤務を希望したり、家族との時間を大切にしたりといった自分らしさの追求を考える人も増えていると感じます。「現在の勤め先はリモート勤務が不可だから」という理由で転職する人も少なくありません。

加藤氏:最近では個人が自律的にキャリアを考えるようになり、一社で長く働くことを美徳だと考えない人も増えてきましたよね。この流れは経理職でも同様で、以前よりも転職が当たり前になってきています。

——募集企業も転職希望者も積極的に動いているのですね。ただ、経理職募集は企業ごとの独自性を出しづらく、母集団形成に苦戦するイメージもあります。

宮崎氏:上場・非上場は違いとしてわかりやすいものの、それぞれのカテゴリーの中で自社を差別化しづらいのは事実だと思います。他職種とは異なり、経理職の場合は企業が提供している商材・サービスの違いなども仕事の魅力に直結しづらいでしょう。

そのため、経理職の採用ではより一層、転職希望者本人の転職の軸をとらえてマッチングすることが求められています。どんなレベル感の仕事を、どのような職場環境で経験したいのか。ハイクラス人材の転職希望者はこうした軸を明確に持っているので、その意向がかなうことが伝わる情報を発信していくべきです。

業務内容は「細か過ぎず、わかりやすく」を意識し、現在だけではなく未来像も伝える

 

——ここからは「よくある求人票例」を基にして、応募獲得に向けた加筆・修正のポイントについてお聞きします。宮崎さんには業務内容を見ていただきました。

財務経理実務全般をお任せいたします。
■業務詳細
・決算業務
・税理士・監査対応
・その他経理全般業務

宮崎氏:上記の求人票例にある業務内容は非常にシンプルで、「経理の募集だとこうなりますよね」という感想を持ちました。実際に企業側からいただく求人票もこうした内容が多いのですが、やはりもう少し情報が欲しいですね。誰もが知っている企業であれば注目してもらえる可能性もありますが、そうではない企業では採用において劣勢になるでしょう。

私はリクルーティングアドバイザーとして企業側の担当をしていたこともあります。その際に気を付けていたのは、「この求人票で誰に応募してほしいのか」を明確にすることでした。メンバークラスの人を育てたいのか、あるいは部長候補を迎え入れたいのかでは、伝えるべき情報がおのずと変わります。今回の添削でも組織構成を押さえた上で、どんな部署がどの程度のレベルの人材を求めているのかをわかりやすくしました。

また、求人票には現時点の情報を書くことが多いと思いますが、ハイクラス人材の転職希望者は数年先の未来を見ています。現在の条件や働き方がどうなのかといった「スタートライン」の情報だけでなく、入社後4〜5年目に待っている「未来像」も伝えるべきです。この情報があれば、自分がどのように貢献できるのかイメージしやすくなるでしょう。

——例として、実際に業務内容を「経営企画要素を含む」「連結決算」に分けた求人票を作成いただきました。一つ目の「経営企画要素を含む」求人例では、業務内容を細かく分類して記載されていますね。

■業務内容
・月次・四半期・年次決算
・業務フロー改善:経営戦略達成のための意思決定ができるように経理業務を遂行
・予算作成
・予実管理・分析
・ご希望・ご経験に応じて、M&A(デューデリジェンス)関連業務に携わっていただくことも想定しています

■ミッション
これまでのご経験に合わせて決算業務・経理業務をリーダー候補としてお任せいたします。部長、課長、メンバー5名の組織構成となっており、課長が別部門へ2024年4月から異動することから、チームを牽引できる方を歓迎します。
ただ数字を取りまとめるだけではなく、経営戦略を踏まえ、各事業部と連携を取って数値改善を「攻め」の姿勢でリードし、企業価値の向上に貢献していただくことを期待しております。
将来的には、経理部門のマネジメントはもちろん、ご志向に合わせ、M&A部門、経営戦略部門等、幅広い部門でご活躍いただけます。

宮崎氏:本で言うところのあらすじと目次が伝わるように意識しています。あまりにも漠然とした情報だけでは、転職希望者も企業へ何を質問していいのかわかりません。業務内容は項目だけでもいいので、箇条書きでわかりやすくするべきです。

ポイントは「細か過ぎず、わかりやすく」。経理の業務内容を以下のように大・中・小の項目で分類するとしたら、中項目に当たる「決算(日次・月次・年次・連結)」「予実管理」などを箇条書きにすることで経理経験者に伝わりやすくなるでしょう。細かな業務タスクは入社者に合わせて変えることもできるので、それよりも業務内容・ミッションや課題を記載しておくことが重要です。

・大分類は「経理」「財務」「管理会計」「内部監査」などの職種・ポジションの項目
・中分類は「決算(日次・月次・年次・連結)」「税務」「予実管理」「監査」などの業務内容・ミッション
・小分類は「●●名分の給与計算・社会保険(●●名を××日までに対応いただきます)」などの細かい業務タスク

——「M&A(デューデリジェンス)業務の可能性」などの記載もありますね。

宮崎氏:M&A関連業務にも意欲を持つ転職希望者を想定して、「あなたに向けた求人です」というメッセージが伝わるようにしました。M&A業務を担当するとなれば、専門スキルやコミュニケーションスキル、主体性を持った人材が求められます。そのスキルと経験、意欲を持っている転職希望者に振り向いてもらえればと考えています。

 

——もう一つのケースとして挙げた連結決算業務中心の求人内容例では、海外と関わる仕事についても詳しく記載がありますね。

■業務内容詳細
国内・海外(米国・欧州)の各子会社の経理担当者、会計士と連携しながら、社内報告および開示等、一連の連結決算業務をお任せいたします。
なお、弊社は連結決算においてIFRSを採用しております。

・連結財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書等)の作成
・国内、海外子会社の個社連結パッケージのレビュー
・連結子会社の予実管理
・経営へのレポーティング
・監査法人・税務対応
・決算短信、四半期報告書・有価証券報告書の作成
※海外子会社との連携には英語を利用いたします。

■採用背景
当社の海外事業は前年比150%成長を遂げ、来期以降もさらなる拡大を見込んでおります。事業基盤の安定のため、経理の組織強化のための増員募集となります。

■ミッション
まずは連結決算業務(社内報告~開示)を3~5年程度ご経験いただきます。
社内外のステークホルダーに適時・適切な情報を提供することをミッションとし、各子会社と連携して情報収集を行い、ホールディングスとしての会計の整理を中心となって推進していただきます。その後は、ご本人の希望や・適性に応じ、同組織内のマネジメントの他、財務、事業系の管理会計、IR、海外駐在を含む子会社への出向等のキャリアも実現が可能な環境となっています。

宮崎氏:連結決算業務では、国内なのか海外なのかによって会計の共通言語が異なります。ここでは「IFRS」(国際財務報告基準)というワードを置くことで、海外業務に興味を持つ転職希望者の目に留まるようにしました。加えて、連結決算という領域の中でどんな仕事がメインになるのか、海外子会社とのやり取りで英語が必要になるのかといった情報も押さえています。

こうした詳しい情報を経理部門からもらえない場合は、人事だけでここまで詳しく書くのは難しいと感じるかもしれません。その場合は私たち人材紹介サービスに聞いていただければ、「どんな情報を社内でヒアリングすべきか」も詳しくアドバイスできると思います。

多くの企業が伝えきれていない「職場環境の情報」とは

——続いて、会社としての魅力づけに関するアドバイスを加藤さんに伺います。経理職のハイクラス人材募集において、働き方や職場環境などの情報が重要になる理由とは?

加藤氏:経理職のハイクラス人材においても、コロナ禍をきっかけにして、自らの生き方や家族との時間の持ち方などを真剣に考える人が本当に増えていると感じます。特に業務内容で大きな差別化が難しい経理職は、働き方を特に気にして見ている転職希望者も多いです。

転職希望者の中では、働く環境が整っている企業で長期就業し、家族との時間を大切にしたいと考えるワークライフバランスを重視される方もいらっしゃいます。一方、年齢層によっては早期にスキル習得したいと考える方も多く、早い段階から大きな裁量や責任を与えられる成長フェーズの企業を探すケースも多いです。こうした採用したい人材像のイメージに合わせて、打ち出すべき情報が変わってきます。

——例として、「ワークライフバランスを重視して働けることを訴求したい企業」と「成長フェーズにあり、挑戦できる風土を訴求したい企業」に分けて求人票を作成いただきました。「ワークライフバランスを重視して働けることを訴求したい企業」に向けた求人票添削では、どのようなことを意識しましたか?

■組織について
・経理部は全体で約30名、同グループには10名が所属しています
(20代2名、30代3名、40代3名、50代2名、中途入社:新卒入社=6:4)
・さまざまな経験や知識を持ったメンバーと業務をすることが可能な職場です
・お子さまがいらっしゃる方も複数名在籍し、活躍しております。産休取得はもちろん、男性の育休取得率も直近1年で9割を超え、長期視点で働きやすい就業環境です

■就業環境
・平均勤続年数15年以上、年間離職率は3%以下と長期的に安心して働けます
・所定労働時間7.5時間、フレックスタイム制度も活用されており、柔軟な働き方が可能です。残業時間は、繁忙期は40~45時間程度になることもありますが、その他の時期は10~15時間程度となっており、平均すると月25時間ほどです
・夏季休暇・年末年始休暇はそれぞれ5日。土日や有給と合わせて9連休以上を取得するメンバーがほとんどです
・平均有給消化率は8割と、休みの取りやすい環境です
・リモートワークを導入しており、週に2~3日利用が可能です

加藤氏:どれくらいのキャリアの人が何年働いているのか、という職場のメンバーの構成を書いています。こうした職場の環境に関する情報も非常に重要な観点になります。転職希望者は「自分がどのような環境で、何歳くらいの人たちとコミュニケーションすることになるのか」を気にしているため、押さえておくべき内容だと思いますね。

こうした情報があれば、求人票をみて自分が組織の中でどんな立ち位置に入ればいいのか、どんなバリューを発揮すればいいのかをイメージしやすくなります。リーダ—クラスなのかメンバークラスなのかでは、求められる立ち居振る舞いがまったく違いますから。

働き方の部分では、残業時間やリモートワークの推進状況、休みの取りやすさ、平均勤続年数などを軸に情報を整理しました。業務内容に差がつきづらい職種の場合は、こういった働き方の部分をできるだけ詳細に記載すると、他の企業との差別化につながります。また、経理経験者であれば、繁忙期に多少残業が増えることを理解している人がほとんどなので、忙しくなるタイミングなどを詳しく伝えてもいいかもしれません。

 

——もう一つの「成長フェーズにあり、挑戦できる風土を訴求したい企業」については、社風やカルチャーについても詳しく触れています。

■当ポジションの特徴
日本社会で課題となっている●●を▲▲で解決することをミッションとし、株式会社●●が誕生しました。●●社のグループとして安定した基盤を持ちながらも、変革期にあり、仕組み・組織づくりに一から携わることができます。今回、事業拡大に伴うコーポレート部門の体制強化のため、経理の中核となる会計のプロフェッショナルを募集しております。

昨年対比●●%の売上と、まさに急成長中の弊社。社員一人一人の裁量も大きく、自由に挑戦できるカルチャーがあり、やりがいを持って仕事ができる環境です。現状では出向メンバーも参画しておりますが、所属に関係なくお互いを尊重し、フラットに意見を交わし合える風土です。将来的には、株式会社●●のコーポレート部門としての専門的な知見を持った組織を目指し、今後の拡大に向け、さらなる即戦力採用も予定しております。

加藤氏:社風については、成長フェーズの活発な雰囲気で働けるのか、落ち着いた環境で仕事に打ち込めるのかなど、転職希望者は社内の雰囲気やコミュニケーションの取り方の情報を気にする方も多いです。

添削では、「会社の急成長によるコーポレート部門の体制強化」といった採用背景に関する部分も追記しました。応募する求人を選ぶときには、「なぜこの募集があるのか」も判断基準になることが多いからです。そこで出向メンバーの情報なども紹介しながら、現時点だけでなく、将来的にどんな体制をつくっていきたいかまでを伝えるようにしました。

経理職の転職希望者は成長フェーズの会社で挑戦したいという気持ちがあっても、慎重に判断を下すことも多いように感じます。採用背景を丁寧に記述することで、安心して挑戦ができると感じてもらい、応募に対するハードルが下げられるかもしれません。

他の職種と比べて、経理職の転職希望者は応募を決断するまでのリードタイムが長い傾向もあると感じています。自分にマッチしていそうだと細部まで確認、イメージし、確信の上、初めて応募に動く。そうした転職希望者がとても多いので、企業側でも改めて求人票を見直し、伝えるべき情報を検討していただければと思います。

取材後記

具体的な添削例を見て、情報の粒度の変化に驚いた方も多いかもしれません。一方では「経理職の場合、求人票の文章が長ければいいというものではない」というアドバイスも印象的でした。客観的な事実や数字を押さえて物事をジャッジすることが習慣化されている経理職だからこそ、任せるミッションを明確にすること、今後の未来像を伝えることが重要だと感じました。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

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