離職の主な原因8種類をまとめて紹介!企業が取るべき対策もあわせて解説
d’s JOURNAL編集部
離職に至る原因は人によってさまざまではあるものの、大まかに見れば共通している部分も多くあります。
この記事ではデータのうえから離職に関する実態をご紹介したうえで、離職の主な原因を8つに分けて解説します。
また、離職を防ぐために企業ができることとして、7種類の対策方法もあわせて見ていきましょう。
離職率の各データ
(参照:厚生労働省『新規学卒者の離職状況』)
離職の課題に向き合ううえでは、現状の把握が重要な第一歩です。ここではまず、離職率に関する公的なデータをさまざまな観点からご紹介します。
データと比較しながら、自社の実情を振り返ってみましょう。
新卒者の3年以内離職率
年齢層別に比較すると、離職率がもっとも高くなるのは新卒者を含めた若い人材です。厚生労働省では、新卒者の3年以内離職率に関するデータが毎年公表されているため、まずはそちらを確認してみましょう。
2022年10月時点のデータによると、平成31年(2019年)卒業の就職者における離職率は、高校卒業で35.9%、大学卒業で31.5%とされています。厚生労働省の「学歴別就職後3年以内離職率の推移」を踏まえると、毎年多少の上下はあるものの、離職率30%前後はおおむね例年通りといえる結果です。
つまり、大まかではありますが、自社における新卒者の3割以上が3年以内に離職している場合には、平均よりも離職率が高いと判断できます。ただし、離職率の数値は業界や企業規模によっても異なるため、ここからはさらに細かなデータを見ていきましょう。
業界別の3年以内離職率
同じく厚生労働省のデータによれば、業界別の3年以内離職率には次のような特徴が見られます。
・離職率が高い業界:宿泊業、飲食サービス業、教育業、小売業などのサービス業界
・離職率が低い業界:インフラ業界、鉱業、採石業、製造業
離職率が高いのは宿泊業、飲食サービス業などのサービス業界であり、高校新卒者で60.6%、大学新卒者で49.7%という高い数値が出ています。次いで、生活関連サービス業や娯楽業、教育・学習支援業の順に離職率の高い業界として並んでいます。
一方で、離職率が低いのはインフラ業界であり、大学新卒者の離職率は11.1%と平均より大幅に低い数値です。そのほかにあげられるのは、11.5%の鉱業・採石業、19.0%の製造業などの業界であり、いずれも平均を大きく下回る水準となっています。
企業規模別の3年以内離職率
厚生労働省のデータによると、一般的には「会社の規模が小さくなるほど離職率が高くなる」という傾向にあることがわかります。たとえば、従業員数1,000名以上の企業における3年以内離職率は高校新卒者で24.9%、大学新卒者で25.3%と平均を下回る結果です。
一方で、従業員数30~99名の企業になると、高校新卒者で43.4%、大学新卒者で39.4%に増え、それより小さな規模の会社はさらに高い数値が出ています。
そのため、離職対策を行う際は、業界や規模による違いを前提として理解しながら施策を考えることが大切です。
離職に至る代表的な8つの原因
(参照:日本労働調査組合『退職動機に関する労働調査』)
離職対策を行う際は、その原因を理解したうえで一つずつ施策を検討していく必要があります。ここでは、主な離職の原因を8種類に分けて見ていきましょう。
給与への不満
給与に関する不満は、離職につながる代表的な原因の一つです。単に給与が低いというだけでなく、「業務内容や業界水準に見合わない」「労働条件とのバランスが取れていない」といった点も離職に至る重要な動機となってしまいます。
また、新卒者の場合は、額面と手取りとのギャップに驚き、仕事へのモチベーションが失われてしまうといったケースもあります。こうした原因に対処するためには、入社時に説明会などの時間を取り、給与や保険料、税金といった仕組みを学べる機会を用意するのも一つの方法です。
労働条件への不満
世代の変化とともにワークライフバランスの重要性が高まり、労働条件に関する問題が離職の原因になるケースも増えています。具体的には長時間労働や過度な休日出勤などがあげられ、プライベートを重視したい従業員にとっては、たとえ働きが給与に反映されたとしても不満を感じてしまう可能性が高いでしょう。
また、「有給休暇制度の不備」も主要な原因の一つです。制度そのものは存在しても、社内環境や風土によって取得しにくいといった面も原因になり得ます。
人間関係のストレス
社内の人間関係に関するストレスも、主要な離職理由の一つとされています。給与や業務内容には問題がなくても、社内の苦手な人との関わりにストレスを感じて辞めてしまうというケースは決して少なくありません。
また、ハラスメントのような目に見える問題が生じていなくても、「同僚とのコミュニケーションがうまく図れない」「上司や先輩に対する不満があっても伝えられない」など、日常的なコミュニケーションの積み重ねが原因になる場合もあります。
やりたいことと実際の業務のギャップ
本人の希望と実際の業務にギャップが生じている場合、仕事にやりがいや面白みを感じられず、離職に至ってしまうケースもあります。新卒者の場合、業務に対する具体的なイメージを持つのが難しく、説明会などを通じて漠然とした認識を持ったまま入社してしまうケースも少なくありません。
そのため、やりたいことと実際の業務内容とのミスマッチが生じ、やりがいを見出せなくなってしまうことが多いのです。また、中途採用者の場合でも、保有しているスキルや経験を思った以上に活かせないと感じると、入社後に離職を考えてしまう可能性があります。
お手本になる上司や先輩がいない
人間関係や職場環境に不満を感じていても、悩みを相談できる先輩や上司がいれば、問題が解消されることも多い傾向です。しかし、信頼できると感じる目上の人がいなければ、離職を踏みとどまるのは難しくなってしまうでしょう。
また、特に優秀な人材の場合は、キャリアのお手本となるような人物を見つけられないといった理由で離職を考えてしまうケースもあります。先輩や上司の姿に将来の自分を重ねて考えるため、思うようなキャリアを築けている人が周りにいなければ、企業の将来性を見限ってしまうということもあるのです。
過剰なプレッシャー
業種や企業によっては、納期や達成目標などに関する過剰なプレッシャーが、離職の引き金となってしまうケースも多い傾向です。特に成果主義の傾向が強い職場では、周囲や先輩も自身の業務に追われてしまい、新入社員へのフォローが難しくなりがちです。
高いハードルが課せられているにもかかわらず、失敗しても適切なフォローが行われなければ、次第に心が追い詰められていってしまうでしょう。その結果、心身のバランスを崩して離職してしまうというケースも考えられます。
キャリア形成が見込めない
キャリアに関する考え方は人によってさまざまですが、優秀な人材の多くは、自身の将来に対して高い意識を持っています。そのため、その企業で前向きなキャリア形成が見込めないと感じれば、早い段階で異なる環境に移ろうと考える可能性が高いです。
たとえば、評価体制や教育制度が不十分な企業では、より制度が充実した企業へ人材を流出させてしまうリスクが高くなります。特に若手の人材にとっては、目先の待遇以上に重要なポイントとなるケースも多い傾向です。
そのため、若い人材の離職が目立つ場合には、自社の育成制度を見直すことも大切です。
社風になじめない
離職に至るケースのなかには、会社の方向性や経営陣の考えに納得ができないことが原因の場合もあります。特に、組織体制の変革などで経営層の入れ替わりが起こったときには、従来との価値観の違いに戸惑い、ベテランの従業員であっても離職に至ってしまうケースは少なくありません。
また、新入社員の場合、周囲のメンバーとのスタンスにギャップを感じて離職を考えてしまうケースもあります。自分と比較して周囲の意識が著しく低い、あるいは著しく高い場合には、社内にあっても孤独感を覚えてしまう原因となるのです。
それ以外にも、社内の細かなルールやプライベートとの切り替えに関する考え方などが合わず、離職の原因となるケースもあります。
世代間ギャップと離職の関係性
新卒者や若手のメンバーの離職が目立つ場合、企業の社風や既存の従業員との間で世代間ギャップが生じている可能性が高いと感じられます。その理由となる世代ごとの労働環境の主な変化を紹介します。
デジタルネイティブ世代における人間関係の変化
現代の若手とされる年代は、生まれたときからインターネットが身近な環境にある「デジタルネイティブ」世代です。インターネットやSNSを通じた情報交換が手軽に行えるため、情報収集の効率は上の世代よりもはるかに高いといえるでしょう。
仕事についても、Webサイトや口コミなどから会社の評判や労働環境を簡単にリサーチでき、他社と労働環境を比較することも容易です。また、SNSを使えば直接的なつながりのないユーザー同士でも情報交換ができるため、あまり公にされていないような事実にアクセスできる場合もあります。
このように、さまざまなツールを用いて幅広く情報を集められるため、自社の評価についても、上の世代以上に客観的な視点を持っているという場合が少なくありません。業界水準と比べて待遇面などが劣っている会社は、若手から見れば評価が大きく下がってしまうでしょう。
キャリアに対する価値観の変化
社会情勢の移ろいにともない、労働に対する価値観も大幅に変化しました。特に、従来は当たり前とされてきた終身雇用や年功序列に対する考え方が、若手の世代にはほとんど通用しなくなっているといっても過言ではありません。
1つの企業に貢献し続けていても、安定した将来が約束されているという時代ではないため、若手のなかには初めから転職を前提にし、「自分のキャリアを自分でつくっていきたい」と考える人も多い傾向です。そのため、終身雇用を前提とした育成方針を取っている企業では、若手の価値観とぶつかり合ってしまうというケースも少なくありません。
また、共働き世帯が一般的になったことで、ワークライフバランスに対する考え方も変化しています。残業や休日出勤をして企業に思い切り貢献するよりも、仕事とプライベートのバランスを保つことに重きを置く傾向が強くなっているのです。
そのため、ワークライフバランスの要請に応えられない企業では、若手の人材を流出させてしまうリスクが高くなります。
転職関連サービスの充実
若手を中心としたキャリアに対する考え方の変化には、転職サービスの発展も大きく関係しています。転職サイトや人材紹介サービスが充実するようになり、スマートフォン1台で手軽に転職活動が行えるため、従来と比較してキャリアチェンジがしやすくなっているのです。
また、前述のように情報収集の効率も上がっているため、あまりなじみのない業界での働き方も簡単に知れるようになっています。その結果、転職の選択肢がより現実的になっているといえるでしょう。
今となっては、転職によって前向きなキャリアを形成していくケースもめずらしくなく、転職に対する抵抗感はほとんどなくなっているといえます。
離職防止のために企業ができる7つの対策
これまで見てきたように、離職の主な原因にはさまざまなものがあり、企業側が改善できる点も決して少ないわけではありません。
ここでは、離職防止のために企業として取り組める対策を7つに分けて見ていきましょう。
労働環境の見直し
労働条件が離職につながっているケースは、比較的に原因を特定しやすいといえます。長時間労働や休日出勤が頻繁に起こっている場合には、業務のシステムや効率を見直して、速やかに改善の方法を探ることが大切です。
また、有給休暇制度が十分に機能していない場合は、取得しやすい仕組みづくりを行う必要もあります。たとえば、1人でも休んでしまうと業務が回らない状況が常態化している場合には、多様な雇用形態を活かした人材の補充などで、チーム力の向上を目指しましょう。
労働環境については、経営層や管理職層と一般従業員層との間で認識のギャップが生じやすいポイントでもあります。現場の声をきちんと把握するためにも、アンケートなどを活用して不満の吸い上げを行い、具体的な改善点を拾っていくのも一つの方法です。
福利厚生の充実
福利厚生の充実も離職を防ぐうえで有効な施策の一つです。ただし、従業員にとって魅力があるものでなければ、仕組みを整えても形骸化してしまう可能性があるため注意が必要です。
特に、事業規模が大きくない企業では、手当たり次第に複数の制度を実現していくことは難しいため、自社の社員が求めるものを適切に把握しておくとよいでしょう。
住宅手当や家賃補助といった手当の充実、健康経営への取り組みなど、従業員のライフステージや価値観に合わせた柔軟な施策を見つけることが重要です。
(参考『【3分で読める】福利厚生を選ぶならコレ!種類や導入方法など知っておきたい基本事項』)
社内コミュニケーションの活性化
人間関係のトラブルによる離職を防ぐためには、普段から社内コミュニケーションの活性化に力を入れることが大切です。具体的な取り組み例としては、レクリエーションや社内交流会などの開催があげられます。
業務を離れて交流できる機会を設ければ、普段関わらないような相手ともコミュニケーションが図れ、自然と人間関係の輪が広がっていくでしょう。また、カフェのようにリラックスした雰囲気で会議が行える「ワールドカフェ」や、好きな席で自由に業務ができる「フリーアドレス制」などを実施するのも効果的です。
いずれにしても、上意下達型の一方的なコミュニケーションではなく、立場や役職にとらわれない双方向的なコミュニケーションの機会を設けることが重要なポイントとなります。
評価制度の見直し
評価制度の整備を行うことも、人材の流出を防ぐ有効な施策です。具体的には、「評価基準の明確化」や「結果だけでなくプロセスも対象にした評価システムの導入」などがあげられます。
特に、定量化が難しい部門や業務に就くメンバーに対しては、評価の基準や推奨される取り組みを明示し、公平性が損なわれないように注意することが大切です。
(参考:『人事評価制度の種類と特徴を押さえて、自社に適した制度の導入へ【図で理解】』)
定期的な面談の実施
離職率の低下を目指すうえでは、実際に従業員が退職を実行に移してしまう前に、その原因を発見して解消することも大切です。そのためには、従業員が安心して本音を言えるような環境づくりを徹底する必要があります。
具体的には、上司による1on1ミーティングの実施があげられます。これは、30分~1時間程度の時間を定期的につくり、自由に従業員が話せる機会を設けるという取り組みです。
(参考『1on1で話すことにはもう困らない!テーマの具体例と成功のポイントを紹介』)
ただし、面談が有効に働くのは、あくまでも本音が言える信頼関係が構築されている場合に限ります。そのためには、「心理的安全性」の構築にも目を向けなければなりません。
心理的安全性とは、組織において自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態を指します。
具体的には発言を拒絶されたり、それによって罰したりされないと確信できる状態であり、人間関係の向上はもちろん、組織の生産性を高めるためにも重要なポイントとされています。
(参考『心理的安全性の作り方・測り方。Google流、生産性を高める方法を取り入れるには』)
キャリア支援の充実
若手のメンバーや優秀な人材の離職を防ぐためには、自社のキャリア支援制度を充実させることも大切です。従業員が必要なスキルと知識を学べるように研修制度の見直しを行い、組織として十分な時間と機会を用意する必要があります。
研修には自社の役員や上司が講師を務める「社内研修」と、外部の専門家に依頼する「社外研修」の2つがあります。前者はじっくりと企業理念や独自の技術を伝えられるのがメリットであり、後者は専門的な知見や新しいスキルを身につけられるのが特徴です。
それぞれの違いを踏まえながら、質の高い研修システムを構築していきましょう。また、自社で働きながら前向きなキャリア形成を描いてもらうために、キャリアアップ研修を実施したり、キャリア面談制度を整備したりするのも効果的です。
採用時のミスマッチの防止
離職率の低下を目指すうえでは、採用段階で自社と人材のミスマッチを防ぐことも大切な考え方です。具体的な方法にはさまざまなアプローチがありますが、まずは過去の採用データの丁寧な分析が大切となります。
「早期離職につながってしまうケース」と「長く定着してもらえるケース」を細かく分析し、後者の人材が持つコンピテンシー(行動特性や志向性)を採用基準に盛り込むことで、マッチ度の高い人材を見極めやすくなります。また、採用時点で企業理念や自社の風土との相性を確認したり、応募者の不安なポイントを解消したりするステップを設けることも重要です。
たとえば、具体的な手法としては「RJP」の実施があげられます。RJPとはRealistic Job Previewの略語であり、採用前に自社の現実的な側面を開示することを指します。
ポジティブな情報だけでなく、自社での現実的な働き方やネガティブな情報も明らかにしておくことで、入社後のギャップを埋めるのが目的です。また、RJPには「かえって自社の信頼性を高めてくれる」というメリットもあります。
現代の若手世代は、インターネットを通じてネガティブな情報も入手している可能性が高いため、ネガティブな情報もさらけ出すことで企業の信頼性が向上するケースも少なくありません。
(参考:『ミスマッチとは?新卒・中途採用の早期離職防止に有効な原因別の対処方法を紹介【資料付】』)
まとめ
新卒者の3年以内離職率は、毎年おおむね3割程度とされているものの、実際には企業の規模や業種によって大きな違いがあります。企業の取り組み次第で、離職率には違いが生まれるため、まずは離職原因になり得る項目を把握しておくことが大切です。
離職の主な原因には労働条件や人間関係に対する不満、キャリア形成に関するものなど、さまざまなものがあります。制度を整えることで問題が解消される可能性もあるため、自社に合った無理のない取り組みを検討するとよいでしょう。
(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)
若手社員受け入れ時に知っておくべき!若手の早期離職防止策
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