管理職採用こそ重要なのはカルチャーフィット!若手のリクルーターや人材紹介サービスと進める、ラクスのエグゼクティブ人材採用・招聘戦略

株式会社ラクス

取締役 経営管理本部 本部長 宮内貴宏(みやうち・たかひろ)

プロフィール
株式会社ラクス

経営管理本部 人財採用部 部長 野田浩(のだ・ひろし)

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  • 年間約40名の管理職採用こそカルチャーフィット重視。自社のカルチャーやリーダー向け行動指針を言語化し、候補者についての判断材料としている
  • 社内の評価制度を通じてメンバーもリーダーの行動指針を理解。管理職採用にも関わるリクルーターとして「将来の上司候補を選考する」活動に貢献している
  • 外部人材紹介サービス担当者との定期ミーティングを通じてカルチャー・行動指針を共有。人材紹介サービス担当者向け表彰制度によって感謝の想いを伝えている

企業の行く末を大きく左右するエグゼクティブ人材の採用・招聘。これまでに培ったマネジメント能力などのスキルはもちろんのこと、カルチャーや行動指針にもフィットする人材であることを見極め、自社の成長につなげていかなければなりません。

クラウドサービス「楽楽シリーズ」で知られる株式会社ラクスでは、直近で年間約40名の管理職採用を実施。カルチャーフィットを重視しながら、社内のリクルーターや外部人材紹介サービス担当者と目線を合わせ、伴走型の採用活動を継続しているといいます。

自社のカルチャーや行動指針に共感し、長期の活躍が期待できる人材を採用・招聘するためには何が必要なのか。その実践知を聞きました。

管理職はより「カルチャーフィット」が求められる

——ラクスでは、直近で年間約40名の管理職採用を進めていますね。

宮内氏:当社はバックオフィス向けのクラウドサービスとして楽楽精算や楽楽明細、楽楽請求などの「楽楽シリーズ」を展開し、今後も自社開発やM&Aなどでラインナップを拡充していく計画です。そのために開発や営業、カスタマーサクセスなど、さまざまな職種で採用を強化しているところです。

野田氏:メンバークラスでもここ数年で数百名規模の採用を行っており、メンバーが増えるとともに管理職層の人材ニーズも増えてきました。ラクスではサーバント型のリーダーシップを奨励し、管理職がメンバーの成長支援を行いながら組織の成果に繋げることを重視しているため、内部育成だけでは組織の拡大と事業の成長スピードに追いついていきません。信頼できるエグゼクティブ向け人材紹介サービスやスカウト媒体などを活用しながら、管理職採用にも注力しています。

——管理職採用において課題視していることはありますか?

 

宮内氏:管理職採用では経営視点を持ってマネジメントスキルを発揮できる人材を求めていますが、それ以上に当社のマネジメントスタイルに合致する人物であることを重視しています。

私たちは「4つのユニークネス」として自社のカルチャーを言語化し、「ゴールオリエンテッド」「着実な継続」「誠実な合理性」「不確実性の排除」を打ち出しています。さらに「リーダーシッププリンシプル」というリーダー向けの行動指針も定めました。これらのカルチャーや行動指針を候補者に理解してもらい、自身が合致するかどうかを判断してもらうことが大切だと考えています。

野田氏:管理職はメンバー以上に、ラクスのカルチャーにフィットしていることが重要だと考えています。なぜなら当社はメンバー個々に深く入り込むマネジメントを行っており、開発・営業・カスタマーサクセスなど各部門の連携も重視しているからです。

管理職採用にも関わる若手リクルーターが、将来の上司候補へカルチャーを伝える

——候補者のカルチャーフィット度合いを見極めるための打ち手は。

野田氏:リクルーターを務めているのは20〜30代のメンバー層が中心です。カルチャーやリーダーシップの行動指針を理解した状態でカジュアル面談に臨んでもらっています。 だからこそキャリア採用活動にも携わるリクルーター自身がラクスのカルチャーや行動指針を理解し、対外的に発信できるようにしているんです。

宮内氏:当社の管理職層は四半期ごとに、リーダーシッププリンシプルで定めた11項目の体現度合いについてメンバーからの評価をもらっています。そのためメンバー自身もリーダーシッププリンシプルを理解し、候補者に対しても評価できるのです。ある意味では、メンバー自らが将来の上司候補を選考するような形ですね。コロナ禍以前には、最終選考の前に候補者とメンバーとの食事会を設け、上司として迎え入れられるかを判断してもらっていた時期もありました。

——管理職のカルチャーフィット度合いを測るという目的で言えば、同じ立場の管理職層がトップダウンで選考に臨んだほうが早いようにも思います。なぜ真逆のアプローチを取っているのですか?

宮内氏:理由の一つは物理的な限界です。数百人規模の組織であればトップダウンでもできるかもしれませんが、数千人規模ではさすがに不可能。役員である私自身、現在では全管理職を見知っているわけではありません。

また新しい管理職が次々に増えている中で、入社から日が浅い管理職よりも、在籍期間の長いメンバーのほうがカルチャーを的確に語れるという側面もあります。

 

野田氏:総合的に企業の魅力を感じてもらうためには、ラクスが何を目指し、どんなカルチャーを大切にしているかをメンバー自身の言葉で伝えることが効果的なのです。カジュアル面談以降も密なコミュニケーションを取れるよう、リクルーターが採用決定段階まで伴走しています。

人材紹介サービス担当者へもカルチャー・行動指針を共有。表彰制度で感謝の想いも伝える

——外部の人材紹介サービス担当者との付き合い方で気を付けていることはありますか。

宮内氏:前提として、人財採用部で採用活動に携わるメンバーの大半は、戦略的に人材系企業出身者で固めています。各メンバーそれぞれが、出身企業での経験を持っているため、人材紹介サービス担当者が求めている情報やアクションを熟知しているのです。

野田氏:こうした体制をつくった上で、人材紹介サービス担当者との良好な関係を継続的に築くために、当社の要望だけを伝えるのではなく、双方にメリットがある状態になることを強く意識していますね。人材紹介サービス担当者や候補者にとって必要な情報を先回りして提供できるよう心がけています。

——人材紹介サービス担当者と情報共有するための場づくりで工夫していることは。

野田氏:定期的にコミュニケーションを取り、相互理解を深めることを大切にしています。どんな人材紹介サービス担当者も最初から当社のことを理解しているわけではないので、候補者に関するフィードバックもできる限り頻繁に、丁寧に行っています。

社内のリクルーターと同様に、人材紹介サービス各社にも当社のカルチャーや行動指針を深く理解してもらうことが欠かせません。ミーティングの際には経営陣の考え方やコミュニケーションスタイルなども伝えていますね。

2年前からは人材紹介サービス担当者を対象とした表彰制度も設けています。高い成果を出してくれている人材紹介サービス担当者を表彰し、貢献していただいたことへの感謝を伝える場です。表彰時には、紹介していただいて入社した社員からのメッセージも届けています。

事業成長に不可欠な管理職採用。新たな手法に挑みタレントプールの拡大へ

——ラクスに入社した管理職層のプロフィールやラクスに入って魅力に感じたことを教えてください。

宮内氏:出身業界などはバラバラですね。SaaS業界そのものが発展途上にあるので、業種・業界は問わず、カルチャーフィットする人を探しています。

野田氏:年齢的には30代後半〜40代前半、転職先で中長期的に腰を据えて活躍したいと考える人が多いです。当社のように事業成長を続けているベンチャーでは、がむしゃらな働き方をしている企業も少なくないのかもしれません。しかし当社は効率的に働くことを重視しており残業が少なく、属人的な組織設計を排しているので誰かが休んでもカバーできる体制があります。こうした点に魅力を感じてくれる候補者も多いですね。

宮内氏:当社もかつては残業が多かったのですが、改善を進め、現在では管理職でも月20時間未満となりました。休日出勤はほぼなし、有休消化率は90%以上となっています。ワークライフバランスが取れていなければ良い仕事ができないのは管理職も同じ。今後も働き方を進化させていきたいと思っています。

——管理職採用のさらなる拡大に向けては、どんな展望を描いていますか。

野田氏:継続的・安定的に管理職を採用できる仕組みをつくることが今の課題です。そのための試行錯誤を重ねていきたいと思っています。経営層からは「採用は決まったレールにとらわれなくていい」「チャンスがあれば挑戦を」と発破をかけてもらっているので、新しい採用手法にも積極的に挑んでいきたいですね。採用という市場だけで閉じずに、ビジネスにおけるマーケティング活動などからも新たな知見を取り入れ、他社がまねしたくなるような仕組みをつくりたいです。

宮内氏:組織全体としては、「今できていないことをできるようにする」のが第一ですね。1人の管理職がマネジメントできる人数の最適化や新しい部署を今後増やしていかなければいけません。管理職不足で事業成長が止まったり、事業拡大を実現できなくなったりすることがないよう、新たな取り組みを拡大させていきたいと考えています。

取材後記

メンバークラスの採用と比較して、管理職などのエグゼクティブ人材はより慎重に転職の意思決定をすると言われます。あらゆる業界で人材不足が深刻化している昨今では、転職活動中に現職からの強烈な引き留めに遭うことも多いはず。そうした市場で他社と競い合うエグゼクティブ人材の採用・招聘では、ラクスのように社内外からカルチャーや行動指針を伝え、候補者自身がフィット感を持ち、腹落ちできる環境を作ることが重要なのだと感じました。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/宮本七生

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